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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > 施工BIMの今 -ISエンジニアリングのBIM

 

BIMに取り組むきっかけ

当社の内外装部はALC(軽量気泡コンクリートパネル)・ECP(押出成形セメント板)・金属パネル・PC等の設計施工を主たる業務としております。
 
BIMに本格的に取り組んだのは2016年からです。ゼネコン主導による「施工図のBIM化を図るように」との働きかけを受ける形で当社の施工BIMはスタートしました。また、そもそも施工業者としてどんなメリットがあるのか、BIMで何ができるのかを考えると同時に、施工上の取り合いの視認性の良さだけでなく、取り組むなら2Dではできない部分をBIMで設計品質・作業効率を向上できないかとの考えが背景としてありました。
 



 

施工業者として改善すべき問題

ALC・ECP等の施工図は、パネル割り付けと同時にパネルの厚み、長さ(支点間距離)、開口補強、スリーブ検討といった計算を個別に計算ソフトへ手入力しチェックしています。これらの作業は物件ごとに荷重条件(風荷重・層間変位等)が違い、大型物件になればそのチェックは膨大な数になります。
 
また、設計担当者の経験にもバラつきがあり作業処理にかかる時間を考え、これを平準化・省力化できないかということに注力し、これらの計算ソフトに改良を加えたりしておりました。
 
これまでパネル割り付けは既存の2D自動割付ソフトを使用しております。このソフトは効率よく自動割り付け・変更修正と建材メーカーへのパネル発注明細が作成できます。しかし、2Dから3Dとなりますと作図システムの変更が必要です。ARCHICAD、RevitといったBIMソフトを施工BIMとして使うには、オブジェクト・ファミリ作成・自動割り付けプログラム化、また発注明細作成となると建材メーカーとの連携も重要です。
 
しかしそれ以上にBIMを推進するに当たって、いろいろなアイデアが社内・設計協力会社からたくさん出てきています。BIMのパラメータ情報を計算式にインポートすることで、これらの計算にかかる作業が、オブジェクトを割り付けするだけで支持スパンの確認ができそうだということ、そしてスリーブ開口も解決できるのではないか等、施工BIMの可能性を最大限引き出すための課題と方向性が明確になってきました。
 
 

BIMパネル自動割り付けシステムの開発

開発コンセプトとしては「設計品質・作業効率の向上」と「意匠BIMデータを活用」ということです。開発に当たっては当社のBIM担当と設計協力会社とで協議し、今まで以上の作業効率と強度的な設計品質を遵守できるよう開発項目をリストアップしました。



オブジェクト(パネル形状・仕様)はパネルサイズ・パネル加工・パネル種別(フラットパネル・デザインパネル・タイルパネル等)等、種類が多岐にわたり、これらを作成した上でAPIにて制御しパネルを自動で割り付けていきます。また、パネルの情報としてはパネル重量・断面係数や断面二次モーメント・留付ボルト強度等もマスターテーブルとして作成し、パネルの強度計算に対応できるようにしました。



施工業者として意匠BIMモデルそのものを活用し、また他業種ともデータ連携できるようにしたいと考えました。この自動割り付けシステムは意匠BIMモデルを下地に平面配置をトレースし、パネルのモジュールで割り付けし、両端部で均等に割り付け・寸法指定割り付け・コーナーパネル配置など効率よくモデリングできます。また、意匠BIMモデルの階高情報がそのまま使えますので、面として同じであれば必要な階まで一度にパネルをモデリングすることもできます。



そして意匠BIMモデルのAW・SD等の開口情報(サイズ・位置)をパネル自動割り付けシステムへそのまま連動させることで入力ミスをなくし、また意匠BIMモデル変更にも即座に対応できます。パネル割り付けにおいては割り付けモジュールと開口情報が最も重要ですし、変更追加が多いのが開口情報です。この情報を意匠BIMモデルと連動すればお互いの確認作業が省力化されます。
 
パネル自動割り付け・パネル発注明細はもちろんのこと、鉄骨一次ピース割り付け・開口アングル検討・パネル計算・スリーブ検討までもプログラムしていく予定です。



鉄骨一次ピース割り付けの目的は鉄骨製作者(FAB)へのデータ受け渡しをスムーズに行い、先付ピースの漏れをなくすことです。これまで2D図での図面指示では情報が分かりにくく、記入漏れ・転記漏れなどが多くありましたが、現在BIMデータでの受け渡しに移行してからは、現場での先付ピース漏れはほとんどありません。できればこのBIMデータを先方(TEKLA等)へのネイティブデータに変換できればと思案しているところです。
 
 

今後の展望

施工BIM推進に当たって直面している問題はチェック・承認の方法です。他業種との取り合い・干渉等を確認するため、現場ではBIM重ね合わせ会等が開かれますが、短い工期の現場も多く、施工BIMモデルのチェック日程はなかなか厳しいものがあります。できる限り早期に着手しBIMモデルの検証作業に十分な期間を確保しなければと考えます。
 
意匠BIMモデルとパネルBIMモデルの重ね合わせ、鉄骨や躯体・建具との重ね合わせ、モデルの検証を十分行うことで寸法確認の手間もかなり省力化できます。施工業者の足並みもまだそろっているとは言えませんが、早急にBIMの確認業務フローの確立が重要であると考えます。
 
最後に、施工BIMは他業種との連携を図ることで作業環境は大きく改善・発展するでしょう。今後ともBIM関連業者の相談会・連絡会等で情報交換しながら、施工BIM推進に尽力したいと考えております。
 




 
 

ISエンジニアリング株式会社 技術設計部 金 尚之

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 

最終更新日:2019-04-22

 

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