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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > NEXCO東日本の高速道路リニューアルプロジェクト 〜幅員方向に3分割した床版取替工事〜

 

1 はじめに

既存の高速道路では経過年数に加え,厳しい使用環境により,老朽化が進行している。「高速道路リニューアルプロジェクト」とは,高速道路が経済・社会・医療・防災など社会基盤を支える大動脈としての役割をこれからも果たすため,これまでの部分的な補修の繰り返しでは重大な変状に進展するおそれがある箇所について,橋を架け替えるなど抜本的に補修を行う大規模更新・修繕事業プロジェクトである。
 
弊社ではこのプロジェクトの一環として,平成30年に北陸自動車道長岡JCT〜中之島見附IC間に位置する高瀬橋(上り線)において,新潟支社管内では初となる床版取替工事(以下,「本工事」という)を実施した。
 
本稿では,高瀬橋(上り線)における床版取替手順,床版取替サイクル,車線運用などについて施工報告を行う。
 

【図−1 橋梁位置図】




 

2 高瀬橋(上り線) の概要

高瀬橋(上り線)は長岡JCTの分流部付加車線を含む合計3車線の幅員を有する橋梁で,道路橋示方書(昭和47年)により設計された橋長111mの鋼3径間連続6主鈑桁(ばんげた)橋である。設計活荷重はTT─43,床版支間2.7m,床版厚は210mm,道路線形はR=2,000mの単円部にあり,横断勾配は2%片勾配である。
 
開通から約40年が経過し,老朽化や大型車の増加,凍結防止剤散布の影響などにより,鉄筋コンクリート床版の損傷が顕在化してきたことから,床版取替を行うこととしたものである。
 

【図−2 橋梁一般図】




 

3 社会的損失の最小化を目指して

北陸自動車道の当該区間の断面交通量は約3万3,000台/日と新潟県内では比較的多いことから,本工事を実施するに当たり,一般的に多くの床版取替工事で採用されている対向車線(下り線)を使用した対面通行規制(片側1車線)とした場合,規制期間中は上下線ともに毎日,2〜6km程度の交通渋滞の発生が予測され,渋滞後尾等における交通事故の発生も懸念された。
 
これら社会的損失の発生を抑制するため,本橋梁が付加車線を含む3車線分の幅員を有していることに着目し,床版を幅員方向に3分割することで,交通量が多く渋滞の発生が予測される時間帯は通行可能車線を2車線確保し,床版を取り替える施工方法を採用することとした。
 

【図−3 標準断面図】

【写真−1 全景写真(施工前)】



 

4 床版取替手順

本工事では,交通渋滞を発生させない施工方法として,上り線の床版を幅員方向に3分割する方法で1車線分相当の常設作業帯を確保するとともに,時間帯ごとに車線規制区間を切り替えることで,交通量に応じた通行車線の確保を行った。
 
3分割施工において通行可能車線を2車線確保するためには,車線幅員の変更(3.5m→3.25m)や縮小路肩の採用等,道路規格を第1種第2級から4級相当に変更することとしたが,取替前の有効幅員13.0mでは必要な作業帯の確保ができなかった。そのため,事前作業として,中央分離帯側の地覆を撤去(1.80mのうち1.75mを撤去)し,幅員を14.75mに拡幅することで,3分割による床版取替に必要な幅員を確保した。事前作業では,3分割施工を行う上で必要となる仮設縦桁,仮設横桁の設置も行った。
 
3分割施工に当たり,左側路肩〜付加車線部の施工を「1期施工」,走行車線部(中央部)の施工を「2期施工」,追越車線〜右側路肩部の施工を「3期施工」と区分している。
 

【図−4 渋滞予測】




【図−5 床版取替手順・車線規制方法】




 

5 床版取替

◆床版取替サイクル

床版取替工事期間中は,昼夜連続2交代体制を構築し工事を行った。1日の床版取替サイクルについては1期施工,3期施工は同様であるが,2期施工は壁高欄の搬入,設置・調整がないサイクルとなる。昼間は騒音が大きい床版切断,コア削孔を先行して進めた後,その日の予定設置枚数の範囲の床版撤去・搬出,新設床版の搬入,主桁上フランジ清掃・塗装などの取替準備を行い,夜間は新設床版の設置,位置調整を行うサイクルで施工を進めた。
 
床版撤去,設置に使用するクレーンは70tラフタークレーン2台を用い,橋梁中央から端支点側に向け2パーティーで床版の取り替えを行った。1日当たりの取替枚数は,クレーンの作業半径から1パーティーで1期施工,3期施工では4枚,2期施工では壁高欄の施工が不要なこと,床版の重量が軽く,クレーンの作業半径を大きくすることが可能なことから,7枚とした。
 
なお,本工事では主桁上フランジの添接ボルトの取り替えも合わせて実施している。本橋では建設時にF11T高力ボルトが採用されているが,主桁上フランジは床版内に埋め込まれていることもあり,取り替えができていなかった。今回の床版撤去により, F10T高力ボルトに取り替えを行っている。
 

【図−6 床版取替要領(2期施工)】

【写真−2 床版取替状況(2期施工)】



【表−1 高瀬橋 床版取替タイムスケジュール】




【図−7 加速度計測位置】



◆間詰コンクリート施工

床版接合部コンクリートの施工は交通振動下での施工となることから,コンクリート強度が発現するまでの時間に桁間のたわみ差および床版の振動の影響を抑制する必要があった。そのため,プレキャスト床版と仮設縦桁を固定した状態で接合部コンクリートの打設を実施した。また,ひび割れ対策と早期の強度発現を目的として短繊維混入速硬コンクリートとし,短繊維および速硬性混和剤を現場で移動ミキサーに投入し速硬コンクリートを製造することで,施工中の急激な硬化に伴う不具合を防止した。 なお,実施工に先立ち,実物大模型による施工試験を行い,添加材の投入タイミング,練り混ぜ時間,強度発現時間等の確認を行った。
 

【写真−3 間詰めコンクリート製造状況】

【写真−4 間詰めコンクリート打設状況】


【図−8(a) 間詰めコンクリート打設前】

【図−8(b) 間詰めコンクリート打設後】


◆間詰コンクリート施工時の相対変位計測

間詰コンクリートの打設時には,交通振動により1期床版と2期床版とで位相差を伴うたわみが生じていないか確認するため,間詰めコンクリート施工時に振動計測を行った。
 
計測は変位の影響が大きい支間中央部に加速度計を設置し,振動計測(計測時間間隔0.005秒)を行い,計測で得られた振動加速度を積分して変位量を計算することで相対変位差の比較を行った。交通状況の違いで変位量に多少の違いはあるものの,ほぼ同位相で変位していたことから,強度低下など悪影響は発生していなかったと考えられる。
 

◆工程短縮

本工事では床版を3分割で取り替える工法を採用しているため,全幅員の一括取替に比べ,取替工事期間が長くなることから,規制期間短縮のための工夫を行った。
 
(1)桁端部プレキャストPC床版の採用
桁端部は複雑な形状を有する部位であり場所打ちPC床版とするのが一般的だが,本工事では桁端部においてもプレキャストPC床版を用い工程短縮を図った。
 

【写真−5 桁端部プレキャストPC床版】



(2)プレキャスト壁高欄
壁高欄にはプレキャスト壁高欄(DAK式壁高欄)を採用し,かつ,プレキャストPC床版製作工場にて壁高欄の水切り部を施工することで,床版設置後,直ちに壁高欄を設置できるよう現地施工の効率化を図った。
 
水切り部は3期床版設置後にPC緊張作業を行う必要があるため,ジャッキが挿入できる箱抜きを設けた。PC緊張作業後は,本工事のため新規製作したPC鋼線切断カッターを用い,作業の効率化を図った。
 

【図−9 水切り部の工場施工および箱抜き形状】




 

6 車線シフト要領

◆ロードジッパーシステム

交通量の多い朝の通勤時間帯は通行可能車線を2車線とするため,工事期間中は早朝,昼間と1日2回の車線規制帯の変更作業が必要であった。この頻繁な車線規制帯の変更作業においては, 防護柵切替車両(BTM:Barrier TransferMachine,以下,「BTM」という)を用い,専用のコンクリート製防護柵を移動させるロードジッパーシステムにより実施した。
 
渋滞発生時間(平日の場合12:00)が終了後,高瀬橋手前,新潟側の常設作業帯に待機していたBTMを長岡側に移動することで1車線幅分(3.25m),コンクリート製防護柵を橋軸直角方向へ横移動(車線シフト)し,高瀬橋を通過後,長岡側の常設作業帯で停車する。渋滞発生時間(平日の場合7:00)が始まる前には逆の手順でBTMは新潟側に移動することで1車線から2車線通行可能な車線に戻す作業となる。BTMの移動速度は,コンクリート製防護柵を横移動させながらの場合で5〜10km/h程度の走行が可能であり,今回使用の防護柵設置延長(1期・3期施工時で251m,2期施工時で175m)の車線切替作業時間は,3分程度で可能であった。また工事中は作業帯のすぐ横が通行車線となるが,コンクリート製防護柵にて区画された中での施工となるため,切替作業時間を短縮することができるとともに作業員の安全確保にも繋がった。
 

【図−10 車線シフト要領(3期施工時)】

【写真−6 車線切替作業(3期施工)】



 

7 社会的損失の回避を実現

前述した施工手順,工程短縮,車線シフト等多くの工夫・効率化を行い,床版取替を実施したところ,工事期間中に渋滞は2回発生したが,いずれも影響はわずかであり,対面通行規制による施工を行ったと場合と比較し,渋滞発生時間(hr)・渋滞量(km・hr)とも大幅な削減(▲99%)を実現した。
 

【表−2 対面通行規制による施工期間を50日間と仮定】




 

8 おわりに

高瀬橋(上り線)の床版取替工事では,床版取替作業に伴う昼夜連続規制期間は長くなるものの,幅員方向に3分割した床版取替を行うことで,上り線・下り線ともに渋滞の発生を抑制でき,予定の期間内で無事床版取替を行うことができた。本稿が今後の重交通区間など特殊施工条件下での床版取替工事の参考になれば幸いである。
 

【写真−7 完成写真】




 
 

東日本高速道路(株)新潟支社 構造技術課・長岡管理事務所

 
 
 
【出典】


積算資料2020年7月号



 

 

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