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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > BIM/CIM > 3次元部品データの利活用について -これからの部品データ利活用のあり方を探る-

CUGが行う部品データの整備について

CUGとはどんな活動団体なのかを最初にご紹介する。
 
2007年、土木分野への3次元モデルの導入推進を目的に、Civil 3D User Groupを発足し、その後、2012年に、設計者・施工者をはじめとした土木技術者の集まりとしてCivil User Group(略称:CUG)へと発展してきた。
 
時同じく2012年度より開始された国土交通省のCIM活動への対応も、3次元部品の公開や、CIMインストラクターの認定など、人材育成と環境整備に力を入れている。
3次元部品の公開については、以下のサイトで長年にわたり公開してきた。
 
実はこのサイトは、現在までに以下の図のような変遷をたどっている(図-1)。
 
2015年から整備をスタートし、2016年に公開した当初は主に自分たちがBIM/CIMを進める上で、部品として配置することにより、より現実的な施工現場や設計段階での計画シミュレーションを行うために整備してきたものであった。
CUGには実務を行っているメンバーが集まっているため、CUGの3次元部品WGに参加した有志の集まりで作成され、自らの業務で作成したものを公開している程度であった。 
 
CUGのWebサイトで公開しているものを少しでも永続的、かつ、より多くの人が利用しやすいようにと、部品サイトでは世界的に有名なBIMobject(図-2)の日本法人と協力し公開を試みるも、当時のBIMobjectの公開規則は、製造メーカーが自身の製品の部品を公開することが原則であり、いわゆるジェネリックモデルとして作成した部門を公開することは許されていなかった。
そのため、このBIMobjectサイトを利用するための条件をBIMobject社と協議をした結果、CUG会員という有志で登録されている部品の意味を理解している人のみ利用できるという条件で、CUGサイトに登録した会員のみにしか土木関連部品が利用できないという流れとなった。
限定されたメンバーへの公開となったが、それでもこの世界最大の3次元部品プラットホームのBIMobjectサイトを利用し、日本の土木部品を公開できることは、部品サイトの永続性を考えると大きな転換点になったと思われる。


CUGが整備してきた部品サイトの変遷

図-1 CUGが整備してきた部品サイトの変遷


BIMobjectが公開している部品サイト

図-2 BIMobjectが公開している部品サイト(https://www.bimobject.com/ja



 

世界の状況

さて、このような3次元部品サイトの状況ではあるが、日本以外のサイトはどのような整備が進んでいるのか、米国、欧州、アジアの様子を以下にまとめた。
 
● 米国ウィスコンシン州では、発注機関からソフト、部品、テンプレート、マニュアルなど全て提供されている。
● イギリス王立建築協会が運営しているサイトで、主にメーカーが作成したBIM用の部品が登録されている。
● シンガポールは、BIMが進んではいる。
 しかし、建築確認申請時に3Dモデルが必要ではあるものの、部品サイトは存在していない。
● 韓国は、建築分野のライブラリーは民間団体が配布している状態である。
 土木分野のライブラリーは国土交通部と政府の研究機関、韓国建設技術研究院(以下、KICT)が100%運営をしている。
 設計・積算に主眼を置いているため、3D部品に限らず、アセンブリ(組立図)の登録もされているが、政府機関が必要なものに限られている感がある。
●スウェーデンのベンチャー企業のBIMobject社は、世界最大のBIMデータライブラリーサイトを全世界向けに運営している。2017年にはBIMobjectJapanが設立されている。

 
 

このようにほとんどが建築向けの部品サイトとなっており、インフラ分野での部品サイト構築はないに等しい。
 
しかしながら、韓国では、唯一、土木分野における「ライブラリー」が存在する。
 
韓国でのインフラ分野におけるライブラリーは、ライブラリーの利用者は、民間業者ではなく、発注者および発注者業務を実施する設計コンサルであり、道路建設における業務プロセスを大幅に短縮するために利用している。
計画はもとより、積算業務などへの取り組みが積極的であり、その取り組み内容はKICTのムン博士やジュ所長(2017年当時)から聞いたわれわれも、本来国としてあるべき取り組みであると、感嘆の声を上げざるを得ない内容だった。
 
この件については、詳細はこちらをご覧いただきたい(https://www.jacic.or.jp/hyojun/2016shouiinnkai-01.html)。

 
 

日本の部品データの整備状況

このような状況において、では日本は建築分野、土木分野においてどのような状況なのかを今一度整理してみたい。
 
BIM(建築系)では、2015年秋に設立されたBIMライブラリーコンソーシアムが、(一財)建築保全センターに事務局を置き、117者の会員企業・団体から成るコンソーシアムとして、BIMライブラリーの構築・提供を目標として活動を開始し、2019年8月23日付で国土交通省に技術研究組合として認可され、法人格を持つBIMライブラリ技術研究組合に移行した。
 
BIMによる円滑な情報連携の実現のため、BIMオブジェクトを標準化し、その提供や蓄積を行うBIMライブラリを構築・運用するとともに、現在BIM導入を検討・開発中でその効果が大きい領域との連携を図ることにより、効率的な建築物のプロジェクト管理などの実用化に関する試験研究を実施することを目的として活動を継続している(図-3)。
 
建築分野における情報連携を進めるための属性情報の入力規則や内容を統一するための活動や、建築プロセスを通じて利用するための基準統一などの活動がここでは行われている。 
 
翻って、土木分野に目を転じると、国土交通省は2018年3月、効率的に3D設計を進める一つの手法として、3Dモデルを構成するパーツを作成・提供する「3次元部品データライブラリ」の構築に乗り出すということで、2020年度の運用を目指し、CIMライブラリー構築の検討が始まっていた(図-4)ものの、現在もこのライブラリ構築は行われていない。
 
国が整備するライブラリ構築については、単なる部品ライブラリではなく、韓国のような考え方を基にライブラリを構築しなければ、公共工事におけるライブラリ利活用は意味がない。
現在、国土交通省がパラメトリックモデル構築の取り組みを進めているが、単なるモデルのデータ交換やモデル構築を楽にするための方法ではなく、このモデルが設計・積算のみならず、さらなる土木施工を効率化させるためのプレキャストへの展開と誘う流れにしてほしい(図-5)。

BIMライブラリ技術研究組合

図-3 BIMライブラリ技術研究組合(https://blcj.or.jp/


3次元オブジェクトの供給に関する検討資料(2017年資料より)

図-4 3次元オブジェクトの供給に関する検討資料(2017年資料より)


パラメトリックモデルの考え方(素案)

図-5 パラメトリックモデルの考え方(素案)
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001395569.pdf



 

今後の整備と展開について

このように、日本での部品整備は、建築分野、土木分野における利用の違いによって、整備状況も方針も変わってくるが、CUGとしては実際のモデルを構築する土木技術者が少しでも手間をかけずに利用できる部品サイトの構築に力を入れていきたい。
 
また部品整備を進めるに当たり、Webサイト基盤整備においてコストと時間をかけ、利用環境を常に最新の物にすることが望まれるが、CUGとしての活動はそもそも慈善活動でまかなわれていることもあり、これらを実現することは難しい状況であった。
BIMobject社と再度協議を重ねる中で、「CUG×BIMobjectブランド」として、通常のメーカーの公開方法に近い立場で情報を公開できることになった。
CUGサイトを通じれば、カテゴリ別・部品種類別での絞り込みは可能であり、さらにCUGの会員登録をしなくてもダウンロードが可能となる。
 
その環境構築をBIMobject社とともに進めた結果、2021年12月24日に正式公開の運びとなった(図-6)。
 
今後は、BIMobjectの無料会員登録をすれば、CUGサイトの埋め込まれたライブラリから、誰でも利用が可能となる(図-7、図-8)。
 
BIMobjectのプラットホームを利用した部品公開ができたことにより、ダウンロードした日時やダウンロード数のデータが分析できる。
なお、CUGは幅広いユーザーに利用してもらうため、個人情報に該当するユーザー名などは、CUG側では管理できない仕様とし、サイトの運用をBIMobjectとともに行っていく。
どのような部品を皆が好んで利用しているのか、またどんな部品を欲しているのかなど、利用者と提供者の間において利用履歴を活用した意思疎通も図ることができそうである。
ぜひ、CUGのフォーラムで意思疎通を図ってもらいたい。
 
現在われわれCUGの3D部門活動有志メンバーだけで今後の部品を増やしていくことは難しい状況でもあるため、ぜひこの活動に参画し、一緒に部品を増やし、また、利用しやすい環境を構築するために手伝ってもらえる方々を募集している。
また部品についても、こんな部品が欲しいなどの声も併せて募集している。
 
国土交通省をはじめ行政機関には、部品という単純なものを整備するのではなく、その活用や運用を含めた対応を実施していただき、われわれCUGのメンバーは、自身も含めて土木技術者が「簡単・便利・使いやすい」ものを提供することに主眼を置きながら、今回のような世界的に展開している関係者との協調体制を構築し、土木技術者が土木技術者のために必要な環境を整備していくために力を発揮していきたいと考えている。
 
本件への対応に関して、問い合わせがある方はサブリーダである加藤氏もしくは小島氏に連絡いただきたい(図-9)。

 
 

※活動参加者一覧
3D部品WG(継承略)
リーダ:杉浦伸哉(大林組)
サブリーダ:加藤 俊(ヒロセ)
サブリーダ:小島文寛(東急建設)
メンバー:長谷川充(水都環境)
     石川信恵(水都環境)
     石倉博司(水都環境)
     新 良子(CTC)
     田中和恵(CUG)
     後藤直美(大林組)
     糸田川由美(東急建設)
     林 美幸(ティーネットジャパン)
     山村洋平(ソフトバンク)
     椎葉 航(EARTHBRAIN)

パラメトリックモデルの考え方(素案)

図-6 CUGサイトにおけるBIMobject基盤を使った公開イメージ


部品一覧表示内容

図-7 部品一覧表示内容


部品詳細情報表示内容

図-8 部品詳細情報表示内容


連絡先

図-9 連絡先


 

 

CUG 3次元部品WGメンバー
代表 杉浦 伸哉
CUG 3次元部品WGメンバー 代表 杉浦 伸哉


 
 
【出典】


建設ITガイド 2022
特集1 建設DX、BIM/CIM
建設ITガイド_2022年


 

最終更新日:2023-07-14

 

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