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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > BIM > 施工BIMのワークフローとロードマップ

はじめに

一般社団法人日本建設業連合会(以下、日建連)のBIM部会は、前身のBIM専門部会時代から『施工BIMのスタイル』シリーズの発刊などを通じて施工BIMに関する情報の公開を進め、基盤づくりの一つを担ってきた。
 
2021年3月には、建築生産プロセス内でBIMモデルを活用する業務の進め方(以下、ワークフロー)やBIM部会が考えるロードマップに着目した『施工BIMのスタイル施工段階におけるBIMのワークフローに関する手引き2020』(※1)(以下、『スタイル2020』)を発表し、施工BIMに関する最新情報を公開した(図-1)。
本文ではBIMの動向や基本的な考え方などを網羅しており、施工BIMの教科書として活用いただくことも想定している。
 
本稿では『スタイル2020』で取り上げた項目の中から施工BIMのワークフローの考え方と施工BIMのロードマップの概要を紹介することで、今後の施工BIMの方向性を考えたい。

施工BIMのスタイル2020



 

ワークフローの必要性

BIMの基盤づくりは3分野に整理できる。
一つはBIMモデルの作成を標準化する分野、もう一つはBIMを活用するワークフローを標準化する分野、そして最後は標準化された業務を展開する人材を育成する分野である。
これら3分野は密接なつながりがあり、どれひとつ欠けてはいけない。
 
BIMを単に可視化させる目的の場合では、ワークフローをそれほど意識しなくてもよいが、実際の生産プロセス内で専門工事会社とデータ連携して施工図・製作図の調整業務を効率化する「BIMモデル合意」などに取り組むと、いやが上にもワークフローを意識した計画立案が必要不可欠となる。
 
ワークフローの確立は、言うことは簡単だが、実現を目指そうとすると案外難しい。
工事内容などに合わせた目的設定や体制構築などを決めるスタート地点から、想定した最終成果を享受するゴール地点までを、どのコースを選択してどのような技を繰り出すのかを決めるのである。
コースの選択には、綿密な計画と不測事態における判断力が必要だ。
そのため、BIMの取り組みのハードルがたちまち上がってしまい、推進のスピード感や享受する成果が滞る場面も多くなるだろう。
 
現在の施工BIMはこの壁を乗り越える時期にきているのではないか。
『スタイル2020』の執筆では、施工BIMのワークフローを再検討することから着手したのは、このような背景がある。

 
 

ワークフローの考え方

施工BIM全体のワークフローは、工事工程とBIM実施作業工程の関係性を理解し、計画することから始まる。
『スタイル2020』では「施工BIM取組み内容・実施作業工程」のイメージを共有するために、施工BIMの活用目的を以下に示す7項目に分類し、仮想の工事工程にプロットを試みた(図-2)。
 
1. 事前準備
2. 施工計画BIM
3. 施工図BIM
4. 製作図BIM
5. 総合図・プロットBIM
6. ICT建築土工
7. 周辺技術(3D計測、xR)
 
プロットした活用目的は、さらに細分化して17パターンのワークフローとして具体的に解説をしている。
その中から鉄骨関連の製作図BIMのワークフローを示す(図-3)。
ポイントは一般図の作成段階で鉄骨専用CADを使用し、設備専門工事会社や外装仕上材、ACW、鉄骨階段、エレベーターなどから受領したBIMモデルを統合、または重ね合わせることで、設備スリーブや各専門工事会社の施工図・製作図の整合調整を完了させるワークフローとした。

施工BIMの目的別ワークフロー


製作図BIMのワークフロー



 

ロードマップが示す将来像

『スタイル2020』の冒頭には図-4に示すBIM部会が考える「施工BIMのロードマップ」を3分野(①施工計画、②施工管理、③啓蒙活動)に分けて掲載し、総合建設会社と専門工事会社の視点からそれぞれの将来像を示した。

施工BIMのロードマップ


①施工計画分野の取り組み

『スタイル2014』において「BIMモデル合意」の手法が提示されたことにより、製作図の調整業務は効率的になってきた。
しかし、承認・承諾行為がいまだ図面であるため、調整作業の途中から最新情報の更新はBIMモデルではなく図面になってしまう傾向が見られる。
これではBIMによる正しい生産情報が流通しなくなるため、デジタル化された生産情報の価値を見つけにくい。
そのため、正しく作成されたBIMモデルの座標情報や属性情報を活用して、図面を補助的に運用する「BIMモデル承認」の検討を元請け側が主に図面作成している躯体図から検討を開始する(※2)。
 
一方、元請けと専門工事会社間でデータ連携をしてお互いメリットを享受する視点を忘れてはいけない。
専門工事会社は元請けにBIMモデルのデータを提供するだけの受け身では労力を費やす割に効果は出にくい。
正しいBIMモデルが流通する時代が来る前に、例えば属性情報を製造につなげる取り組みなどを準備する時期にきていると言えよう。
「BIMモデル承認」の取り組みは、施工側だけでなく設計側の参画も必要不可欠ではあるが、まずは施工側から取り組みの可能性を考え始めた意義は大きい。

②施工管理分野の取り組み

施工BIMの適用範囲を拡大する上で取りこぼしてはいけない視点である。
施工BIMは工務部門(図面や計画)を中心として推進が進んだため、工事部門(施工管理)が現場のフィールドでBIMを活用する事例はいまだ少ないと思われる。
そのためBIMの属性情報を工程管理や品質管理などのソフトウエアと連携して活用することも視野に入れておきたい。
工事現場でのBIMの活用は、携帯情報端末でBIMモデルを閲覧して、情報共有することから始まる場面が多いが、所長から若手の技術者までの立場により活用したい目的が異なる。
BIM部会では工事現場の役職に合わせた活用方法の体系化も進める予定だ。

③啓蒙活動の取り組み

日建連BIMセミナーや会員企業における動向調査、BIM事例発表会などを通じてBIMの周知活動を進め、建設業界として人材教育や育成の一端を担う計画である。
本年度は6月30日に『スタイル2020』を解説するWEBセミナーを開催し、日建連会員企業内外から493名が受講し、参加者の約9割がセミナー内容に満足をしていただいた。
参加者からは事例を知りたい、などの意見が寄せられており、次回以降の企画の参考にさせていただき、実務に近いBIMに関する情報を引き続き発信する予定である。

 
 

おわりに

本稿では『スタイル2020』で解説した施工BIMのワークフローとロードマップの一部を紹介した。
詳細な内容は『スタイル2020』をぜひご一読いただければ幸いである。
施工BIMの取り組みが多様化するにともない、ますます実務での活用に準拠したBIMモデルの作成手順や作業のワークフローを整備することが急務となってきた。
今回、建築業界として初めて施工BIMの活用目的別にワークフローの体系化を試みたが、検討作業は緒に就いたばかりだ。
正しいBIMモデルの情報が当たり前に流通する先には、データを活用した自動化やロボット分野との連携が視野に入ってくるだろう。
 
今後は施工BIMに関する情報発信に加え、設計施工一貫発注における設計BIMから維持管理BIMまでを包含したワークフローやロードマップについても検討を進め、情報を開示する予定である。

 
 


(※1)日建連BIM部会のホームページにおいて入手方法を案内している(有償配布)。
https://www.nikkenren.com/kenchiku/bim/zuhan.html
(※2)BIMモデル承認の検討プロセスは活動成果として、日建連BIM部会のホームページにおいて公開している(無償)。
https://www.nikkenren.com/kenchiku/bim/pdf/report_bmsswg_202103.pdf
 
 
 

 

国土交通省 大臣官房技術調査課 工事監視官
栗原 和彦

 
 
【出典】


建設ITガイド 2022
特集2 建築BIM
建設ITガイド_2022年


 

最終更新日:2023-07-14

 

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