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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > BIM > 地方における建設DXの実現を目指して -地域のネットワークを活用したBIM活用への取り組み-

はじめに

ブレンスタッフは、山形県鶴岡市を拠点とする総合設計会社として、30年にわたり活動を続けてきました。
建設業界の人材不足が深刻化する中、地方においても従来の建築プロセスやビジネスモデルを変革し、建設DXを実現することが重要であると考えます。
 
私たちは、建設DXに不可欠なBIMをいち早く導入することでの地域のネットワークを生かす協働モデルを推進してまいりました。
これまでの弊社の取り組みと、地方におけるBIM活用推進についてご紹介します。

 
 

BIMの導入と社内体制

2015年に内閣府の地方創生事業「先端的建築設計(BIM)拠点化事業」として山形県庄内町とともにBIMを導入しました。
少子高齢化の急速な進展に危機感を持つ庄内町と、建設業界の高齢化による担い手不足や技術の継承、建設コストの増加などの課題解決に向けたアプローチとして、建築プロセスにおけるBIMの早期普及を目指す弊社提案がつながり、実現したものです。
 
BIM導入初期は、外部講師を社内に招いての講習会や外部の研修会に参加する機会を多く設けました。
また、当初よりIT・デジタルに関するスキルを有する人材は欠かせない専門分野と考えていたため、BIM導入とともにIT人材を採用配置しました。
 
現在は、BIMソフトウエア操作の基礎的なトレーニングをはじめ、社内アプリケーションの開発から社外向けのトレーニング(RevitおよびDynamoforRevit)まで可能になり、新人およびBIM初級者の研修を社内で実施しています。
OFF-JTで学んだことを実案件業務のOJTで実践し、大手ゼネコンからのBIMモデリング業務やBIMを活用するパイロット事業への参加により経験を積んできました。
 
最近では大手建築事業者のBIMモデリング業務やアプリケーションを活用する機会が増加し、BIMスキルのさらなる向上とともに活用場面が拡大する一方、弊社設計案件でのBIM活用による課題の把握や解決に至る経緯そのものが大きな財産になっています(図-1)。

Revit研修風景

図-1 Revit研修風景



 

BIMの活用

導入初期から現在に至るまで、弊社設計案件でBIMを活用し、試行錯誤しながらステップアップしてきました。
導入初期は設計終了後にBIMモデルを作成することで施工事業者との合意形成の円滑化を進め、次のステップとして、施工前に専門工事事業者を含む工事事業者からの情報をBIMモデルに反映し、施工工程での設計BIMモデルの活用方法に関する課題検証を行いました。
また、工事監理業務における施工事業者とのBIM活用など、従来からの業界慣習や設計事務所の役割に捉われることなく、施工から維持管理までをも見通したBIM活用に取り組んでいます。
 
山形県遊佐町役場新庁舎建設事業では、実施設計段階からBIMを導入し、遊佐町全職員を対象に新庁舎BIMモデルのVR体験会を行いました。
将来を担う若手職員の意見を取り入れることは町の設計指針であったため、BIM活用により円滑な意思疎通と合意形成ができたことを大きく評価していただきました。
施工工程においては設計者・工事監理者として、意匠・構造・設備の干渉チェックや納まりの確認にBIMを活用し効率化を図ることができました。
 
社内においても、双方向・共有の考えが根本にあるBIMを活用することにより、意匠・構造エンジニアのコミュニケーションが円滑化し、設計品質の向上につながっています(図-2、3)。

打合せ風景

図-2 打合せ風景

Revit研修風景

図-3 遊佐町役場新庁舎



 

庄内BIM研究会の発足

BIMへの理解を深め、BIMを円滑に導入するための環境整備と情報共有を目的として、2020年2月に庄内BIM研究会を発足しました。
 
山形県庄内地方の有力総合建設事業者四社と弊社が発起人となり、設計事務所、総合建設業、専門事業者69社が参加しています。
地方におけるBIMの普及を図るため、研究会での情報共有、パイロット事業の実施、地方公共団体へのアプローチにより課題を顕在化し、その解決に向けて活動を行っています。
 
国土交通省所管のBIM推進会議によるBIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業において、令和2年度連携事業「BIMモデリング活用による設計・施工業務効率化の検証」、令和3年度中小事業者BIM試行型「庄内BIM研究会におけるBIM活性化に向けたケースメソッドとワークフローへのアプローチ」が採択されました。
 
令和2年度の事業では、BIMモデルからの二次元施工図作成において、モデリングを効率的に進めるための社内ルールと一定以上のモデリング技術を整えることで、二次元設計図から二次元施工図を作成する従来型業務と比較して、40%程度の工数削減が可能な試算結果を報告しております。
 
令和3年度の事業では、地方の多くの建築プロジェクトにおいて、地方ゼネコンがBIMモデルデータを利活用することが、専門工事業者を含む業界全体のBIM活用活性化の起点であり、地方のBIM活用促進に必須の条件と設定の上、山形県鶴岡市が発注する設計案件「鶴岡市先端研究産業支援センター増築工事」の設計BIMモデルを土台として、地方の施工事業者が施工で活用しやすいBIMモデルとワークフロー構築の検討を進めています。
中規模以下の建築プロジェクトにおけるBIMモデルデータの活用方法の例を示すことにより、他の地域にも共通する問題・課題に対してのアプローチを提言したいと考えています(図-4~6)。

庄内BIM研究会設立総会

図-4 庄内BIM研究会設立総会



 

令和3年度中小事業者BIM 試行型(概要)

図-5 令和3年度中小事業者BIM 試行型(概要)

令和3年度中小事業者BIM 試行型(実施手順)

図-6 令和3年度中小事業者BIM 試行型(実施手順)



 

おわりに

建築業界では分業化が進み、それぞれが枠組みの中で業務を行っています。
専門領域を極め、合理的である一方、専門外の業務に関する知識や建築関係者とのコミュニケーションの欠如を招くリスクがあります。
お客さまにとって最良の建物を建てるためには、これまでの枠組みを超え、従来の建築プロセスを変革する必要があると考えます。
また、事業主をはじめとする建築関係者の間に立ってマネジメントを行うことにより、BIMを活用したフロントローディングに必要な情報を適切な時期に共有し、生産性向上とともに次世代を担う若者たちが魅力を持ち続ける業界づくりにつながる建築プロセス変革を目標にしております。
 
BIMに関わる人材育成や従来のビジネスモデルの変革は容易なことではありませんが、一企業では難しくても、関係する多くの企業がそれぞれ知恵を出し合えば、不可能ではないと思います。
地方の中小事業者こそ、建設DXに取り組む必要があります。
今後も地域の建設関係者と連携してBIM活用を推進し、地方における建設DXの実現を目指してまいります。

 

 

ブレンスタッフ株式会社 代表取締役
仲川 昌夫

 
 
【出典】


建設ITガイド 2022
特集2 建築BIM
建設ITガイド_2022年


 

最終更新日:2023-07-14

 

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