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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > BIM/CIM > 東北地方整備局における インフラDX推進の取り組み

はじめに

建設業は「地域の守り手」、「地域振興の担い手」として重要な役割を担う基幹産業であるが、東北地方においては進行著しい少子高齢化や、冬季の厳しい自然環境などから担い手の確保が大きな課題となっている。
 
本稿では、東北地方整備局において官民が連携して取り組んでいる「東北復興『働き方・人づくり改革プロジェクト』」など、建設業を取り巻くさまざまな課題の解決に向けた取り組みを紹介する。
 
 

東北地方整備局におけるインフラDX推進に向けた取り組み

①東北復興「働き方・人づくり改革プロジェクト」

東北地方整備局では、2016年度から「働き方改革の推進」、「生産性向上の推進」、「担い手の育成・確保」の三本柱からなる「東北復興『働き方・人づくり改革プロジェクト』」を官民連携で取り組んでいる(図-1)。
 
取り組みの事例としては、2022 年4月からi-Constructionの推進を後押しする「ICTサポーター制度」による支援を開始した。
デジタル技術への豊富な経験や知見、ノウハウを持つさまざまな分野の61社を「ICTサポーター」として認定し、新たに導入を考えている企業などが指導やアドバイスを受けられる仕組みで、約6カ月での活用が260 件程度と地元企業の関心の高さをあらためて感じた。
さらなる本制度の積極的な活用を期待しているところである(図-2)。

図-1 東北復興「働き方・人づくり改革プロジェクト」
図-2 「ICTサポーター制度」の概要
図-2 「ICTサポーター制度」の概要

 
また、ICT施工導入の投資メリットを地元中小規模の経営者クラスの方に直接理解いただくための「地元経営者向けセミナー」(写真-1)や、次世代を担う若手技術者の育成を図るため、中・高・大学生に対して「i-Construction 新技術体験学習会」(写真-2)を、官民連携により各県で展開中である。

写真-1 地元経営者向けセミナー
写真-1 地元経営者向けセミナー
写真-2 i-Construction 新技術体験学習会(中学生)
写真-2 i-Construction 新技術体験学習会(中学生)

 

②インフラDXの推進体制

2021 年11月には、整備局全体が一体で取り組む「東北地方整備局インフラDX推進本部」を設置した(図-3)。
DXの推進に当たっては、現状の働き方における3つの課題(既成概念・場所・ペーパー)に着目し、課題解決に向けて「離れた空間をデジタルで共有」、「誰でもすぐに現場で活躍」、「オフィスに現場を再現」、「ワンチームでDXを推進」の4つの挑戦テーマ(図-4)を設定して、データとデジタル技術を活用した社会資本整備や公共サービスの提供、除雪作業の効率化に向けた技術開発、人材育成や担い手確保などさまざまな取り組みにチャレンジしているところである。

図-3 東北地方整備局DX推進の体制
図-3 東北地方整備局DX推進の体制
図-4 DX推進の4つの挑戦テーマ
図-4 DX推進の4つの挑戦テーマ

 

③3次元データの利活用(BIM/CIM)について

i-Constructionモデル事務所である鳴 瀬川総合開発工事事務所では、3次元情報活用モデル事業である「鳴瀬川総合開発事業(宮城県加美郡加美町)」において、大規模かつ長期にわたるダム事業の特性を踏まえ、調査・設計段階からBIM/CIMモデルを活用した事業監理に取り組んでいる。
 
GIS情報共有基盤ベースの流域モデル(流域全体の地形・地質モデル)上に、地すべりモデル、原石山・残土受入地モデル、構造物モデルなどのBIM/CIMモデルを統合し、情報共有プラットフォームを構築して、事業監理をしていくこととしている(図-5)。
また、2021 年には、BIM/CIMモデル を用いた臨場感ある事業完成イメージを、スマートフォン端末でVR体験できる「QRコードを用いたVR」を作成し、調査・設計段階から対外的な事業説明や広報などで広く活用している(図-6)。
 
また、東北地方整備局では、独自の取り組みとして、2021 年度より3次元情報活用モデル事業を5事務所・5事業を追加し、 2022 年度にはさらに2事務所・3事業を追加し、管内で横断的な3次元データなどの利活用推進を図っているところである。

図-5 鳴瀬川総合開発事業プラットフォームのイメージ
図-5 鳴瀬川総合開発事業プラットフォームのイメージ
図-6 鳴瀬川総合開発事業の「QRコードを用いたVR」
図-6 鳴瀬川総合開発事業の「QRコードを用いたVR」

 

④インフラDX推進の環境整備などについて

2022 年度からは東北地域におけるDX 推進に向けた環境整備・研修内容の充実を図っていくとともに、県・市町村などの職員や民間企業の技術者に拡大していくこととしている。
 
具体的には、インフラDX推進に向けた人材育成を図るため、発注者(自治体含む)および受注者に対する3次元データ・デジタル技術の知識習得(研修・実習など)を目的とした「(仮)東北インフラDXセンター」を東北技術事務所に、またインフラDX推進の拠点として、高速通信網の整備とルーム内のWi-Fi化により、映像や3次元データなどの共有を効率化するとともに高い臨場感で業務遂行するなど、新たな働き方を先導し、3次元データの利活用やイノベーションの創出を推進することを目的とした「(仮)東北インフラDXルーム」を東北地方整備局に2022 年度に整備することとしている(図-7)。

図-7 (仮)東北インフラDXセンター・ルームの機能案(左)と、DXセンターの設備イメージ(右)1
図-7 (仮)東北インフラDXセンター・ルームの機能案(左)と、DXセンターの設備イメージ(右)2

図-7 (仮)東北インフラDXセンター・ルームの機能案(左)と、DXセンターの設備イメージ(右)
 
 

おわりに

建設業の新3K(給与がよい・休暇がとれる・希望がもてる)の実現に向けては、長きにわたって積み上げ築いてきた経験と技術にデジタルという新たな技術をいかに融合させていくかが鍵になると考えている。
 
東北地方整備局ではICT施工のさらなる普及・拡大やBIM/CIM(3次元データ化)原則適用に向けて、これまで述べた取り組みを着実に推進させながら、官民連携による担い手の育成・確保や次世代を担う若手技術者の育成にも取り組んでいく。
 
 

国土交通省 東北地方整備局 企画部

 
 
【出典】


建設ITガイド 2023
特集1 建設DX、BIM/CIM
建設ITガイド2023


 

最終更新日:2023-08-21

 

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