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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > BIM/CIM > 近畿地方整備局におけるBIM/CIMの取り組み-令和5年度BIM/CIM原則適用に向けた人材育成について

はじめに

国土交通省では、i-Constructionの取り組みを中核に、データとデジタル技術を活用したインフラ分野のDXの取り組みを進めています。
 
その一環として建設プロセス全体に携わる関係者間で、3次元モデルによるデータ連携を行うことにより、建設生産・管理システムにおける品質確保と受発注者双方の業務効率化・高度化を図るBIM/CIMに取り組んでおり、2023年度より小規模を除く全ての公共工事におけるBIM/CIMの原則適用の目標が設定されています。
 
BIM/CIMの原則適用に向けて、受発注者双方における環境整備の取り組みが進められているところです。
 
BIM/CIMを推進していくためには、環境整備と合わせて、データの重要性を理解し、デジタル技術を活用できる人材の育成が重要となります。
 
今回は近畿地方整備局におけるBIM/CIM活用に向けた人材育成の取り組みについて紹介します。
 
 

人材育成の取り組み

近畿地方整備局では2020 年に「近畿地方整備局インフラ DX 推進本部会議」を設置し、インフラ分野のDXの推進に取り組んでいます。
 
このうちインフラ分野のDXに関する人材育成としては人材育成支援部会を設置し、ICT・無人化施工などと合わせて BIM/CIMに関する各種研修や勉強会などの開催、情報発信を行い人材育成に努めています(図-1)。

図-1 近畿地方整備局インフラ DX推進本部会議の構成
図-1 近畿地方整備局インフラ DX推進本部会議の構成

 

BIM/CIM研修

BIM/CIMによる建設現場の生産性向上について理解を深めるとともに、3次元 CADソフトの基本操作、業務および工事での活用に関する知識を習得することを目的として2021年度から整備局職員、地方自治体職員を対象として実施し、2年間で約350名が研修を受講しています(写真-1)。
 
研修は後述する近畿インフラDX推進センターに設置している高性能PCを用いて 3次元CADソフトを操作し、実際に監督・検査・納品などの各場面での3次元モデルの活用方法を実習形式で習得しました(一部WEB講義も実施)。

写真-1 BIM CIM研修実施状況
写真-1 BIM CIM研修実施状況

 

BIM/CIM施工研修

BIM/CIM研修は整備局、地方自治体などの発注者を対象とした研修でしたが、来年度からのBIM/CIM原則適用に向けて、受注者側の人材育成も必要となることから、施工者、設計者、発注者を対象とした研修を今年度より新たに実施しました。
 
研修では設計段階で作成した設計成果をICT施工に活用するため、3次元モデルの編集方法を習得するとともに、施工、設計など各立場でのBIM/CIMの展望や課題について議論を行い認識の共有に取り組みました。
 

BIM/CIM説明会

BIM/CIM研修は実際の業務において BIM/CIMを活用する職員を対象に研修を実施していますが、2023年度からの原則実施に向けて、広く職員にBIM/CIMに関する取り組みを浸透させる必要があるため、BIM/CIMの施策概要や、3次元CADソフトの基本操作方法を講習する BIM/CIM説明会を開催しています。
昨年度は整備局や地方自治体の職員約 330名、今年度は整備局職員や発注者支援業務の受注者など約350名が聴講しています。
 

豊岡河川国道事務所 BIM/CIMに関する勉強会

i-Constructionモデル事務所となっている豊岡河川国道事務所ではBIM/CIMの普及を促進するため、2019年度より毎年、 BIM/CIMに関する勉強会を開催しています(写真-2)。

写真-2 勉強会開催状況
写真-2 勉強会開催状況

勉強会では事務所近隣の地方自治体職員や地元企業(但馬地方の建設業、測量設計業)を対象に豊岡河川国道事務所におけるBIM/CIM導入の実施事例や、3次元 CADソフト操作の実演、現場見学などを行っています。
 
 

情報発信の取り組み

近畿地方整備局インフラ分野のDXに関する取り組みを情報発信や体験による、整備局をはじめ産官学におけるBIM/CIM活用に向けた人材育成を目的として、インフラDXに関する各種施設を整備しています。
 
各施設とも、随時見学者を受け付けていますので、機会がありましたら、ぜひ体験してみてください。
 
また、シンポジウムや講演会などの機会において、BIM/CIMへの取り組みを発信しています。
 

近畿インフラDX推進センター

(所在地:枚方市山田池町11-1)
2021年4月1日に、インフラ分野のDXの推進に必要不可欠な官民の人材育成や最新技術の情報発信を行う施設として、近畿技術事務所内に近畿インフラDX推進センターを設置しました。
WEB会議ルームや建設機械のオペレーションルームと合わせて、3次元CADソフトを備えた高性能PCを配備した研修ルームなどの整備によりBIM/CIMに限らず、ICT施工の無人化施工に関する研修や、体験型の見学に対応しています(図-2)。

図-2 近畿インフラDX推進センターの概要
図-2 近畿インフラDX推進センターの概要

 

近畿地方整備局DXルーム

(所在地:大阪市中央区大手前3-1-41)
近畿地方整備局は昨年11月に新たに建設された大手前合同庁舎に移転しました。
大手前合同庁舎には来庁者がDXに触れていただけるDXルームを建設段階から設置し、VRや大型モニターを活用したDX体験を行っていただけます。
 

淀川大堰閘門インフォメーションセンター

(所在地:大阪市北区長柄東3-3-25)
淀川大堰では2025年の大阪・関西万博の開催に向けて、淀川での舟運を活用するため、淀川大堰閘門の整備を進めています。

淀川大堰閘門の整備では、厳しい工程や狭隘な現場条件に対して、工事工程監理の高度化や品質の向上を目指して、BIM/CIMを全面的に取り入れています(図-3)。

図-3 淀川大堰閘門の概要
図-3 淀川大堰閘門の概要

 
この取り組みを幅広く建設業界や建設系の学生などへ情報発信する場として、昨年12月、現地にインフォメーションセンターを設置しました。
 
インフォメーションセンターではAR技術を活用し、実際の施工現場と3次元モデルを合成(図-4)させることにより、3 次元モデルの活用方法を視覚的に体験いただけます。

図-4 淀川大堰閘門におけるAR技術の活用事例
図-4 淀川大堰閘門におけるAR技術の活用事例

 

インフラDXシンポジウム

昨年7月6日に開催されましたインフラ DXシンポジウム(日刊建設工業新聞社(、一社)近畿建設協会主催、近畿地方整備局後援)において、約750 名(オンライン参加含む)参加のもと、地域の建設業界の皆さまとBIM/CIM施工への挑戦について意見を交わし、近畿地方整備局における取り組みを紹介するとともに、BIM/CIM活用に向けた課題を共有しました(写真-3)。

写真-3 インフラDXシンポジウムの開催状況
写真-3 インフラDXシンポジウムの開催状況

 
 

おわりに

インフラ分野のDX は、2022 年度を「挑戦の年」に位置付け、官民で果敢な取り組みが進められています。
 
BIM/CIMに関しても、来年度からの原則適用に向けて、人材育成に限らず、産学官の各場面で環境整備の取り組みが進められています。
 
近畿地方整備局においても、今回紹介した人材育成の取り組み以外にも、管内の各事業におけるBIM/CIM活用推進や関連基準類の改定に向けた検討などに取り組んでいます。
 
引き続き、建設生産・管理システム全体の生産性向上のため、BIM/CIM活用に向けた取り組みを推進していきます。
 
 

国土交通省 近畿地方整備局 技術管理課

 
 
【出典】


建設ITガイド 2023
特集1 建設DX、BIM/CIM
建設ITガイド2023


 

最終更新日:2023-08-28

 

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