はじめに
国土交通省では令和5年度よりBIM/CIMの原則適用(表-1)を進めており、国土交通省職員はもちろんのこと国土交通省の業務や工事を受注する民間企業も含めて、BIM/CIMを活用できるような環境整備を進めている。
BIM/CIMを活用するには測量・調査、設計段階から3次元モデルを導入することにより、その後の工事現場での施工、維持管理・更新の各段階においても3次元モデルを連携・発展させ、事業全体にわたって関係者の情報共有を図ることが可能となる。
i-Constructionモデル事務所においては、建設生産・管理システム全体の効率化に向け、BIM/CIMやi-Constructionの取り組みについて、トップランナーとして活用推進や普及拡大を図っているところである。
また令和5年3月に中部地方整備局の各部、建設業界をはじめ、関係機関が協調してインフラDXの取り組みを進められるよう、「中部インフラDX行動計画2023」を作成した。
中部地方整備局のi-Constructionモデル事務所の取り組み
中部地方整備局のi-Constructionモデル事務所は現在、新丸山ダム工事事務所、設楽ダム工事事務所、紀勢国道事務所の 3事務所であり、それぞれのBIM/CIMの活用状況を紹介していく。
新丸山ダムでは、関係者協議や広報で、地形データと堤体データ、機械設備データ、地質データなどを重ね合わせた統合モデルを活用している。
これを基に、ダム本体工事での自律施工も検討中である。
また、地質モデル(図-1)は、鉱脈硬線帯などを含めた新モデルを構築したことで、土捨て場や、本体工事に必要な骨材の選定などに活用範囲を広げた。
その他、ドローンで撮影した写真を組み合わせて3Dモデルを作成し、バーチャル見学ツアーも実施している。
設楽ダムでも、ダム本体と付替道路などで統合モデルを作成している。
対外向けの事業説明や、設計照査時の関連構造物との干渉確認などに活用している。
また、ダム事業の広報手法として、過去・現在・未来を映し出すプロジェクトマッピング(図-2)も作成した。
紀勢国道事務所では、国道42号熊野道路の整備で3次元データを活用している。
クリティカルパスとなる事業区間で、施工ステップの妥当性や用地内施工の確認、工事用道路の検討などを実施した。
施工ステップや事業スケジュールの照査(図-3)を行うことで、手戻りが生じない、効率的な事業執行を進めている。
中部インフラDX行動計画の策定
中部地方整備局では、これまでドローン測量やICT建機の活用など、さまざまなデジタル技術を積極的に導入・活用し、建設現場の安全確保、生産性の向上などに努めてきた。
しかし、自然災害の激甚化・頻発化、デジタル技術の急速な進展など社会経済情勢は大きく変化している。
このような状況の変化に応じたインフラ整備や公共サービスの提供を行うとともに、建設現場の生産性の向上、働き方改革を進めるためには、インフラ分野のDXの取り組みを一層加速する必要がある。
このため、中部地方整備局の各部、建設業界をはじめ、関係機関が協調して取り組みを進められるよう、①DX推進の背景、②地域住民、建設業界、職員、それぞれの観点からの目指す姿(表-2)、③おおむね5年間の主な取り組みを「中部インフラDX行動計画2023」(表-3)として整理し公表している。
おわりに
令和5年度よりBIM/CIMの原則適用となり、3次元情報の利活用ができる人材の育成は急務である。
建設現場の生産性向上を図るためには、i-Constractionの取り組みを国の直轄工事以外にも拡大していくことが重要である。
地方公共団体や地域企業の取り組みのサポートや、職員・作業員への研修も行い連携しながら取り組みを進めていく。
また、中部インフラDX行動計画を通して、最新のDXツールを活用して時代の変化、社会のニーズに応じた行政サービスを提供し、地域住民のQOLが高い魅力的な地域作りを目指す。
加えて、社会の基盤を支える重要な役割を担う建設業が持続的に発展できるよう若者や女性にも魅力的な職場環境とし、労働生産性の向上、職員の仕事とプライベートが充実するような働き方改革を進めていく。
【出典】
建設ITガイド 2024
特集1 建設DX、BIM/CIM

最終更新日:2024-07-08