はじめに
国土交通省では、建設現場の生産性向上を図るi-Constructionの取り組みの一つの施策として、BIM/CIM活用を推進しており、令和5年度から発注される直轄土木業務・工事をBIM/CIM原則適用の対象としております。
BIM/CIM原則適用の実施に当たっては「活用目的に応じた3次元モデルの作成・活用」と「発注者によるデータ引き継ぎ」が示されており、発注者はBIM/CIMの目的である、データの活用・共有を行い、受発注者の生産性の向上を念頭に置きBIM/CIMを活用する必要があります。
今回は九州地方整備局におけるBIM/CIM活用に向けた取り組み、および人材育成について紹介します。
九州地方整備局における BIM/CIMの取り組み
(1)九州地方CIM導入検討会
九州地方整備局独自の取り組みとして、 CIM導入の促進、生産性の向上、働き方改革の推進を目指すため、2013年7月に「九州地方CIM導入検討会」(委員長:小林一郎熊本大学名誉教授)を設置し、河川、ダム、道路、砂防の4分科会で、CIM活用に向けた課題、対応策の検討を各事務所と連携しながらCIM活用の推進に取り組んでおります。
各分科会の令和5年度の検討概要は以下のとおりです。
1)河川分科会
河川管理の効率化・高度化を目的として、流域や管理区間の三次元地形情報や河川に関わる各種情報をGISなどで可視化して提供し、各種の河川・河道データを取り扱う「三次元河川管内図」の整備を行い、より使い勝手がよいシステム構築の検討を進めています(図-1)。
2 )ダム分科会
ダムCIMを推進するため、調査・測量・計画、設計、施工、試験湛水、管理と事業の進捗ごとに段階分けを行い、各段階における用途や効果を達成するために必要なモデルの内容や、モデルに取得・蓄積するデータを選定の上、モデルを作成することで、情報把握の迅速化や施行の高度化を図るなど、業務の効率化を目指したダムCIM活用計画について検討を実施しています(図-2)。
3)道路分科会
道路事業における各業務・工事にて BIM/CIMの活用に取り組んでいますが、さらなる活用を推進するため、BIM/CIM活用に関する好事例や最新の情報を収集し、勉強会を通じて活用事例などの水平展開を行うとともに、職員のCIM活用の意識向上を図るなど、人材育成の強化を進めています(図-3)。
4)砂防分科会
砂防事業において、砂防CIMの基本フレームとして大規模(水系を広域に把握)・中規模(渓流域)・小規模(構造部)の3段階を設定し、各規模に応じた設計や地元説明会などへの活用に向けた検討を進めています。
なお、2023年度は大規模フレームにおいて河川分科会で作成される流域全体の三次元管内図と連携してモデルを作成するための砂防事業における基礎情報の整理を開始します。
また、中・小規模フレームでは、引き続きCIMデータを用いた除石工事の実施を行い、課題などの意見を抽出し、砂防CIMのさらなる活用の検討を進めます(図-4)。
(2)BIM/CIM人材育成の取り組み
BIM/CIM原則適用に関する実施方針では、業務・工事の発注に際し、BIM/CIMの活用についてリクワイアメント(要求事項)から、発注者が活用内容を特記仕様書へ明確に記載することとなり内容が大きく改定されました。
そのため、発注者として後工程(設計であれば工事など)を考慮した適切な発注を実施できるよう、令和5年3月に新たな実施方針について説明会を開催しております。
また、今後BIM/CIMを活用していくためには、発注者自らがBIM/CIMを体験し、その効果を理解することが重要です。
そのため、九州地方整備局の職員(一部地方自治体職員も含む)を対象に研修を行い、 BIM/CIM未経験の職員や基礎操作の復習を希望する職員などに対して、BIM/CIMの施策概要や、発注者としてどのようなBIM/CIMデータが納品されて、それをどのように確認・活用できるかを体験することでBIM/CIMの基礎を理解し、整備局の将来を担う職員の育成に努めています。
おわりに
生産性向上は建設業界の長年の課題であり、その背景には、一品生産・屋外生産で労働集約型生産の構造的問題があり、さらには長時間労働や高齢化による人手不足問題などがあります。
そのため、九州地方整備局では、これら諸課題の解決の一つの施策としてBIM/CIM活用・普及の推進に取り組んでいきます。
また、建設分野の生産性向上に向けて、従来のi-Constructionによる働き方改革をさらに拡大する必要性が生じており、九州の地域特性に特化したDXを実現するための行動指針などとして「九州インフラDXアクションプラン」を令和4年度に策定し、メタバースの活用や災害調査のデジタル化、UAVやAIの利活用などのデジタル技術を積極的に活用し、さまざまな分野で産・学と連携した改革を目指し、今後も一層推進していきます。
【出典】
建設ITガイド 2024
特集1 建設DX、BIM/CIM

最終更新日:2024-07-08