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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 土木施工単価 > 利根大堰の大規模地震対策の実施について

1. 大規模地震対策事業の背景

平成16年8月,政府の地震調査委員会は,今後30年以内にマグニチュード7クラスの大地震が南関東で発生する確率は「70%程度」と公表(さらに平成17年9月,中央防災会議は「首都直下地震対策大綱」を策定)するなど,近い将来,南関東地域において大規模地震の発生が危惧されている状況にあります。
 
利根導水路施設は,中央防災会議首都圏直下地震対策専門調査会で示された「予防対策用震度分布」では,主に震度6強の範囲に位置しています。
 

【図−1 利根導水路施設と震度分布】




 
 

2. 利根導水路大規模地震対策事業とは

利根導水路施設は,東京都,埼玉県,群馬県に1,200万人の水道用水,2万3,000ha以上の農業用水の他,工業用水・浄化用水を取水・通水しており,首都圏の水のライフラインとして非常に重要な施設です。
 
しかし,近年,各地で多くの大規模地震が発生しており,関東でも首都圏直下型の大規模地震等の発生が高い確率で危惧されています。仮に利根導水路施設が被災し,取水・通水が不可能となった場合,その復旧には長期間を要し,用水の安定供給に多大な支障が生じることが想定されることから,利根導水路施設において大規模地震の影響を検討した結果,複数の施設で対策が必要と判断されたため,平成26年度より利根導水路大規模地震対策事業に着手しています。
 

【図−2 大規模地震対策事業の概要】




 
 

3. 利根大堰の耐震補強対策について

利根導水路施設の大規模地震対策を必要とする施設は,大きく区分して「利根大堰施設」「埼玉合口二期施設」「秋ヶ瀬取水堰施設」「朝霞水路施設」の四つの施設となっています。
 
今回は,代表的施設である利根大堰の耐震補強計画(土木工事)の概要を紹介します。
 

(1)利根大堰の役割

利根大堰(利根川取水施設)は,利根川河口から154km地点に位置し,ゲート(12門),取水口,樋管,沈砂池等からなっています。利根大堰では,用水を安定して取水するためにゲートを操作して堰上流の利根川の水位を一定になるようにしています。
 
取水口から取水された水は,農業用水,都市用水(水道用水,工業用水),浄化用水として,見沼代用水路,埼玉用水路,武蔵水路,邑楽用水路および行田水路に分水されます。
 

【写真−1 利根大堰施設】




 
 

(2)耐震補強計画(第1期)

耐震対策の第1期としてゲート構造が他と異なる左岸側(群馬県側)の12 号,13号堰柱および転倒式の洪水吐ゲート2門の耐震補強工事を先行施工することにしました。
 
この堰柱2本は,他の堰柱と違い巻き上げゲートではなく門柱や巻き上げ室がないため,耐震補強範囲や補強工法がその他の堰柱と異なること,また,大堰左岸側は右岸側に比べて河床高が高く湛水深が浅いので,大型土のう2段での仮締切仮設として比較的容易に施工が可能であると判断されたことから,他の11本の堰柱補強に先行して平成27年度工事として施工したものです。
 

【写真−2 仮締切工(大型土のう)】




 
 
①堰柱補強
12 号,13号堰柱は耐震照査の結果,堰軸方向の曲げおよびせん断破壊に対し耐震性能の確保が必要となりました。
 
補強工法の比較検討では, この2本の堰柱区間は転倒式の洪水吐ゲートとなっており,堰柱に巻き上げゲートの戸当たり構造がなく,堰柱を一体的に巻き込む対策工法が採用できるため,最も経済的で一般的な補強工法であるRC巻き立て工法(t=250mm)により施工しました。
 

【写真−3 堰柱RC巻き立て補強工】




 

【写真−4 第1期の補強工事完成(全景)】




 
 

(3)耐震補強計画(第2 期)

巻き上げゲート方式である堰柱および門柱は,耐震照査の結果,堰柱基部に曲げ破壊(一部堰柱はせん断破壊あり),門柱部にはせん断破壊に対して補強対策が必要となりました。
 
①堰柱補強
堰柱基部の耐震補強は,流下断面能力に支障を与えないこと,ゲート戸当たり構造の堰柱補強であることなどを総合的に検討して,ポリマーセメントモルタル工法による躯体補強を計画しました。
 
ポリマーセメントモルタル工法は,薄い増打ちで補強強度を確保できること,また,その補強増厚分を既設構造物面からはつり施工することで,堰柱本体の実質の増厚を回避することで流下能力に影響を与えない設計計画としました。
 
利根大堰の堰柱補強では,はつりおよびポリマーセメントモルタル工法の施工厚はt=60mmで計画しています。
 
 
②門柱補強
門柱部補強は,機構の標準案としてあと施工せん断補強筋工法の一つである「ポストヘッドバー工法」を採用していますが,施工業者には同等以上の補強効果を得られる別の工法も選定できることとしています。
 

【図−3 大堰耐震補強工法の概要】




 
 

4. 今後の耐震補強工事(第2期)の実施予定

第2期の補強工事では,1〜11号堰柱および門柱補強,10門のゲート機械設備の更新等および巻き上げ室建屋(11棟)の更新を,平成28年度から事業工期末である平成33年度までに実施する予定としています。
 
なお,第2期の工事発注計画については,全体施工としては締切計画のブロック計画から3 〜 4門/1ブロックとして,1ブロックは土木,機械および建築の施工量から2カ年施工が必要となることから,10門の耐震補強は3ブロックの6カ年施工となります。
 
補強工事はブロックを分割して工事契約することとして,図− 4に示す分割施工−1の施工範囲について平成28年11月から平成30年5月までの河川内工事としてまずは着手していく予定です。
 

【図−4 利根大堰 施工計画概要】




 
 
また,分割施工する残区間の平成30年11月以降の施工計画については,現在検討中です。
 
 

5. おわりに

利根大堰の大規模地震対策の工事施工はまだ始まったばかりです。
 
非出水期の河川内工事とはいえ大河川利根川を仮締切して工事を実施することから,安全対策,水質事故対策等には万全を期して事業進捗を図って参ります。
 
また,首都圏の水のライフラインを支える利根導水路施設について,用水の安定供給のため大規模地震対策への事業効果が早期発現できるよう全力を尽くす所存です。
 
 

独立行政法人水資源機構
利根導水総合事業所

 
 
 
【出典】


土木施工単価2016秋号

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

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