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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 環境と共生する技術 > 環境配慮型商品の認定制度「エコマーク」と土木・建築分野

 

はじめに

環境配慮型商品を第三者が認定する「エコマーク」制度は,公益財団法人日本環境協会が1989年に開始し,今年で30年を迎える。当初は一般消費者に向けた環境ラベルとして開始されたが,2001年に施行された「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」を契機に,公的機関や組織のグリーン調達にも広く活用されるようになっている。一方,近年では国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」やISO20400「持続可能な調達に関する手引」などにも見られるように,製品の環境面だけでなく社会面にも配慮した持続可能な調達が国内外で注目されつつある。本稿では,土木・建築分野におけるエコマークの対象商品について紹介するとともに,グリーン調達を取り巻く最近の動向とエコマークとの関係についても触れる。
 
 

1. エコマーク制度の概要

1-1 運営団体について

公益財団法人日本環境協会は1977年に設立され,環境保全に対する国民の理解の増進と国民各層の環境保全活動への参加促進を目的に,「こどもエコクラブ」全国事務局などの環境教育・環境学習,エコマークなどのグリーンマーケット実現,土壌環境保全対策や地球温暖化対策事業といった重点活動分野を中心に事業を実施している。
 
 

1-2 エコマークとは

エコマーク制度は,国際標準化機構の規格ISO14020(環境ラベル及び宣言・一般原則)およびISO14024(環境ラベル及び宣言・タイプⅠ環境ラベル表示・原則及び手続き)にのっとり運営されている。この制度は「自主的で多様な基準に基づいた,第三者の機関によってラベルの使用が認められる制度」とされており,エコマークは日本で唯一のタイプⅠ環境ラベルである。エコマークのデザイン(図-1)は,「私たちの手で地球を,環境を守ろう」という願いを込めて,「環境(Environment)」および「地球」(Earth)の頭文字「e」を表した人間の手が,地球をやさしくつつみ込んでいる姿を表している。
 

図-1 エコマーク




 
エコマーク制度の目的は,日常生活や事業活動に伴う環境への負荷の低減など,環境保全に役立つと認められる商品(製品およびサービス。以下同じ)にエコマークを付けることにより,商品の環境的側面に関する情報を広く社会に提供し,持続可能な社会の形成に向けて消費者ならびに事業者の行動を誘導していくことにある。認定基準は,ISO14024に基づいて商品のライフサイクルにおける各段階 (資源採取からリサイクル・廃棄まで)と環境改善のための4つの重点領域(図-2)に着目したうえで,商品分野ごとに策定し,その認定基準に基づいて総合的に環境負荷低減に資する商品の認定審査を行っている。
 

図-2 認定基準で考慮する商品のライフサイクルと4つの重点領域




 
一方,近年ではSDGsの他,ISO20400などの国際規格の策定,国連環境計画による「持続可能な公共調達(SPP)プログラム」,公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会による東京2020大会に向けた「持続可能性に配慮した調達コード」の策定など,国内外の様々な分野や主体で「持続可能性」をキーワードとした議論や取り組みが実施されている。例えば,調達コードでは,建設材料に使用される木材などに対して持続可能性を考慮することを求めており,環境面に加えて社会面を配慮することが時代の潮流となりつつある。そのため,エコマーク制度においても2018年4月に事業実施要領を改定し,環境面に重点をおいて基準項目を設定するが,その商品分野に関連が深く,取り組むことが望ましい社会面についても基準項目に含めることができるとしている。
 
 

1-3 エコマークで対象としている分野

エコマークは,日用品,紙類,文具・事務用品,衣服,服飾雑貨,家具などの主に一般消費者が使用する商品や,パソコン,画像機器(複写機・プリンタ),プロジェクタ,テレビ,LEDランプ,時計などの電子機器の他,土木・建築分野についても幅広く対象としている。また,近年では小売店舗,ホテル・旅館,飲食店,自動車保険,カーシェアリング,機密文書処理サービスなどのサービス分野にまで拡大しており,2018年4月30日時点で66分野に認定基準が設定され,5,701の製品・サービス(1,510社)が認定を受けている。
 
 

1-4 エコマークとグリーン購入

2001年に施行されたグリーン購入法では,国等が購入する商品は,環境への負荷が少ない商品にするように取り組むことを義務付けている他,地方自治体や民間事業者および国民に対しても,できる限りグリーン購入に努めるよう求めている。
 
2018年2月に閣議決定された「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」では,21分野275品目に関して「判断の基準」などが定められているが,エコマークでは多くの商品分野で,グリーン購入法の「判断の基準」と同等以上の認定基準を設定している。そのため,エコマークはグリーン購入法の特定調達品目の「判断の基準」を満たす商品を選択する際の目印として活用されている。
 
また,グリーン購入法に基づく調達が努力義務とされている地方自治体や事業者間での環境配慮の指標としても,エコマーク認定が広く活用されている。他方,一般消費者のエコマークに対する認知度は数ある環境ラベルの中でも最も高く(90%を超える),「環境にやさしい商品についているロゴ」としてのイメージが定着しており,環境面での企業の社会的責任や信頼性といったイメージ向上に寄与している(図-3)。
 

図-3 地方自治体による活用状況/消費者の認知度




 

1-5 海外のタイプⅠ環境ラベル

タイプⅠ環境ラベルは,世界の50以上の国や地域で実施されており,それらを運営する環境ラベル機関のうち29団体が世界エコラベリング・ネットワーク(GEN)1に参加して,環境ラベルプログラム間の協働,情報交換などを行っている。日系事業者の世界シェアが高い画像機器を中心に,日本のエコマークは海外タイプⅠ環境ラベルとの相互認証を進めるなど,国際的にも主導的役割を果たしている。相互認証とは,相手国の環境ラベルの審査(もしくはその一部分)を自国の環境ラベル機関で実施することを可能とする二国間以上の協定をいい,社会的コストの削減や地球規模での環境負荷低減,輸出入の障壁緩和などが期待される。現在SPPプログラムと関連して,グリーン公共調達(またはSPP)の法整備が各国で進められており,その方法としてタイプⅠ環境ラベルを活用することが主流となりつつある。例えば,中国では日本の環境省にあたる生態環境部が「環境ラベル商品の政府調達品リスト」を年2回公表し,リストの掲載商品を政府調達で優先的に購入するように求めている。リストに掲載されるためには,中国環境ラベルの認定を受ける必要があり,セメントなどの土木・建築資材が品目に含まれている。また,アメリカでは政府の建築物にグリーンビルディング評価制度(LEED)の取得が求められるが,そのLEEDの評価項目の中には,北米のタイプⅠ環境ラベルである「エコロゴ」や「グリーンシール」が明記されている。
 
 

2. エコマークの土木・建築分野の認定基準と認定取得の手順

2-1 エコマークの土木・建築分野の認定基準

エコマークが土木・建築分野で対象としている認定基準と品目は,表-1に示す通りである。土木製品はNo.131「土木製品」,建築製品は,No.123「建築製品」などを中心に,様々な土木・建築製品や設備関係の認定基準が設定されており,認定商品も多い。主な評価観点としては,再生材料の使用を規定した品目が多いが,認定基準としては有害物質の含有・溶出基準,リサイクル性の考慮およびユーザーへの情報提供など多項目に及んでいる。それぞれの認定基準は,当会のウェブサイトで公開しており,認定の要件を確認することができる。(https://www.ecomark.jp/nintei/
 

表-1 エコマークの土木・建築分野の認定基準と対象品目




 

2-2 エコマークの認定取得の手順

エコマークの認定取得には,申込商品について該当する商品類型の認定基準を満たすことが必要である。具体的な認定取得の手順としては,認定基準に基づいて,申込者がエコマーク事務局に申込書類(認定基準ごとに定められた「付属証明書」および基準を満たしていることを示す試験結果や証明書類など)を提出し,事務局での確認を経た後に,中立の学識者・専門家から構成される「審査委員会」において審査が行われ,認定となったものにエコマークが表示できる。審査委員会は月に1回開催され,申し込みから結果の通知まで,最短で約1か月程度となっている。
 
 

3. 普及活動と今後エコマークの展開

3-1 普及・啓発活動

エコマークの普及・啓発活動として,エコプロ展や地方自治体の環境フェアへの出展の他,おおさかATCグリーンエコプラザ「エコマークゾーン」では,エコマーク制度や認定商品を紹介する常設展示を行っており,2000年の開設以来,企業,地方自治体や学校などの団体見学者も含めて延べ300万人以上が来場し,環境教育の場となっている。また毎年,環境省が主催するグリーン購入法の説明会で,エコマーク制度を紹介するなど地方自治体や組織購入等でエコマーク商品を積極的に調達いただけるように働きかけを続けている。
 
 

3-2 今後の展開

エコマークは,現在No.505「飲食店」,No.501「小売店舗」,No.503「ホテル・旅館」などサービス分野の評価を進めている。2017年9月に認定が開始された「飲食店」基準では,食材,フードロスの削減,省エネ・節水のほかに,環境に配慮した建築資材や設備の使用等を評価項目として設定している。なお,店舗掲示用のエコマークには取組内容が容易に理解できるように6種類の絵柄をあわせて表示することとしている(図-4)。現在,モノ消費からコト消費に消費者のライフスタイルが変わってきており,消費者と事業者をつなぐツールとして,エコマークの果たす役割はさらに広がっていくものと考えている。
 

図-4 飲食店のエコマーク表示例




 

おわりに

本稿では,エコマークの最新動向と土木・建築分野の拡がりについて紹介した。エコマークの認定取得や活用方法に関する相談は,以下までご連絡いただきたい。
 
公益財団法人日本環境協会 エコマーク事務局
〒103-0002 東京都中央区日本橋馬喰町1-4-16馬喰町第一ビル9階
URL:https://www.ecomark.jp/
E-mail: info@ecomark.jp  
TEL: 03-5643-6253
 
 

公益財団法人日本環境協会 エコマーク事務局 基準・認証課長 大澤 亮

 
【出典】


積算資料公表価格版2018年08月号



 

最終更新日:2023-07-10

 

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