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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建築施工単価 > CLT建築物の普及とさらなる発展に向けて

 

1. はじめに

CLTとはCross Laminated Timberの略称で,板状に製材して乾燥させた木材を横に並べた後,繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料である(図−1)。これまでにはないサイズで厚のある大版パネルが,CLTでは製造可能になった。
 

【図−1 CLTパネルのイメージ】




CLTの主な利用方法は,床や屋根,壁などの面材としてである。施工手順としては,まず壁を設置した上に上階の床を敷き,さらに上の階の壁を建て込んでいく,いわゆるプラットフォームが基本的な使い方である。また,構造躯体すべてにCLT を使わずに,鉄骨やRC,または木造の軸組構法など他構法と組み合わせて部分的に利用する場合も多い。
 
CLTは1995年頃からオーストリアを中心として研究開発が進められてきた。木質材料としては新しいものだが,現在では発祥のヨーロッパだけでなく北米やオセアニアなど,世界中に利用が広がっている。すでに普及の進む海外では,CLTを使った中高層の木造建築が数多く建てられている。現在,オーストリアのウィーンで建設中の24階建て複合施設「HoHo Wien」(写真−1)にもCLTが一部使用されており,完成すれば木造建築として世界最高層に匹敵する。こうした木造建築の高層化の背景に,CLTの普及が密接に関わっている。
 
そして,2018年には製造量が100万㎥に達するほどの普及をみせる海外勢の背中を追うように,日本でもCLTの普及・開発にかかる数多くのプロジェクトが動き,着実に成果が積み重なりはじめた。本稿では,それらの一部を紹介する。
 

【写真−1 建設中のHoHo Wien(2019年7月撮影)】




 

2. CLTの利点

CLTは断熱性能(RCの約13倍)や,軽さ(RCの約1/5)など木材が持つ長所をそのまま持っている。軽さは建物規模が大きくなった際には基礎や杭などにかかるコスト削減につながるほか,運搬やクレーンでの揚重の際にもメリットとなる。また,木材は燃える材料だが,CLTは分厚いためなかなか燃え尽きない。一度火がついても表面に炭化層が形成されてゆっくり一定の速度で燃え進むため,あらかじめ厚みを増せば火災で倒壊しない設計が可能であることも安心できる強みとなる。さらに,通常の木材は温湿度とともに寸法も変化するが,CLTは板を直交に積層接着しているため,板同士が変形を抑えあうことにより高い寸法安定性を発揮し,木材の弱点も克服している。
 
このような材料面での利点のほか施工面では,あらかじめCLTを工場で加工してから現場に運ぶため,施工の際に寸法のずれが起こりにくくスムーズに施工を進められる。また,大版パネルであるため部材点数を少なくすることができ,このことも現場での施工を容易にし,短工期化を可能にする。さらに,工場でパネルの製造と加工を行うことで現場での騒音や廃棄物のほか労働災害リスクを低減し,クリーンで安全な作業環境をつくることができる。
 
一方,デメリットとしては,従来の木造に比べると木材利用量が多くなるため,材料のコストのみで判断すると高くなることが挙げられる。この点は,前述のように適材適所での利用や工期短縮により,コスト高を抑えることができる。また,工期短縮に伴う建物の事業利用の早期化による収益の増大などを総合的に判断すれば,CLTの利用が必ずしも建築コスト高とはならないことが分かる。以下に建築コストを調査した事例を紹介する。さらに,CLTに関する補助金も豊富な制度があり,さまざまな建物での申請が可能なのでぜひ確認いただきたい。情報の更新があった場合は,当協会ホームページで都度改定している(表−1)。
 

【表−1 令和元(2019)年度 CLT公的助成制度 概要】




 

〈CLT建築コスト調査〉
平成31年3月
岡山県

●調査の概要
岡山県が一般社団法人岡山県建築士事務所協会と連携し,CLT造で建築された2階建て事務所延べ床面積315㎡(浅口市内)の事例をもとに,鉄筋コンクリート造(RC造)および鉄骨造(S造)で建築した場合の建築コスト,現場作業人員数,工事期間について比較検討しました。
 
 
●明らかになったCLT造の利点
● 躯体の重量が軽く,RC造等に比べ基礎工事が簡略化できる。
● 事前に製造工場で,プレ加工ができることから,現場作業人員数の削減や工期短縮に対応しやすい工法と考えられる。
● 内装を現(あらわ)し仕上げとすることで,躯体以外工事(内装工事)の一部が省略でき,コスト低減等で有利になっている。

【建築コストの比較】




● 一定の条件のもとで,CLT造とRC造,S造を試算すると,ほぼ同額の結果となった。
※一定の条件 …(1)内装は木質仕上げ,(2)断熱はCLT造と同程度

【現場作業人員数の比較】




● CLT造を100%とすると,RC造254 %,S造136%となり,CLT造は,他工法と比べて,大幅に現場作業人員が少ない結果となった。

【工事期間の比較】




● CLT造は,躯体の建て方期間や内装工事期間等が短縮でき,他工法に比べて全体工期が1ヶ月程度短縮できる結果となった。ただし,CLT造では,躯体工事において施工図やパネル製作加工等に一定の準備期間(3ヶ月程度)が必要となることも確認された。
 
 
出典:岡山県ホームページ
http://www.pref.okayama.jp/page/600677.htmlをもとに作成


 
 
 

〈CLT実証事業の事例に関するコスト分析について〉
平成30年7月
公益財団法人日本住宅・木材技術センター

●鉄筋コンクリート造とのコスト比較
(1)コスト比較の目的,前提条件
平成28年度補正予算及び平成29年度当初予算のCLT 実証事業により建築実証を行ったCLTパネル工法の建築物を対象に,コストの削減要素の確認,コストメリットの検討のため,同規模の鉄筋コンクリート造建築物とのコスト比較を行いました。
 
コスト比較の方法として,CLT実証事業の建築物の基礎工事,上部躯体工事及び屋根・外装材関連工事における積算上の数量を用いて,同規模の鉄筋コンクリート造建築物の積算上の数量を想定し,概算で比較しました(比較設計はしていません)。

【建築物の概要】



(2)工事費の内訳比較
3事例について平均値を算出したところ,CLTパネル工法の建築物は鉄筋コンクリート造の建築物と比べ,延べ面積1㎡あたりの工事単価は基礎工事で6千円/㎡減となり,上部躯体工事では32千円/㎡増の一方,屋根・外装材等の工事では2千円/㎡ 減,全体工事費では24千円/㎡増となっています。

【RC造との工事費の内訳比較】



● CLTパネル工法のコスト低減に向けて
コスト増の主な要因である上部躯体工事費については,
● 施工方法の合理化,CLTパネルや接合金物の量産化によるコスト減
● CLTの利点である断熱性等を活かした,屋根及び外装材の軽減によるコスト減を進めるほか,基礎,杭構造の軽減によるいっそうのコスト低減が期待できます。
 
 
出典:公益財団法人日本住宅・木材技術センターホームページ
https://www.howtec.or.jp/files/libs/2256/201807171205301576.pdfをもとに作成


 
 
 

3. CLTの建築・施工について

CLT を建築に用いる際によくある質問として,(1)当協会への加入義務はあるか,(2)CLTに関する専門の資格取得や教育を受けておく必要はあるか,(3)CLTの経験のある会社を紹介してほしい─ などが挙げられる。(1)については,当協会への加入義務はない。しかし,会員になることで情報取得や多種多様な会員企業との交流,講習会・技術資料の割引制度など,多くのメリットがあるので,ぜひ入会を検討いただきたい。(2)については,CLTに関する認定制度・資格は存在しない。ただし,当協会が取得している大臣認定仕様を使用する場合に限っては,当協会が実施する所定の講習を受講の上,認定資格を取得し,適用物件ごとに申請する必要がある。(3)については,当協会ホームページで取組企業を紹介している(図−2)。ここで製造,加工,施工,設計それぞれの経験のある企業を紹介しているので,参考にしていただきたい。また,当協会の会員企業一覧も同様に掲載しており,こちらの内容も役立つと思われる。
 
また,CLTの施工において重要な点に,アンカーボルトの精度確保がある。例えば一階壁パネルの脚部には,両端に引張金物とアンカーボルト1本が1セットずつと,中央にせん断金物とアンカーボルト2本の1セットが取り付けられる(写真−2)。アンカーボルトは基礎の鉄筋と干渉する場合があるが,アンカー優先の配置による養生固定が必要である。これらの精度感を基礎工事業者と事前に共有しておくことで,よりスムーズな施工となる。また,床パネルを敷くとその上に立っての作業が可能になり,安定した広い作業場を確保できる。さらに,CLTの施工は1階から上階へと繰り返しの工程が多く,職人の慣れもあり工程が進むにつれ施工スピードが速くなることが多いので,一つの物件の中での経験がすぐに改善や発展につながることも多い。
 
これまでにさまざまなCLT建築物が竣工してきたこともあり,当協会ではそれぞれの物件におけるノウハウを共有・一般化するためにも,CLT建築物の施工マニュアルを作成している。まずは低層版のマニュアルを秋頃に,当協会より販売する予定である。現場の職人が必要とする情報が中心となっているので,ぜひご活用いただきたい。
 
さらに,3年ぶりに改定された「公共建築木造工事標準仕様書」において,CLTパネル工法が追加された。これまでも,国や地方自治体が発注した建物にCLTが使われた事例はいくつもあるが,今回の改定により,CLTによる公共建築物がいっそう増えることが期待される。2010年に施行された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に続き,公共建築物にCLTを利用しやすい環境が整備されることとなった。
 

【図−2 CLT取組企業の紹介ページ】

【写真−2 壁パネル脚部の接合金物】



 

4. 今後に向けて

これまでCLTに関しては,技術開発が先行してきたこともあり,一般の利用者に対するPR等が十分行われていなかった。そこで,このたび当協会が一般社団法人化5周年を迎えたことを機に,CLTのイメージづくりと知名度向上を目的にブランディングを進めている。作業はワーキンググループ(以下,WG)を設置し,改めてCLTの価値などを洗い出すことから始めた。その結果をもとに,コピーライターが81案のコアアイディアを作成した。コアアイディアとは,CLTを理解し,良いイメージを持ってもらい,実際に使ってもらうための端的な表現であり,いわゆるキャッチコピーとは少々異なる。最終的には当協会理事会を経て,「住む,働く。木の中で。」に決定した。今後はブランドブックを作成し,広くこのコアアイディアに親しみを持ってもらいたいと考えている。
 
他にもさらなる普及に向けて,CLTを使うメリットを整理するためのWGを新たに当協会内に設置した。CLT(木造)の法定耐用年数はS 造やRC造と比べると短く,税制面では短期償却というメリットに働く反面,銀行融資の返済期限が短期間になり資金繰りが難しくなる場合がある。また,法定耐用年数と実際の使用可能年数を同一視している人は意外にも多く,正しく理解してもらう必要があると考えている。さらに近年は,SDGs(持続可能な開発目標)や環境・社会・ガバナンスの観点を重視したESG投資という世界的な潮流が急速に広がっている。低炭素であり循環型資源からなるCLTを使うことの意義が明確に,より大きくなっていることも踏まえた普及活動を進めたい。
 
最後に,日本におけるCLTの建築件数は2018年度末時点で300棟を超える見込みで,計画段階も含め全都道府県にCLT建築物が存在するほど普及した(図−3)。建物への部分的なCLT 利用も増えていることから,当協会でもCLT物件を全件把握するのが追い付かないほどになった。この数字は,これまでCLTに携わった関係者の尽力の賜物であり,この場を借りて心よりお礼申し上げる。引き続き当協会では,CLTをより使いやすくするための環境づくりとCLTを通じた社会貢献に努める所存であり,皆さまからのさらなるご指導をお願いしたい。
 

【図−3 CLT建築件数の推移】




 

一般社団法人 日本CLT協会 業務推進部 森田 聖(もりた さとし)

 
 
 
【出典】


建築施工単価2019秋号



 

 

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