ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 【E6】常磐自動車道─全線開通10周年の整備効果について─

はじめに

常磐自動車道は三郷JCTから亘理ICを結ぶ延長300.4kmの高速自動車国道である。
1981年に柏IC~谷田部ICが初めて開通し、以降延伸を重ね2015年3月の常磐富岡IC~浪江ICの供用により全線開通した。
常磐自動車道は、東京方面と仙台方面を太平洋に沿って結び、茨城県や福島県浜通りを中心とする沿線地域の発展を支援している。
2025年3月で全線開通から10年を迎えたことを機に、常磐自動車道が整備されたことにより発現された効果(以下、整備効果)をとりまとめた。
 
開通効果は10年間と長期にわたり現れているため、統計データから得られる定量的なデータとヒアリング調査結果を中心とした開通後の効果(定性的なデータ)を組み合わせ、確認された整備効果について紹介する。
 
 

1.常磐自動車道の利用状況

常磐自動車道は、関東地方においては、首都高速6号三郷線、東京外環自動車道、首都圏中央連絡自動車道および北関東自動車道、東北地方においては、磐越自動車道、東北中央自動車道および仙台東部道路と接続する重要路線である(図- 1)。
常磐自動車道の開通に伴い、首都圏と太平洋側沿岸部の各都市が結ばれ、アクセス性が向上し、2024年には累計利用台数が約27億台に到達した(図- 2)。

【図- 1 常磐自動車道の位置図】
【図- 1 常磐自動車道の位置図】
【図- 2 開通以降の総利用台数】
【図- 2 開通以降の総利用台数】

 
 

2.常磐自動車道の整備効果

(1)開通による経済波及効果

常磐自動車道が全線開通した2015年から2024年までの10年間の経済波及効果の算出をSCGE(空間的応用一般均衡)モデルを用いて行った。
これは、一般均衡(すべての市場において「需要」=「供給」が成立し市場価格が決定される均衡状態)において、①高速道路の整備により地域間の移動時間が短縮→②人口交流・物流が活発化→③それに伴う企業の生産活動の活発化→④賃金上昇や雇用の創出→⑤家計における消費の増加という一連の流れから、企業活動における生産額変化額を道路整備における「経済波及効果(生産額変化)」とみなし算出するものである。
算出の結果、常磐自動車道が全線開通した2015年の生産額変化額は約2,880億円となり、全線開通後の10年間における生産額変化額を累積すると約3兆円となった(図- 3)。
そのうち、約8割は 沿線にあたる茨城県、福島県および宮城県である(図- 4)。
道路貨物輸送や商業・観光など幅広い産業の経済が活性化した。

【図- 3 常磐自動車道の生産額変化額の推移】
【図- 3 常磐自動車道の生産額変化額の推移】
【図- 4 周辺地域への経済波及効果(2015 年)】
【図- 4 周辺地域への経済波及効果(2015 年)】

 

(2)ダブルネットワーク機能の発揮

常磐自動車道の開通によって、関東地方と東北地方は、東北自動車道と合わせて高速道路ネットワークでつながった。
東北自動車道等からの交通の転換もみられ、常磐自動車道は東京~仙台方面の移動の約4割を担っている(図- 5)。
また、太平洋沿いを通る常磐自動車道は、内陸部を通る東北自動車道と比べて冬季の降雪が少ない傾向にある。
2022年2月21日に東北自動車道が吹雪で通行止めとなった際には、降雪量が少ない常磐自車道に交通が転換するなど、ダブルネットワーク効果が発現している。
近年では、荒天が見込まれる際の予防的通行止めや大規模な工事規制が東北自動車道で見込まれる際には、事前に常磐自動車道への迂回を案内することによって、より安定した交通の確保が可能となった。
 

【図- 5 東京⇔仙台方面の経路分担率】
【図- 5 東京⇔仙台方面の経路分担率】
(3)拠点間の所要時間の短縮

全国総合交通分析システム(以下、NITAS)およびETC2.0プローブデータを用いて、東京~仙台間における平均所要時間を算出したところ、常磐自動車道の整備により、主に並行する国道6号の走行時と比較し、約317分短縮していることが明らかになった(図- 6)。
また、所要時間の上位10%値と下位10%値の時間差により所要時間のばらつき(時間信頼性)を算出した結果、約130分の短縮がみられ、常磐自動車道が拠点間の安定的な移動を支援している。
さらに、沿線6か所の休憩施設の利用者を対象としたアンケート調査の結果、約8割が時間短縮効果を実感していることが明らかになった。

【図- 6 所要時間のばらつき(東京-仙台間)の比較】
【図- 6 所要時間のばらつき(東京-仙台間)の比較】

 

(4)復興を支える常磐自動車道

常磐自動車道は2011年の東日本大震災により盛土や橋梁部に大きな被害を受けたが、約20時間後には緊急車両の輸送路を確保、6日後には応急復旧が完了し、さらに発災から13日後には一般車両も通行可能とし、救援物資輸送・災害派遣に貢献した(図-7)。
また、復興への支援、除染・中間貯蔵施設事業の加速などを目的に、ならはPA、ならはスマートIC、大熊ICおよび常磐 双葉ICを全線開通後に整備した。
2019年の大熊ICの三次医療施設 三次医療施設からの1時間圏域(3次メッシュ単位)開通が一助となり、除去土壌等の輸送が加速したことで、輸送量が2018年から2019年で222万㎥増加し、最大406万㎥の運搬に寄与した(図- 8)。

【図- 7 盛土の応急復旧】
【図- 7 盛土の応急復旧】
【図- 8 除去土壌等の輸送実績】
【図- 8 除去土壌等の輸送実績】

 

(5)沿線地域交流への寄与

観光統計によると常磐自動車道の全線開通後、沿線自治体の入込客数は約1.3倍に増加しており、観光施設や沿線自治体からアクセス性の向上を感じる声をいただいた(図- 9)。
また、震災記憶の伝承・地域活性化の拠点として被災地に復興関連施設が整備され、常磐自動車道の全線開通以降、施設の入込客数は増加傾向にある。

【図- 9 沿線自治体の観光入込客数】
【図- 9 沿線自治体の観光入込客数】

 

(6)地域医療への貢献

NITASを用いて沿線の三次医療施設の時間圏域の変化を算出したところ、相馬市から仙台市内の三次医療施設までの所要時間が20分短縮し、大熊町からいわき市内の三次医療施設までの所要時間が14分短縮したことが明らかになった。
また、三次医療施設の1時間圏域内人口は約6万人増加し、道路ネットワークの拡大が傷病者への負担軽減の一助となった(図- 10)。

【図- 10 沿線の三次医療施設の時間圏域の変化】
【図- 10 沿線の三次医療施設の時間圏域の変化】

 

(7)地域への企業進出を支援

震災以降、浜通り地域を中心に常磐自動車道の整備を進めてきた。
段階的に延伸し、常磐自動車道が道路ネットワークとしてつながったことや避難指示解除に伴い、例えば富岡町の事業所数が約35倍(図- 11)、従業員数が約17倍に増加しており、沿線地域の企業立地や雇用の創出に寄与している。

【図- 11 沿線自治体の事業所数の推移】
【図- 11 沿線自治体の事業所数の推移】

 
 

3.さらに安全・安心・快適・便利に

常磐自動車道では現在、追加ICを5箇所整備中であり、追加ICの整備により、居住者・来訪者の利便性の向上、物流の効率化など周辺地域の活性化が期待される。
2025年8月7日には「いわき小名浜IC」が開通した。
これにより、同時に開通した小名浜道路を経由して福島県の主要な港である小名浜港と高規格道路で結ぶことが可能となり、沿岸地域へのアクセスが一層向上した。
また、 4区間約20kmで4車線化の事業中であり、4車線化によって期待される効果として、①低速車両による速度低減の改善、②通行止め回数の減少、③対面通行による重大事故の減少が挙げられる。
いわき中央ICから広野ICにおける所要時間は、4車線化により、約2割短縮した。
また、いわき中央IC~広野IC、山元IC~亘理ICにおいて、死傷事故率は約8割減少し(図- 12)、さらに、通行止め回数は4車線化前後で約9割減少した(図- 13)。
4車線化が、中央分離帯を突破し反対車線に飛び出すような重大事故防止の役割を果たし、通行止め回数の低減にもつながっている。

【図- 12 通行止め回数の変化】
【図- 12 通行止め回数の変化】
【図- 13 死傷事故率の変化】
【図- 13 死傷事故率の変化】

 
その他にも、茨城県南部の守谷SAの防災拠点化を2024年より本格的に行っている。
防災拠点化により、守谷SAは広域災害の発生時には自衛隊や消防、医療機関など緊急出動機関の前線基地を担う。
 
また、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震を想定した災害への備えとして、2024年には自衛隊並びに防災関係機関と連携した演練の一部を守谷SAで実施した(図- 14)。
安全・安心・快適・便利な常磐自動車道を目指し、今後も必要な整備を進めていく。


【図- 14 令和6(2024)年度自衛隊統合防災演習の様子】
【図- 14 令和6(2024)年度自衛隊統合防災演習の様子】

 
 

おわりに

本論文での整備効果の取りまとめにおいては、社会経済指標および交通量データからなる定量的なデータとアンケート結果で得られた定性的なデータを分析し、常磐自動車道の全線開通により構築された道路ネットワークがもたらす様々な効果を確認した。
弊社では、これからも高速道路の維持管理や4車線化等、リニューアル工事を実施し、道路ネットワークの強化に取り組んでいく所存である。
 
 

参考資料

【E6】常磐自動車道 全線開通10周年!~整備効果を取りまとめました~
https://www.e-nexco.co.jp/pressroom/kanto/2025/0319/00014758.html

~整備効果を取りまとめました~

 
 
 

東日本高速道路株式会社 東北支社
東日本高速道路株式会社 関東支社

 
 
【出典】


 積算資料2025年10月号
積算資料2025年10月号

最終更新日:2026-01-05

 

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