- 2023-01-19
- 土木施工単価
1. はじめに
土木工事標準歩掛(以下,「標準歩掛」という)は,土木工事に広く使用されている工法について,施工合理化調査等の実態調査に基づき,土木施工に必要とされる標準的な機械,労務,材料等の所要量を工種毎に設定しています。
この標準歩掛は「中央建設業審議会(中建審)」の建議を踏まえて,昭和58年3月に整備・公表し,その後,改定や制定を重ねて現在に至っており,土木工事費の積算の基礎資料として,国,県,市町村の発注官庁をはじめ,民間でも標準的な指標として広く活用されています。
2. 令和4年度標準歩掛の改定概要
標準歩掛は,使用機械の機能向上,新技術・新工法の開発,あるいは各種施工制約などの社会情勢の変化など,施工形態の変化に対応した適正なものとする必要があります。
今回,令和2年度に施工合理化調査等を実施した標準歩掛工種の122工種のうち,令和3年度に施工実態を分析した結果,9工種の改定を行うこととしました。
その9工種の改定概要について,以下のとおり紹介します。
3. 施工状況の変動に伴い新規制定及び改定を行った工種(9工種)
近年の工事現場や施工条件,社会情勢の変化等により,現場実態を反映した歩掛の制定及び改定を行いました。
(1) ワイヤロープ設置工※新規制定
ワイヤロープ設置工は,車両衝突時に車両乗員への衝撃緩和と対向車線への逸脱を防止するため,ワイヤロープの張力で車両を受け止める防護柵を設置するものです。
高規格幹線道路の暫定二車線の土工区間において,中央分離柵としてワイヤロープ設置が標準に位置付けられたため,新たに制定しました。
[適用範囲]
・高規格幹線道路の暫定二車線区間の土工部及び橋梁部におけるワイヤロープ式防護柵設置(LD種)に適用。
未供用の橋梁部は適用範囲外。
・端末基礎設置(鋼管杭)→スリーブ管,中間支柱・端末支柱設置→ワイヤロープ設置→ターン
(2) 軟弱地盤処理工(PVD工(プレファブリケイティッドバーチカルドレーン工))※新規制定
PVD工は,粘土,シルト及び有機質土等を対象として行う軟弱地盤改良工のバーチカルドレーン工法の一種で,プラスチックボードを地中に打込むことにより排水柱を造成し,毛細管現象を利用して排水し,軟弱地盤の圧密を促進させるものです。
[施工歩掛]
・施工歩掛は,位置決め→打込み→引抜き→ドレーン材切断→機械移動までの一連作業を設定。
・日当たりの編成人員,サイクルタイムによる1本当たり施工歩掛,ドレーン材及び先端アンカーはロス率を含む必要長を設定。
(3) 横断歩道橋補修工 ※新規制定
横断歩道橋補修工は,経年劣化等により損傷した横断歩道橋の補修のうち,舗装等の復旧のため既設舗装のはぎ取り・ノンスリップ(滑り止め防止のために階段部の先端に取り付けられる材料)の撤去を行うものです。
[施工歩掛]
・既設横断歩道橋における床版・階段・スロープ部等の補修作業で,既設舗装のはぎ取り(60mm以下(調整モルタル含む)),はぎ取り後の集積,積み込みまでの施工歩掛を新たに制定。
・舗装はぎ取り,ノンスリップ撤去の施工歩掛を設定。
・はぎ取り後の舗装等復旧については,様々な工法により施工されている実態から別途考慮。
(4) 重建設機械分解・組立
重建設機械分解・組立は,工事現場で使用される標準的な重建設機械を公道を利用して移動する場合,車両制限令による一般的制限,及び個別的制限値内の重量で搬入・搬出する必要があるため,制限値を超過する重建設機械の分解・組立及び輸送を行うものです。
[施工歩掛]
・工事現場内で使用される分解・組立用ラフテレーンクレーンの一部規格を見直し。
・運搬する建設機械の運搬距離が大きくなっている状況等から運搬費等率を見直し。
・200t吊以上のトラッククレーン系の分解・組立について,リフターを使用した施工が見られたため歩掛を新規設定。
・「ブルドーザ63t級以下」及び「地中連続壁用機械」の使用実績が見られないことから歩掛を廃止。
(5) 軟弱地盤処理工(中層混合処理工)
中層混合処理工は,粘性土,砂質土,シルト及び有機質土等の軟弱地盤を安定した状態にするため行う軟弱地盤処理工のうち,中層混合処理機を用いてセメント系スラリーと原位置土を強制的に撹拌し地盤を固結する方法で,改良深度が2mを超え13m以下の陸上施工を行う工法です。
[施工歩掛]
・撹拌混合装置の損耗材料費等の変動に伴う諸雑費率の見直し。
・供用日数の増加に伴う機械損料数量の見直し。
(6) 消波工(ブロック製作・据付工)
消波工は,海岸を保護することを目的に,波の打上高さや越波量を減らすとともに波圧を軽減するため,異形ブロックを製作・据付する工法です。
海岸工事における離岸堤,消波堤,突堤等の海上作業における工事に適用します。
[施工歩掛]
・コンクリート工における使用機械,諸雑費率,材料ロス率の見直し。
・養生工における諸雑費率の見直し。
・ブロック積込・据付における諸雑費率の設定。
(7) コンクリート工(砂防)
コンクリート工(砂防)は,砂防工(本堰堤,副堰堤,床固め,帯工,水叩き,側壁,護岸)におけるコンクリート工の一連作業(チッピング,岩盤清掃,型枠,足場,砂防コンクリート打設(一般部,堤冠部),止水板設置,銘板工)を行うものです。
[施工歩掛]
・一般部コンクリート打設の1日当たりの打設量が10m³未満の施工が見られたため,1日当たりの打設量区分を見直し。
・銘板工の歩掛を新たに設定。
・チッピング及び岩盤清掃を雑工種率計上から積み上げ計上に変更。
(8) 道路打換え工
道路打換え工は,維持修繕アスファルト舗装工のうち,舗装版とりこわしから舗装まで急速施工で1日当たり平均作業量が50m²以上420m²以下の現道打換えを行うものです。
・使用機械の規格や型式,排出ガス基準,騒音基準,保有区分の見直し。
・諸雑費率の見直し。
(9) トンネル裏込注入工
トンネル裏込注入工は,地山の安定や覆工への偏荷重を防止するため,覆工コンクリートと地山の間に発生した空に注入材の充填を行い,地山と覆工コンクリートを一体化するものです。
[施工歩掛]
・発泡ウレタン(40倍)を注入材料とした実績
4. おわりに
公共事業を円滑に執行するためには,現場の施工実態や資機材の需給状況など,変化する事象を的確に把握し,工事の品質及び安全確保,環境の保全等に十分な配慮がなされているかにも着目したうえで,標準歩掛を整備していくことが必要です。
引き続き,必要な標準歩掛の制定・改定を行い,適正な予定価格が積算できるよう努めてまいります。
なお,標準歩掛は実際の施工における工法や施工機械を規定するものではなく,あくまでも標準的な施工を想定した予定価格を算出するためのツールです。
このことを正しく理解し,適切な運用をお願いします。
【出典】
土木施工単価2022年夏号
最終更新日:2023-01-19
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