• 建設資材を探す
  • 電子カタログを探す
ホーム > 建設情報クリップ > 土木施工単価 > 旅の新ジャンル!しまねインフラツーリズムの魅力発信

1 はじめに

島根県は、東西に約230kmと長く、東部の出雲地域、西部の石見地域、また離島の隠岐地域からなっています。
 
近年、全国的に公共土木施設等(インフラ)を観光資源に活用することが広がりを見せています。
島根県においても、橋梁、ダムなどの地域のインフラを観光資源として発掘し、魅力を発信していくことで、既存観光地からの誘導、新たな立ち寄りスポットとして注目され、地域の観光振興に寄与することを目的に、インフラツーリズムの取り組みを展開しています。
その一環として、地域に整備されたさまざまなインフラを紹介するガイドブック「しまねインフラツーリズムガイド」を発行しました。
このガイドブックを手に地元住民だけでなく、他地域からも島根のインフラを見に現地を巡ってもらうことが期待されます。
また、この取り組みを通じて、学生層にものづくりの魅力を伝え、将来、建設業等の技術職を志すきっかけになればとの思いも込めています。
 
本稿では、島根県のインフラツーリズムの魅力発信の取り組みについて、紹介します。
 
 

2.島根県におけるインフラツーリズムの取り組み

(1)参加機関等

国、県の出先機関をはじめ、各地域の市町、公益性を有するインフラをもつ民間企業を基本として、島根県技術士会、島根県立大学、松江工業高等専門学校のほか、島根ふるさと親善大使(遣島使)などにもご協力いただきました。
インフラにスポットをあてたガイドブックの作製は、官民の機関、分野の枠を越え、あらゆる関係機関が観光振興、地域の活性化に向け、一体となって取り組んだ島根県として初めての試みとなりました。
 

(2)ガイドブック「しまねインフラツーリズムガイド」の発行

「しまねインフラツーリズムガイド」は、国・県・市・町・民間企業がおのおの管理しているダム、橋梁、港湾、漁港、空港、建築物、発電施設、鉄道など、さまざまな部門の施設情報を盛り込んでおり、地域に整備されているインフラを幅広く知り、おおいに楽しめるマニアックな内容となっています。
一方では、島根ふるさと親善大使などが地域のインフラを巡り執筆されたコラムを盛り込んでいるほか、一般の方々が撮影されたSNS映えインフラ写真を多数掲載し、読者に親しみやすいページも設けています。
ガイドブックは県内観光施設をはじめ、道の駅、高速道路SA/ PA、JR山陰本線主要駅等に配布したほか、地域を支えるインフラに関心を持ち、その役割を学んでもらおうと小中学校、高等学校にも配布しました(写真-1)。
 

【写真-1 しまねインフラツーリズムガイド】

【写真-1 しまねインフラツーリズムガイド】

ガイドブック出雲地域版

ガイドブック
出雲地域版

 

 

(3)無人航空機(ドローン)を活用したインフラ空撮映像の公開

インフラツーリズムの魅力の1つに、ダムなどの見学会のように構造物のスケールの大きさを間近で体感できる点が挙げられます。
その迫力をより感じていただくため、また普段見ることのできないアングルをドローンにより撮影し、 YouTube島根県公式チャンネル「しまねっこCH」で公開を始めました(図-1)。
空撮は、職員直営による撮影に加え、(一社)島根県建設業協会、(一社)島根県測量設計業協会からの協力も得て、魅力あるインフラ映像を数多く公開しています。
 

【図-1 インフラ空撮映像(YouTube「しまねっこCH」)】

【図-1 インフラ空撮映像(YouTube「しまねっこCH」)】

石見地域版

石見地域版

出雲地域版

出雲地域版

 

 

3 さまざまなツールを活用した情報発信

(1)ウェブサイト

石見地域版のインフラツーリズムガイドの発行に合わせ、島根県の観光情報を発信するサイト『しまね観光ナビ』(運営者:(公社)島根県観光連盟)において、特集ページ「しまねインフラツーリズム in 石見」を公開[令和2年7月1日~]しました(図-2)。
特集ページ内では、石見地域のインフラを巡る4つのモデルコースの紹介(位置情報付き)、ガイドブック「しまねインフラツーリズムガイドinIWAMI」電子版の公開およびインフラ空撮映像などを紹介し、デジタル環境を楽しむユーザーにも配慮した情報発信を展開しました。
 

【図-2 「しまね観光ナビ」(トップ画面は,R3.6.21 時点のもの)】

【図-2 「しまね観光ナビ」(トップ画面は,R3.6.21 時点のもの)】

特集ページ

特集ページ

 

(2)テレビ、ラジオ

県政広報番組(テレビ、ラジオ)を活用し、おすすめインフラスポットのみどころを紹介しました。
また、民放情報番組の特集コーナーでは、「旅の新ジャンル!インフラツーリズム」として、リポーターにインフラスポットを巡ってもらい、現地でしかできない体験やインフラの魅力を紹介しました。
 

(3)Facebook、YouTube、Twitter

インフラツーリズム情報をFacebook等で随時発信し、観光部署や国市町等、各機関が運営する SNSで情報をシェアし合うことで、情報の拡散に努めています。
また、YouTubeにドローンの空撮映像を公開した際には、Facebookで「インフラストラクチャー、土木工学」などに興味・関心をもつユーザーを対象に、広告配信を実施しました。
 

【 Facebookアカウント:ご縁の国しまねの建設】

【 Facebookアカウント:ご縁の国しまねの建設】


 

(4)Instagram

季節や自然との調和が美しいインフラ施設は写真との相性もいいことから、Instagramでも紹介しようと、令和3年1月に『しまねインフラツーリズム』公式アカウントを開設(図-3)し、ガイドブックに収録できなかった施設も含め、配信しています(アカウント名:shimane_doboku)。
フォロワーも徐々に増加し、一般の方からの「#しまねインフラツーリズム」での投稿も増えてきました。
 

【図-3 Instagram「しまねインフラツーリズム」】

【図-3 Instagram「しまねインフラツーリズム」】


 

(5)道の駅での広報

先行してガイドブックを発行した石見地域では、令和2年度に石見地域の全13道の駅において、期間を集中してのインフラツーリズムPRを展開しました。
国および市町と連携して、道の駅との調整を行い、展示するPRポスターや地域のインフラ紹介チラシは職員で制作し、展示スペースや展示方法(ボードやPC/ ディスプレイによる表示など)は道の駅の実情に合わせ柔軟なPR方法をとりました(写真-2)。
 

【写真-2 道の駅瑞穂でのPR展示状況】

【写真-2 道の駅瑞穂でのPR展示状況】


 

(6)インフラツーリズムPRポロシャツ

インフラ(ダム、橋、鉄道、風車など)をデザインしたポロシャツを制作、職員有志で着用し、インフラツーリズムのPRを行っています(写真-3)。
 

【写真-3 PRポロシャツ】

【写真-3 PRポロシャツ】


 

(7)旅行情報誌、交通機関などへの広告掲載

インフラを巡る旅は車での移動が主となることから、全国の書店、山陰地方のコンビニ等で販売されている道路地図を備えた旅行情報誌に広告を掲載しました。
また、石見地域へのアクセスの近い広島県をターゲットに市内を走る電車にインフラツーリズム広告を令和4 年4 月から掲出しています(写真-4)。
 

【写真-4 電車へのPR広告掲出】

【写真-4 電車へのPR広告掲出】


 
 

4 各機関の取り組み事例

各機関のインフラツーリズム事例を紹介します。
※見学については各機関HP等でご確認ください。
 

(1)はっしータワー(公園施設、浜田県土整備事務所)

島根県立石見海浜公園内にある斜張橋(片持ち式)「はっしータワー」に工夫しひと味加えることで、人を呼び込み観光地へ誘導する試みとして、しまね海洋館アクアスのシロイルカにちなみ、イルカプレートを高欄部に取り付け、新たなSNS映えスポットを作る企画を行いました(写真-5(1)、(2))。
 

【写真-5(1) はっしータワー】

【写真-5(1) はっしータワー】

【写真-5(2) プレート取り付け作業の様子】

【写真-5(2) プレート取り付け作業の様子】

 

(2)浜田マリン大橋(漁港施設、西部農林水産振興センター)

水産都市浜田市のシンボルである斜張橋「浜田マリン大橋」を地域の方々に、より一層の愛着を持ってもらおうと、普段は上がることができないタワー頂上部の見学会が建設後初めて企画されました(写真-6(1)、(2))。
Facebook で参加募集を告知したところ、多くの方々に情報がシェアされ、関心の高さがうかがえました。
 

【写真-6(1) 浜田マリン大橋】

【写真-6(1) 浜田マリン大橋】

【写真-6(2) 頂上部からの眺望を楽しむ見学者】

【写真-6(2) 頂上部からの眺望を楽しむ見学者】

 

(3)波積ダム(ダム本体建設中、浜田河川総合開発事務所)

県内で唯一、ダム本体建設中の現場を見学できるダムです。
令和4年9月に本体ダムコンクリートの打設を終了し、現在は管理設備工事等を行っています(写真-7(1))。
 
常設している見学展望台では、“リアル”ダム現場を背景に見学者自らが被写体となりダムカード風の写真が撮影できる「ダムフォトフレーム」を設置しています(写真-7(2))。
ダム本体コンクリート打設期間中には、コンクリート材料となる骨材に見学者が思い思いに記念の寄せ書きをする「メモリーストーン」など、現地へ訪れることが記念となるよう工夫を凝らしていました。
また、建設期間限定のダムカードも発行し、コレクターの関心を集めています。
 

【写真-7(1) 令和4年10月末ダム本体状況】

【写真-7(1) 令和4年10月末ダム本体状況】

【写真-7(2) ダムフォトフレーム】

【写真-7(2) ダムフォトフレーム】

 

(4)再生可能エネルギー見学ツアー(企業局西部事務所)

江津市には、風力・水力・太陽光・木質バイオマス(民間)の再生可能エネルギー施設がそろっていることを強みに、県企業局は地域資源を活用した再生可能エネルギー発電施設を巡る見学ツアーを開催しています。
また、各種SNSのほか、地元出身アイドルによる企業局イメージソングを発表するなど、積極的に情報発信をしています。
 

企業局PR 動画特設サイト

企業局PR 動画特設サイト


 
 

5 取り組みの波及効果

取り組みを進めるうちに、他団体などがインフラツーリズムを企画する好事例も生まれました。
 

(1)インフラツアーの開催

コロナ禍の中、県内の魅力を再発見してもらう旅プランとして、バス事業者によりインフラツアーが企画(令和3年7月14日)されました。
県東部の松江市を出発し、西部の江津高野山風力発電所(企業局)、石見大崎鼻灯台(浜田海上保安部)、第二浜田ダム(浜田県土整備事務所)、三隅発電所(中国電力)を巡る日帰りプランで、平日開催ではありましたが16 名(男性6 名、女性10名)の参加があり、普段立ち入ることのできない風車タワーやダム堤体内部などを見学され、ツアーを満喫されていました(写真-8(1)、(2))。
 

【写真-8(1) 江津高野山風力発電所で風車を見上げる見学者】

【写真-8(1) 江津高野山風力発電所で風車を見上げる見学者】

【写真-8(2) 第二浜田ダムで説明を聞く見学者】

【写真-8(2) 第二浜田ダムで説明を聞く見学者】

 

(2)ダムツアーの造成

萩・石見空港の利用促進を狙い、県交通対策部署が窓口となり、観光振興部署、大手旅行会社と連携して、島根県の石見地域、出雲地域、隠岐地域にある全てのダムを巡り、ダムカードを完全制覇するツアーを実現しようと関係機関と調整しています(令和2年3月に催行予定でしたが、新型コロナの影響で延期中)。
このツアーは、ダムだけでなく、県内の主要観光地も盛り込み、島根を存分に楽しんでもらえるような内容の予定です。
 

(3)橋カード・江の川橋めぐり(美郷町観光協会)

美郷町観光協会は、江の川に架かる町内の多種多様な橋梁を観光資源としてとらえ、美郷町内の商店等で買い物(500円以上)をすることで、もらうことのできる「橋カード」を令和3年に発行しました(図-4)。
橋マニアやカードコレクターの心をくすぐり、地域の活性化を絡めた取り組みです。
また、町内の旅を楽しむ体験プログラムの 1つに、案内人と共に巡る「江の川橋めぐり」が企画されました。
 

【図-4 橋カード】

【図-4 橋カード】


 
 

6 おわりに

「インフラ」を巡るという新しい旅の楽しみ方 に触れた方々からは、「このような特集は素晴らしい」「普段入る事のない裏側を見ることや、支えてくださる人のお仕事を知ることができ、ワクワクした」「まだ訪れたことがない橋も紹介されていますので、参考にしながら再訪したいです」など、好感を持たれた感想が多数寄せられており、島根への来訪意欲向上につながっています。
現在は、しまねインフラツーリズムガイドの隠 岐地域版の作製を進めており、令和4年9月9日に初回の会議を開催し、作製にあたってさまざまな意見が交わされました。
令和5 年度の発行を目指していますので、楽しみにお待ちください。
今後も、多様化する情報共有ツールなどを活用し、日々の業務の中においても、色々な場面で、「インフラ」の役割、魅力の発信に取り組んでいきたいと考えています。
 
 
 


しまねインフラツーリズムガイド作製事務局
(出雲地域)島根県 出雲県土整備事務所
(石見地域)島根県 浜田県土整備事務所
(隠岐地域)島根県 隠岐県土整備局

 
 


土木施工単価2023年冬号
土木施工単価2023年冬号

最終更新日:2023-05-01

 

同じカテゴリの新着記事

ピックアップ電子カタログ

最新の記事5件

カテゴリ一覧

話題の新商品