床版取替機の構成
平日工事状況
（１車線規制・片側車線通行中）
週末開放状況
（工事期間中の毎週末(土日)状況）
概要
近年、道路・橋梁をはじめとしたインフラ施設の老朽化が大きな社会問題となっており、劣化した床版の取り替えを安全かつ迅速に進める高速道路リニューアル工事が急務である。
最近の床版取替工事では重交通区間の工事が増加しており、工事期間中の道路交通機能の確保（渋滞の回避など）が課題となっている。
重交通区間における床版取替工事は、上下線の片線を交通規制する従来の全断面取替施工では交通への影響が大きいため、一部の車線を通行させながら施工する幅員方向の断面分割施工のニーズが高まっている。
さらに、観光地へのアクセス経路となる場所での工事は、車両通行量が増加する週末に全面開放する「計画的交通開放」が求められてきている。
大成建設㈱と㈱北川鉄工所は、クレーン規格外の新方式の床版取替機を共同開発した。
これにより、新方式の床版取替機と床板更新技術を採用することにより「計画的交通開放」を実現した。
渋滞をギリギリまで減らす新たな工事
特長
- 新方式の床版取替機の組み立て・解体は､ 補助クレーンを使用せず、組立１日・解体１日で組み立て後すぐに作業できる機械とした。
- 新方式の床版取替機は、巻上／移動装置を独立機構としクレーンに分類されない新しい機械を開発した。
これにより本取替機組み立て後、監督署のクレーン落成検査なしで、使用場所に限定されることのなく組み立て後すぐに作業できる機械とした。
クレーン規格外の新方式説明図
- 新方式の床版取替機は､ レールなどが不要で車輪だけで自走を可能とした。
- 新方式の床版取替機は､ 吊荷の姿勢を水平に制御する機構（巻上装置の４つの独立ウィンチとワイヤーで吊荷の姿勢を制御）を装備し、壁高欄付き床版などの大きく偏心している吊荷でも水平を保持し、安定した姿勢で上下と横移動・回転を独立して動作可能とした。
- 新方式の床版取替機は、床版を90度回転する際に、長方形の床版が作業エリアからはみ出さないよう、回転中心がスライドする機構を装備し、安全を確保した。
- 新方式の床版継手構造Head-barジョイントを採用することにより、橋軸方向(車両進行方向）継手は、鉄筋の配筋は不要となり、橋軸直角方向継手は、プレストレス導入なしで完成できるため、新設床版を置いて間詰モルタルを打設するだけで完成する。
これにより、施工性の大幅な向上と工期短縮を図ることができ、実施工段階で大きな成果を上げた。
効果
- 新方式の床版取替機と床版更新技術の開発により、週末だけでなく、渋滞予測に応じフレキシブルに全面開放する「計画的交通開放」を可能とした。
- 週末に工事をせず全面開放（道路交通規制なし）により、一般ドライバーや運送事業にも快適な交通を提供することができ、通行車両の渋滞削減へ最大の経済的効果を発揮できる。
- 週末は工事を行わないことにより、工事による渋滞をなくすことで、環境問題（CO₂削減）の解決に寄与。
- 「計画的交通開放」すなわち週末工事を行わないことにより、４週８閉所を実現し、働き方改革にも寄与。
大成建設は、新方式の床版取替機と床版更新技術による「計画的交通開放」が、インフラメンテナンスを通じた未来のあり方の一つとして、今後全国の高速道路リニューアル工事において積極的に行い、床版取替工事の安全性および生産性のさらなる向上を目指す。
