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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建設ITガイド > 『見える地域連携』をアシストするBIM−鹿児島第3地方合同庁舎での活用事例−

 

地域と連携して整備する鹿児島第3地方合同庁舎

鹿児島第3地方合同庁舎が、いま鹿児島(鶴丸)城跡の東に隣接する敷地において建設中です。この敷地は鹿児島の歴史・文化・観光を代表するエリアであり、日本の近代化の歴史の舞台ともなった「歴史と文化の道地区」内にあります。市の景観形成重点地区に指定されており、電線類が地中化され、石張り歩道、親水水路、イヌマキの植栽、ガス灯が整備され、潤いと安らぎのある街路空間が創出されています。さらに向かいの鶴丸城跡では、鹿児島の新たなシンボルとして高さ20mもの御楼門が復元整備中です。
 
こうした背景から、鹿児島県、鹿児島市と国(九州地方整備局、九州財務局)とで連携して、景観形成に配慮し、観光振興やまちづくりに貢献すべく、庁舎の整備内容を検討しています。本庁舎の外装デザインは気候・風土を活かした風格のあるものとし、さらに街並みに対して開放感を持つエントランスモールを設置したり、御楼門を展望できるよう既存のポケットパークをリニューアルしたりすることとしています(図-1、2)。
 
こうした地域連携を推進していくためには、地域の関係者との合意形成が不可欠です。関係者は必ずしも建築の専門家であるわけではないため、丁寧でかつ分かりやすい説明をしていくことが公共建築を発注する者には求められます。本事業ではBIM(BuildingInformation Modeling)で作成した動画を使用し、地域の関係者に寄り添った説明を行うことで、関係者の皆さまから高い評価を得ることができ、ひいては事業の必要性や地域に対する貢献について深い理解を示していただくことができましたので、ここにご報告します。
 

  • 図-1「歴史と文化の道」に面する鹿児島第3地方合同庁舎

  • 図-2 地域との連携策



 

設計段階での活用

(1)BIMのメリット
設計期間の中で、合意形成に要する時間は大きなウェイトを占めます。BIMは、街並みレベルからヒューマンスケールまで多様なレベルの空間情報を視覚で提供できるため、地域の方々に短時間でプロジェクトの内容をご理解いただき、的確なご意見をいただくことができます。さらに、ご意見を迅速に設計内容に反映させることで、設計の時間を短縮するとともに、設計の品質を大きく高めることができます。
 
 
(2)地域連携検討分科会でのBIM活用
鹿児島県、鹿児島市と国(九州地方整備局、九州財務局)で設立した「鹿児島市における国公有財産の最適利用推進検討会」の下に「鹿児島第3地方合同庁舎地域連携検討分科会」を設置し、地域連携方策を検討・決定しました。
 
敷地の向かいの鶴丸城跡では、鹿児島の新たなシンボルとして御楼門を建設する計画が進んでおり、その門を展望し、写真撮影などができる場所を設置してほしいという要望が地元からありました。そこで、公表資料から御楼門の各部寸法を推定し、現地調査により道路や標識、ガス灯、樹木などのデータをBIMモデルに入力して、展望スペースを検討し、既存のポケットパークをリニューアルする提案をしました(図-3)。御楼門を背景に記念撮影をするということは、ガス灯などの存在や、撮影者と被写体の位置も考慮しなければならないことにシミュレーションで気づき、ベストアングルとなる位置を展望スペースとして選定しています。
 

図-3 敷地内のポケットパークから御楼門を展望




(3)鹿児島市景観審議会でのBIM活用
景観設計に当たっては、鶴丸城との「見る、見られる」の関係を大切にし、地元の方がとても大切にしている「歴史と文化の道」に開かれた空間となっているか、BIMを使用して検討を行いました。
 
鶴丸城から「見られる」ことについては、城の中庭に立ったときに圧迫感を感じない建物高さであるかを確認しています。鶴丸城を「見る」ことについては、降灰や強い日差しへの対策として、エントランスモールを街路沿いに設置する計画としましたが、そこを通行する際に連続する柱の間から、御楼門や石垣が十分に見えるほどの開放感があるか、庇が御楼門の姿を隠すことがないかを検証しています(図-4)。
 
さらに、BIMを使用して、時刻の経過によって変わる街と庁舎の表情を確認しながら、色彩、階調、陰影、素材などを探求し、風格・安定感と繊細さ・上品さを併せ持つファサードを創りあげました(図-5)。
 
審議会では、BIMで作成したパースや動画を用いることで、委員の理解も深まり、コンセプトを強化するさまざまな具体の意見をいただき、デザインをより洗練されたものにすることができました。
 

  • 図-4 エントランスモールから見える御楼門や石垣

  • 図-5 ファサードのコンセプト


(4)ユニバーサルデザインレビュー
障がいを持つ方を含めさまざまな方に設計内容を確認していただき、ご意見をいただくユニバーサルデザインレビューを開催しました。
 
BIMモデルにより、建物や各施設へのアプローチでリアルな疑似体験をしていただくことができたことは、レビューを行う上での大きな進歩でした。
 
初めて訪れる人にとって、エントランスの位置はわかりにくいものです。エントランスはモール上に2カ所設置していますが、玄関前の天井を下げて、段差を付けることにより、出入り口の位置が視認しやすく、迷わず玄関へ向かえることを確認しました。
 
一方、自動ドアは当初、木の良さをアピールするために木製のフラッシュ戸としていましたが、視覚障がい者から対面の歩行者と衝突する危険性が指摘されましたので、透明ガラスへ変更しました。
 
その他、エレベータやトイレの位置が分かりやすいこと、誘導・案内サインが適切な位置・高さ・表現となっていることをBIMモデルの疑似体験により確認しています。
 
 

着工・事業経過報告会での活用

本事業は鹿児島市民の心のよりどころである鶴丸城の向かいに建設するため、地域の方々の関心が高く、さらに約4年強もの長期間の工事を行うことから、完成を待たずに事業内容を関係者や市民に説明する必要がありました。そのため、着工式に併せて、事業の経過を詳しく報告する場を設けることとしました。
 
報告のポイントは、「歴史と文化の道地区の景観を守る」ためにさまざまな工夫をしていることと、観光振興やまちづくりに貢献するために「地域との連携」に取り組んでいることの2点です。
 
前者については、本敷地は一帯の景観風致を一体的に維持・保全し、後世に継承するために、高さ20mの高度地区が設定されています。敷地内に高層の建物をつくることができないので、工事を二期に分け、新庁舎を建てて、入居官署を移転し、旧庁舎を壊すというプロセスを2回繰り返す計画としています。そのため、企画段階では事務室面積の整合を図りつつ、官署の移転順を決めるという複雑な検討をすることとなりました。
 
さらに、庁舎は5階建てであり、階高に厳しい制限があるなか、天井高さと柱間寸法を確保するためには、建物の構造と設備を総合的に検討する必要がありました。結果、鉄筋コンクリート造と鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造の3種の構造を、柱梁の部分部分できめ細かく使い分けるようにしています。
 
こうした企画・設計時に凝らした工夫を分かりやすく伝えるためにBIMを活用して、スライドや動画を作成しました。
 
二期に分けての整備については、施工の手順を解体も含めてステップごとに、動画で説明することにしました(図-6)。建築工事受注者が本社に体制を構築し、設計者からBIMデータを引き継いで、動画を作成しました。構造体や外装などの各部位がデータ化されていたため、例えば鉄骨建て方段階、コンクリート打設段階などのステップ図を作成する手間が省力化できたとのことです。
 

図-6 施工のステップ




厳しい高さ制限を技術的な工夫によりクリアしたことについては、BIMモデルより3種の構造を色分けした俯瞰と内部の構造フレームの透視図を作成し、「ハイブリッド構造により、執務空間を損なうことなく、建物の高さを抑えることを実現した」と説明するようにしました(図-7)。
 
 
図-7 構造フレーム SRC造グレー、S造 黄色・緑色、RC造 ピンク


2点目の「地域との連携」については、地域の歴史を踏まえて計画していることを示すために、紹介する動画の冒頭に、本敷地が鶴丸城下の馬場、火除地であった江戸時代から、官庁施設、文化施設、教育施設が形成されていく変遷を古地図や航空写真を利用して説明するようにしました(図-8)。
 

図-8 航空写真による「歴史と文化の道」地区周辺の変遷 (「空中写真データ(国土地理院)」部分 一部加筆)




地域連携方策のひとつであるエントランスモールについては、モールを歩いたときに庁舎のエントランスや御楼門がどのように目に映るのかをウォークスルー動画で表現しています。次に、観光客の視点でこの一帯をそぞろ歩きしたり、ポケットパークで立ち止まったりしたときに見える光景の動画を挿入し、最後には、庁舎をぐるりと空から一周見まわしたときのシーンを描くことで、ファサードが、地域の景観と調和していることを示して終わりとしています(図-9)。
 

図-9 地域連携方策を紹介する動画




こうして作成した動画は、着工式の最後にナレーションを加えて、参加者に見ていただきました。三反園鹿児島県知事からは、「御楼門を展望できるポケットパークが整備されることは鹿児島の観光振興に寄与することになるので感謝する」との言葉を賜りました。鶴丸城御楼門復元実行委員会の玉川委員長からは、「整備局は私たちの要望を真摯に受け取っていただき、かなり苦労したかもしれないが、地域の歴史を尊重し、地域に寄り添った庁舎としていただいた。今後のまちづくりにも貢献するものとしていただき、整備局には心から御礼を申し上げたい」との感謝の言葉をいただきました。
 
 

設計段階での活用

本事業では先述の建築工事受注者のほか、電気・機械の工事受注者もBIMを活用しております。鹿児島ではBIMモデルを作成できる技術者が少ないため、建築工事受注者は大阪の本社でモデルを作成し、ビデオ会議システムを通して、本社と現場でコミュニケーションをとって、施工の検討を行っています。2次元で施工図を検討する場合はA1版程度の大きさが必要ですが、3次元モデルでは問題箇所が把握しやすいため、ディスプレイ越しでも担当者間の意思疎通は十分にとれています。こうすることで、BIMモデラーが不足する地方の施工現場でもBIMの成果が十分に得られています。
 
建築・電気・機械のデータをひとつのBIMモデルに結合させ、干渉チェックを実施しています。梁下配管スペースの不足、配管の構造体への貫通、配管同士の交差、ダクトと配管の接触、配管の天井面への露出、コンクリート躯体と機器の近接など施工上支障となる部分を立体的に把握し、建築・電気・機械工事受注者間で対処案の協議をし、施工の手戻りを最小限としています。(図-10、11、12
 
また、本躯体はハイブリット構造のため、柱まわりには鉄骨・鉄筋・鋼製デッキ等が錯綜しており、複雑なものとなっています。BIMを使用していない躯体下請け施工者へは、施工手順を示す動画を作成し、関係者間で確認をし合っています。
 
施工状況が進みましたら、こうして作成したBIMモデルを現場見学会などさまざまな機会で活用していくことも考えています。
 

  • 図-10 天井裏(配管と鉄骨梁の干渉)

  • 図-11 源機械室の断面確認

  • 図-12 総合図(配管・配線・機器インプット)



 

おわりに

地域の関係者が同じ理解の下、意見を交換することにより、関係者間で良好な関係が築かれ、満足度の高い地域連携となります。連携により、発注者が想像のつかないような地域関係者の思い入れや、地域ならではの意見が得られ、整備内容がよりよいものに昇華され、最終的には関係者間の心の理解や共感につながります。
 
建築専門技術者ではない地域の関係者に我々と同じ理解をしていただくためには、完成した姿をイメージしていただくことが重要であり、BIMはそのための有効なツールであることを改めて実感しました。
 
今回、BIMモデルを作成したのは、設計者や工事受注者ですが、地域の関係者や入居官署に理解をしていただける資料を作成していくためには、発注者も「伝え方」を十分に磨いていく必要があり、BIMの使いこなし方についてある程度習熟しなければならないと感じています。
 
 
 

国土交通省 九州地方整備局 営繕部

 
 
【出典】


建設ITガイド 2020
特集2「建築BIMの”今”と”将来像”」



 
 
 

 

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