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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建築施工単価 > 建設工事標準請負契約約款の改正について

 

1. はじめに

平成29年の第193回国会(常会)において,「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)」が成立し,明治の民法制定以来およそ120年ぶりに民法の債権関係部分について全般的な改正が行われた。
 
これを受け,平成30年8月6日に開催された中央建設業審議会において,中央建設業審議会に建設工事標準請負契約約款改正ワーキンググループを設置することが決定された。平成31 年4月より建設工事標準請負契約約款の改正について計5回にわたって審議が行われ,その改正案がとまとめられた。この改正案について,令和元年12月13日の中央建設業審議会において審議が行われ,建設工事標準請負契約約款の改正を決定,同月20日にその実施が勧告されたところである。
 
なお,令和元年6月に建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律(令和元年法律第30号)が成立したことを踏まえ,この改正法の内容についても約款に反映している。
 
本稿においては,主な約款改正の内容について解説する。
 
なお,今回の約款の改正の経緯や改正民法下における本約款の譲渡制限特約や担保期間に係る考え方については,国土交通省のHP1で資料や議事録を公開しているので参照されたい。


1 http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000092.html
 
 

2. 主な改正内容について

(1)契約書の記載事項について

令和2年10月より施行される改正建設業法において,工事を施工しない日又は工事を施工しない時間帯を定める場合は,その内容を契約書に記載することとされたことから,約款においても契約書部分に「工事を施工しない日又は工事を施工しない時間帯」を追加した。

(2)譲渡制限特約について

①民法の改正内容
債権譲渡による資金調達は,特に中小企業の資金調達手段として注目されているところであるが,旧民法では,譲渡制限特約が付された債権の譲渡は無効であり,円滑な資金調達を阻害していることが指摘されていた。このため,今回の民法の改正により,譲渡制限特約が付されている場合であっても,これによって債権の譲渡の効力は妨げられないとされた。
 
このように,譲渡制限特約が付された債権を譲渡した場合であっても,その譲渡は有効とする一方,譲渡制限特約を付する一般的な理由とされる弁済の相手方を固定するという債務者の利益にも配慮を行っている。すなわち,債権の譲受人が譲渡制限特約に悪意又は重過失であるときは,債務者は譲受人に対する債務の履行を拒否することができ,また譲渡制限特約が付された債権が譲渡されたときは,その債権に相当する金額を供託することができる(改正民法第466条の2第1項)こととし,弁済の相手を誤ることを防止する措置を講じている。
 
 

②公共約款の改正内容
建設工事における発注者の工事完成の期待を担保する必要があること,多くの公共工事では前金払や部分払等の資金調達手段が確保されていることなどを踏まえ,公共約款では以下のとおり改正民法下でも譲渡制限特約を維持した上で,請負代金債権の譲渡を契約の解除事由として新たに規定している。
 
まず,「受注者は,この契約により生ずる権利又は義務を第三者に譲渡し,又は承継させてはならない。ただし,あらかじめ,発注者の承諾を得た場合は,この限りでない。」とするこれまでの譲渡制限特約を改正民法下でも引き続き維持している。その上で,「受注者が前払金の使用や部分払等によってもなおこの契約の目的物に係る工事の施工に必要な資金が不足することを疎明したときは,発注者は,特段の理由がある場合を除き,受注者の請負代金債権の譲渡について,第1項ただし書の承諾をしなければならない」こと,「受注者は,前項の規定により,第1項ただし書の承諾を受けた場合は,請負代金債権の譲渡により得た資金をこの契約の目的物に係る工事の施工以外に使用してはならず,またその使途を疎明する書類を発注者に提出しなければならない」ことを規定した。
 
この2つの規定は,使用する場合と使用しない場合を選択することができるが,前金払や部分払により工事の施工を進めるのに十分な資金が供給されていると判断される場合であれば,この2つの規定は削除して利用することで差し支えないものと考えられる(図−1)。
 

【図−1 民法改正の内容と約款の改正(公共)】




 

③民間約款(甲・乙),下請約款の改正内容
民間約款(甲・乙)及び下請約款については,建設工事の完成の期待を担保する必要性は公共工事と同様であるため,現行の譲渡制限特約を維持する場合と資金調達目的での譲渡については認める場合を選択して条文を使用できることとした。使用については,工事の着手にあたり必要な費用の程度や原材料費や労務費など施工に必要な経費の請負代金に占める割合などの工事の特性や受注者の信頼性,資金状況など個別の事情を踏まえ,当該工事が適正に施工され,完成させるためにどちらが適切であるかという観点から判断する必要がある。
 
資金調達目的の譲渡を認める場合は,「この契約の目的物に係る工事を実施するための資金調達を目的に請負代金債権を譲渡するとき(前払や部分払等を設定したものであるときは,前払や部分払等によってもなおこの契約の目的物に係る工事の施工に必要な資金が不足することを疎明したときに限る。)は,この限りでない。」こととし,譲渡した場合はその資金を当該工事の施工以外に使用してはならないこととしている。この場合に発注者は,必要があると認められるときは,受注者に対し,その資金を当該工事の施工に適正に使用していることを疎明する書類の提出などの報告を求めることができることをあわせて規定している。
 
 

(3)工事現場に設置する者及びその通知について

改正建設業法において,監理技術者を補佐する者について規定されたところ,この者を設置する場合はこの者の氏名を発注者に通知することとした。
 

(4)著しく短い工期の禁止について

改正建設業法において,著しく短い工期が禁止されたことを踏まえ,契約変更を行う場合においてもこの工事に従事する者の労働時間その他の労働条件が適正に確保されるよう,やむを得ない事由により工事等の実施が困難であると見込まれる日数等を考慮しなければならないこととした。
 
なお,本条は改正建設業法の施行日にあわせて,令和2年10月1日からの適用とされているが,働き方改革を早期に進める観点から,可能な限り早期に適用することが望ましい。
 

(5)契約不適合責任について

①民法の改正内容
今回の民法の改正において,これまで用いられていた「瑕疵」という用語が「契約の内容に適合しないものである」ことと改められた。
 
また,これまでは,その瑕疵が重要である場合には,その修補に過分の費用を要するときであっても,受注者が修補義務を免れないとされていたが,現代社会では,建築技術の進歩等により,高額の費用をかければ修補が可能な場面も想定されるようになり,過分な費用を要する場合であっても修補義務を免れないとすると,受注者の負担が過大となる場合が想定されることから,この規定は削除された。
 
さらに,引き渡された目的物が契約の内容に適合しないものであるときにおいて,発注者がその目的物で了承する代わりに,請負代金を引き渡された目的物の実際の品質に見合った金額にまで減額することを請求することを認めることとされた。
 
 

②約款の改正内容
約款の瑕疵担保責任に関する規定も民法改正の内容に沿った規定としている。「瑕疵」については「種類又は品質について契約に適合しない」ものとされ,この場合,修補又は代替物の引渡しによる履行の追完を請求できることとし,発注者は受注者に対して相当の期間を定めて履行の追完の催告をし,その期間内に履行の追完がないときは,発注者はその不適合の程度に応じて代金の減額を請求できることとされた(図−2)。
 

【図−2 民法改正の内容及び約款の改正内容について】



(6)発注者の契約解除権について

①民法の改正内容
改正民法において,債権者の解除権については催告解除と無催告解除に分けて規定された。なお,催告解除については,解除の根拠とする債務不履行の内容が軽微であるときは解除できないこととされている。
 
また,これまでは建物その他の土地の工作物について工事完成後に瑕疵があることを理由に発注者は契約を解除することができなかったが,改正民法でこの規定は削除された。
 
 

②約款の改正内容
約款においても発注者の解除権について催告解除と無催告解除に分けて規定を行った。催告解除については改正民法同様,債務不履行の内容が軽微であるときは契約を解除できないこととし,無催告解除については,民法に規定されている解除事由を約款においても建設工事の事情を踏まえて規定した。また,改正民法において,完成後の契約解除を禁止する条項が削除されたことを踏まえ,約款において完成後の解除事由として,催告解除に「正当な理由なく,履行の追完がなされないとき」,無催告解除に「引き渡された工事目的物に契約不適合がある場合において,その不適合が目的物を除却した上で再び建設しなければ,契約の目的を達成することができないものであるとき」を追加した。
 
なお,契約の解除について,その根拠が発注者の責めに帰すべき事由によるものであるときは,契約を解除することはできないこととした。また,(2)の譲渡制限特約に違反した場合について,契約の解除事由として明示することとした。
 
 

(7)解除に伴う措置について

契約の解除に伴う措置として,原則として原状回復義務が生じるところ,工事の完成後の契約の解除については,除却するか否か,除却費用をどのように負担するかなど,それぞれの工事の事情に応じて決定すべき内容が多く,約款において一律に規定することが困難であることから,工事の完成後の契約の解除に伴う措置については,民法の規定に基づいて,受発注者双方が協議により決定することとした。
 

(8)契約不適合責任の担保期間について

①民法の改正内容
旧民法では,請負人の瑕疵担保責任の存続期間は,引渡しから1年である(第637条第1項)が,建物その他の土地の工作物については,その工作物又は地盤の瑕疵について,引渡しの後5年間その担保責任を負うこととされ,石造,土造,れんが造,コンクリート造,金属造その他これらに類する構造の工作物については,その担保期間は10年とされていた(第638条第1項)。また,この場合には,工作物が瑕疵によって滅失し,又は損傷の時から1年以内に,修補等による権利行使をしなければならないとされていた(同条第2項)。
 
改正民法においては,売買の規定に統合する形で第638条は削除され,引渡しの時から1年以内に,かつ,その権利の行使までしなければならないとするのは,注文者の負担が過大であるとされたことから,注文者は目的物の種類又は品質に関して仕事の目的物が契約の内容に適合しないことを知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しなければ,その権利を行使することができないとされた。
 
これにより,改正民法下では,受注者は,この「契約の内容に適合しないことを知った時から1年以内の通知」と消滅時効の一般原則に従い,契約不適合に関する責任を負うこととなった。なお,消滅時効についても併せて見直しが行われ,債権は,「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使をしないとき」又は「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」は時効によって消滅することとされている(改正民法第166条第1項)。
 
 

②約款の改正内容
ア)約款における契約不適合の責任期間
建設工事は監理者等の検査等のもとに施工され,工事完成検査の際には専門家により厳重な確認がなされることにより不適合の部分はほとんど修補されて引き渡され,契約内容と不適合な部分が生ずるおそれは少なく,また,民法の担保期間を適用すると受注者を長期間不安定な地位に置くこととなるなどの理由により,民法の担保期間を約定で2年に短縮していたところ,この事情は民法改正によって変わるものではないため,引き続き,契約不適合の担保期間を原則として2年とし,発注者は,工事目的物の引渡しから2年以内でなければ,契約不適合を理由とした履行の追完の請求,損害賠償の請求,代金の減額の請求又は契約の解除(以下「請求等」という。)を行うことはできないこととした。
 
この例外として,設備機器本体等の契約不適合については,引渡しの時に,発注者が検査して直ちにその履行の追完を請求しなければ,発注者は契約不適合を理由とした請求等を行うことはできないこととしている。ただし,一般的な注意のもとで発見できなかった契約不適合については,引渡しから原則として1年が経過する日までは請求等を行うことができることとしている。
 
 

イ)請求等の方法
請求等を行う場合は,具体的な契約不適合の内容,請求する損害額の算定の根拠等,当該請求等の根拠を示して,受注者の契約不適合責任を問う意思を明確に告げることで行うことを規定している。これは,旧民法下で権利保存するために必要とされていた請求内容が示されていた判例(最判平成4年10月20日)を参考に,約定で権利保全の方法を規定したものである。
 
改正民法では,権利を保全するためにここまでの負担を発注者に求めることは過剰であるとされ,目的物が契約の内容に適合しないことを通知することで足りるとされたが,本約款においては,建設工事の特性を踏まえた以下の理由により,契約不適合責任に関する発注者の権利を保全するために,これまでの判例と同様の請求が必要であるとしたものである。
 
「 通知」により権利が保全されるとした場合,その保全期間は消滅時効に従うこととなるが,その場合には,通知から実際の権利行使までの期間が長期となり,期間内の使用や経年変化により,通知を行った時点での契約不適合の内容や程度が不明確となる可能性があること。
 
上記の場合に,消滅時効が成立するまでの期間中は受注者が不安定な地位に置かれ続けることとなり,受注者に不相当な負担を課することとなる可能性があること。
 
直ちに請求を行うことが可能である発注者に対しても通知を課すことは二度手間となること。
 
 

ウ)期間内の請求とみなす場合
上記のとおり,本約款においては権利を保全するために請求等を行う必要があるとしたところ,ア)の担保期間の終了間際に契約不適合が発覚した場合にまで請求等を行うことを求めることは酷であり,実態上もこのような短期間で請求まで行うことは難しいと考えられる。そのため,通知によって権利保全されるとした民法改正の趣旨も踏まえ,ア)の契約不適合に係る請求等が可能な期間(以下「契約不適合責任期間」という。)のうちに契約不適合を知り,その旨を受注者に通知した場合で,発注者が当該通知から1年が経過する日までに,イ)の方法により請求等を行ったときは,契約不適合期間内に請求を行ったとみなすこととしている。この場合の「通知」は,単に契約との不適合がある旨を抽象的に伝えるのみでは足りず,細目にわたる必要はないものの不適合の内容を把握することが可能な程度に,不適合の種類・範囲を伝えることが必要である。この「通知」の内容は,商法旧第526条における通知の意義に関する判例に即して規定したものであり,イ)に規定する「具体的な契約不適合の内容」よりも抽象的な内容で足りるものである。
 
 

エ)故意又は重過失の場合
契約不適合が受注者の故意又は重過失の場合は,受注者を保護し担保期間を短縮する必要がないことから,ア)からウ)までの規定を適用せず,民法の原則に従うことを規定したものである。
 
 

オ)民法第637条の不適用
ア)からウ)までの規定については,民法第637条第1項の発注者がその不適合を知った時から1年以内に通知しなければ,その不適合を理由として請求等を行うことができないとする規定を適用しないこととすることを規定している。これは,引渡しからの客観的な期間制限を設けた上で民法第637条第1項を適用すると規定が複雑となることや担保期間を原則2年としているところ,知った時から1年以内を併存させても適用範囲が限定的となり,それほど意味を持たなくなることなどを踏まえたものである。
 
 

カ) 請求等ができない場合
契約不適合が支給材料の性質又は発注者若しくは監督員の指示により生じたものであるときは,発注者はこの契約不適合について,請求等を行うことができないことを規定している。ただし,受注者がその材料又は指示の不適当であることを知りながらこれを通知しなかったときはこの限りでないこととしている。
 
 

3. おわりに

建設工事標準請負契約約款の改正部分は,改正民法の施行日とあわせ,改正建設業法の規定に係る部分を除き,令和2年4月1日としている。実際に新しい民法の規定のもとで,契約行為が行われることによって,建設工事の請負契約についても新たな判例などが蓄積されていくものと考えられるが,まずは,改正民法下での本約款の運用が円滑に進むよう改正の内容やその趣旨の周知を図っていく。
 
 
 

国土交通省 土地・建設産業局 建設業課

 
 
 
【出典】


建築施工単価2020春号



 
 
 

 

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