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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > BIM > BIMにおける国際的なプロフェッショナル認証 -buildingSMARTのBIMプロフェッショナル認証が国内で始動-

はじめに

一般社団法人buildingSMART Japan(以下bSJ)は、建設業界におけるデータ流通・相互運用の促進を目的として、国際組織buildingSMART International(bSI)の日本支部として1996年に設立され、BIMデータの国際標準規格であるIFC(Industry Foundation Classes)や、BIM推進に関連する標準化活動を、国際標準化機構(ISO)と協調しながら推進してきている。
BIM普及を業界全体に展開していくには、ワークフローや情報マネジメントを如何に体系的、組織的に実施していくかが重要な課題の一つであり、そのためにこれまで国内外においてさまざまなBIMガイドラインや標準規格が発行されてきている。
2018年には、BIMの情報マネジメントに関する国際標準(ISO19650)が発行され、国内においては、2020年3月に、建築BIM推進会議から、「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」が公開された。
 
このような業界全体のBIM推進へ対応するため、bSIはBIMの基本的な概念、用語やプロセス、関係者の役割などの定義を明確にし、BIMに携わる個人の知識、技能のレベル向上を図るため、「openBIMプロフェッショナル認証(通称、BIMプロフェッショナル認証)」を2018年に開始した。
 
本稿では、BIMプロフェッショナル認証の全体像と日本国内での展開状況、buildingSMARTが提唱するopenBIM(オープンBIM)の概念、オープンBIM推進の鍵となるBIM情報マネジメント国際標準のISO19650の概要などについて紹介する。

 
 

buildingSMARTプロフェッショナル認証とは

bSIのopenBIMプロフェッショナル認証は、一貫性のある世界共通なBIM推進環境を実現するために、bSIが策定した体系的な学習成果単元に基づくBIM関連の基本的知識、共通概念などの獲得の機会を、認定されたトレーニングプロバイダを通じて提供することを目的としている(図-1)。

buildingSMART プロフェッショナル認証の体制

図-1 buildingSMART プロフェッショナル認証の体制



 

【buildingSMARTプロフェッショナル認証のメリット】
・ISO19650シリーズ、オープンBIMなどの基礎的な理解、用語の知識の獲得
・国際標準の原則に基づいて開発された、一貫したトレーニングによる技能の向上・国際的に認知された共通の学習成果による技能の証明

 
 

【openBIMプロフェッショナル認証の構成】
openBIMプロフェッショナル認証は基礎編と実践編から構成され、技能・技術を学習する際のスキルレベルを定義しているBlooms分類法(知識・理解・応用・分析・評価・創造)との対応が定義されている(図-2)。
 
・基礎編:buildingSMARTプロフェッショナル認証の第1レベルで、主に「知識と理解」を問う形式で、基本的な理解レベルを認定する。
・実践編:基礎編に続く上位レベルのbuildingSMARTプロフェッショナル認証は、応用学習と実践的な専門知識を含む総合的なレベルのスキルを認定することを予定している。
 
2018年に基礎編の初級レベルとなるベーシック(Basic)カリキュラムの認証がドイツ支部から開始された。
続いてCOBieカリキュラムが開始され、現在、設計者(Designer)、建物オーナー・運営者(Owner/Operator)カリキュラムの策定が進んでいる(図-3)。
実践編に関しては、現時点でbSIプロフェッショナル認証委員会が検討を進めている状況である。

buildingSMART プロフェッショナル認証の体制

図-2 buildingSMARTプロフェッショナル認証の構成(基礎編・実践編)


buildingSMART プロフェッショナル認証の体制

図-3 buildingSMART プロフェッショナル認証の体制



 

【オープンBIM学習成果(Learning Outcome)について】
openBIMプロフェッショナル認証の基礎編ベーシックカリキュラム(Foundation Basic)においては、オープンBIMに対しての学習成果項目を定義している(図-4)。

buildingSMARTプロフェッショナル認証基礎編のカリキュラム構成

図-4 buildingSMARTプロフェッショナル認証基礎編のカリキュラム構成



 

【トレーニングプロバイダと国内展開について】
openBIMプロフェッショナル認証のトレーニング(講習)は、buildingSMART各支部で登録されたトレーニングプロバイダから受講することができる。
トレーニングプロバイダは、bSIが提供する学習成果フレームワーク、オープンBIM知識体系などに基づくトレーニング計画を作成し、支部の審査を通ることにより、bSIの認定トレーニングプロバイダとして登録されることになる。
bSJは2021年春からトレーニングプロバイダの募集を開始し、国内の4社からの申請があり、2021年12月時点で1社がトレーニングを開始している状況である。

 
 

【各国の状況】
openBIMプロフェッショナル認証は、オーストリア、ベネルクス、中国、フランス、ドイツ、香港、イタリア、日本、ノルウェー、ロシア、スペイン、スイス、米国の各支部において展開されている(図-5)。
各支部では、各国語のトレーニングコンテンツ、オンライン認定試験環境が準備され、トレーディングプロバイダー数、受講者と合格者数も年々伸びてきている(2021年12月時点:トレーニングプロバイダは113、合格者は5178)。

オンラインテストプラットフォーム(左下)、トレーニングプロバイダおよび合格者一覧ページ(図右)

図-5 オンラインテストプラットフォーム(左下)、トレーニングプロバイダおよび合格者一覧ページ(図右)



 

BIM情報マネジメントの国際標準ISO19650
openBIMプロフェッショナル認証の学習成果単元の一つであるISO19650について、その概要を以下に示す。
英国では、2011年のBIM導入推進政策開始により、BIMプロセスにおける発注者や受注者の役割、BIMプロセスのさまざまなタスクに関する用語や役割の整理や定義を行うため、BIM導入へのガイドライン資料を英国標準BS/PAS1192シリーズとして策定した。
PAS1192-2:2013は英国規格協会によって2013年に発行され、特にBIMプロジェクト推進に焦点を当て、情報マネジメント要件を規定した。
その後、BIMプロジェクトにおける情報マネジメントの国際標準であるISO19650-1とISO19650-2が、BS1192シリーズに基づいて2018年末に発行されることとなった。
 
ISO19650では、プロジェクト開始段階で発注者側の情報要件を規定し、その内容を受注者側がBIM実行計画(BEP)に取り込むことや、プロジェクト期間中の情報をPIM、竣工後の情報をAIMとして、発注者と受注者の情報要件・役割を明確にした概念となっていることが特長の一つである(図-6)。
 
ISO19650で導入された主要な用語を以下に示す。
 
・PIR(Project Information Requirements):プロジェクト情報要件
・AIR(Asset Information Requirements):資産情報要件
・EIR(Exchange Information Requirements):交換情報要件
・BEP(BIM Execution Plan):BIM実行計画(EIRの内容に対応)
・CDE(Common Data Environment):共通データ環境
・PIM(Project Information Model):プロジェクト情報モデル(PIRと対応)
・AIM(Asset Information Model):資産情報モデル(AIRと対応)

BIM情報マネジメントの国際標準ISO19650の概要

図-6 BIM情報マネジメントの国際標準ISO19650の概要



 
buildingSMARTが推進するオープンBIM
BIM情報マネジメントの国際標準ISO19650は、buildingSMARTが推進するオープンBIM(openBIM)においても重要な構成要素となっている。
以下にオープンBIMの特長を示す。
 
・オープンで中立的な国際標準を活用。
・多種多様なソフトウエア、ソリューションが参加できる。
・長期的かつ持続可能な相互運用性を実現する。
 
オープンBIMにおいて活用される国際標準として以下のものが挙げられる。
 
・BIM情報マネジメントの国際標準ISO19650
・BIMデータの国際標準ISO16739(IFC:Industry Foundation Classes)
・BIMデータ連携仕様記述に関する国際標準ISO29481(IDM:Information Delivery Manual)
・辞書情報デジタル表現の国際標準ISO12006(IFD:International Frameworkfor Dictionaries)
 
ISO19650で規定されているAIR,PIR,EIRなどの情報要件に対応したBIM実行計画(BEP)を作成する際、PIMを構築する各BIMデータ作成タスクや情報交換ポイントにおいて、必要なデータの内容やデータ連携仕様を記述するためにIDMを活用することができる。
BIMデータ連携の場面においては、IDMの内容を取り込んだMVD(Model View Definition:IDMの内容をIFCと対応付ける手法)に対応したBIMソフトウエアのIFCデータ入出力によって、計画された情報伝達が可能となる(図-7)。
 
今後の日本国内におけるopenBIMプロフェッショナル認証普及のため、bSJはopenBIMプロフェッショナル認証の基本テキストとして、bSIが監修した書籍(英語版)の日本語版を出版する。
bSIプロフェッショナル認証委員会関係者が執筆に関わり、学習成果内容を網羅した内容となっている(図-8)。

ISO19650とオープンBIMの接点

図-7 ISO19650とオープンBIMの接点


ISO19650とオープンBIMの接点

図-8 オープンBIMの教科書「The BIM Manager」



 

今後の展望

本稿では、2021年にbSJで開始したオープンBIMに基づくbuildingSMARTのopenBIMプロフェッショナル認証についての概要、オープンBIMと深い関係にあるBIM情報マネジメント国際標準ISO19650などの概要を説明した。
 
BIMの展開は、設計、施工フェーズを超えて、製造業、サプライチェーン、インフラストラクチャー、運用・維持管理、スマートシティなどの領域に広がってきている。
BIMデータの連携は、建設産業の関係者から、より広範囲な製造業、IoT・デジタルツインやロボット技術を伴うサービス業にも拡張していく状況である。
産業横断的な情報要求をBIMデータ連携で実現していくためには、今回紹介したISO19650や、IFC,IDMなどの国際標準に基づいたオープンBIMの手法を、より広い関係者に広げていくことが重要となる。
今後、日本のデジタルトランスフォーメーションDX実現を加速するには、オープンBIMの概念を中心に据えたbuildingSMARTプロフェッショナル認証の展開が鍵となっていくと考えている。
 
 

参考文献:
・buildingSMART Professional Certification:https://education.buildingsmart.org/
・トレーニングプロバイダ・合格者一覧:https://education.buildingsmart.org/registry/ 
・bSJオープンBIM基礎講座:https://youtu.be/0XQmU1tIt2g
・ISO19650-1:2018,BIMを使用する情報マネジメント 第1部:概念及び原則

 

 

一般社団法人 buildingSMART Japan 理事・技術連携委員会委員長 buildingSMART Fellow
足達 嘉信 博士(工学)

 
 
【出典】


建設ITガイド 2022
特集2 建築BIM
建設ITガイド_2022年


 

最終更新日:2023-07-14

 

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