はじめに
首都高速道路の日本橋区間地下化事業は,日本橋川上空に架かる高速都心環状線の神田橋JCT~江戸橋JCT間(約1.8km)の更新事業であり(図-1),日本橋川周辺で始まっている新しいまちづくりと一体となって日本橋川沿いの首都高速道路を地下化し,既存の高架橋を撤去する事業です。
地下化による構造物の更新を行い,これにより,日本橋川周辺の景観や環境の改善に寄与すると考えています。
今回は,日本橋区間地下化事業の概要および最初に着手する本格工事である呉服橋・江戸橋出入口撤去工事の概要について報告します。

図-1 首都高速道路 日本橋区間地下化事業位置図
1.事業概要
高速都心環状線の竹橋JCT~江戸橋JCTは,1964年の東京オリンピック前に建設され,1963年の開通から半世紀以上が経過しています。
この区間は,1日あたり約10万台の車両が走行する過酷な使用状況にあるため,コンクリート床版の亀甲状のひび割れや鋼桁の切欠き部の疲労き裂等の重大な損傷が多数発生していることから,構造物の更新が必要になっています。
このような状況を踏まえ,2014年に大規模更新(高架での造り替え)として事業化しました。
その後,2016年には日本橋川沿いの3地区が国家戦略特区の都市再生プロジェクトに追加されたことにより,日本橋周辺のまちづくりの機運が高まり,2017年7月,国土交通大臣と東京都知事より,民間のまちづくりと連携しながら日本橋周辺の首都高速道路の地下化に向けて取り組むことが発表されました。
これを受け,2017年11月~2018年7月に国土交通省,東京都,中央区,首都高速道路株式会社による「首都高日本橋地下化検討会」が行われ,神田橋JCT~江戸橋JCTまでの約1.8kmの区間を対象に,地下ルート案,事業スキーム,概算事業費がとりまとめられました。
その検討案を基に関係機関との協議・調整を進め,2019年10月の都市計画決定を経て,2020年3月に国土交通省が事業許可,2020年4月に東京都が都市計画事業認可を行い,首都高速道路株式会社が事業者として着手しました。
地下化事業では,神田橋JCT~江戸橋JCT間を地下ルートで整備します。
西側では,既設の高速八重洲線を都心環状線の本線として活用して地下に潜り,約1.1kmのトンネルを構築します。
八重洲線とは一石橋の地下で分岐し,日本橋の下で日本橋川右岸から左岸へ移ります。
江戸橋JCTの下の日本橋川左岸付近にトンネルの東側の坑口が設けられ,江戸橋JCTの東側で高架橋として高速6号向島線に接続します(図-2)。
周辺の再開発計画とは,道路として利用する範囲を立体的に定める「立体道路制度」を活用し,建物の地下にもトンネルを整備する計画となっています。
事業は,本体施工に向けた準備工事である「地下埋設物移設」と「出入口の撤去工事」から工事着手し,2035年度の地下ルート開通,2040年度の完成(高架橋撤去)を目標に進めていく予定です(図-3)。

図-2 日本橋区間地下化ルートイメージ

図-3 事業工程
2.呉服橋・江戸橋出入口撤去工事の概要
現在,日本橋区間地下化事業における最初の段階として,地下埋設物移設と出入口撤去工事に着手しています。
そのうち,出入口撤去工事については,最初の本格工事として2020年11月に工事契約し,2021年4月から工事着手したところです(図-4)。
出入口撤去工事は,地下ルートを整備するにあたり,今後日本橋川内で工事が必要となることから,日本橋川の流れを現状より悪化させないようにするため,将来的に廃止となる呉服橋出入口と江戸橋出入口を先行して撤去するものです。
出入口部を撤去し,日本橋川内の橋脚本数を減らすことで,日本橋川の水位を下げて,治水上の影響を低減し,今後の工事を行うことが可能となります(図-5)。
撤去するのは,呉服橋と江戸橋の入路,出路とその本線分合流部にあたる橋梁の床版と桁,およびそれらを支える橋脚であり,今回の工事で全7本の橋脚を撤去します(図-6)。
また,橋脚の撤去に伴い必要となる既設構造物の補強も実施します。
この出入口撤去工事を行うにあたり,2021年5月10日(月)午前0時に,高速都心環状線の呉服橋出入口,江戸橋出入口を廃止します。
両出入口は,5月10日の廃止以後は利用できなくなることから,周辺の出入口への利用転換が必要となります。
これまで呉服橋出入口,江戸橋出入口を利用していたお客様には,ご不便をおかけすることとなりますが,それぞれ図-7,図-8に示す周辺の代替出入口をご利用いただけますよう,ご理解とご協力をお願いいたします。

図-4 呉服橋・江戸橋出入口撤去工事位置図

図-5 出入口撤去工事の目的



図-6 出入口撤去工事範囲図

図-7 呉服橋出入口の主な代替出入口

図-8 江戸橋出入口の主な代替出入口

おわりに
本事業は,今回紹介した出入口撤去工事のあとに実施する本体トンネル工事においても,さまざまな施工の工夫が求められる工事が継続します。
地下ルートの整備にあたっては,近接する地下鉄への影響,日本橋川への治水上の影響も考慮した施工が求められます。
また,周辺の再開発事業と密に調整を行いながら工事を進める必要があります。
本体シールドトンネル工事では,干渉する都心環状線の橋脚基礎を撤去する必要がありますが,都心環状線の交通機能を確保しながら施工するため,仮受橋脚の設置をしたうえで既設の橋脚基礎を撤去するなど,さまざまな工夫が必要となります。
また,日本橋川沿いの5地区および常盤橋地区との再開発事業が一斉に行われている中で,全ての事業と連携した調整が必要です。
工事の調整だけでなく,どのように将来のまちの魅力を伝えていくか,一体となって考えていきたいと思っています(図-9)。
2035年度の地下ルート完成,2040年度の高架橋撤去完了までの長期的なプロジェクトとなりますが,引き続き本事業へのご理解,ご協力のほど,よろしくお願いいたします。
【出典】
積算資料公表価格版2021年5月号

最終更新日:2023-07-07
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