はじめに
国土交通省では、建設現場の生産性向上を図るi-Constructionの取り組みにおいて、これまで3次元モデルを活用し社会資本全体の整備、管理を行うCIM(Construction Information Modeling,Management)を導入することで受発注者双方の業務の効率化・高度化を推進してきました。
一方で、国際的なBI M( Building Information Modeling )の 動向などは近年顕著な進展を見せており、土木分野での国際標準化の流れを踏まえ、 Society5.0 における新たな社会資本整備を見据えた3次元データを基軸とする建設生産・管理システムを実現するためBIM/ CI M( Building/ Construction Information Modeling,Management)という概念において産官学一体となって再構築し、BIM/CIMの取り組みを推進しています。
今回は、主に北陸地方整備局のBIM/ CIM活用業務および工事の取り組み実績と令和4年度のBIM/CIMの活用・普及に向けた取り組みを紹介します。
北陸地方整備局のBIM/ CIM 取り組み実績
北陸地方整備局では、平成24 年度からCIMの導入検討や試行を行っています。
平成28年度から本格的に詳細設計などの業務を実施しており、年々取り組み件数が増加し令和3年度では業務85件、工事20件を実施しました(図-1)。
北陸地方整備局の BIM/CIM 取り組み方針
令和4年度北陸地方整備局のBIM/CIMの取り組み方針は、国土交通省の実施方針である「令和5年度までに小規模を除く全ての公共事業についてBIM/CIMを活用」を踏まえ、さらなるBIM/CIMの活用・普及を図るため、適用可能な範囲から発注者自らBIM/CIMを活用していくこととしています。
原則、測量・調査段階から3次元データを導入するとともに、設計、施工、維持管理の各段階での活用を推進するため、過年度までに実施した「ICTを活用した測量」、「土工・舗装工の3次元設計」、「BIM/CIM活用業務による設計」の成果などについては、全て後工程に引き継ぐものとしています。
地元企業参入拡大の取り組み
北陸地方整備局におけるBIM/CIMの推進を図る上で、発注者はもとより地元企業の技術力向上も不可欠となるが、これまでのBIM/CIM活用業務実施件数のうち、地元企業の受注割合は1割程度となっています(図-2)。
地元企業の参入拡大の取り組みとして、試行的に実施している簡易(特別)型を利用した発注、ICT普及促進型工事について紹介します。
(1)簡易(特別)型を活用した発注
地元企業の受注機会を創出するため、入札参加の地域要件を「当該県内に本店を有すること」とする簡易(特別)型を活用した概略・予備設計などの発注および、要求事項(リクワイヤメント)の選択項目を2項目以内とする取り組みを令和2年度より試行し、地元企業への普及促進を図っています。
(2)ICT普及促進型工事
ICT普及促進型工事は、ICT土工の起工測量から納品まで3次元データを活用する一連の技術を、実際のICT活用工事現場をフィールドに実技講習で習得するモデル工事であり、令和4年度より試行しています。
モデル工事に配置する技術者(監理技術者、担当技術者)の少なくとも1名以上はICT未経験者とし、受注者がICT未経験の立場から講習会を企画立案し、試行工事周辺の工事・測量業者、自治体職員などを対象に現地講習会を開催します(図-3)。
BIM/CIM人材育成の取り組み
(1)職員向け研修の実施
北陸地方整備局では、職員のBIM/CIMに対する知識習熟などの取り組みとして3次元CADソフトの操作実習などを含めた BIM/CIM研修を実施しています。
研修内容
- 生産性革命などの動向(i-Constructionの概要)
- インフラDX概論・BIM/CIM関係の最近の動向
- 3次元測量演習(計測から地形モデルの作成まで)
- BIM/CIM活用工事現場実習(朝日温海道路トンネル事業)
- BIM/CIMソフト実習・BIM/CIM設計実習
- ICT活用工事について(起工測量から納品、検査まで)
- BIM/CIM活用に関する意見交換
(2)官民連携によるBIM/CIM講習会の実施
令和5年度からのBIM/CIM本格運用 に向けて、官民連携による人材育成を図るため、受発注者共有ルールの理解促進や、 BIM/CIM知識の習得に向けたWeb講習(録画配信)を令和4年2月18日~4月28日まで実施し、さらに令和4年5月25日~8月31日まで再配信を行いました。
配信方法
(一社)建設コンサルタンツ協会北陸支部ホームページ(http://hr-jcca.jp/)からWeb 録画配信。
配信プログラム内容
- BIM/CIMの概要
- 国土交通省が推進するBIM/CIMと i-Constructionの動向
- BIM/CIMで利用する技術
- BIM/CIMで利用するソフトウエア
- BIM/CIM設計活用事例
おわりに
建設現場の生産性向上を図る取り組みであるBIM/CIMの推進については、毎年、基準類やガイドラインなどが制定、改訂されるなど、令和5年度までの小規模を除く全ての公共工事におけるBIM/CIMの原則適用に向け、その環境整備が進められています。
北陸地方整備局管内においてもBIM/ CIM活用の取り組みは着実に広まっており、引き続き生産性向上、業務の効率化を図るべく、発注者としてもさらなるBIM/ CIM活用普及に向けた取り組みを推進していきます。
【出典】
建設ITガイド 2023
特集1 建設DX、BIM/CIM

最終更新日:2023-08-21