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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > インフラ維持補修・更新費の中長期展望 〜老朽化が進むインフラに如何に対応するか〜

 

1 はじめに

高度成長期以降に集中的に整備されたインフラが一斉に老朽化することをはじめインフラの老朽化は深刻な問題であり,2013年にインフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議において「インフラ長寿命化基本計画」が策定されるなど,政府においても対策が進められているところです。経済財政諮問会議(注1) においても,財政への中長期的なインパクトを含めて,インフラの老朽化について議論されており,有識者議員からは,中長期的な社会資本の維持管理・更新費用の姿を示すよう問題意識が提示されました。それを受けて,内閣府政策統括官(経済社会システム担当)においてインフラ維持補修・更新費の中長期展望を示し,経済財政諮問会議に報告しました。本稿ではその内容を中心に紹介します。なお,本稿は,筆者の個人的見解に基づくものであり,必ずしも所属機関の見解を示すものではないことをあらかじめお断りします。
 


注1 経済財政政策に関し,内閣総理大臣のリーダーシップを十全に発揮させるとともに,関係国務大臣や有識者議員等の意見を十分に政策形成に反映させることを目的として,内閣府に設置された合議制の機関。
 
 

1. 社会資本ストック推計を活用した試算

内閣府政策統括官(経済社会システム担当)では,1960年代から,社会資本の現状を把握するために社会資本ストック推計を実施しています。近年は5年ごとに公表しており,2014年度末までの推計値をとりまとめた「日本の社会資本2017」(以下「IOJ」(注2)といいます。)を2017年12月に公表しました。これは我が国において部門ごとに社会資本ストックを推計している唯一の統計です。IOJを活用して,現状(2014年度時点)のストック量を維持したまま単純事後更新を行った場合の維持補修・更新費を試算しました。
 


注2 Infrastructure of Japanの略。
 
 

1-1 試算方法

IOJを活用した将来の社会資本の維持補修・更新費の試算においては,2014年度の粗資本ストック(注3)量の水準を維持するために必要な投資額を試算しています。この額は,過去の投資により積み上げられてきた2014年度の粗資本ストックの2015年度以降の除却額と同額となります。なお,ストック量に影響しない日常的維持補修費(清掃,点検等)やストック量を増加させる更新時の機能の高度化,新設投資は考慮していません。あわせて,末尾の「試算に当たっての仮定等」を参照してください。
 


注3 現存する固定資産について評価時点で新品として調達する価格で評価した価値。
 
 

1-2 試算結果

全国の将来の社会資本の維持補修・更新費用の試算結果を図表−1に示します。2015年度時点では約9兆円と試算され,2054年度時点では約16兆円となり2015年度比で1.75倍となることが試算されました。維持補修・更新費の伸び率や2015年度から2054年度までの総額を図表−2に示します。
 
今後,高度成長期以降に集中的に整備されたインフラが一斉に老朽化します。これらのインフラについて,速やかに計画的な維持補修が行われない場合,中長期的な維持補修・更新に係るトータルコストが増加することが示されました。
 
なお,この試算による維持補修・更新費のほかに,日常的維持補修費に相当する経費が必要になることに留意してください。
 
 
図表−1 単純事後更新を行った場合の維持補修・更新費の試算額の推移


図表−2 維持補修・更新費の伸び率(年率)等



 
 
 

2. 公共施設等総合管理計画における取り組み

インフラの維持管理・更新等を着実に推進するための中期的な取り組みの方向性を明らかにするため,2017年3月末時点で,全ての地方公共団体の98.2%にあたる1,689団体において,公共施設等総合管理計画を策定していました。
 
このうち,公共施設等総合管理計画において,インフラ維持修繕・更新等に要する将来の費用について,長寿命化等の対策を行った場合の費用と対策を行わなかった場合の費用が読み取れた189団体(都道府県6団体,政令指定都市5団体,政令指定都市を除く市町村178団体)のデータをもとに,中長期的な維持補修・更新に係るトータルコストの増加抑制効果を分析しました。図表−3のとおり,189団体の対策を行わなかった場合の費用と対策を行った場合の費用をそれぞれ合計して比較したところ,対策を行った場合の削減率は24%と試算されました。
 
対策の内容については,長寿命化は,多くの団体で検討され,公共建築物・土木インフラとも取り組むことができるため,大きな削減額が期待できる一方,統廃合等による施設の縮減は,効果額を記載している団体が比較的少なく,対象も公共建築物に限定されるため,全体に対する削減率は一定程度にとどまっていました。
 
なお,公施設等総合管理計画については,今後,中長期的な維持管理・更新費の見通しの精緻化を促進するとともに,2021年度までに,適正管理に取り組むことによる効果額を示すこととされています。
 
 
図表−3 公共施設等総合管理計画における削減効果



※1. 2017年3月31日時点の公共施設等総合管理計画において,「将来(30年以上)」を記載している団体のうち,「将来(対策あり)」「将来(対策なし)」の両方を記載している189団体の費用を合計。189団体の費用算出期間の加重平均は約40年。
 
※2. 189団体の中で,公共施設等総合管理計画から「長寿命化による効果」,「施設の縮減による効果」が読み取れる団体の費用を合計。読み取れる一部の団体の費用のため,合計は189団体の削減額と一致しない。また,読み取れない団体の中には,取組の検討を行っていたり,効果が盛り込まれている団体も存在することに留意が必要。
 
※3. 189団体の削減率を長寿命化による削減額(231,532百万円)と施設の縮減による削減額(41,745百万円)で按分した。
 
 
 

3. 長寿命化等による維持補修・更新費の増加抑制のイメージ

公共施設等総合管理計画における削減効果を考慮して,長寿命化等による維持補修・更新費の増加抑制のイメージを試算しました。図表−4のとおり,189の地方公共団体で目標としている取り組みを実現し,かつ全国で徹底した場合,189団体の加重平均で,2015年度比で1.18倍となっており,単純事後更新を行った場合と比較して費用の増加が相当程度抑制されることが期待されます。更なる費用の抑制には,施設の長寿命化や集約化・複合化に加え,PPP/PFI(注4)の推進や新技術の導入により対策を強化することが必要です。
 
図表−4 長寿命化等による維持補修・更新費の増加抑制のイメージ



 


注4 Public Private Partnership/Private Finance Initiative の略
 
 
 

むすび

現状では,本中長期展望は,一部の地方公共団体の削減率を用いており,単純事後更新を行った場合を前提としているなど,限定された情報や多くの仮定に基づくものとなっています。また,現在行われている維持補修・更新に関する費用が正確に把握されていない事業分野もあり,現時点で適切な維持補修・更新が行われているかどうか判断できない状況です。このため,今後は取り組みを進める前提として,各インフラ所管省庁において,現在の維持補修・更新費を把握するとともに,中長期的な維持補修・更新費の精緻化や「見える化」を行うことが必要です。
 
また,2018年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太の方針2018)において,社会資本整備等について「今後,高度成長期に大規模に整備されたインフラが老朽化することから,予防保全に基づくメンテナンスサイクルを確立・徹底し,ライフサイクルコストを低減するとともに,集約化・複合化等,PPP/PFI,新技術の開発・社会実装,情報基盤の整備等あらゆる面から戦略的な取組を推進する」こととされたことを踏まえ,次のような取り組みが必要であると考えられます。
 
 

(1)長寿命化の徹底

現状でも施設の長寿命化は多くの団体で検討が進み,その効果も大きなものと見込まれています。今後,各施設管理者が2020年度までに策定することとされている個別施設毎の長寿命化計画(以下「個別施設計画」といいます。)の中で長寿命化の方向性を具体化し,全国展開を図ることが必要です。
 
 

(2)施設の集約化・複合化

施設の集約化・複合化によって施設の総量を縮減することで将来の維持補修・更新費や施設の運営費を抑えることが可能ですが,方向性の提示にとどまっている事例も多く,短期的に大きな効果を期待することは難しいのが現状です。今後は,個別施設計画を策定する中で,対象施設の特定や,集約化・複合化等の実施方策の検討を進めるなど方向性を具体化し,できる施設から集約化・複合化を実施することが必要です。また,施設の集約化・複合化を本格的に進めるためには,人口減少に対応するよう,コンパクト・プラス・ネットワークの推進により長期的に都市構造を変革していくことが必要です。
 
 

(3)新たな取り組み

施設の長寿命化や集約化・複合化に加え,新技術・データの利活用やPPP/PFIの推進により,維持管理の効率化を図るべきです。新技術・データを利活用する際には,導入ありきではなく,現在の業務のあり方を診断して,どのように業務の効率化を図るか具体化しつつ行うことが重要です。また,官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM(注5))等を活用して,新技術の開発や現場実証・社会実装を進めることが重要です。PPP/PFIの推進に当たっては,人口20万人以上の地方公共団体における優先的検討規程の活用を進めるとともに,地域の実情や運用状況,先行事例を踏まえて,人口20万人未満の地方公共団体にも推進することが重要です。
 


注5 Public/Private R&D Investment Strategic ExpansionPrograM の略。
 
 

〈試算に当たっての仮定等〉

①単純事後更新を行った場合の維持補修・更新費は,2014年度のストック量の水準を維持するために必要な投資額を試算したものです。耐用年数は社会資本ストック推計における部門別の値を使っています。なお,施設の運営費やストック量に影響しない日常的な維持補修費(清掃,点検等),新設投資等は考慮していません。
 
②更新には新設と同じ費用がかからない場合があること,半永久的に使用できるインフラもあることなどから,試算額が過大である可能性があります。また,要求性能が上がることによる更新時の機能の高度化のための費用,災害復旧費,除却費を算定していないため,試算額が過少になる可能性もあります。このため,当該試算値は相当幅をもって解釈されるべき値です。
 
③長寿命化等による維持補修・更新費の削減率は,公共施設等総合管理計画において将来の費用について長寿命化等の対策を行った場合の費用と行わなかった場合の費用を記載している189団体の削減率(図表−3)を用いました。図表−4 の青の折れ線グラフは,各年度の費用の伸び率が単純事後更新の場合と比較して同一の割合で抑制されるものと想定して各年度の数値を機械的に配分したもので,年度毎の推計値ではありません。削減率は,189団体でばらつきがあるため,ストックの規模を考慮した第1四分位から第3四分位までの幅をもった数値としています。
 
図表−4の対策効果の試算は,一部の地方公共団体(189団体)の公共施設等総合管理計画における削減率を活用して全ての社会資本について試算したものであり,各施設の劣化度合い等の個別施設の実態に即した精緻な試算ではありません。
 
 
 

内閣府 政策統括官(経済社会システム担当)付 参事官(社会基盤担当)参事官補佐  武藤 秀明
内閣府 政策統括官(経済社会システム担当)付 参事官(社会基盤担当)政策企画専門職  杉戸 弘輝

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2019年1月号



 

 

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