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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 平成30年7月豪雨等を踏まえた課題と今後の対応について

 

はじめに

平成30年7月豪雨では,記録的な長時間の豪雨によって甚大な人的被害と社会経済被害が発生した。平成27年9月の関東・東北豪雨を受けて,「施設の能力には限界があり,施設では防ぎきれない大洪水は必ず発生するもの」へと意識を改革し,社会全体で水災害に備える「水防災意識社会」を再構築する取組をハード・ソフトの両面で進めてきたが,ハード対策とソフト対策には互いに限界があることが明らかになった。
 
本稿では,今回の水害で得られた教訓を全国の水災害対策に展開するために設置された「大規模広域豪雨を踏まえた水災害対策検討小委員会」の審議を経てとりまとめられた答申と,近年の災害を踏まえ行われた総点検の結果等を踏まえとりまとめられた「防災・減災,国土強靱化のための3か年緊急対策」について概説する。
 
 

1. 背景と諮問内容

平成30年6月末から7月上旬にかけて,日本付近に停滞する梅雨前線と南海上に発生した台風第7号によって,西日本を中心に全国的に広い範囲で記録的豪雨が発生した。その結果,広域的かつ同時多発的に河川の氾濫や土石流等が発生し,200名を超える死者・行方不明者と3万棟近い家屋被害に加え,都市中心部での電気や上下水道等のライフラインや交通インフラ等の被災によって,甚大な社会経済被害が発生した。
 
これらの災害を総合的に検討するため,平成30年8月に国土交通大臣から社会資本整備審議会会長に対して「大規模広域豪雨を踏まえた水災害対策のあり方」が諮問された。これを受け,同会長より河川分科会会長あてに付託され,「社会資本整備審議会 河川分科会 大規模広域豪雨を踏まえた水災害対策検討小委員会」を平成30年9月に設置した。
 
 

2. 被害の特徴と課題

2-1 豪雨・水災害の特徴

平成30年7月豪雨の特徴は,48時間降水量や72時間降水量が観測史上1位を更新する等,長時間の降雨により記録的な大雨となったことが挙げられる。これにより,氾濫危険水位を超過した河川数は過去最高を記録し,土砂災害の発生件数も直近10年の平均件数に比べ約2.3倍を記録した。特に本川と支川の水位が高くなる時間が重なり,支川の洪水が流れにくくなる「バックウォーター現象」に伴う堤防決壊や,上流で発生した土砂災害の土砂が河道に流入し,河川の下流部で土砂と洪水が同時に氾濫する「土砂・洪水氾濫」が発生した。
 
 

2-2 人的被害の特徴

「水防災意識社会」を再構築するための取組により,行政等の関係者間における情報伝達の改善やさまざまな水災害リスク情報の円滑な発信が進んだ一方で,依然として,避難情報の発出やリスク情報の提供の一部には課題があった。また,情報があっても,切迫感を感じられない等の理由から避難を決断できず逃げ遅れた住民が多く存在することも改めて明らかになった。
 
 

2-3 社会経済被害の特徴

地域の防災拠点や医療福祉施設,電気や上下水道等のライフライン,鉄道や道路等の交通インフラが被災したため,地域の円滑な応急対応や復旧の支障が発生した。さらに,広範囲に被害が発生したため,材料や部品の供給元の被災や主要道路の通行止めによるサプライチェーンの寸断や従業員の被災・通勤不能等により,多くの事業所で営業や操業の停止が発生した。
 
 

3. 対策の基本方針

今回の豪雨は,気象庁が初めて個別の豪雨に対して地球温暖化に伴う水蒸気量の増加の寄与に言及する等,近年の豪雨は気候変動等による影響が顕在化しつつあり,甚大な被害が毎年のように発生していることや氾濫危険水位を超過している河川が増加傾向であることを踏まえると,気候変動等の影響が治水対策の進捗を上回る新たなフェーズに突入した可能性があることを認識する必要がある。
 
このため,対策の基本方針として,洪水のみならず土石流等・高潮・内水対策の連携によるハード整備の強化に加え,大規模氾濫減災協議会等を活用し,多くの関係者の事前の備えと連携の強化により,複合的な災害にも多層的に備え,社会全体で被害を防止・軽減させる対策の強化を緊急的に対策すべきとまとめられた。
 
具体的には,以下の4項目について,「水防災意識社会」を再構築するための取組の加速を図ることが答申されている。
 
 

3-1 「施設能力を上回る事象が発生するなかで,人命を守る取組」

● 住民の理解と行動につなげるため,地域のリスクや,防災施設の効果とその限界,水害・土砂災害情報等について,住民へ伝わる情報提供の充実や,表現内容の単純化,情報を入手しやすい環境の整備,マスメディアや情報通信企業等との連携等による情報発信を強化
 
● 災害時に行動する主体である住民が,自身の状況に応じて的確なタイミングで避難を決断
できるよう,前もって災害時の行動や防災情報の入手先等について準備する取組を,地区ごとの活動を通じて推進
 
● 発災時の被害の大きい地域における災害の発生を未然に防止する対策や,被災した場合に人命被害が発生する危険性の高い地域における決壊に至るまでの時間を引き延ばす工夫,逃げ遅れたとしても応急的に退避できる場所の確保のための緊急対策を推進
 
 

3-2 「社会経済被害の最小化や被災時の復旧・復興を迅速化する取組」

● 社会経済被害の軽減や早期の復旧・復興のため,民間事業者による事前の浸水被害の防止・軽減対策の強化と連携に加え,ライフラインや防災上の重要な拠点の保全対策の推進や,電源の二重化や復旧資材等の被災時の最低限の機能維持や早期復旧対策を強化
 
 

3-3 「気候変動等による豪雨の増加や広域災害に対応する取組」

● 気候変動等の影響による豪雨の頻発化・激甚化は既に顕在化しているため,緊急的に対応策を講じるとともに,今後想定される気候変動等の影響の増大に対して計画的かつ段階的な安全度の確保とともに,モニタリングと維持管理の高度化を推進。さらに,広域的な災害への備えや住まい方の改善等を推進
 
 

3-4 「技術研究開発の推進」

● 気候変動等による豪雨の激甚化や社会状況の変化等から,被害が発生するメカニズム等について科学的に明らかにするとともに,効果的な防災・減災に関する技術開発を推進
 
 

4. 緊急的に実施すべき対策

これらの4つの項目を踏まえ,これまで進めてきた「水防災意識社会」を再構築する取組に,
 
①洪水氾濫,内水氾濫,土石流等が複合的に発生する水災害へのハード対策や,氾濫水の早期排水等の社会経済被害を最小化するハード対策を加えた「事前防災ハード対策」
 
②災害が発生した場合でも応急的に退避できる場所の確保や,避難路等が被災するまでの時間を少しでも引き延ばすハード対策を加えた「避難確保ハード対策」
 
③住民が主体的な行動を取れるよう個人の防災計画の作成や,認識しやすい防災情報の発信方法の充実を目指す「住民主体のソフト対策」
 
へと充実させ,多層的な対策として一体的に「水防災意識社会」の再構築を加速していく。
具体的な施策の詳細については,国土交通省水管理・国土保全局HPのトピックスに掲載している「大規模広域豪雨を踏まえた水災害対策のあり方について」(答申)を参照いただきたい。
 
なお,これらの取組は,2020年度を目処に関係者が協力して取り組むハード・ソフト対策である。「緊急行動計画」にも反映し,次に紹介する「防災・減災・国土強靭化のための3か年緊急対策」の取組を含めて強力に推進していくこととしている。
 
 

5. 防災・減災・国土強靭化のための3か年緊急対策

7月豪雨をはじめ,昨年発生した台風第21号,大阪北部地震,北海道胆振東部地震,豪雪等,近年激甚な災害が頻発した。そこで明らかとなった課題に対応するため,内閣総理大臣からの指示を受け,政府全体として,防災のための重要インフラ,国民経済・生活を支える重要インフラについて,災害時にしっかり機能を維持できるよう政府全体で総点検が行われ,11月27日に結果及び対応方策がとりまとめられた。それら総点検の結果や得られた教訓等を踏まえ,特に緊急に実施すべき対策について,「防災・減災,国土強靱化のための3か年緊急対策」としてとりまとめられ,水管理・国土保全局では,27項目の緊急対策を実施することとしている。
 
ハード対策としては,例えば,湛水深が深く,浸水想定区域の家屋数が一定以上ある箇所又は,重要施設がある箇所が存在し,甚大な人命被害等が生じるおそれのある区間を有する河川において,堤防決壊を防止または決壊までの時間を引き延ばす堤防の強化対策やかさ上げ等の緊急対策を実施する。そのほか,洪水氾濫による著しい被害が生ずる等の河川における樹木伐採・掘削の実施や,インフラ・ライフラインや避難所・避難路が被災する危険性が高く,緊急性の高い箇所における砂防堰堤の整備等水害・土砂災害から命を守るインフラの強化を図るとともに,地震時等電力供給が停止した際にもインフラの機能を維持できるよう,非常用電源等を確保する等のハード対策を実施する。
 
また,ソフト対策としては,ダム下流地域の浸水想定図の作成や,土砂災害のおそれが高い市町村のうち,警戒避難体制整備の基礎となる土砂災害警戒区域の基礎調査未了の箇所で基礎調査を実施する等,リスク情報の空白地帯を早期解消し,命を守るために必要なリスク情報の充実を行う。そのほか,監視や周知が必要な氾濫の危険性が高い箇所における簡易型河川監視カメラ等の設置や水害リスクライン(1級水系)による迅速な避難につながる切迫性ある河川情報の提供等の緊急対策を実施していく。
 
 



 
 

国土交通省 水管理・国土保全局 河川計画課 河川計画調整室 企画専門官  奥野 真章

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2019年5月号



 
 

 

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