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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 小規模の鉄筋コンクリート橋の簡易点検要領

 

はじめに

わが国のインフラストラクチャーが老朽化の危機に直面していることは,周知の事実となっている1)。これに対して,国土交通省をはじめ,各自治体も緊急事項として対応を迫られているが,人材の不足,予算不足から決め手を欠いていることは否めない。
 
一方で,近年これだけの自然災害を受けると,防災に力を入れざるを得ず,老朽化対策はますます八方塞がりの状態である。さらに,自然災害の元凶である地球温暖化対策も待ったなしの現状を考えると,老朽化対策には,いかにして経費を抑えて行うかを検討しなければならないと考えるべきである。
 
そこで,膨大に存在する小規模の橋梁をいかに延命化させるかを検討し,鉄筋コンクリート造の橋梁を対象にして,簡易な点検を自治体自らが行えるよう,要領書を作成することにした2)。現状では,実例が少ないが,今後各自治体でも実施できるよう参考になれば幸いである。
 
 
 

1. インフラの老朽化の実状

わが国の建設年度ごとの橋梁の数を図−1に示す。戦後,国土の復興を目指してインフラの整備が行われ,高度成長期には,毎年1万橋を超える橋梁が造られた。これらの橋梁が今後一斉に高齢化するため,橋梁ごとに健全性は異なるものの,延命化のための維持補修を必要とする橋梁は少なくない。そのため,国土交通省は,インフラの延命化の施策を提案し,5年ごとの点検が行われている。現状では,ほとんどの橋梁の一次点検が終了し,2回目の点検を実施しているが,表−1に示すように,早期に修繕が必要と判断された橋梁ですら,修繕が完了していない橋が多い。
 
これらの現状から点検に費用をかけず,補修に予算を振り分ける対応が必要である。
 

図−1 わが国の橋梁の建設年と橋梁数


 

劣化度Ⅲ:早期の修繕が必要  劣化度Ⅳ:緊急に修繕が必要
表−1 点検済みの劣化度ⅢおよびⅣの橋梁の修繕の実施実態




 

2. 予防保全の必要性

図−2 塩害による鉄筋コンクリート構造物の劣化過程の概念


塩害による劣化の過程の概念を図−2に示す。鉄筋コンクリート造の橋梁の塩害は,製造時に海砂を用いた事例も多いが,海岸から潮風などにより外部から浸入する塩化物イオンや凍結防止剤などにより浸入する塩化物イオンも起因する。これらの塩害では,塩化物イオンが内部の鉄筋まで浸入し,次第に腐食限界濃度に達すると鉄筋の腐食が始まることになる。この腐食の進行が進む段階を公益社団法人土木学会では4つのステージに分けている。
 
 
潜伏期: 塩化物イオンが浸入しているが鉄筋は腐食環境にない段階。
進展期: 鉄筋位置が腐食環境に達しており,鉄筋が腐食をしている段階。
加速期: 鉄筋の腐食膨張によりひび割れが生じている段階。
劣化期: 鉄筋の腐食ひび割れにより,コンクリート構造物の性能が低下している段階。


構造物の点検において,近接目視と打音で変状が発見できるのは,表−2に示すように,加速期前期の段階であり,この段階の延命化対策としては,鉄筋の腐食を抑制する対策が必要となる。したがって,これより早期の対応が可能であれば,塩化物イオンの浸入を抑制する措置や,鉄筋の腐食初期段階で腐食を進行させない対策などが考えられ,安価な対策を講じることで延命化が図れることになる。つまり,予防保全の本来の姿となり得る。なお,塩害と中性化による鉄筋腐食の劣化以外は,表−3に示すように進展期において何らかの兆候が認められるため,早期の対策が可能となる。
 

表−2 塩害による劣化過程とその時の外観の状況


 

表−3 各種の劣化因子と潜伏期,進展期の外観の状況




 

3. 簡易点検要領のコンセプト

予算と人材の不足は,当然ながら維持管理を行う上での課題である。したがって,点検の費用を抑えることがまず求められる。従前のように,橋梁の点検を外部に発注すると点検だけで予算を使い果たしてしまったり,橋梁の診断を専門技術者に依頼すると費用がかさみ,かつ時間を要することになる。
 
簡易点検では,「安価であること」と「専門家でなくてもできること」が重要となる。ところが,対象とする橋梁も,さまざまな条件が存在する。例えば,橋梁の設置場所が,海岸付近や山間部,街中など,その場所により,凍害や塩害などが劣化因子として考えられることに加えて,複合劣化も存在する。知識や経験がないと対応しきれないように思われるが,予算上の観点から簡易に行うことが前提となる。
 
そこで,設置数として多い小規模橋梁を対象に,その橋梁が置かれている環境から劣化因子を机上で絞り込み,外観では発見できない劣化の進行状況の把握を検討することとした。また,高価な装置を使わないこと,簡単な指導を受けることで実施できることをコンセプトとして,小規模橋梁の簡易点検要領書2)を作成した。
 
簡易点検であるので,足場の組み立ては行わず,脚立でできる範囲としている。したがって,橋桁の下が高い場合は対象外としている。また,設置箇所が急流で危険のある箇所や,床版の下から調査ができない場合も対象から外している。
 
 
 

4. 簡易点検方法

4-1事前調査

対象とする橋梁の事前調査を行う。その際,現場の測定に必要な設備をリストアップする。事前調査では,対象とする橋梁の床版の図面を準備する。この図面は,どこを測定位置とするかをマークし,測定結果の記録に活用する。

4-2 調査項目

調査項目は,想定される劣化因子で決める。山間部であっても凍結防止剤を散布している可能性があれば,塩化物イオン量を測定し,中性化による鉄筋腐食が懸念される場合は中性化深さを測定する。中性化による鉄筋腐食は,設計かぶり厚さに満たない場合に生じる場合が多いので,かぶり深さを調査する。この調査には,電磁波レーダー法や電磁誘導法などの高価な装置が必要となるが,短期間での調査が見込まれるため,レンタルでの対応を推奨する。

4-3 書類調査

設計図書や施工記録はほとんどの小規模橋梁では残されていないことが多い。これまでの小規模橋梁の管理上において必要とされなかったことがその原因である。しかし,これからの維持管理では必要である。そこで,強度推定,鉄筋の位置の確認を行い,それらの情報から健全性の見当をつけることとする。

4-4 外観目視と打音

医者が人間の健康を調べる折に,問診と聴診器でおおよその見当をつけるが,具合の悪さを語れない橋梁の健全性は,外観目視と打音で調査することになる。しかし,これでは致命的な劣化に進んでいる塩害や中性化による鉄筋腐食の進行の程度の把握は難しい。打音で浮きや空洞が見つかる状況はすでに加速期に入っていることを示すので,予防保全として早期に対応するにはこの方法では限界がある。

4-5 強度推定

強度を正確に把握するには,コアを採取する必要がある。コアを採取するとすれば,コアの直径は骨材の最大寸法の3倍は必要であり,コアの高さは直径の2倍が必要となる。コンクリート中の粗骨材の最大寸法は一般に20mmであり,コアの直径が60mm,高さ(コア採取深さ)は120mm必要となり,かぶりの内部までコアボーリングが必要となる。コア採取は負荷が大きいことから,強度はリバウンドハンマーによる反発度から推定することとする。この方法であれば,コンクリート表面に打撃の跡が残る程度で躯体の健全性に影響を与えることがない。
 
リバウンドハンマーによる測定では9点の反発度とすることがJISで定められているが,偏差が20%以上になるとその値に替わる測定が必要となるため,予備の反発度を3点測定しておく。
 
リバウンドハンマーによる測定状況を,写真−1に示す。
 

写真−1 リバウンドハンマーによる表面反発度の測定状況



4-6 中性化深さ測定

中性化深さは,簡易法としてドリル法が提案されている。この方法は,直径8mm程度の刃を用いて削孔し,その折の削孔粉をフェノールフタレインの1%エタノール溶液を噴霧したろ紙で受け,削孔粉が赤紫色に呈色した段階でドリルの削孔をやめ,その時の深さを測定する方法である。ただし,ドリル刃が粗骨材に当たると,中性化していない領域であっても呈色せず,中性化深さを過大に評価することになるため,複数の個所を測定し,最小の値を中性化深さとする。
 
中性化深さ測定の状況を,写真−2〜写真−4に示す。
 

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