建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 新潟県における冬期道路交通確保および道路除雪オペレータ担い手確保の取組み

 

はじめに

本州の日本海側やや北側に位置する新潟県は,「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」で知られる川端康成の名作「雪国」の舞台であり,世界から見ても有数の積雪地帯となっている。新潟県は30市町村全てが豪雪地帯,または特別豪雪地帯に指定されているため,冬期積雪期における道路交通確保は,日常生活や社会活動を維持するために極めて重要である(図−1)。毎年定める新潟県管理道路における冬期道路交通確保計画では,機械除雪を主体に,消雪パイプ,流雪溝等の消融雪施設の有効利用を図りながら,道路管理者相互の緊密な連携の下で,効率の良い除雪を目標として実施している。令和(2019)元年度は,新潟県の管理する道路実延長が5,362.6kmで,そのうち除雪計画延長は4,554.9kmにも及ぶ。
 

写真−1 早朝の除雪風景

図−1 新潟県(豪雪地帯−全県指定)



 

1. 冬期道路交通確保における課題への取組み

1-1 除雪オペレータの担い手確保

新潟県では,冬期間でも安心安全な通勤,通学などの日常生活が維持できるよう除雪作業を実施しているが,現在,抱えている課題の一つが道路除雪オペレータの高齢化,担い手不足である。これまで本県が実施してきた道路除雪オペレータ確保の取組みとしては,①基本待機料および固定費支払い制度の創設,②技術講習会の開催,③学生向け除雪実習の開催,等がある。しかし,除雪オペレータの年齢構成を見てもわかるように,オペレータの高齢化が進んでおり,将来的に除雪体制の維持や技術の伝承が困難になるといった課題がある(図−2)。
 

図−2 新潟県管理道路の除雪オペレータ年齢構成




この将来的な課題について対応するべく,令和元(2019)年度,新潟県若手職員による政策提案推進事業の一環として,「建設産業活性化に向けた除雪オペレータの担い手確保プロモーションチーム」を立ち上げた。

1-2 担い手確保の課題に対する検討

本チームでは将来的な除雪労働力確保に向けて,中長期的に実現可能な人材の確保,育成に関する提案を行うこととし,以下の手順で検討を行った(図−3)。
 

図−3 担い手確保の課題に対する検討フロー図




まずは現状把握として,要因と課題について洗い出しを行い,除雪オペレータ減少の要因を以下のとおり整理した。
 
①社会的人口の減少
②県道除雪を担う建設産業への入職者数の減少
③除雪業務に対する理解不足(除雪の重要性)
 
これら課題に対して有識者会議等による検証を踏まえ,課題解決策として中・長期的な視点で安定的な除雪体制維持に取り組むこととした。具体的には,小中学生を対象とした建設産業および除雪オペレータへの意識・関心を高める魅力発信,そして行政の枠組みを超えた産官学の連携による除雪作業の効率化・省力化を目標とし,以下の2点に方針を定めた(図−4)。
 
メディアを活用した道路除雪の発信
AI,IoT技術の活用による除雪作業の効率化
 

図−4 安定的な除雪体制の維持のための具体的な方針




 

2. メディアを活用した「道路除雪」の発信

2-1 ラッピング除雪車の製作とイベント活用

小中学生を対象に除雪に興味を持ってもらうためのイベント,アニメ,ゲームのほか,除雪競技コンテストの開催など,新たな視点も視野に入れて検討し,外部有識者との意見交換も踏まえ,令和元(2019)年度はラッピング除雪車の製作を行った。ラッピング除雪車の目的は,除雪に対する興味を子供達に持ってもらうこと,更にそれをきっかけとして地域の安全を支える除雪の役割や大切さについて考えてもらい,将来的なオペレータ確保につながることを期待したものである。そのため,製作したラッピング除雪車は,スポーツチーム「アルビレックス新潟」の発信力を活用し,県が保有する小型ロータリ除雪車にアルビレックス新潟のマスコットと県土木部のマスコット「こめゆきくん」をあしらい,「雪に負けないぞ!」というメッセージを込めて,ポップなデザインとした。令和元(2019)年10月に新潟県南魚沼市で開催された南魚沼地域合同除雪出動式,11月には新潟市で行われたアルビレックス新潟のサッカー試合でラッピング除雪車の展示イベントを実施したところ,来場した1万人を超えるサポーターの子どもから大人まで多くの方が展示ブースに足を運んで下さり,ラッピング除雪車の試乗体験をしていただいた(写真−2)。
 

写真−2 ラッピング除雪車のイベント活用(新潟市)



2-2「道路除雪」魅力発信の効果について

ラッピング除雪車を活用したイベントでは,除雪や建設産業の仕事について来場者や雑誌,新聞社等から多くの問い合わせがあり,情報発信による認知度アップの効果も見られた(写真−3)。またSNS(Twitter)では,以下のような好意的な意見をいただいた。
 
「運転してみたい!」
「斬新で面白い。良いアイデア!」
「サッカーに興味のない人でも話題になるのでは!?」
「山梨県の豪雪時に新潟県の除雪車が応援に行って,その後,山梨の方にすごく感謝されたことを思い出した!」
 
本取組みは,すぐに除雪オペレータを確保できる効果はないが,建設産業および除雪が日常生活に欠かせない大切な仕事だという認知度のアップや,子ども達に興味を持ってもらうことで,将来のやりたい仕事の選択肢の一つとなることを期待したい。
 

写真−3 イベントでの除雪パネル展示

写真−4 Twitterによる情報発信



 

3. 冬期交通確保におけるAI・IoT技術の活用

次に,除雪作業の効率化・省力化に向けてAI・IoT技術の活用を検討した。ここでは,新潟県のこれまでの取組みと今後の展望について紹介する。

3-1 ICT技術を活用したこれまでの雪対策の取組み

(1)冬期道路交通確保計画と雪崩の通行規制対応
降雪量が多い新潟県では,日常の雪庇処理や雪崩パトロールなども重要な道路管理の一つである(写真−5,6)。令和元(2019)年度の冬期道路交通確保計画では,雪崩パトロール実施区間として231箇所を位置付け,斜面状況を的確に把握し,危険が認められる場合は速やかに適切な措置を講じることとしている。
 

写真−5 橋梁部の維持管理(雪庇処理)状況

写真−6 斜面の維持管理(雪庇処理)状況



雪崩パトロールは春先の冬期通行不能区間の規制解除前にも実施しており,近年ではマルチローター方式の無人航空機(Unmanned AerialVehicle:以下「UAV」)を活用し,道路上から確認できない斜面上部の積雪状況等を確認することで除雪作業の安全性を確保する取組みを行っている。また,雪崩災害時にもUAVを活用し,二次災害発生の恐れの有無や,目視できない斜面上部の雪崩発生源の確認を行い,規制解除の判断および除雪作業の安全性確保のために活用している。平成31(2019)年2月には新潟県十日町市で大規模雪崩が発生し,全面通行止めを実施したが,UAVを活用した現地確認により雪崩発生の恐れがなくなったことを確認後,迅速に規制解除を行った。また規制解除後も定期的に上空からの定点観測を行うことで,監視体制解除の有用な判断材料となった。このようなICT技術の活用により,冬期の円滑な道路交通確保を行っている(写真−7,8)。
 

写真−7 雪崩災害の初動対応(平成31(2019)年2月,国道353号,十日町市)

写真−8 雪崩災害後の復旧対応(UAV斜面調査)



(2)官民連携によるICT技術を活用した雪崩対応訓練
新潟県南魚沼地域整備部では,平成29(2017)年および30(2018)年に官民連携による全国初のICT技術を活用した雪崩対応訓練および講習会を実施した。この訓練は,災害発生後の初動対応や情報伝達などの危機管理対応力の向上を図ることを目的として行い,新潟県職員のほか,消防本部,警察署,市役所,除雪業者,雪崩専門家等が参加し,県管理道路が雪崩により全面埋塞したという想定の下,訓練を行った(図−5,写真−9,10
 

図−5 雪崩対応訓練フロー図



写真−9 雪崩対応訓練の全景

写真−10 雪崩対応訓練救助隊の様子



訓練では,UAVによる飛行映像写真と地上基準点を用いて地理座標をもった現地の三次元モデルを構築した(図−6) 。このモデルは短時間で作成でき,CADデータから任意で横断図が作成できるため,早期に雪崩量の計算や横断図等を再現し,把握することができた。また現地で上空映像と三次元モデルを確認することにより,地上から雪崩経路が確認できない場合の発生源特定や二次災害防止への有用性が考察された。
 

図−6 UAVによる雪崩訓練箇所の3次元モデル




また,訓練におけるゾンデ捜索では,サーモグラフィカメラを試用して埋没者確認の可否について検証を行った。試用したカメラは赤外線を通して映し出されたサーモグラフィ上に,通常カメラが捉えた人や物の輪郭をオーバーレイする仕組みを利用したカメラである。積雪内における検証では,サーモグラフィは表面温度を捉えるため,雪・水中を透過しないことから雪崩埋没者の特定は困難であることがわかった。しかし,直前まで人間が身につけていた落下物や照明,車両等を遠方から確認することができ,山岳地域等広範囲での遭難や捜索物対応分野や吹雪中での有用性が期待でき,多くの分野における活用が有効であると推測された(写真−11,12)。
 

写真−11 サーモグラフィカメラの活用事例

写真−12 訓練におけるゾンデ捜索体験(通常カメラ)



訓練のリアルタイム状況把握においてはUAVのほか,定点観測カメラ(トレイルカメラ)を設置した。これは,任意設定した時間でのタイムラプス撮影や動画もインターネットを介して自動送信されるため,現地対策本部と事務所間の情報共有において,有用性を確認できた(写真−13)。
 

写真−13 トレイルカメラによる被災斜面の時系列比較




雪崩対応訓練は,道路管理者,交通管理者,除雪関係者等,一堂に会して訓練を行った点に最大の特徴があり,このように官民連携で雪崩対応訓練を行う事例は他になく,防災能力の向上および関係機関との連携強化に向けて貴重な機会であった。また,訓練を通じて初動対応やICT技術の有用性について理解を深めることができた。これらの訓練や講習会の実施により,平成31(2019)年2月に新潟県十日町市で発生した雪崩災害においても関係機関との連携によるスムーズな捜索活動やUAV活用による雪崩斜面確認や規制解除判断など,雪崩対応訓練の成果が実証された。
 
 
 

3-2 AI・IoT技術の活用による今後の除雪体制維持

新潟県では,令和元(2019)年度よりGPSを利用した除雪管理システムを順次導入し,リアルタイムでの除雪作業状況把握とデータの自動集計により,除雪作業の効率化と事務作業軽減等の省力化を行っている(図−7)。データの蓄積による道路除排雪の効率化,道路管理者および除雪業者の負担軽減を含めて,除雪オペレータが減少しても維持できる除雪体制の構築を目指し,令和元(2019)年度冬期より産官学による共同研究を開始した。今後は研究所,大学,企業の有識者と連携し,将来を見据えた人材確保,人材育成および冬期道路交通確保の効率化・省力化に向けた運用を図っていく。
 

図−7 除雪稼働状況管理システムによる取得データ




 

おわりに

現在,新潟県土木部においては,担い手確保に係る取組みとして,マンパワーアップ総合支援事業やコミュニケーション行政推進事業により,土木行政PR講座や若者,女性入職促進PR事業などを促進している。将来の担い手確保は,建設産業全体における喫緊の課題の一つでもある。少子高齢化に伴い,建設産業および除雪オペレータがやりがいを持ち,魅力のある産業として持続的に継続していけるよう,関係者一丸となって取り組む必要がある。
 
円滑な冬期道路交通確保に向けて,除雪オペレータの担い手確保およびAI・IoT技術活用による作業効率化や職員の負担軽減は今後の重要な取組みである。将来を見据え,安全・安心な冬期道路交通確保を進めていくため関係機関との連携を強化し,新たなアイデア創出も含め今後も継続的に取り組んでいく。
 
 
 

新潟県 土木部 道路管理課 雪寒事業係  吉田 あみ

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2020年8月号


 

 

 

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