建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 土木・建築分野で求められる環境対応と「エコマーク」

 

はじめに

消費者の環境問題への関心は,地球温暖化や温暖化に起因する異常気象などを背景に高まっている。
また,最近では国連の「持続可能な開発目標(SustainableDevelopmentGoals:SDGs)」に代表される持続可能な社会形成に向けた取り組みや,日本政府の「2050年にカーボンニュートラル,脱炭素社会の実現を目指す」方針に対する取り組みが事業者の事業戦略において,重要となっている。
 
本稿では,土木・建築分野におけるエコマークの対象商品を紹介するとともに,それらに関連する政府方針,国等のグリーン購入や地方自治体および業界の取り組みを解説する。
また,SDGs達成に向けた取り組みにおけるエコマークの活用などについて触れる。
 
この他,2021年2月に開催されたエコマーク・オンラインセミナー「土木・建築事業者に求められる環境対策」(主催:日本環境協会,後援:経済調査会)についても,紹介する。
 
 

1. エコマーク制度の概要

1-1 エコマークとは

エコマーク制度は,国際標準化機構の規格ISO14020(環境ラベルおよび宣言・一般原則)およびISO14024(環境ラベルおよび宣言・タイプⅠ環境ラベル表示・原則および手続き)に則って運営されている。
この制度は1989年に開始され,第三者の機関によって認定されることを第一の特徴としており,エコマークは日本で唯一のタイプI環境ラベルである。(図−1
 
エコマーク制度の目的は,日常生活や事業活動に伴う環境への負荷の低減など,環境保全に役立つと認められる商品(製品およびサービス。以下同じ)に「エコマーク」を付けることにより,商品の環境的側面に関する情報を広く社会に提供し,持続可能な社会の形成に向けて消費者ならびに事業者の行動を誘導していくことにある。
認定基準は,商品のライフサイクルの各段階(資源採取からリサイクル・廃棄まで)における環境改善のための4つの重点領域(図−2)に着目して商品分野ごとに策定されており,その認定基準に基づいて総合的に環境負荷低減に資する商品の認定審査を行っている。
 
消費者によるエコマークの認知度(2021年4月公表)は80%となっており(図−3),特に若い世代では90%を超える高い数値となっている。(図−4

  • エコマーク
    図−1 エコマーク

  • 認定基準で考慮する商品ライフサイクルと4つの重点領域
    図−2 認定基準で考慮する商品ライフサイクルと4つの重点領域

  • エコマーク表示に関するイメージ等調査
    図−3 エコマーク表示に関するイメージ等調査

  • 「エコマークを知っている」と回答した年代別の構成
    図−4 「エコマークを知っている」と回答した年代別の構成

  • 1-2 エコマークで対象としている分野

    エコマークは,日用品,文具・事務用品,衣料などの商品や,PC・プリンタなどの電子機器のほか,土木・建築・設備分野の製品についても幅広く対象としている。
    また,近年では小売店舗,ホテル・旅館,飲食店,商業施設,清掃サービスなどのサービス分野にまで拡大している。
     
    その中で,エコマークが土木・建築分野で対象としている品目は,表−1に示す通りである。
    No.131「土木製品」やNo.123「建築製品」などを中心に,多様な土木・建築製品や設備関係の品目を網羅しており,認定基準と認定商品は,エコマークのウェブサイトで公開している。(https://www.ecomark.jp/nintei/

  • エコマークの土木・建築分野の認定基準と対象品目
  • エコマークの土木・建築分野の認定基準と対象品目
  • エコマークの土木・建築分野の認定基準と対象品目
    表−1 エコマークの土木・建築分野の認定基準と対象品目

  • 1-3 エコマークとグリーン購入

    「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」は,環境への負荷が少ない商品の調達推進を国等の機関に義務付けたもので,地方自治体や民間事業者および国民に対しても,できる限りグリーン購入に努めるよう求めている。
     
    同法に基づく「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」では,国等が調達を推進する分野・品目の「判断の基準」が定められており,エコマークは多くの品目で,この基準と同等以上の認定基準を設定している。
    そのため,エコマークはグリーン購入法の「判断の基準」を満たす商品を選択する際の目印として活用されている。
    また,2021年2月の閣議決定では,プラスチック製ごみ袋などで,「エコマーク認定基準を満たすこと又は同等のものであること」という選択肢が判断の基準に記載された。
    今後,他品目においてもエコマークの活用が広がっていくことが予想される。
     
     

    2. 土木・建築分野におけるエコマークの活用

    2-1 地方自治体のグリーン購入とリサイクル製品認定制度

    地方自治体は,地球温暖化対策推進法に基づく地球温暖化対策計画の策定が義務付けられている。
    国は「温室効果ガスの量がより少ない製品および役務の利用」を例示しているため,多くの自治体が「グリーン調達の推進」を調達方針に掲げている。
     
    また都道府県では,地域における循環型社会の構築を目的に,地域で発生した再生資源を有効利用し,廃棄物の減量化・リサイクルを推進する取り組みとして,多くの県でリサイクル製品認定制度を設けている。
    このリサイクル製品認定制度の基準は,エコマーク認定基準の項目が引用されているケースが多い。

    2-2 環境配慮に関する建設業界の動向

    業界団体の取り組みとして,(一社)日本建設業連合会(日建連)の動向を紹介する。
    日建連では,2021年4月に「建設業の環境自主行動計画(第7版,2021-2025年度)」を公表し,各環境課題に対する目標や実施方策等を示している。
    https://www.nikkenren.com/kankyou/management/
     
    環境自主行動計画では,「環境経営」「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に向け,テーマごとに目標や実施方策が掲げられている。
    「環境経営」に係る目標として,「環境活動情報の開示,コミュニケーションの場への参画」が掲げられており,その実施方策として,「環境情報の収集・報告・手続き・統計処理等の省力化・効率化に向けた取り組み」,「グリーン調達品の普及促進に向けた情報収集・周知活動の展開」が挙げられている。
     
    エコマークは商品の環境的側面に関する情報を広く社会に提供する環境ラベルであり,エコマーク商品の調達や使用はグリーン調達を進めるのみならず,製品に関する環境情報の入手も容易になる。
     
    また,「環境経営」においては「循環型社会の実現に対し,環境配慮設計で寄与:リサイクル材の使用,既存躯体等の継続使用」,「地球環境や人体に対する化学物質の影響低減に向け,化学物質対策を設計に反映」といった目標も掲げられている。
    1−1で述べたようにエコマークでは,環境改善のための4つの重点領域を挙げており,その
    中に「省資源と資源循環」,「有害物質の制限とコントロール」の項目を含んでいる。
    そのため,土木・建築分野の多くの認定基準では,リサイクル材料の使用や有害物質の非含有を認定の主な要件としており,上記目標にも深く関連している。
    従って,エコマーク基準をこれらの目標に適う製品を調達する際の目安としたり,基準に適合する製品を開発する際の指標として活用することも可能である。
     
    このように,建設業界が環境経営に掲げる目標や実施方策等の観点は,エコマークの認定基準で考慮されている観点と深く関連する部分が多く,エコマーク認定商品の利用や,商品開発にエコマークを活用することは,業界の目標達成に有効な手段の一つとなるだろう。
     
     

    3. プラスチックとエコマーク

    3-1 エコマークのプラスチックの資源循環に関する基本方針

    地球温暖化防止に向けた脱炭素化と併せて,昨今,国際的な課題となっている海洋プラスチックごみ問題や資源循環などの幅広い課題に対応するため,政府は2019年5月に「プラスチック資源循環戦略」を策定している。
    また,その戦略の重点政策の一つとして,再生可能資源の活用の道筋を示す「バイオプラスチック導入ロードマップ」も2021年1月に公表されている。
    さらには,国内におけるプラスチック資源循環を一層加速する重要性の高まりから,プラスチック使用製品の設計から廃棄物処理に至るまでのライフサイクル全般であらゆる主体におけるプラスチック資源循環の取組みを促進するための措置として,「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が2021年6月の通常国会で成立した。
    土木・建築業界においては,既に建設リサイクル法が施行されているが,プラスチックの資源循環の取組みや高度化,社会的要請はより一層高まっていくと考えられる。
     
    エコマークでも2020年2月に「プラスチックの資源循環に関する基本方針」を公表しているので,参考にされたい。
    https://www.ecomark.jp/info/release/post_60.html
     
     

    4. SDGsとエコマーク

    4-1 SDGsについて

    世界を持続可能なものに変革していくための重要な国際的合意として,「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択された。
    その中核をなすのが,SDGsである。
    2030年を目標年としたグローバルな開発目標として,図−5で示すように17のゴールから構成されており,その具体的な行動目標として169のターゲットが示され,世界各国でSDGsの達成に向けた取組みが進んでいる。

  • SDGsの達成に向けた17のゴール
    図−5 SDGsの達成に向けた17のゴール

  • 4-2 SDGsの達成に向けた取組みとエコマーク

    国内外でSDGsが注目される中,SDGsに取り組みたいが,SDGsのゴールやターゲットを自社の具体的な目標にブレークダウンして取組みを進めることが難しい,といった声が多くの事業者から聞かれる。
     
    エコマークでは,前述のとおり,商品のライフサイクルの各段階に着目し,環境負荷低減に資する認定基準を策定し,商品の認定を行っている。
    そのため,エコマーク認定基準に対応する商品開発や,エコマーク商品を調達・活用することで,目標「12. つくる責任つかう責任」や目標「13. 気候変動に具体的な対策を」などの目標達成に貢献することができる。エコマーク事務局では認定事業者向けに「SDGs活用ガイド」を公表している。
    https://www.ecomark.jp/info/new/sdgs.html
     
     

    5. オンラインセミナーの開催

    5-1 エコマーク・オンラインセミナーの開催

    これまで述べたとおり,日本政府により「プラスチック資源循環戦略」が策定され,「温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする」目標が示されるなど,土木・建築分野でも資源循環や地球温暖化対策がますます重要となっている。
    エコマーク事務局では,それらの対策のヒントとして,『「土木・建築事業者に求められる環境対策」-2050年温室効果ガス排出実質ゼロに向けて-』と題し,土木・建築分野での環境対策の動向,および関連するエコマーク認定基準について解説するオンラインセミナーを開催した。(図−6

  • セミナーのチラシ
    図−6 セミナーのチラシ

  • 5-2 セミナーの概要

    セミナーは,2021年2月17日の14:00から15:30に開催し,Zoomビデオウェビナーにて配信され,土木・建築業界の事業者を中心に70名程度の参加があった。
    当日のプログラムとして,下記の講演が行われた。
     
     
    ① 【基調講演】「建設工事における軽油代替燃料による温暖化対策」(一般社団法人日本建設業連合会 環境委員会 柳 雅之氏)。
     
    ② 「土木・建築分野のエコマーク認定基準」(公益財団法人日本環境協会エコマーク事務局)

  • ①スライド
    図−7 ①スライド
  • ②スライド
    図−8 ②スライド

  • 5-3 講演内容
    ①「建設工事における軽油代替燃料による温暖化対策」

    建設現場における軽油代替燃料によるCO2排出削減の具体的な事例として,バイオディーゼル燃料(BDF)やGTL(Gas to Liquids)の特徴とCO2削減効果,関連する法令などについて説明がなされた。
    併せて,国内での使用状況,取り扱いに関する情報提供,バイオディーゼル燃料のエコマーク認定制度の活用が紹介された。
     
    背景として,経済産業省が「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定し,その中で「化石燃料は原則使わない」「化石燃料を使う場合はCO2を100%回収する」といった目標が掲げられるなど,軽油代替燃料の利用の機運が高まっている社会的状況がある。
     
    そのため上記に対する業界の取組みとして,前述の「建設業の環境自主行動計画(第7版)」のうち,「脱炭素社会」における目標の一つとして「CO2排出量原単位を2030〜2040年度の早い時期に40%削減を目指す(2013年度比)」,「施工段階におけるCO2排出量を2050年までに実質0となるための取り組みを推進」が掲げられている。
    それらの実施方策として,「施工段階におけるCO2排出抑制への具体的なツールの提供」を挙げており,実施事例として,軽油代替燃料であるバイオディーゼル燃料の利用拡大に向けた「建設業におけるバイオディーゼル燃料利用ガイドライン(Rev.3.1)」が公開されている。
    このガイドラインには,エコマーク商品類型No.160「廃食用油を使用したバイオディーゼル燃料およびその副生物を使用した製品」認定基準で認定を受けた事業者を掲載しており,その活用が期待される。

     
     

    ②「土木・建築分野のエコマーク認定基準」

    エコマーク制度の概要や,土木・建築分野の対象品目や基準およびエコマークとグリーン購入法の関係,エコマークとSDGsの親和性など具体例を交えてエコマークの活用方法を紹介した。
     
    そのほか,SDGsの機運の高まりや,脱炭素化への急速な動き,気候変動,海洋プラスチックごみ問題に起因した国際的な動向などを紹介し,環境に配慮した製品の選択や開発の重要性とエコマーク活用の意義を解説した。

    5-4 セミナーに関するアンケート

    セミナー参加者にアンケートを行い,次のようなコメントが寄せられた。
     
    軽油とバイオディーゼル燃料のコスト比較の情報が欲しい。
    自治体に対し,公共工事でエコマーク,バイオディーゼル燃料が積極的に使用されるように,もっと働きかけてほしい。
    エコマーク認定の対象になっていない品目の基準化について知りたい。
    エコマークがさまざまな分野に広がっていることが分かった。自社に関係する基準があるか見てみたい。
     
    エコマーク事務局では,本年度もオンラインセミナーの開催を計画している。
    セミナー情報はエコマーク事務局のウェブサイトで告知する予定である。
     
    なお,エコマークの認定取得や活用方法に関する問い合わせは,以下までご連絡いただきたい。
     
     

    公益財団法人 日本環境協会 エコマーク事務局
    〒101-0032 東京都千代田区岩本町1-10-5 TMMビル5階
    URL:https://www.ecomark.jp/
    E-mail:info@ecomark.jp TEL:03-5829-6284

     
     
     

    公益財団法人日本環境協会 エコマーク事務局 基準・認証課
    川口 徹也

     
     
    【出典】


    積算資料公表価格版2021年8月号
    積算資料公表価格版

     
     

     

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