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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 高騰する鋼材市況の動向について

2021年はさまざまな資材の高騰が話題になった。
建築分野でも,鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造),鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)に用いられるH形鋼や異形棒鋼,厚鋼板(厚板)は年初から上昇し続けた。
中には6万円近い上げ幅に至った品種もあった。
半世紀近く鋼材流通に携わる特約店経営者も「1年間を通じて,1度も下落せず上り調子で相場が展開したのは初めて」と驚きを隠さない。
鋼材高騰が続いた背景には,鉄鉱石や鉄スクラップ,原料炭といった鋼材原料の国際市況の急伸に加え,新型コロナウイルス感染拡大で停滞していた自動車産業など製造業の急回復により特定分野で需給がひっ迫したことが挙げられる。
 
この稿では2020年夏以降から続く鋼材高騰の動向とその要因を探る。

 
 

リーマン・ショック前後

『積算資料』が全国主要都市の建設資材価格を毎月公表しているように,筆者が所属する鉄鋼新聞社が発行する『日刊鉄鋼新聞』でも,商社や流通業者への取材を基に日々の紙面で各鋼材品種の「鉄鋼市場価格」で鋼材市況を掲載している。
あらかじめお断りしたいのは,弊紙で公表する市場価格は卸売業者が同業間で商品を融通しあう場合の「仲間相場」が原則で,鉄筋に用いる異形棒鋼の直送品など一部を除けば,メーカー販売価格(建値)や「積算資料」で掲載している最終需要者渡し価格とは異なるということだ。
輸送費を含まない「置き場渡し」という条件にも留意していただきたい。
 
鋼材市況は,高炉や電炉などの鉄鋼メーカーの販売価格が1カ月単位で設定されることや,卸売の流通業者も月締めで売値を設定する商慣習から,株式や為替ほど小刻みに変動しないのが実態だ。
 
だが市場環境によっては,鉄鋼相場は数日間の単位で乱高下することもある。記憶に新しいところでは,2008年に起きたリーマン・ショック前後の値動きだ。
 
建材の代表品種であるH形鋼を例に振り返ってみる。
以下に記す市場価格は,特に断りがない場合はすべてベースサイズ・置き場渡し,1t当たりの東京地区の月末・安値だ。
 
2008年1月は初値7万9千円で始まったが,3月には早くも10万円を突破し10万8千円に急騰。
その後も騰勢は弱まらず,7月下旬には12万8千円に到達。年初比で4万9千円高,62%の上昇率を記録した。
 
だが9月のリーマン・ショック以降は建設需要が激減し,市場価格も12月末には9万8千円と10万円を割り込んだ。2009年以降も続落傾向が続き,翌10年1月には6万円まで下がった。

鉄鋼価格推移

【表-1 鉄鋼価格推移】


鉄鋼価格推移

【表-2 鉄骨需要量とRC造着工床面積】


 

鋼材高騰が再燃

再び本稿の主題である2020年以降の鋼材市況動向に視線を戻そう。
前年の19年夏までの2年間は,20年に開催予定だった東京五輪・パラリンピックに向けて競技関連施設やインバウンド(海外訪日客)需要を当て込んだ宿泊施設のほか,都心部での再開発事業に絡む大型建築物などが多数出件された。
鉄骨需要量も年間500万tを超え,需給のタイト化により市況も上伸基調をたどった。
 
だが五輪需要が一巡すると鉄骨需要は端境期に突入。
五輪期間を避けて計画される再開発事業が動き始める21年までは,鋼材需要,鋼材市況ともに盛り上がりを欠く展開が予想されていた。

 

2021年には原料高騰を背景に価格が急騰したH形鋼

鉄骨建築物の梁などに使用されるH形鋼。
2021年には原料高騰を背景に価格が急騰した



 

コロナ禍で混乱

ところが,19年末に中国で新型コロナウイルス感染が報告されると,翌20年には瞬く間に全世界で感染が拡大。
パンデミック(感染症の世界的流行)の様相を呈した。
 
日本国内でも同年4月に初の緊急事態宣言が政府により発令され,人々の行動が実質的に制限された。
あらゆる経済活動も滞り,建設業界でも受発注や設計図面の遅れは発生したが,工事現場は感染対策を強化した上で工程を消化していった。
 
この間も国内では建設受注の端境期が長引き,建材需要も停滞した。
ただインバウンド需要の消失でホテルや商業ビルの計画が止まった半面,巣ごもり需要の高まりで大型物流施設やデータセンターの建設ラッシュが始まった。
20年夏には世界粗鋼生産の半分超を占める中国がいち早くコロナ禍から回復。
鉄鋼生産の急増に伴い,鉄スクラップや鉄鉱石の輸入を急速に増やしたため国際市況が急伸した。
秋には政治摩擦で関係が悪化したオーストラリアからの石炭輸入を中国が実質制限したことも混乱を招き,市況上伸に拍車を掛けた。
 
この原料高騰に日本でいち早く反応したのが,普通鋼電炉メーカーだった。
20年6月,異形棒鋼最大手の共英製鋼が既に据え置きと表明していた販売価格を,月半ばで2千円引き上げに変更する異例の対応を取った。
追随するようにH形鋼大手の東京製鉄も,7月販価について2年6カ月ぶりに全面値上げ(上げ幅は5千円)すると発表。
マーケットの雰囲気が一変した。
 
8月下旬には,高炉メーカー最大手の日本製鉄が厚板など鋼板類を9月引受分から5千円値上げすると公表。
JFEスチールも10月分から建材全品種の値上げ姿勢を打ち出した。
同社の全面値上げ表明は実に4年ぶりで,業界関係者の衝撃も大きかった。
韓国や台湾の鉄鋼メーカーも値上げに動き,輸入材価格も2年ぶりに上向いた。

 
 

原料高騰でメーカーは売り腰強化

メーカー値上げは,市中の鋼材市況へも着実に波及した。
20年5月から7万4千円で底ばいしていたH形鋼は,9月と10月に1千円高,12月には4千円高と月を追うごとに上伸。
翌21年1月以降も上昇が続いた。
 
その後,21年4月まではやや騰勢に陰りがみられたが,大型連休明けの5月には再び原料高騰の波が押し寄せた。
豪州産輸入を制限する中国向けスポット価格は,6月に主原料の鉄鉱石が,7月にコークスに用いる原料炭がそれぞれ過去最高値を更新。
副資材として鋼材に添加するフェロシリコンや金属マンガンも,市場価格が最高値を付けた。
また原料だけでなく,耐火物の原料も中国要因で高騰した。
 
国内でも鉄スクラップの急騰が続いた。
21年1月からの中国の輸入再開が期待され,20年後半から上げ足を速めた鉄スクラップ(H2)の問屋ヤード持込み価格は,21年初に3万2千5百円からスタート。
実際には中国向け輸出は伸びなかったが,ビル解体などによる市中発生が少なかったため,国内需給は緩まなかった。
その後もほぼ右肩上がりで推移し,10月には4万5千5百円台後半(問屋ヤード持込み価格・メーカー炉前購入価格も5万5千円台後半)とリーマン・ショック前,13年ぶりの高値に切り上がった。
 
鉄鋼メーカーも建値を順次切り上げた。
日本製鉄や東京製鉄は厚板や薄板を筆頭に,H形鋼など普通鋼鋼材の価格を断続的に引き上げた。
高炉などから母材を仕入れる建材メーカーも6月以降S造の柱に用いるロールコラム(BCR,大径角形鋼管)の価格を1万〜2万円ずつ値上げしている。
 
市場価格はどう反応したか。
H形鋼は21年1月上旬から12月中旬までに3万円,厚板が5万4千円,異形棒鋼が2万4千円それぞれ上昇。
目立ったのはコラムで,年初から6万3千円も高騰している。
これはH形鋼と同じ鉄骨材料でも,母材となる鋼板が急騰したことが大きい。
加えて自動車など向けに優先的に配分されたため仕入れ量も制限され,生産が需要に追いつかず市中在庫がひっ迫したことも背景にある。

 
 

今年も鋼材高騰は続くか

21年の建築市場は回復途上にあるものの,鉄 骨などの需要量はそれほど拡大していない。
その 意味では足元で起きている鋼材高騰は需要要因と はいいにくく,原料高騰や鉄鋼メーカーの生産政 策といった供給要因で相場を押し上げたと総括で きる。
また全世界で脱炭素にかじを切ったこと で,中国を筆頭に二酸化炭素(CO2)を排出する 原料炭を直接用いない鉄スクラップが鉄鋼半製品 のスラブなどとともに注目を浴びたことも遠因と いえよう。
 
こうした潮流の中,主原料の鉄スクラップが以 前のように暴落するシナリオは見いだしにくい。
鋼材市況も当面は高値圏で推移しそうだ。

東京都内では鋼材需要を押し上げる大型再開発事業が進む(東京・高輪で)

東京都内では鋼材需要を押し上げる大型再開発事業が進む(東京・高輪で)


 
 
_________________________
※文中の価格は鉄鋼新聞社調べ。
調査条件が異なることから,積算資料掲載価格とは一致しない。

 
 
 

株式会社 鉄鋼新聞社 鉄鋼部 記者
新谷 晃成(あらたに あきなり)

 
 
【出典】


積算資料2022年2月号
積算資料

 

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