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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)について

1. はじめに

令和3年7月1日からの大雨により,静岡県熱海市において土石流災害が発生し,甚大な人的・物的被害をもたらした。
盛土の崩落が被害の甚大化につながったといわれている。
 
そこで,政府は,危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制し,盛土等に伴う災害を防止するため,第208回国会に「宅地造成等規制法の一部を改正する法律案」を提出した。
 
本法案は衆参両院での審議を経て成立し,「宅地造成及び特定盛土等規制法」(盛土規制法)として,令和4年5月27日に公布されたところである。

 
 

2. 盛土規制法の概要

①国による基本方針の策定

盛土等に伴う災害防止に向けては,土地利用規制,廃棄物処理など,多くの関係部局が相互に連携しながら円滑に規制を実施できるようにする必要があるほか,盛土規制について,各自治体によって対応にばらつきが生じることのないようにする必要がある。
 
このため,盛土規制法においては,主務大臣である国土交通大臣及び農林水産大臣が盛土等に伴う災害の防止に関する基本的な方針を策定し,盛土対策についての基本的な考え方を示すこととしている。

②スキマのない規制
【規制区域の指定】

盛土等に伴う災害から人命を守るとの法目的に沿って,都道府県知事等が,盛土等の崩落により人家等に被害を及ぼしうる区域を規制区域として指定することとしている。
 
具体的には,規制区域の指定について,客観的なリスク把握に基づき行えるよう,都道府県等がおおむね5年ごとに基礎調査を実施した上で,
 ●盛土等に伴う崖崩れ等によって近隣の人家等に被害が生ずる蓋然性が高い市街地や集落のエリア(宅地造成等工事規制区域)
 ●人家等から離れた場所であっても,地形等の条件から,盛土等が崩落した場合に土砂が流下して,下方の人家等に危害を及ぼしうる斜面地のエリア(特定盛土等規制区域)を指定することとしている。

規制区域の指定


【規制対象行為】

規制区域内で行われる一定規模以上の盛土等の行為は,都道府県知事等の許可(特定盛土等規制区域内の一定規模以下のものは届出)の対象となる。
 
具体的には,宅地造成のほか,農地の造成・改良や森林の造成,土砂の恒久的な投棄などを目的とするものなど,盛土や切土全般が規制対象となるほか,土地の形質の変更には該当しない土石の一時的な堆積も規制対象となる。

③盛土等の安全性の確保
【工事の許可】

工事の許可を受けようとする工事主は,許可申請に先立って,土地所有者等の全員の同意を得るとともに,周辺住民に対し,説明会の開催等により工事の内容を周知しなければならないこととしている。
 
また,都道府県知事等は,許可申請があった場合,
 ●災害防止のための安全基準(技術的基準)に適合していること,
 ●工事主が必要な資力・信用を,工事施行者が必要な能力を有すること
 ●土地所有者等の全員の同意を得ていること
を審査することとしている。
 
 

【定期報告,中間検査の新設】

許可を受けた盛土等については,許可内容に従って適切に工事が実施されていることを確認するため,工事完了時の完了検査に加え,一定規模以上の盛土等について,施工中の中間検査及び施工状況の定期報告が必要となる。

定期報告,中間検査の新設


④責任の所在の明確化と危険性の確実な除去

工事完了後の盛土等の安全性を継続的に担保するため,規制区域内の盛土等が行われた土地について,土地所有者や管理者,占有者が常時安全な状態に維持する責務を有することを明確化している。
その上で,都道府県知事等は,災害防止のため必要と認める場合に,土地所有者や管理者,占有者に対してはもちろん,過去に盛土等を行った工事主や工事施行者,過去の土地所有者等が原因行為者であることが明らかな場合には,その原因行為者に対して是正措置を命令することができる。
 
また,命令の相手方を確知できない,命令するいとまがない,命令された者が期限までに対策を実施しないなどの場合には,都道府県知事等による代執行が可能である。

⑤厳格な罰則

本法律では,規制の実効性を確保するため,現行法の罰則を抜本的に見直し,違反行為に対して厳格な罰則を措置することとしている。
 
例えば,現在,無許可工事や安全基準違反については「6か月以下の懲役,30万円以下の罰金」としているところ「3年以下の懲役,1,000万円以下の罰金」とするなど,法定刑を大幅に引き上げることとしている。
 
また,法人が関与する違反行為については,自然人に加えて法人にも罰金刑を科すこととしており,無許可をはじめとする重大な違反であれば最大3億円以下の罰金刑が課されることとなる。

 
 

3. おわりに

盛土規制法は,公布の日から1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。
 
今後,国としては,基本方針の検討や,基礎調査及び区域指定,工事の許可,不法盛土への対応等に必要なガイドラインの検討などを進め,法施行後の都道府県等の円滑な事務の実施を促進してまいりたい。

宅地造成等規制法の一部を改正する法律


 
 
 

国土交通省 都市局 都市安全課

 
 
【出典】


積算資料2022年10月号


最終更新日:2023-02-13

 

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