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ホーム > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > コンクリート橋の維持管理と新技術の活用

1.道路橋の維持管理の現状

笹子トンネルの事故を契機に、平成26年から道路橋やトンネルの定期点検が義務化され、5年に1度、近接目視を基本として実施されている。
現在はすでに1巡目が終わり、2巡目に入っている。
1巡目の結果1)をみると、例えば、全国に71万橋以上ある橋梁は、判定区分Ⅰ(健全)が41%、Ⅱ(予防保全段階)が49%、Ⅲ(早期措置段階)が9%、Ⅳ(緊急措置段階)が0.1%となっている。
このうち、判定区分がⅢまたはⅣであった橋梁の修繕等措置が完了しているのは、国土交通省管理の橋梁で約53%、地方公共団体管理の橋梁で約46%である。
点検はほぼすべてが終わっているが、修繕等の措置はまだ進んでいないと言える。
 
また、国土交通省の資料2)によると、1巡目に点検した地方公共団体の橋梁を5年後の2巡目に点検したところ、1巡目にⅠまたはⅡだった橋梁の約4%が2巡目にはⅢに移行していたとされる。
つまり、5年が経つと新たにⅢやⅣに移行する橋梁が毎年5,000橋くらいあることになる。
一方、地方公共団体のⅢ・Ⅳ判定橋梁の措置完了数は1年間で7,000橋である。
これらを差し引きすると、1年間で2,000橋しか減らせていないということになる。
2021年度末時点のⅢ・Ⅳ判定橋梁でまだ措置が行われていないのは約45,000橋のため、現在の予算ベースでこれらを全部直すには約20年かかる見込みである(図-1)。
 
こうした状況から、今後はⅢの修繕をより進めるとともに、ⅡからⅢ・Ⅳへの移行を減らすために予防保全を重点的に行う必要がある。
 

図-1 措置完了数推移イメージ2)

図-1 措置完了数推移イメージ2)


 
 

2.橋梁診断支援AIシステムの開発

土木研究所では、道路橋の予防保全に向けた取組みの一環として、信頼性の高い診断が行われるよう、熟練診断技術者の診断における知識や思考方法をもとに橋梁診断支援AIシステム(以下、「診断AIシステム」という)の開発を進めている。
本システムでは、橋に生じる損傷のメカニズム、点検で取得すべき情報、措置方針や工法例等の一連の情報に対して、熟練技術者が診断していくまでの思考プロセスをフローチャート化している。
その上で、点検で得た情報等を入力すればそのフローチャートに基づいて根拠とセットで措置方針を助言するエキスパートシステムとなっている。
長寿命化のための措置が可能な予防保全の段階にあるかどうかの見極めの支援等にも活用が期待される。
 
本システムでは、橋梁諸元等のデータをデータプラットフォームと連携させる等によりあらかじめ入力した上で、システムを搭載したタブレットPCを現場に持って行き、現場で橋の変状を確認しながら入力する使い方を想定している(図-2)。
令和3年度までに橋種全体の9割に当たる橋の形式を対象として診断AIシステムVer.1.0を構築したところである。
今後システムの検証を繰り返して行い、診断の信頼性や使いやすさの改良を重ねるとともに、予防保全に資する新しい研究成果等も反映していく予定である。
 

図-2 橋梁診断支援AIシステム

図-2 橋梁診断支援AIシステム


 
 

3.予防保全に資する技術開発

予防保全を進めるためには、できるだけ早期に発見をして、早期に措置をすることが重要だと考える。
また、状態がひどくなってから直しても再劣化するということがある。
 
そのため土木研究所では、予防保全に向けて、早期に発見して早期に措置をする技術開発に取り組んでいる。
本稿では、「床版の土砂化」と「コンクリート橋の塩害」について紹介する。
 
 

3-1 床版の土砂化の予防保全

床版は疲労損傷しやすく、これまでも対策がとられてきたが、近年はコンクリート床版の土砂化という損傷が顕在化している。
コンクリート床版の上にはアスファルトがあるが、アスファルトの下の床版上面のセメント分がなくなって土砂化しているという事例である。
 
図-3の写真は、橋梁の下から見たものである。
 
 
最終的には写真右のように穴が空くが、床版上面で土砂化が進行するため、下から見ても5年前はあまり目立った変状が見られない。
 
床版土砂化のメカニズムは、アスファルト舗装の下に水が浸透し、その水がひび割れやコンクリートの空隙に入り、圧縮されることでコンクリートが土砂化をする。
最終的には床版に穴が空く。
 
ひどい段階になってから補修するのは非常に困難で、部分打換や床版取替など費用も時間もかかる。
そうなる前に水が浸入していることを早期に検知して、止水・遮水を行うことにより予防保全を行うことができる。
 
そのため、電磁波レーダを使って、アスファルトの下、床版の上に水がどのように浸入しているかを検知する技術を内閣府の「官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)」の予算も活用して開発した。
 
AIを用いて滞水を検知する仕組み(図-4)は、まず電磁波レーダを走らせて波形データを取得し、次にアスファルトをはがして床版の上面の水分量を測る。
そして、波形ごとに水分量を割り当て、教師データとしてAIで学習をさせるというものである。
 
 
実際の橋梁で電磁波レーダを用いて検出した結果が、図-5の下図「滞水推定結果」である。
青い部分から水が入ってきているということになる。
 
水が入ってきているのは、ジョイントの部分、舗装の端部、あるいはセンターライン付近などであることが分かる。
 
舗装の端部は、アスファルト塗装がうまく転圧されていないことがある。
また、センターライン付近には塗装の施工目地があるなどして水が入っている。
どこから水が入っているかが分かれば、その部分を補修することで予防保全ができると考えている(図-6)。
 

図-3 床版の土砂化の例

図-3 床版の土砂化の例

図-4 電磁波レーダとAIを活用し滞水を検知する技術
 

図-5 滞水推定結果

図-5 滞水推定結果


図-6 土砂化を予防するための措置

図-6 土砂化を予防するための措置


 
 

3-2 コンクリート橋の塩害の予防保全

コンクリート中に塩分が浸透することにより、コンクリートの中の鋼材の腐食が進んで破断する
(図-7)。
 
こうした塩害は再劣化することが多く、何度も補修をすることにより、初期建設時の3倍くらいのコストがかかることもある。
 
塩分が染みこんでしまってから直すのは大変であるため、国土交通省では、健全なうちから下部構造のコンクリートのコアを取り、塩分がどれくらい入っているかを点検する塩害特定点検3)を行っている。
一方で、コアをとることはコンクリートを傷める場合もある。
そのため、第1期の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」で理化学研究所と共同で、中性子線を使ってコンクリートの中の塩化物イオンから跳ね返ってくるガンマ線を検出し、コンクリート内にどれくらい塩分が浸透しているかを測る技術を開発した4)(図-8)。
現在、国土交通省道路局の新道路技術会議の研究に採択され、理化学研究所で引き続き開発を続けている。
 

図-7 塩害により鋼材が腐食した例

図-7 塩害により鋼材が腐食した例


 
 

4.おわりに

メンテナンスサイクル(図-9)を適切に回していくためには、点検などから診断に必要な情報が必要であり、それに対して適切な措置を行う必要がある。
今後、予防保全を進めていくためには、それぞれの段階で必要とされる点検の技術、措置の技術をさらに検討していかなければならない。
 

図-9 メンテナンスサイクル

図-9 メンテナンスサイクル


 
 
【参考文献】
1)国土交通省道路局:道路メンテナンス年報https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001372147.pdf)
2)令和5年度道路関係予算概算要求概要(令和4年8月):https://www.mlit.go.jp/page/cont
3)コンクリート橋の塩害に関する特定点検要領(案):https://www.pwri.go.jp/caesar/manual/pdf/konkuri-tokyounoenngainikannsurutokuteitennkenyouryou(an).pdf
4)理化学研究所:超小型非破壊検査装置「中性子塩分計RANS-μ」を開発https://www.riken.jp/press/2021/20211014_2/index.html
 
 
 

国立研究開発法人 土木研究所 構造物メンテナンス研究センター 上席研究員 
石田 雅博

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2023年2月号

文書名積算資料公表価格版2023年02月号

 

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