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大阪大学 大学院工学研究科
環境・エネルギー工学専攻 教授 矢吹 信喜

 

BIMからCIMと建築と土木

図-1 日本と欧米の土木・建築の分け方の違い

図-1 日本と欧米の土木・建築の分け方の違い


2005年頃から建築分野で世界的にBIM(Building Information Modeling)という言葉が広まり、先進各国で本格的にBIMの導入に取り組んでいる。わが国においても、国土交通省が2010年度からBIMの試行プロジェクトを開始した。一方、土木分野では、2012年度にBIMの土木版であるCIM(Construction Information Modeling)を国土交通省が提唱し、試行プロジェクトを全国で展開している。
 
日本では土木と建築を対象とする構造物ではっきりと分けている。すなわち、道路、鉄道、橋梁、トンネル、河川、港湾などの社会基盤施設が土木分野で、ビルディングや家屋は建築分野となっている。しかし、欧米に目を転ずると、実はCivil EngineeringとArchitectureは日本の土木と建築とは相当に分け方が異なるということに気付く。図-1に示すように、構造物の種類に関わらず、構造、水理、土質、材料、施工、環境、設備といったサイエンスのうち、主に力学(熱力学を含めて)に立脚している学問分野がCivil Engineeringであり、意匠設計や景観といった美学や感覚といった職人的な教育を行うのがArchitectureである。従って、Civil Engineeringの方がより広い範囲をカバーしているため、大体どこの大学にもCivil Engineeringの学科はあるが、Architectureは数多く学科を作ってしまったら就職先がなくなるので少ないだけでなく、工学部の中にはなく、建築学部として独立しているか美術系や生活系の学部に属していることが多い。また、通常の4年教育ではなく、5年教育を課していることがある。
 
筆者は昔、米国のスタンフォード大学のCivil Engineering学科で構造工学の授業を受けた時、ビルディングの構造と基礎に関することばかりだったので大いに面食らったが、欧米では当然ということだった。
 
従って、BIMというのは、欧米の場合、Architectureを学んだ建築設計者とCivil Engineeringを学んだ構造・地盤、設備、生産、施工技術者が、フロントローディング(設計の前倒し)によって、同じ土俵でプロジェクトを進めようとする相当に果敢なチャレンジをしているとも見ることができる(図-2)。
一方、日本の建築分野は意匠設計者も、構造・地盤、設備、生産、施工技術者も建築を一緒に学んだ「仲間」がBIMをやっているという見方もできるのである。
図-2 BIMによる異なる技術者らによる協調的作業

図-2 BIMによる異なる技術者らによる協調的作業


 
日本では土木と建築の区分は極めて強く、構造や土質などはほとんど同じようなことを扱っているのに、会社や役所では縦割りになっている。学の世界でも、多少はクロスオーバーがあっても、土木で使う、死荷重、活荷重、照査などの用語は建築では使っていない。従って、BIMからCIMへの水平展開は、日本の方が欧米よりもハードルが高く、より多くの努力を要するかも知れない。また、CIMというと欧米では、土木建築両方の構造物の施工(Construction)段階のみを対象としていると捉えられる可能性があり、国土交通省が提唱するCIMはBIMを含むという概念には首をかしがれる可能性がある。なお、CIMという言葉は、機械や情報の分野ではComputer Integrated Manufacturing(コンピュータ統合生産)を意味し、あちらの方が歴史があるので使用する際は注意が必要である。
 
しかしながら、筆者は国土交通省がCIMを提唱し、推進していることを非常に喜んでいるのである。なぜなら、3次元モデルを中心としてライフサイクルを通じて上流から下流の技術者が協力しながらプロジェクトを進めていくというビジネスプロセス変革は筆者のライフワークだからである。
 
 
 
 

アジアのCIM事情

写真-1 第8回アジア建設IT円卓会議記念講演会(JACIC撮影)

写真-1 第8回アジア建設IT円卓会議記念講演会(JACIC撮影)


スタンフォードでの構造工学の講義はビルディングの構造と基礎が多かったと前述したが、これは米国の建設事業の8割から8割5分くらいがビルや家屋などで、社会基盤施設の建設は少なかったことに由来する。最近は、オバマ大統領は社会インフラの建設は重要だと力説し、予算も割くようになったので増えているかもしれないが、およそ、先進国は社会インフラの建設はどこかで頭打ちになってしまう。一方、近年、経済発展が著しいアジアの国々では、社会基盤建設は国造りの上で重要であるから、CIM、すなわち「土木版BIM」にどう取り組んでいるかを知ることは価値があると考えらえる。以下、2012年8月に開催されたアジア建設IT円卓会議記念講演会(写真-1)における講演内容とその後の情報収集によって得られた情報を記す。
 

中国

中国は、大規模な社会インフラ建設プロジェクトが数多くあり、今後も広大で未開発な内陸部の開発が済むまでかなり長い期間、建設投資は増え続け、経済をけん引すると予想される。これらの大規模建設プロジェクトを推進していく上で、新技術、イノベーションが要求され、国家技術進歩賞などを目標とするため、行政が企業に対して情報化やBIM推進を要求しているのが現状である。政府の力は非常に強いので、企業は採算度外視で3次元CADや3次元構造解析ソフトウェアの導入や利用を進めている。例えば、2007年に建設部(日本の国土交通省に相当)は、特級ゼネコンに対して、2010年までに、特級として要求される情報化水準を満足しなければ「特級」資質を剥奪すると通達し、264個のゼネコンが情報化を始め、金融危機で2年間延期になったが、ほぼ全て合格したという。
 
「2011-2015建設業情報化発展計画要綱」では、企業情報化管理システムとして、システムの統合化・知能化・自動化、ERP、E-Commerceなど、最新情報技術の適用として、BIM、HPC、VR、自動測量、RFID、SHMなどが、情報化標準として、分類とコーディング、データ交換、電子図面、電子納品などが挙げられている。
 
一方、行政は、計画経済情報化やBIMを推進するために、研究プロジェクトを立ち上げ、研究予算を配分している。国レベルの研究プロジェクトとしては、都市の計画・設計・施工・管理のデジタル化、建設業の情報化、グリーン施工、等がテーマとなっている。こうした研究の成果を実際のプロジェクトに応用することを行政が要求することから、全体として情報化が推進することにつながっている。
 
中国におけるBIMに関する情報は、主に清華大学土木工学科のZhiliang Ma教授によるものである。
 

韓国

韓国では国土海洋部(日本の国土交通省に相当)が2009年に国家BIMロードマップを制定したことから、建築分野においてBIM採用の気運が高くなった。同年に国家BIMガイドラインを、2010年に国家建築BIMガイドを策定した。調達庁では、短期、中期、長期にわたるBIM採用計画を立て、2012年には、調達庁が発注する約34億円(日本円に換算)を超えるターンキー契約(設計・施工一括)のプロジェクトにはBIMを適用させることが義務付けられ、2013年から全ての34億円以上のプロジェクトにBIM採用を指導し、2016年から建築、土木問わず、全ての調達庁発注プロジェクトはBIMを採用する、という計画になっている。
 
BIMは建築分野で採用することは規定路線であるが、公共土木構造物に適用するとなると、便益はあるものの、
BIMに関する知識の不足、ソフトウェアが未対応であること、標準化されたパーツの不足といった障害も予測されている。こうした課題に対して、延世大学土木工学科のSang-Ho Lee教授は、新たにIFCに土木用のエンティティ(部品)を加える方法とは別に、既存のIFCを利用しつつ、属性情報(Property Set)だけ土木用に変更する方法が当面、現実的であると提案している。韓国では、大手建設会社や建設コンサルタント会社では既に実際の公共土木プロジェクトに3次元あるいは4次元モデルを適用させている。
 
以上の情報は、上述のSang-Ho Lee教授の資料によるものである。
 

香港

香港では、2007年に10大インフラストラクチャ・プロジェクトを開始した。これらには香港地域内の鉄道、高速道路や土地開発の他、中国との境界線上の橋梁や道路などが含まれている。特筆すべきなのは、香港では、こうした公共建設工事は、極めて大きな経済効果をもたらし、付加価値が高く、25万人の新たな雇用も生み出す効果もある、と政府が高らかに宣言していることである。日本のように、公共事業というと「無駄」、「箱モノを作っても経済や雇用に効果はない」、「コンクリートより人」などと言っている国とは大違いである。
 
香港でも、建築分野ではBIMに力を入れており、官民双方でBIM化に取り組んでいるが、公共土木工事の方は、意外に保守的でBIM(日本で言うところのCIM)は検討中とのことである。
 
香港は土地が狭く、人口が大きいため、3個の埋立地にゴミなどの廃棄物が捨てられているが、2018年までに順次2年ごとに満杯になってしまうため、廃棄物削減は喫緊の課題となっている。同時に、二酸化炭素(CO2)排出削減も重要な課題である。しかしながら、前述のように大型社会インフラ工事が目白押しであることから、建設廃棄物とCO2排出の増加が懸念されている。そこで、香港では、BIMを使って新しく建設するビルと既設のビルに対して、ライフサイクルを通じて、廃棄物とCO2排出に関する管理を行うこととしている。こうした動きは、土木構造物にも適用されるであろう。
 
以上の情報は、香港科学技術大学土木工学科のJ.S.Kuang教授によるものである。
 

台湾

台湾でも、建築分野でBIMが盛んに採用されつつあるが、中国と異なり、政府はあまり熱心ではなく、むしろ民間会社と国立台湾大学などの産学が各々BIMセンターを2009年から2011年にかけて設立し、BIMを広めようと努力している。
特に国立台湾大学のNTU BIMセンターでは、実習ワークショップ、個別課題短期コース、BIM四半期レビューフォーラム、月例BIM朝食会議などを産業界の技術者らに提供するとともに、各種マニュアルや雑誌を発行している。大学教育においても、国立台湾大学土木工学科では、「工業図学(2単位)」で2次元AutoCADと3次元SketchUp、アニメーションBlenderを教え、「工業情報マネジメント(3単位)」、「BIM技術の応用(3単位)」の各教科目を提供している。
 
政府はBIMに対して戦略的な計画や標準化をしようといった動きも特にないが、研究資金を提供したり、台北市のMRT(地下鉄)プロジェクトにBIMを使うことを認めたりしている。
 
MRTのLG05駅のプロジェクトでは、Sino Tech社がBIMモデルを使うことによって、地下の上下水道配管と地下構造物との干渉チェックや、空調や電気設備の配置検討などを行い、効果を挙げた。
 
これらの情報は、主に国立台湾大学土木工学科のPatrick Hsieh教授によるものである。
 

シンガポール

シンガポールの建設事情は、安全性が第一ということで、ビルディングの構造設計は、政府以外の認定された第三者的な検査技術者によって検定が実施されるとともに、構造設計基準を欧米の状況を見ながら常に最新式のものにしている。第二が生産性であり、BIMによる建設プロジェクトの統合化に官民挙げて取り組んでいる。BIMの戦略については、政府主導で進められ、BIM資金振興、トレーニングなどを展開している。2011年には、BIM 電子納品システムによる3次元モデルデータの政府への提出が始まっている。また、国立シンガポール大学土木環境工学科では、BIMのセミナーを学生に対して提供している。
 
シンガポールも香港同様、国土の面積が小さいこともあり、構造物の解体撤去に伴う廃棄物処理が喫緊の課題になっている。建設廃材を将来的にリサイクルするために、Designed for Disassembly(分解のために設計:DfDと略す)というコンセプトを推進している。DfDを実現するために、このコンセプトに合致する「標準的な」材料、部材、形式(主にプレキャスト部材)などを技術者や建築設計者が熟知する必要があることから、DfDデータベースが提供されている。
 
これらの情報は、国立シンガポール大学土木環境工学科のSomsak教授によるものである。
 
 
 
海外のCIM事情《その1》
海外のCIM事情《その2》
海外のCIM事情《その3》

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 

 

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