建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建設ITガイド > 施工BIMの今 −高砂熱学工業 施工を変革するBIMの構築に向けて−

 

当社の情報化推進の経緯

日本で2009年に「BIM元年」と認識されてから、建設業界の設計、施工、保守運用の各段階でBIMの活用が進んでいる。各段階で使われ方はさまざまだが、当社のように設備工事を主力事業とする会社では、特に施工段階において活用範囲が多い。20世紀の初頭に建物に機械空調設備が導入された頃から、施工の源となるドキュメントは手計算の技術計算書であり、手書きの施工図であった。当社では、ワークステーションやPCが建設会社の母店だけでなく、現場に普及し始めた1980年代半ば頃から、現在の「BIM」という言葉がない時代に、それと同様なコンセプトで技術計算書や施工図を手作業から変革させるための自動計算ツールとCADの開発に取り組んできた。1990年代前半には、当社の施工する物件のほぼ全てにおいて設備CADが導入され、現在は(株)ダイテック社製のCADWe’ll Tfasを使用している。技術計算は静圧、揚程、消音計算のほぼ100%を自社開発ソフトで行っており、その他熱負荷計算、気流・温湿度シミュレーションは自社開発と市販汎用ソフトを合わせて利用している。
 

図-1 手書き図面とCAD図面

図-2 手計算とPCソフト計算




 
 

設備工事会社のBIMとは

設備工事会社の主な業務は、「設計図書の情報を基に、施工図や技術計算の作成を通じて施工内容を確定し、施工計画を立案する。この計画を基に施工管理を行い、最適な設備を提供する」ことである。課題としては、工期中の設計条件の変更対応のために、施工関連図書の修正や客先承認に時間がかかり、施工がスムーズに進まないことなどが挙げられる。従ってこれらの業務にBIMを活用する目的は、第1に顧客に対する説明力を向上することによってタイムリーな合意形成を行うこと、第2に現場での設計施工段階におけるBIMモデルの情報連携度を高めることにより、品質と業務効率を向上させること、第3に竣工引渡しの後の運用段階で活用できるモデルを提供することである。特に、施工の源となり、多くの情報量を持つ施工図=CADデータとの連携が重点課題となる。
 
 

現場でのBIM活用

①建築・設備CADデータの重ね合わせによる干渉チェック
 
設備工事では、空調・衛生・電気設備で同じCADソフトを使う場合と異なるソフトを使う場合で方法は異なる。空・衛・電3 社がTfasを使用している場合は、データの重ね合わせだけで3社の干渉チェックをTfasの機能上で実施でき、多くの現場で取合い調整が日常的になされている。仮に3社が異なるソフトを使用する場合でも、IFCやBE-Bridge変換の精度が高まっており、設備間の調整は比較的よくできている。ただ現状では、建築の構造や内装のデータを受領できる場合は少く、この場合、設備CADの建築作図機能を用いて、建築の2次元データを設備CAD上に3 次元入力することによって表現する場合が多い。
 
建築設備全てが3 次元CADで作成されている場合はGRAPHISOFT社のSolibri等のモデル合成検証ソフトを使用して取合いを実施している現場もある。
 

図-3 干渉チェック




 
 
②3D表現によるメンテナンス確認、設備配置確認などの合意形成
 
建築設備は運用後のメンテナンスが必要で、特に機械室や天井内の機器や装置、弁類やダンパー類の点検や操作性が品質に大きく影響する。設備CADには3D表現だけでなく、動画作成などの機能が豊富で、顧客、特に施設管理に携わる方への説明には非常に効果が高い。さらに日常点検だけでなく将来の機器の入れ替えなどの更新計画に対しても納得度の高い説明資料を提供できる。
 

図-4 メンテナンス性の確認




 
 

BIMモデルと業務の連携

①BIMモデルを利用した技術計算
 
設備工事において、施工図と同様に重要な計画作業の一つが、機器選定や検収条件の確認のために行われる技術計算である。当社では1987年よりPCベースで利用できる静圧や揚程計算ソフトの開発をスタートさせ、その他設備施工に関するさまざまな自社開発ソフトも合わせ、現場での技術計算を行っている。これまでは施工図に描かれている部材などの情報を手入力してから、自動計算を行う方法が主流であったが、現在では設備CADベンダーの協力やBE-Bridge、IFCでの変換技術が進み、CADデータの部材や経路情報をダイレクトに読み込んで計算できるソフトを自社開発、展開している。ラインアップとしてダクト静圧、配管揚程計算の他、ダクトと配管の数量、配管の概算金額算出、排煙ダクトの漏洩量計算等がある。
 

図-5 自社開発技術計算ソフト




 
 
②3次元レーザースキャナの活用
 
これまで土木やプラント系の施設での利用が主であったが、建築分野でも適用が進んできた。建築設備は、15年から30年の間で更新・改修されるものが多く、十数年かけて部分改修する場合もある。改修を反映した施工図が完全に整備されている事例は少なく、新たな改修計画の初段階で必要となる現況図の作成のためには、手計測による現地調査が普通であった。
 
当社では、主に改修物件での施工図作成を目的として3Dレーザー計測を2007年に初めて試行した。当時は点群処理ソフトの機能やモデル化で課題が多かったが、スキャナとソフトの性能向上に合わせ、2013 年より本格的に取り組んでいる。
 
モデル化は、点群処理ソフトの円柱抽出機能から、配管属性を持つモデルに変換するソフトを自社開発し、モデル化作業の効率化を図っている。また、機械室だけでなく天井内設備の改修にも利用しており、支持材や他設備など、通常の施工図では反映されない構造物の容易な把握により、配管やダクトルーティングの精度が増した。またBIMモデルと点群データの組み合わせで作成した3D資料は、改修計画や作業説明に非常に有効となる。
 

図-6 3次元レーザー計測と配管変換ソフト




 
 
③VR技術との連携
 
ゲームの世界等で進化しているVR技術は、住設の分野では既に商業ベースで利用されている。業務用建物でも設備の機械室メンテルートやスペースの確認、室に取り付けられるスイッチ、センサー類、制気口の位置やデザインの合意形成への利用価値は高い。当社ではVRシステムを導入し、若手社員への施工図教育、特にメンテスペースの確認や施工計画のチェックのために使用している他、客先合意のためのプレゼンツールとしても展開している。
 

図-7 VRシステム




 
 

今後の展開

企画・設計、施工、運用・保守と、BIMは建設の全てのフェーズでの利用が期待されているが、施工面においてはまだまだ発展途上にある。BIMモデルと強固に連携して施工計画書類を自動作成できる機能を持つソフトウェアと、建設作業における施工管理IT利用とBIMを結びつけるツールの開発、すなわちBIM周辺の技術変革が、施工のあり方を変革できると考えている。施工会社はここに注力していくべきである。
 

図-8 BIMの情報連携




 
 

高砂熱学工業株式会社 技術本部 プロダクトイノベーションセンター BIM推進室
室長 山本 一郎 担当部長 今野 一富 メンバー 鈴木 崇浩、伊東 匠



 
 
【出典】


建設ITガイド 2017
特集2「BIMによる生産性向上」



 
 

 

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