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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > BIM > BIM人材育成の指針・目標となる新たな資格制度「BIM利用技術者試験」の創設

BIM利用技術者試験創設の意義

大手ゼネコンやハウスメーカーを中心に、即戦力となるBIM人材の需要が高まってはいますが、社内における人材育成には時間がかかり、教育環境を整えるのは企業にとって大きな負担となります。
また、人材派遣企業においても既存の登録人材にはBIMに精通した人材は少なく、登録者に対するBIMの教育が進められている状況です。
 
一方、将来的に貴重な戦力となる人材を輩出すべき教育機関においては、BIM教育(オペレーション教育)がようやく進み始めた段階で、BIMソフトが基本的に無償で導入できる一方、BIMを教育できる人材が少なく、販社や教育関連企業などの外部に頼っている状況です。
また、大学においては、BIMを含めた建築の情報化に積極的な指導者の有無で、その取り組みが大きく異なっています。
 
このような状況の中、BIMの技術や知識を体系化し、企業がBIM人材を獲得する際にどの知識や技術を求めているかを視覚化する=資格制度の利用が求められています。
さらには、建築業界に長く従事しているベテラン社員や定年後のシルバー人材へのリスキリング・リカレント教育(学びなおし)のコンテンツとしてのBIM活用においても、知識や技術の資格化は有用です。
 
一般社団法人コンピュータ教育振興協会(以下、ACSP)では、30年に及ぶCAD資格の主催・運営を通じて得たノウハウをベースに、BIM人材育成の指針・目標となる新たな資格制度として、「BIM利用技術者試験」を2023年6月より開始いたしました。
 
 

第一歩は「建築系の3次元CAD試験」

ACSPが建築系の3次元試験の検討を始めたのは、2005年のことです。
翌2006年に向けて、2次元のCAD利用技術者試験制度を機械系と建築系の専門分野に分け、より実務的な試験制度へと改訂することを当時の試験委員会へ提案した際、委員のメンバーであった渡辺仁史先生(早稲田大学理工学部建築学科教授=当時)より、「新たに建築分野に取り組むのであれば、2次元ではなく3次元を取り上げるべきではないか」とのご意見をいただいたのがきっかけでした。
 
渡辺先生は、教育現場においていち早く3次元CADによる建築設計を取り込んでおり、今後の建築界は3次元設計が主流になるとの考えから、CADの試験制度においても3次元を取り入れた方が良いとのお考えでした。
すでに2003年度から製造系・機械系の「3次元CAD利用技術者試験」が開始されていたことも、「次は建築系も」というご意見を後押ししたものと思われます。
 
ただ当時は、2次元CADの試験を機械系と建築系に分けるための準備に追われていたことや、当時の建築系3次元CADの機能がソフトによって大きく異なっていたこともあり、ACSPが信条としていた「特定のベンダー、ソフトによらない試験」という制約の下では、具体的な計画までは進みませんでした。

 
 

建築系3次元試験の創設

建築系3次元CADの試験化が具体的に動き出したのは、国土交通省が「官庁営繕事業におけるBIM導入プロジェクトの開始」を宣言した2010年のことです。
といっても、この段階で「BIM」の試験を標榜していたわけではなく、「特定のベンダー、ソフトによらない試験」という制約下でできる当時の最大限の共通機能が、「プレゼンテーション」「パース」であったことから、翌2011年の開始に向けて建築系・汎用系の3次元CADシステムやCG /グラフィックソフトを用いた建築3Dパースの評価・表彰制度、「建築3Dパース検定」制度を立ち上げました。
 
検討段階から「建築」「3次元」「パース」という3つのキーワードを試験名に盛り込むことを決めていましたが、当時のパンフレットやWebページにも「BIM」という言葉は一切見当たりません。
もし試験の開始が1~2年遅くなっていたら、「BIM」という言葉を使った試験名称になっていたかもしれません。
 
「課題提出型」という新たな方法で開始した「建築3Dパース検定」はその後、「Space Designer検定試験」というインテリアのプレゼンテーション・パースを評価する制度へ姿を変え、現在も行われています。

パース検定のパンフレット、表彰作品
パース検定のパンフレット、表彰作品
パース検定のパンフレット、表彰作品2
Space Designer検定パンフレット
Space Designer検定パンフレット

 
 

いよいよ「BIM」の検定試験創設へ

2011年に「建築3Dパース検定」を立ち上げ実施していく中で、建築系の3次元が「BIM」という新たな概念で進化し、「BIMソフト」なるものが市場に出てきたことは認識していました。
しかし、ソフトの種類が限られ、またCADの試験でお世話になっている教育機関でのBIMへの取り組みはまだ進んでおらず、「いつかはBIM」と思いながらも時期尚早との判断から、具体化は進みませんでした。
 
そんな状況を一変させたのが、2018年 8月にbuildingSMART Japan(以下bSJ)の「BIM個人能力認証(現「プロフェッショナル認証制度」)」に関するワーキングへのオブザーバー参加でした。
ワールドワイドで展開されるこの認証制度を日本国内で展開するにあたり、認定制度の運営に関するノウハウを持つACSPに対して意見を求められたのです。
 
このワーキングへの参加をきっかけに、ACSPとしてもBIMについての情報収集を改めて開始し、2019年には教育機関や派遣会社などへのヒアリング、2020年初頭には建築関係のカリキュラムを持つ全国570校の教育機関への調査を実施し、具体的な試験化への検討を行いました。
 
教育機関へのヒアリングや調査を通じBIM試験に求められたことは、
①会社ごとに異なるBIMの「ルール」の認識
②企業側の採用基準の指標となる
③「学びなおし」への対応
の3点です。
①については、「企業ごとにルールが異なる」ことを実務を知らない学生へ意識付けする必要があり、②についてはBIMの技術や知識を体系化し、企業がどの知識や技術を求めているかを視覚化することの必要性、そして③については、建築業界に長く従事しているベテラン社員(定年間近の)への再教育のコンテンツとしてのBIM活用=枯れた人材が貴重な戦力となる、という点でした。
 
実施に向けた裏付けとなる資料も調い、いよいよ2021年度には試験化をと意気込んでいた矢先、コロナ禍に行く手を阻まれてしまいました。
 
 

コロナ禍からの再始動、そして試験体系の構築へ

2020年度は、CADの試験制度創設以来初めて全国一斉で試験を中止とするなど、前例のない状況に戸惑うばかりの1年でした。
新しい事業を始めるような余裕もなく、せっかく進みかけていたBIMの試験制度もペンディングを余儀なくされましたが、約1年半のブランクを経て、2021年10月にBIMの試験制度実施に向けた「検討会」を実施しました。
 
ACSPのBIM試験制度が目指したものは、「単にBIMのオペレーション技能を評価するばかりでなく、BIMを活用した建築・建設業務において基本的なコミュニケーションができる能力を評価する」というものでした。
BIMの技術や知識を体系化し、受験者が保有している知識や技術を視覚化する。
そして受験対象者は、BIMオペレーター/モデラーやBIMマネジャーを目指す建築・建設業務既職者および学生、つまり企業へのBIMの導入を後押しできる人材の育成としました。
現在BIMを学んでいる学生や、すでにBIMオペレーター/モデラーとして活躍しながらも、将来的にBIMマネジャーやBIMスペシャリストを目指している既職者、さらには建築業界に長く従事し、建築の知識は十分持ちながら、BIMを学ぶことで新たな戦力として活躍できるベテラン層を対象とし、上記を実現するため、 CAD利用技術者試験で培った「知識+技能」を問う試験とすることも、当初より想定していました。
 
合格者像は「建築の基本的な知識を持ちつつ、BIMソフトのオペレーション能力と、 BIMモデルの利活用に関する基本的な幅広い知識を有する人材」とし、知識試験では建築の基本的な知識はもちろん、BIMの用語や各ワークフローにおけるBIMの活用手法、メリット、IFCなどのデータの知識を含めた運用に関する基本的な知識を問う筆記試験=2級試験、実技試験ではBIMソフトを利用したオペレーション能力と建築の基礎知識(図面の読み描き)を2段階のレベルで評価する試験=準1級、1級としました。

受験対象者と試験体系の図
受験対象者と試験体系の図

 
 

知識試験(2級試験)への取り組み

2級=知識試験を検討するに当たりまず取り組んだのは、BIMの知識を体系化し、学習用のテキストを用意することでした。
そのための執筆者の選定を進める中で出会ったのが、2020年8月に出版された「建築・BIMの教科書BasicⅠ」という書籍でした。
「BIM教育研究会」を編著者として日刊建設工業新聞社から出版されたこの書籍は、その名の通り、建築分野におけるBIMをゼロから学ぶ人のために必要な知識が1冊の書籍に網羅されており、監修者や編著者に名を連ねている方々も、建築教育界の著名人です。
「BIMの知識を体系化」という点で、この書籍に匹敵するACSPのオリジナルテキストの作成は難しいと判断し、この書籍を2級試験の「推奨書籍」として利用できないか打診し、出版社ならびにBIM教育研究会からの承諾を得ることができました。
 
この研究会は、その後「一般社団法人BIM教育推進機構(以下、BIMEO)」へ移行し、2023年5月には、ACSPの大髙代表理事とBIMEOの佐野理事長の協議により、検定試験を通じてBIMの人材育成への取り組みを開始、さらにACSPの「2次元CAD利用技術者試験」の1級(建築)試験委員会の委員長であり、BIMEOの理事でもあるエーアンドエー株式会社の木村謙氏にBIM利用技術者試験委員会の委員長へ就任いただき、体制固めを行いました。

BIMの教科書
BIMの教科書

 
 

「BIMらしさ」をどう実技試験へ盛り込むか?

2級試験の準備が着々と進む中、実技試験である1級・準1級の準備は困難を極めました。
CADの検定試験を長く実施してきたACSPですが、BIMが単なる設計・モデリングツールではなく、企画から設計・施工・維持管理までの情報を一元化したデータベースである点、出図機能やシミュレーション機能などを持つ点、さらにソフトによって微妙に機能が異なるという点を実技試験に盛り込むとなると、これまでのノウハウだけで実現できるものではありません。
作問会社を選定し、サンプル問題を作成しては検討会でダメ出しされ、結局、作問会社は1社、2社とギブアップする始末。
なんとか形が出来上がったサンプル問題を使い、実際にソフトを使用している方々にサンプル問題を解いていただくという「トライアル」を2023年1月に実施しましたが、期待していたような評価は得られませんでした。
 
検討会やトライアルで出された意見として、最も難しかったのが、「BIMらしさ」の実現です。
前述の通り、BIMソフトはCADソフトとは異なり、非常に複雑な機能を有します。
受験者のBIMオペレーション能力を評価するためには、これらの機能を試験の中に網羅し、解答結果としてアウトプットしてもらう必要があるのですが、 1級、準1級それぞれにBIMのどの機能を試験に盛り込み、どのような形でアウトプットしてもらうか、そもそもそれで試験問題が成立し、採点ができるのかなど、多くの問題点を抱えていたのです。
 
これらを解決するためには、できるだけ多くの方、そしてソフトごとの機能を熟知している方に作問に関わっていただく必要がありました。
最終的にRevit、ArchiCAD、Vectorworks、GLOOBEの4製品を受験対象ソフトとして選定し、各ソフトのスペシャリストの方にお集まりいただき、過去に作成したサンプル問題をベースにして1級、準1級それぞれの対象となる建築物の規模、提供する図面などの情報、そして受験者からのアウトプット(解答などの提出物)を検討いただきました。
 
度重なる検討、そして修正の結果、2023年10月に改めてサンプル問題案が完成し、12月の公式Webサイトでの公開に向けてさらなるブラッシュアップを図っています。
12月に公開するサンプル問題では、準1級の問題とテンプレート、そして1級の問題、課題モデル、テンプレートを用意。
2024年度から開始する実際の試験の問題と同形式でサンプルを提供し、試験に向けた学習の参考としていただきます。

実技試験のサンプル問題の一部
実技試験のサンプル問題の一部

 
 

長いトンネルの先に見えたもの

複数ソフトによる実技試験の実現という難題をようやく克服し、なんとか形を作り上げましたが、試験の運用方法については、まだまだ検討すべき事項が残っています。
また、実際に試験を開始しても、試験として安定するまでには、かなりの時間を要することになるでしょう(現状の3次元CAD利用技術者試験がそうであったように……)。
 
また、国土交通省も、2025年以降の建築申請におけるBIMデータの具体的な利活用に向けた準備を進めていることから、こうした国の動きに合わせて、試験問題の傾向も見直しを図っていく必要があるかもしれません。
 
ただ、約10年にわたって取り組んできた建築系3次元の試験化が、「BIM利用技術者試験」として一応の結実を見た今、達成感とともに、多くの関係者からのこの試験制度へ期待する声をいただき、改めて背筋が伸びる思いがいたしました。
5年後、10年後にBIMの定番資格となっているか、ご期待ください。

 
 

「BIM」を担う技術者の育成に向けて

本試験にはCAD利用技術者試験の「建築版」を立ち上げるところから関わらせていただいており、当時は「BIM」という言葉もなかったと思いますが、そのときに目指していたものが形となって現れ始めたのを見ると感慨深いものがあります。
当時の問題意識としては、産業別にソフトウエア利用の技能が異なるだろうということ、三次元的な可視化技術がより一般的になるだろうということで、3次元CAD利用技術者試験の建築版ということから始まっていたように記憶しています。
 
BIMという言葉が登場し、設計のために使うソフトウエアが「CADソフト」から「BIMソフト」へと変わると言われるようになり、そうした趨勢に呼応して準備が進められることになりました。
BIMと銘打つと、そこに期待される内容は幅広いのですが、まずは基礎となるモデルや図面を作るためのソフトウエアを操作する技術と、その技術を使う職場で必要とされる知識背景を身につけることを試験制度の目標としています。
 
人材育成やBIM技術者の資格については、建築BIM推進会議の当初の工程表に含まれています。
しかし、現在はBIMを利用した建築確認に焦点を当てているため、これに関する議論はまだ公にはされていないようですが、その実現のためにはより多くの技術者の育成が必要となります。
「BIM利用技術者試験」としても、一人でも多くの技術者育成につながるよう、引き続き関係する皆さまと「建築BIMの将来像」へ向けた活動を続けていく所存です。
 

 
 
 
BIM利用技術者試験委員会委員長 木村 謙 氏
エーアンドエー株式会社プロダクト本部 本部長
一般社団法人BIM教育普及機構 理事
2次元CAD利用技術者試験 1級(建築)試験委員会 委員長
木村 謙 氏

 
 
 

一般社団法人 コンピュータ教育振興協会(ACSP)

 
 
【出典】


建設ITガイド 2024
特集2 建築BIM
建設ITガイド2024


 

最終更新日:2024-07-02

 

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