ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 建設現場のトイレ環境~ 快適トイレとマンホールトイレ~ > 誰もが働きやすい現場環境の実現に向けた横浜市の快適トイレ制度改定~設置の原則化と仕様・費用の見直し~

1. はじめに

建設業は、地域経済を支える基幹産業であると同時に、災害時には応急対策の担い手としても重要な役割を果たしています。
横浜市では、市内建設業者と震災時の協力協定を締結しており、市内建設業は市民の安全・安心な暮らしの実現に大きく貢献しています。
 
現在、こうした公共性の高い役割を担う建設業において、担い手の確保が喫緊の課題となっています。
若年層や女性について建設業への入職を促進することを考えると、現場環境の改善は課題解決の重要な一歩であり、現場で働く全ての人が安心して、快適に働ける環境作りを進めることが必要となっています。
 
加えて、近年の異常気象による猛暑の影響は 、現場作業における熱中症リスクを高めており、労働安全衛生の観点からも、対策の強化が求められています。
 
横浜市の建築工事では、令和4年に「建築工事における快適トイレの設置に関する特記仕様書」を定め、男女問わず誰もが快適に使用できる仮設トイレ(以下、「快適トイレ」)の建設現場への設置を推進してきました。
このたび、前述の状況を踏まえ、快適トイレのさらなる設置促進、快適性の向上を図るため、令和7年7月に前述の特記仕様書を改定しました。
 
 

2. 横浜市における快適トイレ制度の改定内容

1) 快適トイレの原則化

これまで、快適トイレの設置は受注者の希望による選択制としていましたが、今回の改定では、快適トイレの設置を促進するため、建設現場に設置する仮設トイレは原則として快適トイレとすることを規定しました。
 
この改定により、受注者の責めに帰することができない場合(設置場所がどうしても確保できない、快適トイレの供給量が不足していて手配できないなど)を除き、現場に仮設トイレを設置する場合は快適トイレを設置することが原則となります。
 

2) 快適トイレの仕様変更

令和4年の特記仕様書では、快適トイレに備えなければならない必須の機能および付属品(令和4年特記仕様書第2 条第1号および2号。
以下、「必須機能など」)を規定するとともに、備えるよう努めるものとして「推奨する仕様及び付属品」(同仕様書第2 条第3号。
以下、「推奨する仕様など」)を定めていました。
 
令和7年の改定では、必須機能などに変更はありませんが、施工者などから寄せられていた意 見などを踏まえ、「特に推奨する仕様及び付属品」(令和7年特記仕様書第2条第3号。
以下、「特 に推奨する仕様など」)を新たに定め、推奨する仕様などのうち、「室内の大きさ(幅900mm×奥行900mm以上)」と「空調設備」を特に推奨する仕様などへ引き上げました。
また、推奨する仕様など(同仕様書第2条第4号)についても「温水洗浄便座などの快適性向上に資するもの」として一部仕様を追加しました(図- 1)。

図-1 令和7年7月「建築工事における快適トイレの設置に関する特記仕様書」(横浜市)抜粋
図-1 令和7年7月「建築工事における快適トイレの設置に関する特記仕様書」(横浜市)抜粋

 

3) 上限額の見直し

これまで、本市では空調設備付きの快適トイレを設置した工事において、上限額を超えてしまう事例がありました。
 
そこで、空調設備を備えた場合でも十分な費用計上となるよう、令和7年の改定で上限額の見直しを行いました。
上限額は、実勢価格の調査結果を踏まえて設定しており、空調設備の有無に より上限額が変わる、2段階の設定としています(図- 2)。
 
また、本市の建築工事において、近年の快適トイレの設置状況を見ると、一つのユニットハウスに洋式トイレが複数基設置されている快適トイレが主流となっていたことから、上限額の算定単位を「洋式トイレ1基当たり」から「1ハウス当たり」に変更しています。

図-2 上限額の見直し
図-2 上限額の見直し

 

4) 上限数の見直し

令和4年の特記仕様書では、男女それぞれ洋式トイレ1基分を費用計上できることとしていましたが、本市の小・中学校や市営住宅の建替えなどの現場では、関連工種が多いこともあって作業員数も多くなり、上限数を超えた数のトイレが設置されている事例が多く見られました。
 
そこで、令和7年の改定では、必要と考えられるトイレは全て費用計上の対象とできるよう、上限数を見直しました(図- 3)。

図-3 上限数の計算方法
図-3 上限数の計算方法

 
前述の通り、上限額の算定単位を「洋式トイレ1基当たり」から「1ハウス当たり」に変更したため、上限数は、まず必要洋式トイレ基数を算出し、その基数を必要ハウス数に換算するルールとしています。
具体的には、1日の作業員数が最大となる日を基準として、男性用は作業員60人につき1基、女性用は作業員20人につき1基、洋式トイレが必要なものとして必要洋式トイレ基数を算出し、その必要洋式トイレ基数を2で除し て(洋式トイレ2 基が設置されたユニットハウスが標準形と想定)、小数点以下を切り上げた数を必要ハウス数とすることとしています。
 
 

3. おわりに

令和7年の特記仕様書の改定により、本市の快適トイレの設置はより一層促進されるものと考えています。
 
また、本市では、女性の入職促進や定着を目的に、快適トイレに加えて女性専用更衣室の設置を義務付けるとともに、女性が実際に建設現場で活躍する姿をPRした場合に工事成績評定の加点を行う女性定着(活躍)モデル工事などの取組みも進めています。
 
こうした取組みにより、誰もが働きやすいい現場環境の実現に大きく前進するとともに、現場で働く方々の安全性や快適性の向上が図られ、建設業のイメージアップ、さらには担い手の確保にもつながっていくことを期待しています。
 
 
 

横浜市 建築局 営繕企画課 技術管理担当課長
平野 清孝

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2025年12月号


積算資料公表価格版2025年12月号

最終更新日:2025-11-20

 

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