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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 官民連携によるサッカースタジアムの計画・設計から運営〜市立吹田サッカースタジアム〜

 

(株)ガンバ大阪・(株)竹中工務店

 

はじめに

サッカーJ1リーグの強豪,ガンバ大阪の本拠地として2015年9月に竣工した「市立吹田サッカースタジアム」は,建設費の約75%を法人や個人からの寄付金で賄うという,前例のない斬新な手法により建設されたスタジアムとして,大きな話題を呼んだ。
 
スタジアムは,任意団体である「スタジアム建設募金団体」が建設し,竣工後に吹田市に寄贈され,ガンバ大阪が指定管理者として運営・管理を行うという官民連携の手法で整備された(寄贈を受けた吹田市は,建設費も維持管理費も負担しない)。長引く不況や自治体の財政事情の悪化によりスタジアムの新規建設が難しい中,いわゆる「ガンバモデル」として注目を集めている。
 
以下,スタジアム建設に至るプロセス,ならびにスタジアムの概要について紹介する。
 
 

1. スタジアムの建設手法

1-1 プロセス

ガンバ大阪は1993年のJリーグ発足以来,万博記念競技場を本拠地としていたが,施設が老朽化し,観客席数が国際サッカー連盟(FIFA)の基準を満たしておらず,また改修による対応も難しいことから,2008年,新しいスタジアムの建設を決定した。
 
2009年には,建設地を万博記念公園の敷地内とすること,資金は寄付金と助成金で賄うことなどの方針が固まった。そして2010年には,募金を行うための募金団体が設立された(図-1・2)。
 

図-1 配置図

 

図-2 「ガンバモデル」による建設・運営手法




 
 

1-2 寄付金

募金は2012年4月から2015年3月までの3年間行われた。一時はチームがJ2に降格するなどして寄付金の目標額達成が危ぶまれた時期もあったが,2014年の三冠獲得などもあって,最終的にはスタジアム建設費用の140億円を上回る140億8,567万円が集まった。内訳は,寄付が約105億7,234万円(法人:99億5,019万円,個人:6億2,215万円),残りは日本スポーツ振興センター(JSC)「スポーツ振興くじ助成」の30億円などである(表-1)。
 

表-1 建設資金の内訳




 
 
これだけの寄付が集まった背景には,5万円以上の寄付をすればスタジアムにネームプレートが掲げられることに熱意あふれるサポーターが賛同したことや,ならびに税制上の措置が大きかった。「国等に対する寄付金」の制度により,法人の場合は法人税の損金算入が認められ,個人の場合は「ふるさと納税」により所得税・住民税から所得控除を受けられるようにしたことが,寄付へのインセンティブとなったのかもしれない。
 
 

2. スタジアムの特長と今後の活用

スタジアム計画には,①臨場感溢れるスタジアム,②ヨーロッパスタイルのVIP フロア,③環境への配慮,④最先端のシステム導入,⑤地域防災拠点などの特色を盛り込んだ。
 
完成後は,スポーツを中心としたエンターテインメント拠点として,また地域交流の拠点としても活用されることを期待している。Jリーグや国際大会などの興行によりすべての利用者が楽しめる,安全で快適な空間を作るとともに,周辺のスポーツ施設と連携した健康増進の拠点として,大学や医療機関とも連携したスポーツプログラムの提供も行う。さらには地域交流拠点として,各種イベントにより試合開催日以外にも賑わう施設を目ざし,環境教育の発信の場としても活用していきたい。
 

写真-1 「市立吹田サッカースタジアム」 全景




 

図-3 フィールドに近く,臨場感あふれる快適な観戦環境

 


                                                【以上,(株)ガンバ大阪】
 
 

3. スタジアムの設計

3-1 臨場感溢れるスタジアム

本スタジアムは敷地が狭く,かつ40,000人という観客を収容する必要から,大規模建築をいかに無駄なくコンパクトにまとめるかが設計の大きなポイントとなった。国内の同規模のサッカースタジアムに比べ建築面積を20〜40%縮小し,運営維持管理の負担を減らすことに配慮した。
 
フィールドまでの最短距離はわずか7mと,ピッチに近く臨場感に溢れる。3層の観客席がバルコニー状に重なることで,上層階でもフィールドとの一体感が失われない。四隅の階段を上がったところに広がる回遊式のコンコースは,どこからでもフィールドを見渡すことができ,試合の前後も楽しむことができる(図- 4)。
 

図-4 断面図




 
 
快適な観戦環境をつくるため,すべての観客席は屋根でカバーされている(図- 5)。
 

図-5 屋根架構パース




 
 
天然芝の発育を阻害しないよう屋根は低く設置し,日照範囲を最大限確保するよう工夫した。また,観客席の最下段部にはスリット給気口を設けて「風の道」を通し,フィールドの芝に自然風が導かれるよう配慮している。
 

3-2 ヨーロッパスタイルのVIP フロア

観客席中段には2,000ものバルコニーシートと6つのラウンジ,30の個室からなる,高級感あふれる国内最大級のVIP エリアを設けた。ヨーロッパ水準の多様な劇場型の観戦を可能にしている。
 

3-3 環境への配慮

大屋根には0.5メガワットの太陽光発電を設置。雨水を貯留する仕組みも設け,トイレ洗浄水の50%をまかなうことができる。また,フィールドを照らすナイター照明はすべて高効率で寿命が長いLED投光器を採用した。これらにより,スタジアムとしては国内初のCASBEE Sランクを達成している。
 

3-4 最先端のシステム導入

基幹ネットワーク構築による顧客管理および販売管理とあわせて,セキュリティー・音響・映像・放送設備にも最先端システムを導入した。将来を見据えた拡張可能なシステムを構築している。
 

3-5 地域防災拠点

本スタジアムは吹田市の大規模公共施設として,災害発生時には避難所となることも想定されることから,自然エネルギーを活用した防災拠点として整備することとし,災害対策本部のバックアップ機能,災害用備蓄倉庫の設置と救援物資配送センターの役割を持たせている。避難所としての利用については,短期滞在:800人/長期滞在:300人を見込んでいる。
 
 

4. スタジアムの構造と施工

4-1 大屋根の免震化

すべての観客席を覆う約23,000m2の屋根には,大規模スタジアムとしては国内初となる屋根免震構造を採用した。約3,500tの総重量を16基の免震装置で支持している(写真- 2)。
 

写真-2 免震積層ゴムの設置状況




 
 
大屋根を免震化することにより,①地震時における屋根の揺れの低減と損傷の防止,②屋根から吊られている設備の安全性の向上,③直射日光を受ける鉄骨トラスの熱伸縮の吸収,などを実現できる。
 

4-2 3D トラス構造

柱は観客席の外周部のみに設置し,縦・横・斜めの3方向に鉄骨トラスを架けてロの字形状の屋根を支える構造とした。この「3Dトラス構造」は,トラス長さを短くできることが最大のメリット。従来の2方向トラス構造の場合と比べ,柱スパンは半分の約100mで済む。そのため部材断面を縮小でき,屋根の鉄骨重量を約30%軽量化できた(写真- 3,図- 6)。
 

写真-3 構造・機能・意匠が融合した合理的で安全性の高い屋根

 

図-6 3Dトラス構造




 
 
施工に際しては,鉄骨部材を地組みする大型ブロック化工法を採用し,大幅な仮設工事削減を実現。また,基礎をはじめとする観客席躯体の8割以上のプレキャスト化に成功し,次世代省人化工法の先駆けとなった。
 
        


 
                                                【以上,(株)竹中工務店】
                                            【写真・図提供:(株)竹中工務店】
 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2016年08月号



 

 

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