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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 海外調査レポート マレーシア・サラワク州の合板事情

 

一般財団法人 経済調査会
建築統括部 建築調査室長 田村 英治

 


 
当会では、自主調査活動の一環として、2013年10月下旬にマレーシア・サラワク州を訪問し、
現地合板工場の視察とともに関係業者・団体への取材を行った。
ボルネオ島の北側に位置するマレーシア・サラワク州は、天然資源が豊富で、原油や天然ガスの輸出で発展を遂げている。
また、豊かな森林資源の開発は、周辺産地と比較して後発であったが、
現在ではマレーシア全体の約70%程度の合板生産量を誇るまでに木材加工産業が成長している。
 

1.はじめに

合板とは、原木を大根のカツラムキのように薄く剥いたもの(単板=ベニヤ)を乾燥させ、
それに接着剤を塗布して、それぞれ繊維方向(木目方向)に対して1枚ごとに直交させて貼り合わせたものである。
種別としては、住宅等の構造用に使用される構造用合板、コンクリートの型枠に使用されるコンクリート型枠用合板、
特に用途を定めない普通合板等がある。
日本農林規格(JAS)では、合板の外面の品質だけではなく、見た目だけでは判りづらい接着性能や強度性能、
ホルムアルデヒド放散量などについて試験方法と適合基準を定めており、
JASマークを表示することによって合板の品質性能を保証している。
 
合板に使用されている原木の樹種は様々であるが、主に東南アジア産(南洋材)の広葉樹と、
日本や北米、ロシア等を産地とする針葉樹とに分けられる。
日本国内で流通している合板を用途別に見てみると、
コンクリート型枠用合板と普通合板では、主に広葉樹が、構造用合板は、広葉樹と針葉樹の両方が流通している。
 
2012年1月〜12月における日本国内の合板総供給量(国内生産量−輸出量+輸入量)は606万8,127㎥で、
うち輸入量は352万5,664㎥となっており、輸入比率は約58%である(出所:日本合板工業組合連合会HP)。
輸入品を仕入国別に見てみると、構成比の高い順にマレーシア(約45%)、インドネシア(約29%)、中国(約21%)となっており、
この3カ国だけで全体の約95%を占めている。
 
 

2.日本における合板事情

現在、日本の合板メーカーでは、南洋材広葉樹を原木とした合板の生産はほとんど行われていない。
この背景には、1980年代から1990年代にかけて、
産地側における環境保護や木材産業振興を理由とした原木丸太の輸出規制ないしは禁止措置、
木材ロイヤリティの引き上げなどにより、安定供給への不安はもとより、
産地側輸出価格の大幅高騰を引き起こしたことが要因である。
 
この時期の日本国内の需要は、1981年の建築基準法改正で新耐震基準が適用されると同時に、
壁、床、屋根などに構造用合板が多く使用されるようになり、
構造耐力上重要な部分に使用される建築材料としての位置付けが確立されていった。
1990年代に入ると、機械設備や接着剤の技術革新にも支えられ、
日本の合板メーカーでは、原木を広葉樹から針葉樹へと転換していくようになり、1
990年代中頃より針葉樹構造用合板の本格的な生産をスタートさせ、現在では製造品目の中心的存在となっている。
1995年に発生した阪神・淡路大震災においては、合板を多用する建築工法の優れた耐震性が実証されることとなり、
一層の注目を受け、需要が拡大するようになっていった。
 
しかしながら、コンクリート型枠用合板と多用途な普通合板に関しては、
針葉樹を使用した合板への転換は図られず、現状では南洋材の輸入品に依存するかたちとなっている。
 
 

3.マレーシア・サラワク州における合板事情

(1)日本向け製品の供給

SARAWAKU TIMBER ASSOCIATION(サラワク木材協会)によると、サラワク州産における合板輸出量は、
日本向けで約55%を占めているとのことであった(以下、台湾・韓国が10%内外、フィリピン・アメリカで5%弱)。
輸出国の中では日本が最も品質要求(JAS)が厳しいようだが、各社とも生産体制に問題はなく、安定供給が可能であるとしている。
 
ちなみに、自国内消費はどうかと言うと、地震が少ない地域であるため、建物の造りはブロック造が中心で、
マレーシアの合板業界は輸出依存型の産業となっている。
 
出所:旅行のとも ZenTech HPより
 
2011年の東日本大震災直後は、国内合板メーカーの複数工場が被災したことを受け、サラワク州にも大量の注文が入り、
一時的に供給ひっ迫感が伝えられていたが、産地側の供給能力に不足感はうかがえず、
どちらかと言うと、荷降ろし港を含めた配送面に問題があったような印象を受けた。
 
現地では、大手メーカー2社の工場を見学した。
ISO取得の他、各国の品質規格(日本で言えばJAS)を取得していたりするなど、
敷地面積だけではないスケールの大きさ、ポテンシャルの高さを感じた。
工場内がとても清潔に保たれていることも強く印象に残った。
また、特徴的なのは、
大手メーカーの中では原木の伐採から合板の製造、輸出までの全てを1社あるいはグループ企業で行っていることである。
なお、製造された合板は、船積みしてから概ね1カ月程度で日本国内各港へ届くとのことである。
 

SARAWAKU TIMBER ASSOCIATIONにて

SARAWAKU TIMBER ASSOCIATIONにて


 

(2)日本向け製品の品質

輸出割合の大小はあるものの、各国へ供給するなかで、日本向けの品質が一番厳しいとの声を各取材先で聞くことができた。
他国では生じてこないクレームが日本向けの場合は発生してくるようで、一番多いクレームが厚み不足とのことであった。
他には表面(見た目)のきれいさも要求事項としては高いようである。
 
しかしながら、産地側にとって、日本は重要なマーケットであるため、検査、検品について、しっかりとした取り組みがなされており、
メーカーによっては、日本人を雇用して品質向上に努めている。
 

(3)植林

限りある森林資源の枯渇への懸念から、マレーシアでは2000年を本格的な植林元年とし、
持続可能な熱帯雨林再生に向けて動き出している。
全体の8割程度を占めているアカシアは、2007年あたりから植林が始まっているものの、
水分の問題と堅さから合板向けには不適と言われるなど、現状では植林木を使用した合板の流通は少ないようである。
ちなみに、日本に輸出されている合板の樹種で代表的なのがメランティであるが、
この樹種は生育に30年程度を要するなど、植林木としてはあまり現実的ではないとのことであった。
 
近年、各メーカーは、早生植林材の研究を進めており、ある大手メーカーでは、広大な工場敷地を生かし、
数十種類の植林樹について、試行錯誤しながら、樹種によっては、種まきから、苗から、挿し木から育てている様を見ることができた。
非常に地道な作業で、現状で生育に成功するのは70%程度とのことである。
 
また、マレーシアにおける土壌の問題への声も聞かれた。
これは、成長が早く、強度や水分量の特性から合板製造に向いているとされるカランパヤンという樹種に関して、
隣国のインドネシアでは生育しているのに対して、マレーシアでは今のところうまくいっていないという事例である。
実際、現地で見学したプランテーションでも大量の肥料を使用していたことから、
合板の原材料として使用していくための樹種選定の困難さを感じた。
 
しかしながら、近い将来、これまでとは異なった特性を持つ植林木を使用した合板が本格的に流通してくるであろうとの見方から、
今後、日本国内の品質基準やユーザーニーズ(特に、表面の見た目のきれいさや重量等)にも
多少なりとも変化が求められてくるものと推察される。
 

(4)最低賃金法の改正

直近のトピックスとしては、2013年1月より施行された最低賃金法の改正を挙げることができる。
これは、サラワク州のあるボルネオ島で、最低賃金水準を600RMから800RMへ、
マレー半島で700RMから900RM(RM:マレーシア・リンギット、約30円/RM)へ引き上げる制度である。
現地工場における従業員の多くは、インドネシアからの出稼ぎ労働者であったが、外国人労働者に対しても適用されるとのこと。
 
合板工場の多くは、24時間稼働の2交代制で時間外や休日割増も考慮すると、工場側の生産コストはかなり増大したと言われている。
今後、さらなる引き上げの見方もあり、その場合、再度、流通価格への影響を与えてくるものと見られている。
 
ちなみに、工場関係者の方に従業員の多くが何故インドネシアからの出稼ぎなのか聞いてみたところ、
賃金水準の面が母国よりも良い点が要因であるとともに、
現地マレーシア人は、基本的に重労働に就くことが少ないからとも言われているそう。
これは、サラワク州が自然に恵まれ、
ひと昔前までは、一旦、山に入ってしまえば自給自足ができてしまうので、無理して働く風潮がないとのことであった。
 
 

4.合板価格の推移

直近3年間(2011年1月〜 2013年12月) の各統計(合板価格〈型枠用・針葉樹構造用〉、新設住宅着工戸数、為替、
国内合板生産量および合板輸入量)について、表-1に示す。
 

表-1 直近3年間の統計推移(供給量、価格、為替、住宅着工)

表-1 直近3年間の統計推移(供給量、価格、為替、住宅着工)


 

(1)新設住宅着工戸数や合板供給量の影響

合板の価格、特に型枠用・針葉樹構造用は、需給バランスが相場形成の主要因と言われているが、東日本大震災直後の大幅な価格変動、
およびその後の反動安など、2011年から2012年にかけての動きは、統計資料からは読み取りにくい挙動を示していた。
しかし、2013年に入り、ようやく新設住宅着工戸数との連動性や合板供給量とのバランスにより、
本来の相場形成がうかがえるようになってきている。
 

(2)為替の影響

輸入合板の場合、日本の商社が産地側シッパーと契約するときの通貨は米ドルが一般的とのことであった。
輸入品の場合、為替動向も相場の動きに影響を与えるひとつの要素と言える。
特に、2013年に入ってからは円安傾向に連動した推移を示している。
 
 

5.最後に

今回の取材先は、サラワク州の2都市(クチン、ミリ)であったが、
帰国前日のフライト前にマレーシアの首都クアラルンプール(以下、KLと記す)を訪れることができた。
現在、ジョホールバル州で大規模なインフラ整備が進む「イスカンダル開発計画」のみならず、
KLも建設市場が盛り上がっている様子をペトロナスツインタワーの展望から実感した。
 

ペトロナスツインタワー隣接の工事現場

ペトロナスツインタワー隣接の工事現場


 
ライトアップされたペトロナスツインタワー

ライトアップされた
ペトロナスツインタワー


 
最後に、本誌面を借りまして、取材にご協力をいただきました皆様(国内外の業団体、商社、メーカー)へ厚くお礼を申し上げます。
 
 
 
【出典】


月刊積算資料2014年4月号
月刊積算資料2014年4月号
 
 

 

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