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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 2022首都高速大規模更新事業の概要・進捗状況について

首都高速道路は,1962年12月に京橋~芝浦間(4.5km)が開通してから,今年で60年目を迎えた。
現在,供用している総延長は327.2km,そのうちの約30%が開通から50年以上が経過しており,進行する構造物の高齢化や過酷な使用等により,構造物に多数の損傷が発生し,その中には重大な損傷も発見されている状況にある。
 
このような状況下において,より効果的・効率的に維持管理するため,道路構造物を造り替える大規模更新と,集中的に損傷を補修する大規模修繕の検討が進められ,2014年度より大規模更新・大規模修繕事業を開始しているところである。
 
本稿では,5カ所の大規模更新事業(図-1)のうち,高速大師橋更新事業と東品川桟橋・鮫洲埋立部,さらには竹橋・江戸橋JCT付近更新区間のうち,日本橋周辺のまちづくりと一体となって整備される日本橋区間地下化事業の概要と進捗状況について,昨年に引き続き報告する。

大規模更新実施箇所

【図-1 大規模更新実施箇所】



 

1. 高速大師橋更新事業

(1)事業概要等

本事業の事業概要および構造概要等については,本誌2020年12月号掲載の寄稿文をご参照いただきたい(注1)

 
 

(2)施工概要

本事業では,仮設のう回路を設けず,高速本線を約2週間通行止めにし,橋梁全体を横取り一括架設にて架け替える計画としている(図-2)。
 
Step1として,既設橋の上・下流側に新設橋脚を施工する。
同時に,橋梁を横取りするための橋桁移動設備(以下,ベント設備)を設置する。
 
Step2では,既設橋の下流側のベント設備上で新設橋を組み立てる。
新設橋の組み立てに際しては,P4─P5間を約1,300t,P5─P6間を約1,900tの大ブロックに分け,地組ヤードでそれぞれ長さ82mと132mに組み立てた後,6,000t積級台船に載せ,東京湾・多摩川を水上運搬し,ベント設備上へ台船リフトアップ架設を行う。
P6─P7間については,川底が浅く,台船が近づけられないことから,橋上からトラベラークレーン架設により新設橋の組み立てを行う(図-3)。
 
Step3およびStep4では,約2週間の高速本線通行止めを実施した上で,既設橋を上流側に横取りした後,下流側の新設橋(延長300m,総重量4,800t)を横取りし,舗装等の橋面工,および必要な検査等を実施した後,交通開放し,供用する。
 
最後に,Step5で,既設橋およびベント設備を解体・撤去する。
 
陸上部の橋脚(P7)は,橋梁の一括架け替えに先立ち,高速本線を供用した状態で更新するため,一時的に仮橋脚で既設橋の上部工を仮受けし,既設橋脚の撤去および新設橋脚の構築を実施する。

全体施工ステップ

【図-2 全体施工ステップ】


新設橋架設ステップ

【図-3 新設橋架設ステップ】



 

(3)工事進捗状況

2022年8月時点で,河川部では新設橋脚(P4─P6間)が概成し,横取り一括架設に必要なベント設備も完了している。
2022年4月~5月には,中央径間(P5─P6間)および川崎側径間(P4─P5間)の大ブロック橋桁を,それぞれ東京湾内のヤードから多摩川上を水上運搬し,ベント設備上へ設置した(写真-1,2)。
高速大師橋は多摩川の河口付近に位置することから,潮位の影響を受けるため,ベント設備上への架設は干満差や台船の浮き沈みを調節しながら慎重に架設を行った。
中央径間の大ブロック橋桁水上運搬のダイナミックな実施状況動画を大師橋更新事業のHPで公開しているので,ぜひご覧いただきたい。
 
現在は,トラベラークレーン工法により,東京側径間(P6─P7間)のベント設備上での組み立て作業を行っているところである(写真-3)。
 
一方,陸上部(P7)では,新設橋脚が完了し,仮橋脚の基礎を撤去中である(写真-4)。
 
今後は,引き続き,トラベラークレーンによるベント設備上での組み立て作業を進め,本線通行止めを伴う横取り一括架設に向け,ベント設備上に組み立てた新設橋上で橋面工等を実施予定である。
 
約2週間の本線通行止めは,2023年度に実施を予定している。
詳細な時期や通行止め区間等は関係機関と調整中のため,決まり次第お知らせする予定である。
通行止め中は,1日に約8万台の交通がほかの道路へ分散することになり,多大な影響が及ぶことが懸念されるため,並行する首都高湾岸線やほかの路線へのう回に加え,この期間を避けていただくなど,ご利用されるお客さまに丁寧な広報をしていく所存である。

大ブロック橋桁水上運搬状況(多摩川上)

【写真-1 大ブロック橋桁水上運搬状況(多摩川上)】

大ブロック橋桁水上運搬状況(現地付近)

【写真-2 大ブロック橋桁水上運搬状況(現地付近)】


トラベラー架設状況

【写真-3 トラベラー架設状況】

陸上部施工状況

【写真-4 陸上部施工状況】



 

2. 東品川桟橋・鮫洲埋立部更新事業

(1)事業概要等

当事業の概要,施工ステップ等の詳細については,本誌2018年12月号掲載の寄稿文を参照いただきたい(注2)。

 
 

(2)施工概要

更新に際しては,交通を確保するため,う回路を設置し交通を切り替えながら,本線を半断面ずつ造り替える計画として,2016年2月より工事着手している。2
017年9月に上り線のう回路への切り替えが完了し,2020年6月に下り線の交通を将来上り線となる更新線へ暫定的に切り替えた。
 
現在,将来下り線となる更新線の工事を進めている。
本施工では上記した暫定供用中の将来上り線となる更新線と東京モノレールに挟まれた狭隘なスペースでの施工となるため,安全に配慮しながら施工を進めている。
また,工事用車両のアクセス箇所が少なく,細長い施工ヤードにおいても,工事用車両が施工箇所最深部まで行き,往復できるよう,う回路直下を動線として利用する等の工夫をした。
2022年8月時点において,東品川区間では橋脚架設が完了した箇所から桁架設,床版工を順次進めている。
また鮫洲区間では,プレキャストセグメントの設置,床版工等を実施している(写真-5,6)。

東品川区間 床版工施工状況

【写真-5 東品川区間 床版工施工状況】

鮫洲区間 施工状況

【写真-6 鮫洲区間 施工状況】



 

3. 東品川桟橋・鮫洲埋立部更新事業

(1)事業概要等

本事業の概要については,本誌2021年12月号掲載の寄稿文をご参照いただきたい(注3)。
 
日本橋区間地下化事業は,現在,本体施工に向けた準備工事である「地下埋設物移設」と「出入口撤去工事」から着手し,工事を進めているところである。
その後,2035年度の地下ルート開通,2040年度の完成(高架橋撤去)を目標に進める予定である(図-4)。

【図-4 地下化前後の日本橋周辺のイメージ】
地下化前後の日本橋周辺のイメージ 地下化前後の日本橋周辺のイメージ

(江戸橋出入口部撤去前)           (江戸橋出入口部撤去後)
※撤去後のイメージは橋梁の撤去範囲のみ示したもの



 

(2)出入口撤去工事の進捗状況

出入口撤去工事は,地下ルートを整備するに当たり,今後日本橋川内で工事が必要となることから,日本橋川の流れを現状より悪化させないようにするため,呉服橋出入口と江戸橋出入口を先行して撤去するものである。
出入口部を撤去し,日本橋川内の橋脚本数を減らすことで,日本橋川の水位を下げて,治水上の影響を低減し,今後の河川内の工事を可能とする(図-5)。
 
本工事で撤去するのは,呉服橋と江戸橋の入路,出路とその本線分合流部に当たる橋梁の床版と桁,およびそれらを支える橋脚であり,今回の工事で全7本の橋脚を撤去する。
また,橋脚の撤去に伴い必要となる既設構造物の補強も実施する。
 
橋桁の撤去は,橋桁を切断し河川上の台船に降下後,台船上で桁の分割を行う。
その後,橋梁上へ吊り上げ,車両で搬出することにより撤去を実施する(図-6)。
 
この出入口を撤去するに当たり,2021年4月に呉服橋・江戸橋出入口撤去工事に着手し,同年5月10日(月)午前0時に高速都心環状線の呉服橋出入口,江戸橋出入口を廃止した。
 
2022年9月時点では,出入口撤去が開始されており,一部の橋梁において床版および桁の撤去が実施済みである(写真-7,8)。
出入口撤去工事は2023年度末まで実施する。
 
今後は出入口撤去工事の完了後,地下トンネル工事等の本体工事に着手する予定である。

鮫洲区間 施工状況

【図-5 出入口撤去工事の概要】


鮫洲区間 施工状況

【図-6 出入口撤去工事の概要】


【写真-7 橋桁撤去状況(江戸橋入口)】
橋桁撤去状況(江戸橋入口) 橋桁撤去状況(江戸橋入口)

床版撤去状況                 橋桁撤去状況


【写真-8 出入口撤去前後の状況(江戸橋出入口付近)】
出入口撤去前後の状況(江戸橋出入口付近) 出入口撤去前後の状況(江戸橋出入口付近)

(撤去前)                  (現況(2022.8月撮影))



 

今回報告のとおり,首都高速道路の大規模更新事業については着々と事業を進めているところである。
なお,大規模更新事業の工事現場状況等の紹介動画を定期的に配信しているので,そちらもご参照いただきたい(「首都高リニューアル動画」でWeb検索)(注4)。
 
また,今回報告した事業以外に,池尻・三軒茶屋出入口付近については地下躯体補強工事に着手しており,銀座・京橋出入口付近は周辺まちづくりとの連携を含めた更新計画を検討している。
引き続き,お客様および沿道の方々へのご理解,ご協力を得ながら事業を進めてまいります。

 


(注)1. https://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/34608
   2. https://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/24678
   3. https://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/38739
   4. https://www.youtube.com/playlist?list=PLUtNIHSs5G9cALoSuVKE3yNIccr_wCYJu

 
 
 

首都高速道路株式会社 更新・建設局

 
 
【出典】


積算資料2022年11月号


最終更新日:2023-03-16

 

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