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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 阪神高速道路における大規模更新・修繕事業

1.はじめに

(1)阪神高速道路の老朽化

昭和37年5月に阪神高速道路公団が発足し、昭和39年の環状線土佐堀~湊町間2.3kmの開通以来、現在では阪神高速道路の総延長は約260kmに達し、1日に約68万台(令和3年度実績)のお客さまにご利用いただいている。
現時点で4割を超える構造物が建設後40年を経過しているが、10年後には6割を超える状況となる。
このような状況で、阪神高速道路の社会基盤としての機能を永続的に適切な状況に保ち、その利用機能を阻害させてはならないという使命から、大規模更新・修繕事業について平成27年から「高速道路リニューアルプロジェクト」を立ち上げ、順次事業を進めているところである(表- 1、図- 1
 

【表- 1 大規模更新・修繕事業の概要】

【表- 1 大規模更新・修繕事業の概要】

【図- 1 大規模更新・修繕事業の位置図】

【図- 1 大規模更新・修繕事業の位置図】

 
 

(2)大規模更新・修繕事業の内容

大規模更新事業は、特殊な構造や部材の老朽化が原因となり、損傷が顕在化した構造物に対して繰り返し補修を行っても改善が期待できない箇所を対象として、効率的・効果的な対策として構造物の全体的な取り替え等を計画している。
 
また、大規模修繕事業は、損傷が顕在化した構造物に対して、繰り返し補修を行った場合でも改善が期待できないものの、大規模更新を必要としないレベルの箇所に関して、主要構造の全体的な補修を予定するものである。
 
令和4年11月現在の現場着手状況について、大規模更新事業としては14号松原線喜連瓜破付近(橋梁架替え)、15号堺線湊町付近(橋脚基礎の更新)および3号神戸線湊川付近(橋脚の増設)等を施工しており、大規模修繕事業としては調整・設計等が完了した箇所より随時現場施工を実施している。
 
本稿では、これらの事業のうち、大規模更新事業として実施中の14号松原線喜連瓜破付近の橋梁架替え工事と、大規模修繕事業として実施中の16号大阪港線の鋼桁端部改良および令和4年度に実施した神戸線【摩耶~芦屋】のリニューアル工事(通行止め工事)について紹介する。
 
 

2.大規模更新事業の施工事例(14号松原線橋梁架替え)

(1)背景

14号松原線の喜連瓜破付近にある高架橋は、ディビダーク工法により施工され昭和55年に供用したPC3径間連続有ヒンジ箱桁橋である。
主要な交差点を跨ぐために橋長を長くする必要があり、橋桁の中央付近にヒンジ形式の継ぎ目を設ける構造を採用している。
しかしながら、供用から5年後には中央ヒンジ部の垂れ下がりが顕在化し、対策として舗装のオーバーレイによる路面平坦性の確保や箱桁ウェブの鋼板による補強も実施したが、垂れ下がりはさらに進行し、平成15年には240mmの垂れ下がりが確認された。
さらなる対策として外ケーブルにより下から押し上げる
補強を実施した(写真-1)が、ヒンジ部の垂れ下がりは200mm程度までにしか回復しなかった。
 
その後、大きな垂れ下がりは進行していないが、6号大和川線が全線開通し、14号松原線に対する広域う回ネットワークが整備されたことを踏まえて、永続性・長期耐久性を確保するための抜本的対策として橋梁を架替えることとした。
 

【写真- 1 外ケーブル補強状況】

【写真- 1 外ケーブル補強状況】


 
 

(2)工事概要

本橋梁は、自動車交通量が非常に多い南北道路の国道479号(大阪内環状線)・309号と、東西道路の長居公園通が交差する瓜破交差点の上空に位置している(写真-2)。
また、付近には大型スーパーマーケット、地下鉄喜連瓜破駅や住宅があるため、歩行者・自転車の交通量も非常に多い。
既設橋の撤去および新設橋の架設には、高速道路や一般街路の交通規制を伴うため、社会的影響が最小限となるように施工法を検討する必要があった。
 
施工方法においては、有識者、関係自治体、関係事業者、経済界の委員からなる検討会を開催し、議論を行った。
検討会では、社会的影響を極力抑える手法・施策等として、う回路設置案や半断面施工案、通行止め案について議論・検討を重ねた結果、「交通影響対策を講じて、通行止め案で工事を行うことが妥当である」と、とりまとめられた。
 
通行止めによる既設橋梁の撤去方法は、橋脚上部に撤去のための仮設鋼桁を設置し、仮設鋼桁から吊り下げた移動作業車内で低騒音工法により切断、解体する。
切断した撤去部材は、仮設鋼桁上部を移動できる運搬台車に載せ替え、隣接する既設高速道路側へ搬出する。
これにより、一般街路の交通機能を維持した状態で上部工の切断、解体を進めることが可能となる(図-2)。
 
新設橋梁は重量を軽減するとともに工期短縮を図るため鋼製とし、側径間については、隣接する既設高速道路上で地組みし、送り出しにより架設する。
送り出しに際しては、下部から多軸台車により支えつつ牽引することを計画している。
中央径間については、近傍に設けた施工ヤード内で地組みを行い、多軸台車で運搬し、側径間に配置した吊り上げ設備を用いて一夜間で一括架設する
図-3)。
 
既設橋梁の撤去、新設桁の架設のいずれにおいても交通影響や周辺地域への影響が最小限になるよう施工法を検討し、令和4年6月から14号松原線【喜連瓜破~三宅JCT】の通行止めを開始して橋梁の架替えに着手した。
 

【写真- 2 喜連瓜破高架橋の現状】

【写真- 2 喜連瓜破高架橋の現状】

【図- 2 既設橋梁の撤去イメージ】

【図- 2 既設橋梁の撤去イメージ】

【図- 3 新設鋼桁の架設イメージ】

【図- 3 新設鋼桁の架設イメージ】

 
 

3.大規模修繕事業の施工事例(16号大阪港線鋼桁端部改良)

(1)背景

16号大阪港線(天保山方面)阿波座付近は、平成9年に交通渋滞対策を目的に、約600mの区間で1車線拡幅を実施した。
その際、拡幅桁は既設RC橋脚の梁を拡幅して支持するのではなく、既設橋脚の間に拡幅桁のみを支持する鋼製橋脚を新設し、既設桁と拡幅桁とを連結しない構造を採用した(写真-3)。
また、既設桁と拡幅桁の境界部分にはゴム製の縦目地を設けることで走行面を連続化した。
 
しかしながら、重交通による活荷重下において支点が異なることで生じるたわみ差により、鋼桁端部(縦目地部)で損傷や腐食が発生してきた(写真-4)。
また、縦目地の損傷に起因して、走行性への悪影響や騒音発生の不具合が生じており、種々の対策を講じてきたが抜本的な解決には至っていない。
そこで、縦目地をなくし、上記不具合を抜本的に解消する大規模修繕工事を実施することとした。
 

【写真- 3 拡幅車線の構造】

【写真- 3 拡幅車線の構造】


【写真- 4 縦目地の損傷状況】

【写真- 4 縦目地の損傷状況】


 
 

(2)工事概要

縦目地構造を解消するために、既設桁のみを支持していたRC橋脚の梁部を拡幅し、既設拡幅桁の撤去・架替えを行い、支点位置を既設桁に統一することとした。
また、上部工の拡幅桁と既設桁を一体化することにより、床版連結および横桁連結を施工することで、縦目地構造を解消する。
これに伴い、既設桁の死荷重に加え、拡幅桁の死荷重も既設RC橋脚のみで支持する構造とした。
 
また、拡幅桁を支持していた鋼製橋脚は梁を拡幅し、鉛直荷重を支持する支承は設置せず、地震時水平力に対してのみ機能する水平力分担構造を設置した。
これにより、地震時には既設RC橋脚だけではなく、鋼製橋脚でも水平力の一部を負担する構造とした(図-4)。
 
令和4年6月から拡幅桁部分の車線規制に着手し、既設拡幅桁の撤去を実施中である。
 

【図- 4 橋脚改良前後の比較】

【図- 4 橋脚改良前後の比較】


 
 

4.大規模修繕事業の施工事例(3号神戸線【摩耶~芦屋】リニューアル工事)

(1)背景

阪神高速道路では、路面の補修工事を短期集中的に実施するために、従前より一路線または一部区間で高速道路本線の通行止めを実施し、舗装等の補修工事を行ってきた。
大規模更新・修繕事業が平成27年3月に事業化されて以降、これまで実施してきた工事に加え、構造物の長寿命化を目的とした抜本的な対策も併せて行うリニューアル工事として実施している。
 
令和4年4月にリニューアル工事を実施した「3号神戸線【摩耶~芦屋】」(図-5)は、昭和44年の開通から50年以上が経過し、鉄筋コンクリート床版や鋼床版の老朽化が進行していること、また、前回(平成20年)に実施した通行止め工事から10年以上が経過し、舗装の損傷や伸縮継手部の損傷が多く発生している状況であった。
そこで、当該区間で通行止めを10日間実施し、舗装や伸縮継手部の通常の補修に加えて、コンクリート床版や鋼床版の補強も行った。
 
なお、令和4年11月に4号湾岸線【貝塚~りんくうJCT】、令和5年5~6月頃に3号神戸線【京橋~摩耶】にて同様にリニューアル工事を実施していく。
 

【図- 5 3 号神戸線【摩耶~芦屋】位置図】

【図- 5 3 号神戸線【摩耶~芦屋】位置図】


 
 

(2)工事概要

3号神戸線【摩耶~芦屋】リニューアル工事で実施した主な大規模修繕事業に係る施工内容は、以下のとおりである。
 
 

①コンクリート床版への高性能床版防水の実施

コンクリート床版では、車両の大型化や大型車の走行によって繰り返し受ける負荷の影響が蓄積し、ひび割れが発生している場合がある。
その部分に雨水などが浸透することにより、ひび割れの進行が加速し、コンクリート床版自体の強度を低下させるとともに、路面の陥没などの損傷につながる恐れが生じる。
そこで、コンクリート床版の老朽化対策として、床版のひび割れへの浸透性の高い1次防水層(高浸透型防水材)と2次防水層(アスファルト加熱型塗膜系防水材)を組み合わせた高性能床版防水を実施することにより、床版への雨水浸入を抑制し、長寿命化を図った(図-6、写真-5)。
 

【図- 6 高性能床版防水の概念図(コンクリート床版上面)】

【図- 6 高性能床版防水の概念図(コンクリート床版上面)】


【写真- 5 高性能床版防水の施工状況】

【写真- 5 高性能床版防水の施工状況】


 
 

②鋼床版へのSFRC舗装の実施

鋼床版では、コンクリート床版と同様、大型車の走行によって長期に繰り返し受ける負荷の影響が蓄積し、溶接部にき裂が発生する場合がある。
き裂が進展すると、鋼床版自体の強度を低下させるとともに、路面の陥没などの損傷につながる恐れが生じる。
 
そこで、今回のリニューアル工事では、鋼床版の耐久性をさらに向上させるべく、通常のアスファルト舗装に比べ、強度の高い鋼繊維補強コンクリート(SFRC:SteelFiberReinforcedConcrete)舗装を実施した。
これにより、鋼床版への発生応力が小さくなり、鋼床版のき裂抑制の効果が期待される(図-7、写真-6)。
 

【図- 7 通常アスファルト舗装とSFRC 舗装の比較】

【図- 7 通常アスファルト舗装とSFRC 舗装の比較】

【写真- 6 SFRC 舗装の施工状況】

【写真- 6 SFRC 舗装の施工状況】

 
 

③ジョイントレス化(伸縮継手のない構造の適用)

一部伸縮継手部において、安全性・走行性の向上および車両走行時の騒音、振動を大幅に低減すべく、伸縮継手のない構造の適用(ジョイントレス化)を行った(写真-7)。
 
その結果、伸縮継手から下部への雨水などの漏水が抑えられ、橋梁端部の鋼材の腐食環境も改善される。
 

【写真- 7 ジョイントレス化(左:工事前,右:工事後)】

【写真- 7 ジョイントレス化(左:工事前,右:工事後)】


 
 

5.おわりに

大規模更新・修繕事業は周辺への交通影響が懸念されるため、一般街路への交通影響を抑制する観点から、高速道路会社や道路管理者間で連携して高速道路へのう回を促すとともに、大規模更新・修繕事業全体に対する認知・理解向上のため、意義訴求広報の継続、各事業の進捗に合わせた適切な情報発信を行いながら、推進していく所存である。
 
 
 

阪神高速道路株式会社

 
 


積算資料2023年2月号

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最終更新日:2024-03-25

 

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