- 2020-10-05
- 土木施工単価
1. はじめに
土木工事標準歩掛(以下,「標準歩掛」という)は,土木工事に広く使用されている工法について,施工合理化調査等の実態調査に基づき土木施工に必要とされる標準的な機械,労務,材料等の所要量を工種毎に設定しています。
この標準歩掛は,「中央建設業審議会(中建審)」の建議を踏まえて,昭和58年3月に整備・公表し,その後,改定や制定を重ねて現在に至っており,土木工事費の積算の基礎資料として,国,県,市町村の発注官庁をはじめ,民間でも標準的な指標として広く活用されています。
2. 令和2年度 標準歩掛の改定概要
標準歩掛は,各種施工制約の増加などの社会環境の変化,あるいは使用機械の機能向上,新技術・新工法の開発など,施工形態の変化に的確に対応した適正なものとする必要があります。
今回,平成30年度に施工合理化調査等を実施した標準歩掛工種の121工種のうち,令和元年度に施工実態を分析した結果,14工種の制定・改定を行うこととしました。
その14工種の制定・改定概要について,以下のとおり紹介します。
(1)新規制定工種(1工種)
① トンネル補修工(ひび割れ補修工)
1)工法概要
トンネル補修工(ひび割れ補修工)は,トンネル覆工コンクリートに発生したひび割れ部分に対して,シール材を塗布後,圧縮空気,ゴムやバネの復元力などを利用して加圧できる専用器具を用い,補修材料を注入する工法です。
2)制定概要
トンネル覆工コンクリートの劣化箇所の補修として,ひび割れ補修工の施工実績が近年増加したことから,新規歩掛を制定しました。
[適用範囲]
・トンネルのひび割れ補修における1トンネル当りの低圧注入作業に適用(覆道や道路ボックスカルバート等についても適用できる)
[歩掛区分]
・日当り歩掛の制定
(2)施工状況の変動に伴い改定を行った工種(13工種)
近年の現場や施工条件の変化により,現場実態を反映した歩掛の改定を行いました。
① ウェルポイント工
1)工法概要
ウェルポイント工は,ウェルポイントと称するストレーナー濾過網を持った吸水管に,ライザーパイプ(吸水管)を取り付けたものを地盤中に多数打ち込んで,真空井戸のカーテンを作り,ウェルポイントポンプで強力に地下水を吸収低下させ,必要な区域の地下水を揚水し地下水位を低下させる工法です。
2)改定概要
[施工歩掛]
・ウェルポイント設置・撤去作業の施工規模で歩掛を区分
② 仮橋・仮桟橋工
1)工法概要
仮橋・仮桟橋工は,主体工事の施工のために必要となる一時的に使用する橋や,工事用作業足場などを目的として設置される仮設構造物の工法です。
2)改定概要
[施工歩掛]
・杭橋脚,上部工,下部工,導枠等における設置・撤去の歩掛の見直し
③ コンクリート工(砂防)
1)工法概要
コンクリート工(砂防)は,砂防工(本堰堤・副堰堤・床固め・帯工・水叩き・側壁・護岸)の型枠工,足場工,コンクリート投入・締固め・養生,打継面清掃,止水板設置,岩盤清掃,チッピング等のコンクリート打設にかかわる工法です。
2)改定概要
[歩掛区分]
・既設堰堤等のチッピング(機械施工)を新規設定
・化粧型枠,堤冠コンクリート(鉄材)の廃止
④ 鋼製砂防工
1)工法概要
鋼製砂防工は,鋼管,H形鋼,鋼矢板等の鋼材の特徴を利用し,これら鋼材を主要部材として構築された砂防堰堤の工法です。
2)改定概要
[適用範囲]
・透過型砂防堰堤に分類される「鋼管フレーム型」と「バットレス型」の歩掛を制定(現行の格子形鋼製砂防堰堤と鋼製スリット堰堤B型は,鋼管フレーム型に区分)
⑤ 連続鉄筋コンクリート舗装工
1)工法概要
連続鉄筋コンクリート舗装工は,横断方向のコンクリート版に対して縦断方向に鉄筋を連続的に配筋することで,コンクリート版の横目地を除いたコンクリート舗装の工法です。
2)改定概要
[施工歩掛]
・コンクリートの温度変化や乾燥収縮に伴い発生するひび割れを防止するため,「目地切り・清掃」の歩掛を制定
⑥ トンネル清掃工
1)工法概要
トンネル清掃工は,トンネルの側壁や内装板に付着した煤煙や粉塵等により,トンネル内の視線誘導や照明効果が低下するため,トンネル清掃車を用いてトンネルの側壁や内装板の清掃を行う工法です。
2)改定概要
[使用機械]
・トンネル清掃車の仕様を1本ブラシ式から2本ブラシ式に見直し
[施工歩掛]
・トンネル壁面清掃作業速度の見直し
⑦ 道路除雪工
1)工法概要
道路除雪工は,安全で円滑な冬期道路交通の確保を図るため,除雪機械等を用いて新雪除雪,路面整正,拡幅除雪,運搬除雪,歩道除雪,凍結防止剤散布などを行う工法です。
2)改定概要
[施工歩掛]
・凍結防止剤散布車への袋詰薬剤積込歩掛の廃止
・凍結防止剤人力散布歩掛の廃止
・除雪作業世話役の歩掛の見直し
※除雪作業世話役とは,除雪現場で運転手への作業の指示,出動の判断,除雪作業中及び待機中に気象や交通状況などの収集(情報連絡),天候の変化及び道路環境などに対応した除雪機械の配置などを行う作業員のこと
⑧ トンネル工(NATM)[発破工法]
⑨ トンネル工(NATM)[機械掘削工法]
1)工法概要
トンネル工(NATM)は,山岳トンネルの標準的な施工法で,火薬による発破や機械により掘削を行い,掘削直後に吹き付けコンクリートやロックボルト等を地山に密着して施工し,地山と一体化した支保構造を作る工法です。
2)改定概要
[適用範囲]
・設計掘削断面積を50㎡~95㎡以下から,50㎡~130㎡以下まで拡大
・非常駐車帯工,坑口工を追加
・岩区分にDⅢを追加
[歩掛区分]
・トンネルの断面形状により,支保構造や覆工厚が異なる「通常断面」と「大断面」の歩掛区分を設定
[使用機械]
・鋼製支保建込作業の使用機械をドリルジャンボからコンクリート吹付機(エレクタ装置付)に見直し
・インバート埋戻作業の使用機械を「ブルドーザ+タイヤローラ」から「バックホウ+振動ローラ」に見直し
・スライドセントル,防水工作業台車における機械経費(損料)の計上方法を「基礎価格×損率」から「算定式」に見直し
[施工歩掛]
・支保建込,金網設置をコンクリート吹付機(エレクタ装置付)で施工することにより,ドリルジャンボとの施工機械の入替作業時間が短縮
⑩ 小断面トンネル工(NATM)
1)工法概要
小断面トンネル工(NATM)は,トンネル工(NATM)における設計掘削断面積50㎡未満で全断面掘削工法のトンネルで施工し,水路トンネルやダム工事等における仮締切のトンネル,歩道,小規模道路トンネル等に適用される工法です。
2)改定概要
[適用範囲]
・レール方式の廃止
⑪ トンネル工(NATM)仮設備工(防音扉工)
1)工法概要
トンネル工(NATM)仮設備工(防音扉工)は,トンネル工事(発破工法等)の施工において,周辺集落への騒音等の影響を軽減するため,トンネルの坑口付近に防音扉を設置し環境対策を行う工法です。
2)改定概要
[適用範囲]
・内空断面積40㎡~80㎡以下から40㎡~95㎡以下まで拡大
[使用機械]
・防音扉の設置・撤去で使用するトラッククレーン(4.9t吊)をラフテレーンクレーン(25t吊)に見直し
⑫ PC橋片持架設工
1)工法概要
PC橋片持架設工は,PC橋の主桁を橋軸方向に2m~5mのブロックに分割し,橋脚から張出し架設用移動作業車を用いて順次片持ち梁を張り出す工法です。
2)改定概要
[施工歩掛]
・供用日の増加に伴う,仮設材経費の見直し
⑬ 架設支保工
1)工法概要
架設支保工は,場所打ちコンクリート床版橋(箱桁を含む)を製作する場合に打設したコンクリートが十分な強度に達するまで,橋体を一時的に支えておく仮設構造物(くさび結合支保工,支柱支保工)の工法です。
2)改定概要
[施工歩掛]
・供用日の増加に伴う,仮設材経費の見直し
3. おわりに
公共事業を円滑に執行するためには,現場の施工実態や資機材の需給動向など,変化する事象を的確に把握し,工事の品質及び安全の確保,環境の保全等に十分な配慮がなされているかにも着目したうえで,標準歩掛を整備していくことが必要です。
引き続き,必要な標準歩掛の制定・改定を行い,適正な予定価格が積算できるように努めてまいります。
なお,標準歩掛は,実際の施工における工法や施工機械を規定するものではなく,あくまでも標準的な施工を想定した予定価格を算出するためのツールです。このことを正しく理解し,適切な運用をお願いします。
【出典】
土木施工単価2020夏号

最終更新日:2020-09-14
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