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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 基礎地盤 > 基礎地盤調査のためのサウンディング

はじめに

橋梁、ダム、堤防等の土木構造物や建築物を良好に構築するためには、基礎地盤の性状(深さ、地盤構成、物性等)を把握することが重要である。
過去には基礎地盤の性状の把握が不十分であったための不具合も発生している¹)²)。
平成27年に顕在化した、支持層の深さの変化を把握していなかったためにマンションの支持杭先端が支持層に到達していなかった問題³)はその代表例である。
 
基礎地盤の性状を調査する手法はさまざまあるが、例えば上記の例で問題となった支持層の深さを調査する方法としてはボーリング調査の他に「サウンディング」が有効である。
「サウンディング」とは抵抗体をロッド等で地中に挿入し、貫入、回転、引抜き等の抵抗から土層の性状を調査する手法である⁴)。
貫入方法から静的サウンディングと動的サウンディングに大別される。
後者の動的サウンディングの代表例としてはボーリング孔内で行う標準貫入試験があり、ボーリングコアの観察と併せて地盤構成や支持層の深さを知ることができる他、試験で得られたN値(貫入量300mmごとの打撃回数)は設計にも使われている。
 
上記の支持層の深さの変化等の地盤性状の変化については調査地点を密に配置することで面的に把握可能であるが、これをすべてボーリングおよび標準貫入試験で調査しようとするとボーリング本数が増加した分だけ調査費用が増大する。
それに対し、ボーリング地点間をボーリングが不要なサウンディングで補完することができれば、全数をボーリングおよび標準貫入試験で調査するのに比べて経済的な調査が可能となる。
ここでは基礎地盤の深さ変化等の性状を調査するためのボーリングが不要なサウンディングの例をいくつか紹介する。
 
 

1.動的コーン貫入試験

動的コーン貫入試験は日本工業規格(現:日本産業規格)として制定されている試験方法⁵)(JIS A1230動的コーン貫入試験方法)で、「オートマチックラムサウンディング」とこれを小型軽量化した「ミニラムサウンディング」の両者を合わせて規格化されている。
この規格では「オートマチックラムサウンディング」は大型動的コーン貫入試験、「ミニラムサウンディング」は中型動的コーン貫入試験という名称となっている。
この内「オートマチックラムサウンディング」は質量63.5kgのハンマーの連続打撃(落下高さ500mmの自由落下による打撃を連続して行う)によりロッドの先端に装着した直径45mmのコーンを地盤中に鉛直に貫入させて貫入量200mmごとの打撃回数を測定する試験で、月刊「積算資料」にも試験の価格が掲載されている。
試験装置の例を写真-1および2に示す。
 
ボーリング調査を補完して動的コーン貫入試験の地点を密に配置することにより、支持層等の地層の深さ変化を経済的に把握することが可能となる⁶)⁷)⁸)。
適用深さの目安は「オートマチックラムサウンディング」で30m、「ミニラムサウンディング」で20mとされており⁹)、一般的な杭基礎が想定される深さの調査が可能である。
 
当該試験は地盤試料を採取しない試験のため、当該試験のみで地盤を評価するのは地盤の性状を見誤る可能性もあることから、ボーリング調査と組み合わせて実施するのが重要である。また、岩盤の強風化部への貫入が可能な場合もある⁶)一方、地盤中に大きな礫や岩塊が存在する場合には貫入不能となるため、調査地点の地盤の性状を確認したうえで適用の可否を検討する必要がある。
 
人力で移動し設置する(移動時は横に倒す、車輪付き)。ハンマー打撃は自動で行う。打撃回数は打撃装置に付属するカウンターで測定し人が読み取る。貫入深さはロッドに刻まれた目盛りを人が見ながら確認する。ロッドの継ぎ足しは人力で行う。
 
自走式(人が運転)。ハンマー打撃は自動で行い、貫入深さおよび打撃回数の測定・記録も自動で行うことができる。ただしロッドの継ぎ足しは人力で行う。

写真-2 大型動的コーン貫入試験

 
 

2.簡易動的コーン貫入試験

簡易動的コーン貫入試験は質量5kgのハンマーの連続打撃(落下高さ500mmの自由落下による打撃を連続して行う)により、ロッドの先端に装着した直径25mmのコーンを地盤中に鉛直に貫入させて貫入量100mmごとの打撃回数を測定する試験で、建設省土木研究所(現:国立研究開発法人土木研究所)が斜面調査用に開発した試験機を用いる¹⁰)¹¹)ため、「土研式簡易貫入試験」または単に「簡易貫入試験」とも呼ばれる。
当該試験は地盤工学会基準として基準化されており¹²)(JGS1433簡易動的コーン貫入試験方法)、また月刊「積算資料」にも試験の価格が掲載されている。
試験の実施状況の例を写真-3に示す。
 
当該試験の試験機は斜面に持ち込み可能である。ハンマー打撃は人力で行う。
当該試験の貫入深さは一般に4~5mが適当とされており¹³)、自然斜面および土構造物の表層部の調査¹⁴)¹⁵)¹⁶)¹⁷)や小規模建築物の基礎地盤の簡易な支持力判定¹⁸)等に広く用いられている。

写真-3 簡易動的コーン貫入試験の実施状況の例

 
 

3.土層強度検査棒

土層強度検査棒は斜面表層の厚さおよび強度を簡易的に調査するために独立行政法人土木研究所(現:国立研究開発法人土木研究所)が開発したものであり¹⁹)、調査・評価の手引き(案)が土層強度検査棒研究会から公表されている²⁰)²¹)²²)。
 
試験方法は、①直径15mmのコーンを先端に装着して人力で押し込むことにより貫入不能となる深さを求める「限界貫入深度試験」(写真-4)、
②荷重計を使用して人力で押し込むことにより任意の深さにおける貫入時の押し込み力を求める「貫入強度試験」(写真-5)、
③先端にベーンコン(羽根付きコーン)を装着し、荷重計およびトルクレンチを使用してロッドの押し込み力およびベーンコーンが土をせん断するのに必要な回転トルクを測定することで任意の深さにおける原位置での粘着力および内部摩擦角を簡易に推定する「ベーンコーンせん断試験」(写真-6)がある²⁰)。
これらの試験の標準歩掛は一般社団法人全国地質調査業協会連合会の「全国標準積算資料(土質調査・地質調査)」令和5年度改訂歩掛版に掲載されている²³)。
 
本装置は簡易動的コーン貫入試験機に比べて貫入可能な深さは劣るが、より小型軽量のため斜面に持ち込みやすく、面的調査に向いている。
また、斜面調査だけでなく河川堤防周辺の基礎地盤の調査(地盤漏水の経路となりやすい砂層の分布調査等)にも活用されている²⁰)²¹)。

写真-4 土層強度検査棒による限界貫入深度試験
写真-5 土層強度検査棒による貫入強度試験の実施状況

 
 

まとめ

基礎地盤の性状を調査するためのサウンディングは、ここで紹介した以外にも戸建住宅等の支持力特性の把握に広く使われているスクリューウエイト貫入試験²⁴)(旧名称:スウェーデン式サウンディング試験)等さまざまなものがある。
各サウンディングの手法の特長をよく理解した上で活用することで、基礎地盤の調査がより適切に行われるようになれば幸いである。
 
 


参考文献
1) 七澤利明:岩盤を支持層とする基礎の設計・施工、基礎工、Vol.44、No.12、pp.2~5、2016
2) 柳浦良行、浅井健一:岩盤を支持層とする杭基礎の地盤調査方法に関する取組み、基礎工、Vol.44、No.12、pp.23~26、2016
3) 国土交通省土地・建設産業局建設業課:横浜市の分譲マンションにおける基礎ぐいに係る問題に関する省内連絡会議(第1回)の開催について、2015
https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo13_hh_000360.html(2023年12月14日閲覧)
4) 社団法人地盤工学会:地盤工学用語辞典、p.259、2006
5) 日本工業標準調査会:JIS A1230:2018動的コーン貫入試験方法、一般財団法人日本規格協会、2018
6) 浅井健一:杭基礎支持岩盤の深さ変化の面的調査のためのサウンディングの適用性検討、日本応用地質学会平成29年度研究発表会講演論文集、pp.287~288、2017
7) 浅井健一:地層の深さ変化の面的調査へのサウンディングの適用性の検討、日本応用地質学会令和元年度研究発表会講演論文集、pp.241~242、2019
8) 浅井健一:サウンディングによる地層の深さ変化の面的把握技術、土木技術資料、Vol.61、No.8、pp.14~19、2019
9) 公益社団法人地盤工学会:地盤調査の方法と解説、p.461、2013
10) 大久保駿・上坂利幸:簡易貫入試験機による地盤調査、土木技術資料、Vol.13、No.2、pp.31~35、1971
11) 大久保駿・上坂利幸・船崎昌継:簡易貫入試験機による地盤調査(2)-試験機の性能、土木技術資料、Vol.13、No.8、pp.35~41、1971
12) 公益社団法人地盤工学会:JGS 1433:2013 簡易動的コーン貫入試験方法、2013
13) 公益社団法人地盤工学会:地盤調査の方法と解説、p.319、2013
14) 安江朝光・大滝俊夫・大八木規夫・高橋博:斜面災害の予知と防災、白亜書房、pp.414~425、1986
15) 大久保駿・服部泰平:千葉県で発生した崖崩れの特徴について、新砂防、No.86、pp.10~19、1973
16) 岡田勝也・杉山友康・村石尚・野口達雄:統計的手法による鉄道盛土の降雨災害危険度評価手法、土木学会論文集、No.448/Ⅲ-19、pp.25~34、1992
17) 太田秀樹・大森晁治・坂口皆栄・中道育夫:切取軟法面の長期挙動、土木学会論文集、No.463/Ⅲ-22、pp.15~24、1993
18) 甚野慶右・野田信也・城戸博彦:住宅棟小建築物の地盤調査について、第18回土質工学研究発表会、pp.65~68、1983
19) 独立行政法人土木研究所材料地盤研究グループ地質チーム:土層強度検査棒を用いた斜面の土層調査マニュアル(案)、土木研究所資料第4176号、2010
20) 土層強度検査棒研究会:土層強度検査棒を用いた調査・評価の手引き(案)共通編、2023
https://www.kankyo-cs.co.jp/dokenbou_kyotsu.pdf
(2023年12月14日閲覧)
21) 土層強度検査棒研究会:土層強度検査棒を用いた調査・評価の手引き(案)事例編、2023
https://www.kankyo-cs.co.jp/dokenbou_jirei.pdf(2023年12月14日閲覧)
22) 土層強度検査棒研究会:土層強度検査棒を用いた調査・評価の手引き(案)参考資料標準歩掛(案)、2023
https://www.kankyo-cs.co.jp/dokenbou_sankou.pdf
(2023年12月14日閲覧)
23) 一般社団法人全国地質調査業協会連合会:全国標準積算資料
(土質調査・地質調査)令和5 年度改訂歩掛版、pp.Ⅳ-166~168、2023
24) 日本産業標準調査会:JIS A1221:2020スクリューウエイト貫入試験方法、一般財団法人日本規格協会、2020

 
 
 

国立研究開発法人 土木研究所 地質・地盤研究グループ 上席研究員
 浅井 健一

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2024年3月号


公表3月号

最終更新日:2024-02-29

 

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