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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 道路施設の定期点検の高度化・ 効率化に向けて

 
各道路管理者が管理するインフラは,老朽化の進展状況を的確に把握し,損傷程度に応じて適切なタイミングで修繕を行う予防保全によるメンテナンスに取り組んでいく必要がある。2014年7月より開始した定期点検が2018年度で一巡し,今後も定期点検の計画的な実施や予防保全を考慮した適切な修繕を実施するために,新技術の導入による点検の高度化・効率化が求められている。
 

はじめに

全国の道路インフラのストックは,2019年3月末時点で橋梁が約72万橋,トンネルが約1万箇所,この他シェッド・大型カルバート・横断歩道橋・門型標識等(以下,道路附属物等)が約4万施設存在している。このうち,橋梁を例にとると,建設年度が判明している約49万橋のうち高度経済成長期に建設され,建設後50年を経過するものは,2018年度末時点で約27%だが,10年後には約52%に増加する見込みであり,将来に向けて全国の橋梁の老朽化が進展することが想定されている。道路インフラの老朽化に対応していくためには,道路インフラの老朽化の進展状況を的確に把握し,損傷程度に応じて適切なタイミングで修繕を行う予防保全によるメンテナンスに取り組んでいく必要があり,そのために道路管理者は定期点検を着実に実施することが求められている。
 
本稿では,これまでの定期点検に関する取組や定期点検の見直し,新技術を活用した点検方法の効率化等について紹介する。
 
 
 

1. 定期点検の現状

1-1 定期点検の進捗

日本における道路構造物は,2012年12月の中央道笹子トンネルの天井板落下事故を1つの契機として2013年6月に道路法が改正され,2014年7月より,道路管理者は全ての橋梁,トンネル等の道路構造物について5年に1回,近接目視を基本とする定期点検を行っている。2014年度から2018年度までの5年間の定期点検の点検実施率は,全道路管理者合計で橋梁では99.9%,トンネルは99.5%,道路附属物等は99.7%となっており,道路構造物の点検は概ね完了したと言える(図−1)。
 

図−1 橋梁・トンネル・道路附属物等の点検実施状況



1-2 定期点検の結果と課題

定期点検を実施した場合,構造物の健全性の診断結果を4段階(「Ⅰ:健全」,「Ⅱ:予防保全段階」,「Ⅲ:早期措置段階」,「Ⅳ:緊急措置段階」)に区分している。早期または緊急に措置が必要となる診断区分Ⅲ・Ⅳの割合は,橋梁では10%,トンネルでは42%,道路附属物等では15%となっている(図−2)。施設数の多い橋梁では,判定区分Ⅲが10%(約68,400橋),判定区分Ⅳは0.1%(約700橋)存在している。判定区分Ⅲ・Ⅳの道路構造物に対する5年間の修繕着手状況については,橋梁を例に取ると,国土交通省管理で53%,高速道路会社管理で32%,都道府県・政令市管理で24%,市町村管理で18%であり,地方公共団体を合計すると20%に留まっている状況である。また,修繕が完了している割合は,国土交通省管理で18%,高速道路会社で17%,地方公共団体合計では12%となっている(図−3)。
 

図−2 橋梁・トンネル・道路附属物等の点検結果

図−3 判定区分Ⅲ・Ⅳの橋梁における修繕着手・完了率


判定区分Ⅲ・Ⅳの施設について,次回点検までの5年以内での修繕の実施を考えた場合に想定される修繕着手率と比べて,国土交通省と高速道路会社管理施設は概ね順調に着手しているが,地方公共団体管理の施設の修繕着手は遅れている状況である。また,予防保全の観点から措置を講ずることが望ましい状態の判定区分Ⅱと診断されたものに対する修繕着手状況は,国土交通省管理で26%,高速道路会社管理で2%,都道府県・政令市管理で2%,市町村管理で2%であり,判定区分Ⅲ・Ⅳと診断されたものに比べて修繕着手率は全体的に低い傾向にある。比較的損傷が軽微なうちに修繕を行う予防保全型のメンテナンスへの転換は進んでいない状況にあると言える。
 
 
 

2. 新技術を活用した定期点検

2-1 定期点検の見直し

国土交通省では社会資本整備審議会道路分科会道路技術小委員会での議論を踏まえ,2019年2月に定期点検の見直しを行った。見直しのポイントは,①損傷や構造特性に応じた点検の着目箇所の絞り込み,②新技術の活用による効率的な点検の2点が挙げられる。①については,特定の溝橋などの小規模な橋梁やボックスカルバートで点検の着目箇所の絞り込みを行うものである。
 
一方,②については,民間をはじめ定期点検を支援する新技術の開発が進められていることや効率的な点検の実施が求められていることから,点検に新技術の活用を積極的に進めるものである。
 

図−4 変状や構造特性に応じた定期点検の合理化




図−5 特定の条件を満足する溝橋イメージ写真



2-2 新技術利用のガイドライン(案)と点検支援技術性能カタログ(案)

道路管理者が定期点検の中で点検支援技術を円滑に活用できるように定期点検要領(技術的助言)と合わせて活用できる参考資料として新技術利用のガイドライン(案),点検支援技術性能カタログ(案)を作成した。
 
新技術利用のガイドライン(案)(以下,「ガイドライン(案)」という。)は,業務委託等により定期点検を実施する際に点検支援技術を活用する場合を想定し,道路管理者である発注者と受注者双方が使用する技術について確認するプロセスや留意点等について整理した参考資料である。点検支援技術の活用範囲や活用目的,技術選定の考え方,技術の性能を示す標準項目等が例示されている。
 

図−6 点検支援技術の活用プロセスの例




点検支援技術は,ガイドライン(案)で示された標準項目に基づき,その性能値が開発者などから明示されている技術を用いることが望ましい。そこで,ガイドライン(案)の標準項目に対する性能値を技術ごとに整理した点検支援技術性能カタログ(案)(以下,「性能カタログ(案)」という。)を作成した。本性能カタログ(案)は,技術公募や現場試験等を通じて国が定めた標準項目に対する性能値を開発者に求め,開発者から提出されたものをカタログ形式でとりまとめたものである。例えば,橋梁等を対象とした画像計測技術としてドローンを用いた近接目視点検の支援技術,トンネルを対象とした覆工画像計測技術として走行型の計測システム等が掲載されている。委託業務等により定期点検を実施する場合,発注者・受注者の双方において参考とすることで,適切な技術の選定を支援するものである。本性能カタログ(案)には2019年2月時点で16技術が掲載されているが,今後の技術開発の進展に応じ,性能カタログ(案)に掲載する技術は適宜見直しを行う予定としている。なお,性能カタログ(案)に記載のない技術についても,標準項目の性能値を受注者に求め,目的に適合するかを確認することで活用することができる。
 
二巡目点検では,点検支援技術の活用・導入により点検の効率化を推進しており,各都道府県に設置した道路メンテナンス会議を通して講習会の開催等による技術支援を継続していきたい。
 

図−7 性能カタログ(案)に掲載した技術の例



2-3 計測・モニタリング技術

点検技術者が道路施設の健全性の診断を行う際には,近接目視を基本とした状態の把握が必要だが,定期点検のさらなる効率化を進めるためには近接目視によらない新しい点検方法の開発が求められている。例えば,センサー等の計測・モニタリング技術により,道路施設を構成する部位,部材,損傷ごとに,状態の把握や健全性の診断のための情報を定量的に把握したり作用荷重や応答から残存強度を推定することで健全性の診断の定量化を行う等の手法が考えられる。これらの技術・手法を活用することで,点検技術者が行う近接目視による健全性の診断を代替し,近接目視による作業量を低減し,点検の高度化・効率化することが考えられる。そこで,国土交通省では,2019年7月に計測・モニタリング技術を公募し,応募者との意見交換を行いながら現場試験等を実施した。現在,試験結果等の整理を進めているところであり,今後,性能カタログ(案)への技術の掲載・拡充を行う予定である。
 

図−8 近接目視によらない点検方法の確立・導入




 

3. 今後の取組

点検結果を踏まえ,インフラの効率的な維持管理・更新に向けて,計画に基づくメンテナンスサイクルを確立させる必要がある。そのためには,点検支援技術の活用を積極的に進めていく必要がある。技術開発が進められる点検支援新技術の社会実装を一層進めるため,引き続き国管理施設等で技術検証や仕様確認を進め,性能カタログ(案)に反映させるとともに点検の実務での活用を進めていく。
 
 
 

おわりに

定期点検の計画的な実施や予防保全を考慮した適切な修繕の実施にあたっては,本稿で述べたとおり,点検の高度化・効率化のために新技術の導入が必要である。また,数多く存在する全ての道路構造物の持続的なメンテナンスのためには,地方公共団体に対する継続的な支援が不可欠である。
 
国としては,低コストで安全かつ高品質なサービスを国民に提供するため,引き続き新技術導入促進の取り組み並びに地方公共団体支援の取り組みを進めていく。
 
 
[参考文献]
1)第70回基本政策部会 配付資料 https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/road01_sg_000465.html
2)第11回道路技術小委員会 配付資料 https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/road01_sg_000467.html
3)新技術利用のガイドライン(案)(平成31年2月)
4)点検支援技術性能カタログ(案)(平成31年2月)
5)特定の条件を満足する溝橋の定期点検に関する参考資料(平成31年2月)

 
 
 
 
 

国土交通省 道路局 国道・技術課 技術企画室 課長補佐  大場 慎治

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2020年6月号


 

 

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