1 はじめに
現在,高速道路3社が取り組んでいる「高速道路リニューアルプロジェクト」とは,高速道路の本体構造物のライフサイクルコストの最小化,予防保全および性能向上の観点から,必要かつ効果的な対策を講じることにより,高速道路ネットワーク機能を長期にわたって健全に保つため行うものである。
当社では同プロジェクトの一環として,2016年の秋,中央自動車道諏訪南IC〜諏訪IC間に位置する小早川橋と弓振川橋の下り線において2橋同時施工での床版取替工事を行った。
本稿は2橋における施工報告であり,弓振川橋については小早川橋とは異なるフローについてのみ後述する。

【リニューアルプロジェクトの効果と開通後の経年数別路線図(2017年3月現在)】
2 小早川橋のリニューアルプロジェクト
小早川橋は鋼3径間連続非合成鈑桁(ばんげた)橋(橋長132.0m)の床版取替工事であり,一方,弓振川橋は鋼単純合成鈑桁橋(橋長39.250m)の床版取替工事であるが,合成桁の非合成化が特徴である。

【小早川橋 施工前】
施工フローは以下のとおり。

地覆1次コンクリート
PC床版製作工場(滋賀県)にて製作されたPC床版を現地に運び入れ,実際の鋼桁を模した仮組み架台に並べ,ループ継ぎ手の噛み合わせ等を確認した後に,対面通行規制期間中の現場施工量を軽減するため『地覆1次コンクリート』の施工を行った。

【地覆1次コンクリート打設】
コア削孔・カッター切断・壁高欄撤去
舗装切削後に墨出しを行い,コアドリルにて既設床版剥離・撤去用(φ50)および張出床版切断用(φ150)のコア削孔を行った。

【コア削孔】
横断方向の切断は刃のサイズを変えながら,標準部は2回,張出床版部は3回に分けて行った。

【カッター切断(張出床版部)】
壁高欄部はワイヤーソーにて縦切りおよび水平切りを行い,25tラフタークレーンにて撤去した。工期短縮を図るため,クレーン作業を除いては昼夜連続施工とした。

【壁高欄部の撤去】
既設床版剥離・撤去
カッター切断により横断方向に2分割された既設床版は1枚ずつ床版剥離機(50t油圧ジャッキ4台)にてジャッキアップし,左右交互に鋼桁から剥離していく。

【床版剥離機による剥離作業】
剥離した既設床版はリフターにより組み立てられた220tクレーンにて20tトレーラーに積み込み(2枚積み),再資源化施設へ搬出した。

【リフターによる220tクレーン組立】

【既設床版撤去(20tトレーラー運搬)】
PC床版架設
既設床版剥離後,上フランジに残ったコンクリート片をケレン除去し,シールスポンジを設置する。さらに,既設床版撤去に伴い発生する開口部にはラッセルネットを張り,墜落防止を施した。
20tトレーラーにて運搬されたPC床版を220tクレーンにて架設する。1日当たりの架設枚数はクレーンの能力から11〜12枚とした。

【PC 床版架設】
また,クレーンの旋回範囲が県道に跨(またが)る際には,県道の片側交互通行規制を行い,一般車両に対する安全性の向上を図った。

【県道の片側交互通行規制】
間詰工
PC床版ループ継ぎ手内に配置する鉄筋にはエポキシ樹脂塗装鉄筋を使用した。型枠はプレキャスト化したものを使用することで,工程の確保に努めた。並行して,版下モルタルを打設した後に高さ調整用ボルトの撤去を行った。
間詰コンクリートの配合は50─18─20H(膨張材添加20kg/m3)で,1回当たりの打設範囲を1径間程度(40〜50m)としたため,本線上にコンクリートポンプ車(スーパーロング)を据え付け,さらに10m程度の配管を延長し打設を行った。

【間詰コンクリート打設】
伸縮装置工
既設の伸縮装置(鋼製フィンガージョイント)から,伸縮量および桁遊間から適用可能な製品ジョイントへの取り替えを行った。

【製品ジョイント据え付け】
壁高欄工
型枠・鉄筋組立作業と併せて遮音壁アンカー用のインサートや通信管路部材(埋設管,プルボックス等)の埋め込みを行った。また,ひび割れ防止対策として誘発目地を2m間隔で配置している。
壁高欄コンクリートの配合は40─15─20H(膨張材添加20kg/m3)で,本線上にコンクリートポンプ車(中型)を据え付け,ブーム打設を行った。

【鉄筋組立完了】
橋面防水・舗装
橋面防水にあたり,間詰コンクリート打設時に表面養生剤を使用していたため,コンクリート天端の研掃を行った。橋面防水材料には『HQハイブレンAU 工法』を採用した。

【橋面防水施工】
舗装はレベリング層(FB13)を舗設した後,表層(高機能舗装Ⅱ型)をホットジョイントにて施工した。なお,床版取り替えに伴い橋梁部分の計画高が50mm程度高くなったことから,土工部区間(約60m)での擦り付けも併せて行った。

【ホットジョイント施工】
橋梁付属物 設置
遮音壁の取り替えについては吸音材脱着構造により内部腐食状態の点検が可能で重腐食環境における耐用年数向上の観点から,『エスキューパネル』を採用している。

【遮音壁設置】
3 弓振川橋のリニューアルプロジェクト
弓振川橋の非合成化について発注時は補強部材のみによる主桁補強であったが,補強部材が大型であることに加え,既設床版撤去後の主桁補強開始であったため,対面通行規制期間内に補強可能な施工方法(外ケーブル補強の追加)へ変更している。

【弓振川橋 施工前】
施工フローは以下のとおり。

補強部材 仮付け
外ケーブル補強の追加により,補強部材のサイズを最小化することができ,対面通行規制前に仮付けしておくことで,実施工時の負担を軽減させる。

【補強部材仮付け】
なお,外ケーブ定着部付近のウェブ補強量および範囲が適切であることを確認するために3次元FEM解析を実施した。

【外ケーブルブラケット取り付け】
補強部材の仮付けにあたり,既設の塗膜剥離については特殊工具(ブリストルブラスター)による1種ケレン相当の素地調整とした。

【ブリストルブラスターによる素地調整】
既設床版吊切り・撤去
既設上フランジ上面にはスタッドジベルが密に配置されているため,上フランジ部分を残し120tクレーンによる吊切りを行った。残りのコンクリート部分は,ワイヤーソー(水平切り)およびWJ(ウォータージェット)を併用し撤去した。

【既設床版の吊切り】

【既設床版撤去】
外ケーブル補強
既設床版撤去完了後に,外ケーブルの緊張作業を行う。4主桁全てにセンターホールジャッキをセットし,4本同時に最終1,100kNまで荷重をかけていく。途中段階では主桁のエレベーションをレベルにて計測およびひずみ計測を行い,たわみに異常がないことを確認しながら緊張作業を行った。

【外ケーブル緊張】

【外ケーブル補強】
補強部材 本締め
外ケーブルの緊張作業完了後に,仮付けしていた補強部材のボルトを交換しながら,本締めを行った。

【補強部材 本締め】
4 除雪対応〜開放へ
対面通行規制も終盤に差しかかった時期に季節外れの大雪というアクシデントに見舞われた。
現場周辺が一夜にして銀世界へと変貌を遂げていた。

【平成28年11月24日 午前7時】
松本保全・サービスセンターにより即時,除雪車を出動させ現場内の除雪作業にあたった。

臨機の対応もあり,現場への影響は半日,作業が止まる程度に収まり,翌日にはほぼ完全復旧の状態にまで回復し,計画どおりに対面通行規制の切替ならびに交通開放を無事に終えることができた。
5 おわりに
当社が管理する高速道路のうち,名神高速道路は全線開通からすでに50年以上経過しているほか約6割が供用から30年以上が経過するなど老朽化が進展している。暮らしや経済を支える大動脈としての役割を次の世代へつないでいくため早期に大規模更新・大規模改修に取り組んでいきたい。

【小早川橋 完了】

【弓振川橋 完了】
Information
中日本高速道路(株)では,現在第11回フォトコンテストの作品を募集中です。高速道路,または高速道路周辺の四季感あふれる写真をふるってご応募ください。
(2018年8月31日消印有効)
http://www.c-nexco.co.jp/special/photo-contest/
土木インフラの維持管理に関する特集を「積算資料公表価格版」1 月号に掲載しております。あわせてご覧ください。
【出典】
積算資料2018年1月号

最終更新日:2018-05-14
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