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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > NEXCO中日本「i-MOVEMENT」プロジェクト 〜次世代技術を活用した革新的な高速道路保全マネジメント〜

 

1.はじめに

中日本高速道路株式会社(以下「NEXCO中日本」という)が管理する高速道路は総延長2,132km(2019年7月現在)で,1日の利用台数は約198万台に達しており,多くのお客さまに利用して頂いている。また,その物流の中心である首都圏・東海圏・関西圏の東西軸を結ぶ東名高速道路と名神高速道路の全線が供用後50年を経過し,NEXCO3社の中でもNEXCO中日本の管理する高速道路の老朽化が顕著である。
 
このような老朽化する社会インフラをはじめ高速道路を取り巻く環境は激変しているところである。特に高速道路リニューアルプロジェクトや大規模地震に対応した耐震補強事業など多くの事業を執行しなければならないが,少子高齢化や生産年齢人口の減少などの担い手不足によって,一層の生産性向上に対応するのは急務な課題である。
 
このため,NEXCO中日本では,2019年6月に「i-MOVEMENT」プロジェクトを発表し,次世代技術を活用し,高速道路の保全管理を変革する取り組みに着手した。
 
これから,本プロジェクトの概要を紹介する。
 

【図-1 NEXCO 中日本管内の総延長と経年数】




 

2.プロジェクト設立の背景

NEXCO中日本管内の道路構造物は,約6割が供用後30年以上を経過しており,インフラ長寿命化計画(行動計画)を策定し,高速道路リニューアルプロジェクトに取り組んでいる。しかしながら,将来は,今以上に構造物の劣化が進行し,道路構造物管理をより合理的に,効果的に革新した生産性の向上が求められてくる。
 
また,道路構造物の老朽化だけではなく,耐震補強などの激甚化する自然災害への対策強化,4車線化・6車線化の推進,「高速道路における安全・安心基本計画」に基づく今後の事業展開など,当社の事業量は増大し続けている。
 
さらに,生産年齢人口,すなわち働き手が減少すればそれだけメンテナンスを担う技術者の確保は困難となっていく。国内の建設需要の増加や技術者不足により,入札不調が顕在化し,事業進捗への影響も看過できない状況にある。
 
一方で「働き方改革」の進展,ICT技術の目覚ましい進歩など,社会環境の劇的な変化に対応するため,技術の進歩が著しいビッグデータ,AI,IoTなどのICT技術を積極的に取り入れた作業の迅速化・省力化や,機械化による高度化・効率化を実現するなど,生産性を飛躍的に向上させ,事業運営のあり方そのものを変革していく必要がある。
 
NEXCO中日本では,これらの課題に対して,限られた人的リソースで対処すべく,業務効率化や新技術の導入により,生産性をより一層高めるために,「i-MOVEMENT」プロジェクトを設立した。
 

【図-2 開通後の経年別路線図】



【図-3 わが国の生産年齢人口の推移】




 

3.「i-MOVEMENT」プロジェクト


NEXCO中日本では,高速道路オペレーションの迅速化・省力化,機械化による現場点検作業や日常的な維持作業の高度化・合理化などを実現するとともに,既存の業務プロセスやマニュアルを見直すなど,10年先を見据えた次世代技術を活用した高速道路の保全マネジメントを意味する革新的な改革プロジェクト(以下「i-MOVEMENTアイムーブメント」という)に取り組んでいる。
 
i-MOVEMENTは,分野毎に設定した5つのビジョン(ありたい姿)と,それに紐づく26戦術で構成している。
 
例えば,「交通運用改革」では,カメラによる全線監視を行い,情報収集と現場対応の迅速化を対象とした「全線常時監視による現場状況把握の効率化」や,ICT技術を活用した高精度でリアルタイムな道路交通情報などの提供を対象とした「ドライバー行動変容に向けた交通需要マネジメント」など具体的な戦術を掲げている。
 
また,「メンテナンス改革」では,保全点検や構造物モニタリングを対象とした「構造物等の状態把握(データ取得)の高度化」や,劣化予測や適切な補修時期に基づく補修計画の策定を対象とした「変状データ分析・維持修繕計画策定の高度化」など具体的な戦術を掲げている。
 
i-MOVEMENTでは,この26戦術に基づく社内業務やサービスに高度化水準を設け,現状とのギャップを埋めるために,社外の最先端技術・知見を取り入れ,技術マッチングさせ導入を進める予定である。そのため,既に確立された製品やサービスを速やかに導入するとともに,AI・IoT・ビッグデータ・RPAなど社外の最先端技術や知見を取り入れるため,コンソーシアム方式を試行導入し,「イノベーション交流会」を設立し,オープンイノベーションの推進を目指していく。
 

【図-4 i-MOVEMENTのビジョン(ありたい姿)と戦術】



【図-5 i-MOVEMENTのコンセプト(イメージ図)】




 

4.コンソーシアムの設立

「i-MOVEMENT」の早期実現に向け,幅広い分野の企業や大学などと連携し,先端技術や知見を取り入れるため,コンソーシアム方式を導入し,オープンイノベーション推進組織である「イノベーション交流会」を新たに7月に設置した。
 
イノベーション交流会では,当社の保全・サービス事業における業務課題(ニーズ)と運営会員が保有する先端技術(シーズ)を組み合わせ,開発・実証を通して技術を検証することで,新たな手法の創出,業務の高度化を実現し,広く社会に展開する。
 

【図-6 ニーズとシーズのマッチング】




2019年度は,幅広い検討テーマの中から「移動体監視による路面状況などの把握の効率化」,「変状データ分析・維持修繕計画策定の高度化」,「工事規制の高度化・効率化」について重点的に検討する。
 
「イノベーション交流会」の活動により,保全・サービス事業における業務課題と,参加いただいた82団体(2019年12月時点)の企業や団体の皆さまが保有する先端技術を組み合わせ,実証実験などを通じて,新たな手法の創出,業務の高度化の実現を目指す。
 

【図-7 イノベーション交流会における検討テーマと実証メニュー例】




 

5.おわりに

NEXCO中日本では,「安全を何よりも優先し,安心・快適な高速道路空間を24時間365日お届けする」ことを経営理念の冒頭に掲げている。
 
特に,リニューアルプロジェクトやロッキング橋脚の耐震対策などにより,高速道路の安全性向上と機能強化に精力的に取り組んでいるところである。これら大規模なプロジェクト事業を着実に実行するとともに,日々の巡回パトロールや構造物点検,安全確保の修繕工事や維持補修作業などに先進技術を取り入れて,高速道路の総合的な保全マネジメントを効果的・効率的に実践することで,高速道路本来の使命を永続的に果たすよう邁進する所存である。
 
ご承知のとおり,今日では自動運転技術の開発が急速に進んでおり,高速道路上でのトラック隊列走行や自動運転の実現は,もう目の前に迫っている。
 
新時代の高速道路に必要な機能や付加価値はどうあるべきなのか。i-MOVEMENTプロジェクトは,これまでの取り組みに加え,新時代の高速道路事業の将来像を描きそれを具現化するために,プラットフォーマーとしての基盤を形成する重要なプロジェクトである。
 

Information



NEXCO中日本では,現在第13回フォトコンテストの作品を募集中です。高速道路,または高速道路周辺の四季感あふれる写真をふるってご応募ください。
(2020年8月31日消印有効)

https://www.c-nexco.co.jp/special/photo-contest/

 
 
 

中日本高速道路株式会社 保全企画本部

 
 
 
【出典】


積算資料2020年1月号



 

最終更新日:2020-04-13

 

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