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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 阪神高速道路における建設事業の概要

1. はじめに

 
阪神高速道路のネットワークは、総延長258.1kmに及び、関西の大動脈として、1日平均71万台のお客さまにご利用いただいている。
 
しかし、大阪都心部や大阪~神戸間では、都心部に向かう交通と、都心部を目的地としない通過交通が混在するため、慢性的な渋滞が発生しており、物流や観光などの経済活動が大きく阻害されている。
 
また、2025年に大阪・関西万博の開催が決定していることもあり、ミッシングリンクの解消に向けた早期の道路ネットワーク網整備が期待されている。
 
現在建設中の路線は、大阪湾岸道路を構成する「大阪湾岸道路西伸部」、大阪都市再生環状道路を構成する「淀川左岸線(2期)」および「淀川左岸線延伸部」の3路線であり、総延長27.6kmで事業を推進しているところである(図-1)。
 
今般、阪神高速道路における建設事業の概要を説明するものとする。
なお、「大阪湾岸道路」および「大阪都市再生環状道路」の説明は、以下のとおりである。
 
●大阪湾岸道路
 
神戸淡路鳴門自動車道(垂水JCT)から関西国際空港(りんくうJCT)までを結ぶ約80kmの自動車専用道路である。
大阪湾沿岸地域の既存幹線道路の交通負荷を軽減し、都市環境の改善を図るとともに、大阪湾沿岸諸都市を有機的に連絡して、都市の活力を向上させることにつながる道路である。
 
●大阪都市再生環状道路
 
6号大和川線、4号湾岸線、2号淀川左岸線および近畿自動車道などから構成する新たな環状道路であり、大阪都心部の慢性的な渋滞緩和や沿道環境の改善とともに、新たな拠点エリアを誘引する都市活性につながる道路である。
 

【図- 1 建設中路線】
 

2. 建設中路線

(1)大阪湾岸道路西伸部  (六甲アイランド北~駒栄)
1.路線概要

 
本路線は、前述の大阪湾岸道路の一部を構成し、開通済みの5号湾岸線六甲アイランド北ランプからさらに西に延伸し、ポートアイランドと和田岬を橋梁で結び、駒栄地区にて既設の31号神戸山手線へ接続する延長14.5kmの路線である(図-2)。
 

  【図-2 大阪湾岸道路西伸部の概要】
 
当該路線は、2016年度に公共事業として事業化し、2017年度に公共事業と有料道路事業との合併施行方式を導入、2018年度に港湾事業の参画を決定している。
 
また、本路線は、六甲アイランド~ポートアイランド間、ポートアイランド~和田岬間で、国際航路を跨ぐ形で計画されており、当該地の長大橋の架設においてさまざまな課題等へ対応していくため、有識者委員会を設立し検討を実施している。
同委員会では基礎構造をはじめ、上部構造に対する耐震、耐風、景観等の観点から有識者の助言を踏まえた詳細検討を行っており、2019年12月には「災害時の道路機能確保」、「景観性」および「維持管理性」などの観点から長大橋の橋梁形式の選定結果について公表がなされた。
さらに、新港・灘浜航路部については、これまでの審議を踏まえ、橋長2,739mの7径間連続4主塔鋼斜張橋として、2023年8月に基本構造の決定について公表がなされた。(図-3)
 
2023年11月には新港・灘浜航路工区鋼斜張橋工事を東西工区に分割し、技術提案・交渉方式(設計交渉・施工タイプ)で公示を実施したところである。
他の区間についても引き続き検討を進め、事業を推進していく。
 
※構造,デザイン,色彩は現時点の計画であり,今後変更される可能性があります
  ※構造、デザイン、色彩は現時点の計画であり、今後変更される可能性があります。
【図-3 新港・灘浜航路工区鋼斜張橋 基本構造概要】
 

2.整備効果等

 
大阪湾岸道路西伸部の整備により、国際コンテナ戦略港湾である阪神港や、関西国際空港などの物流拠点への移動時間が短縮、物流の効率化が図られるほか、代替路の確保が可能となり、交通事故等で3号神戸線が通行不能となった場合や通行規制が行われた場合には、一般道への交通集中が緩和される。
また、利便性が向上し、最先端の医療拠点への企業進出等により、さらなる地域経済活性化が期待される(図-4)。
 

【図-4 整備効果】

 

3.進捗状況

 
現在、当社では、六甲アイランド北ランプから六甲ライナーを越える区間(六甲アイランド東工区)の橋梁上部工事および下部工事、ならびに神戸山手線の接続部付近(駒栄工区)の開削トンネル工事を契約締結している。
なお、六甲アイランド東工区については、現在橋梁上部工事において詳細設計を、橋梁下部工事において基礎工を実施中で(写真-1)、駒栄工区の開削トンネル工事は函体の構築等を実施し(写真-2)、工事の進捗を図っている。


【写真- 1 基礎工施工状況(六甲アイランド東工区)】

【写真- 2 開削トンネル施工状況(駒栄工区)】
(2)淀川左岸線(2期)、淀川左岸線延伸部
1.路線概要

 
淀川左岸線(2期)および淀川左岸線延伸部(以下、両路線)は、前述の「大阪都市再生環状道路」の北側の一部を構成する道路である。
両路線はトンネル構造を主体に計画している(図- 5)。
 
淀川左岸線(2 期)は、開通済みである2号淀川左岸線(淀川左岸線1期)および3号神戸線と海老江JCTで接続し、(仮称)豊崎IC(国道423号新御堂筋)までの4.4kmを結ぶ路線で、うち4.3kmを大阪市と当社の合併施行方式により事業を実施している。
合併施行区間の本体工事は大阪市施行となっており、海老江地区および豊崎地区の工事(開削トンネル、橋梁、換気所)を当社が受託している。
 
淀川左岸線延伸部は、淀川左岸線(2期)から門真JCTまでの8.7kmの路線であり、第二京阪道路および近畿自動車道に接続する。
2017年に事業化し、共同事業者である国、西日本高速道路株式会社と事業を進めている。
当該路線は、開削トンネル工法およびシールドトンネル工法により大部分をトンネル構造として構築し、一部区間については河川堤防と一体構造となった計画としている。
当該路線の設計・施工に当たっては、河川堤防と道路構造物を一体とした場合の安全性やモニタリング手法、近接シールドの併設影響など、建設に際してさまざまな技術的課題を解決する必要があるため、有識者委員会を設置し技術的検討を行いながら事業を進めている。
 

【図-5 淀川左岸線(2期)、淀川左岸線延伸部の概要】
 

2.整備効果等

 
両路線の整備によって第二京阪道路と接続されることで、大阪ベイエリア(阪神港・夢洲・咲洲地区)と名神高速道路などの主要な高速道路を結びつけ、物流の効率化や周辺地域との連絡強化による大阪・関西圏の経済活性化や競争力強化、また、災害時の避難・救援活動を支える重要な路線となっている(図-6)。
 

  【図-6 淀川左岸線(2期)、淀川左岸線延伸部の開通により期待される整備効果】

  
 

3.万博に向けた暫定整備

 
2022年10月に、大阪・関西万博来場者輸送具体方針(アクションプラン)が策定され、来場者輸送における公共交通として想定する3つの主要ルートの1つとして淀川左岸線(2期)が位置づけられた。
新大阪駅や大阪駅から、大阪・関西万博会場となる夢洲へのシャトルバスのアクセスルートとして暫定利用するため、淀川左岸線(2期)区間のルート確保を大阪市と協力して取り組んでいく。
 

4.進捗状況

 
当社が大阪市より受託している海老江地区では、下水処理場内にて橋梁工事を実施しており、本線部分の橋桁の架設および、床版の打設が完了したところである(写真-3)。
 
また、同海老江地区(3号神戸線以東)では開削トンネル工事も実施しており、一部区間では函体の頂版まで打設を完了している(写真-4)。
 
豊崎地区では、新御堂筋から分岐し淀川左岸線(2期)に流入する入路の施工を行っており、淀川河川内の橋桁の架設を一部完了したほか、地上部の橋脚についても施工を開始している(写真-5)。
 
淀川左岸線延伸部については、トンネルおよび シールド立坑などの設計検討、堤防・道路一体構造の安全性などの検討を実施している。
 


【写真- 3 橋桁架設状況(海老江地区)】

【写真- 4 開削トンネル施工状況(海老江地区)】

【写真- 5 河川内の桁架設状況(豊崎地区)】

3. 結びに

 
事業中の建設路線について、早期完成を目指し、共同事業者と協力しながら、事業推進に向けて引き続き取り組んでいく。
 
 
 

阪神高速道路 株式会社

 
 
【出典】


積算資料2024年3月号

最終更新日:2024-06-10

 

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