- 2026-02-20
- 特集 防災減災・国土強靭化 | 積算資料公表価格版
はじめに
近年、気候変動の影響により気象災害が激甚化・頻発化し、毎年のように全国各地で水害が発生している。
令和6年1月1日に発生した能登半島地震では甚大な被害が発生し、多くの人命が犠牲となり財産が失われた。
高齢化・過疎化が進む半島地域における厳冬期の災害という、厳しい条件が幾重にも重なった災害であった。
その後、復旧・復興の最中に能登地域を襲った同年9月20日からの線状降水帯を伴う大雨により、被災地は一層厳しい状況に直面し、時間差を置いて発生する複合災害としての対応が求められた。
また、令和6年8月8日に発生した日向灘を震源とする地震では、政府として初の「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表され、巨大地震の切迫性が高まっている。
さらに、令和7年1月28日に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故により、インフラ老朽化対策は今後発生する大規模災害に備える上でも、その重要性が改めて認識されたところである。
このような災害から国民の生命・財産・暮らしを守り、国家・社会の重要な機能を維持するため、防災・減災、国土強靱化の取組を切れ目なく推進する必要がある。
これまで、「重要インフラの緊急点検」の結果を踏まえた「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(平成30年12月14日閣議決定。平成30年度から令和2年度までの3年間でおおむね7兆円程度を目途として対策を実施)、国土強靱化の取組のさらなる加速化・深化を図るための「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」(令和2年12月11日閣議決定。令和3年度から令和7年度までの5年間で追加的に必要となる事業規模をおおむね15兆円程度を目途として対策を実施)に取り組み、着実に効果を発揮してきている。
令和5年6月16日には、新たに「国土強靱化実施中期計画」や「国土強靱化推進会議」を位置付けた国土強靱化基本法の一部改正法が公布・施行され、同年7月には、近年の災害から得られた貴重な教訓や社会経済情勢の変化等も踏まえ、「国土強靱化基本計画」を見直し、中長期的な目標や施策分野ごとのハード・ソフトにわたる推進方針を明らかにする等、国土強靱化の取組のさらなる強化を図ることとした。
その上で、令和7年6月6日、国土強靱化の取組を切れ目なく推進するため、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に続く計画として「第1次国土強靱化実施中期計画」が閣議決定された(図- 1)。
本稿では、その内容について紹介する。
1. 「第1次国土強靱化実施中期計画」の概要(図-2~4)
第1章では、「基本的な考え方」について整理している。
これまでの国土強靱化施策が着実に効果を発揮してきた一方で、人件費・資機材価格の高騰や人口減少・少子高齢化を背景に、コスト増大や工期延伸等への対応が必要といった諸課題が顕在化しており、「災害外力・耐力の変化」、「社会状況の変化」、「事業実施環境の変化」という3つの変化への対応が必要であるとされている。
「災害外力・耐力の変化」への対応では、高度経済成長期に整備されたインフラの老朽化が加速度的に進行する中、修繕・更新を強力に推進し、予防保全型メンテナンスへの移行を図ることとしている。
第2章では、「計画期間」を令和8年度から令和12年度までの5年間とした。
第3章では、「計画期間内に実施すべき施策」(全326施策)が位置付けられており、施策の推進に必要な制度整備や関連計画の策定等の環境整備、普及啓発活動等の継続的取組、長期を見据えた調査研究等についても、目標を設定して取組を推進することとしている。
第4章では、「推進が特に必要となる施策」(全114施策)の内容および目標(234の重要業績評価指標・Key Performance Indicator(KPI))を定めた。
施策の目標は、令和5年度の現状、計画期間の最終年度である令和12年度の達成目標値、目標が100%達成される推定年度を示す。
(参考:図-2~4は、内閣官房Webページの「第1次国土強靱化実施中期計画」にもアップロードしているので併せて参照されたい。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokudo_kyoujinka/dai1_chuukikeikaku/index.html)
2. 「推進が特に必要となる施策」について(表- 1)
第4章に位置付けられた当該施策の目標は、南海トラフ地震が30年以内に発生する確率(8割程度)等に鑑み、一人でも多くの国民の生命・財産・暮らしを守るため、おおむね20年から30年程度の期間を一つの目安として、国土強靱化のレベルを一段上の水準まで引き上げることを念頭に検討・設定したものである。
施策の中には、事業箇所における各種調整等に一定の時間を要すること、気候変動の影響等により全体事業量が増加したこと等により、長期目標の達成に30年超の期間を要するものもあるが、このような施策においても、地域ごとに異なる災害リスクの実情や緊急性等を踏まえ、早期に効果を発揮できるよう、優先順位や手法を検討の上、実施していくこととしている。
「推進が特に必要となる施策」の目標と指標の例
(例1)「国民の生命と財産を守る防災インフラの整備・管理」
「推進施策19 大規模地震に備えた河川管理施設等の地震・津波対策」において、次の項目を含め4つの目標および指標を掲げている。
- 南海トラフ地震等の大規模地震が想定されている地域等における河川堤防等(約830km)の地震・津波対策の対策完了率
83%【R5】→ 87%【R12】→ 100%【R42】
(例2)「経済発展の基盤となる交通・通信・エネルギーなどライフラインの強靱化」
大規模自然災害の発生時においても、ライフライン機能を可能な限り維持できるよう、致命的な損傷の早期解消、運営基盤の強化等を推進し、予防保全型メンテナンスへの早期転換を図るとともに、急所となる施設・設備や災害時の重要施設に接続するライフラインの耐災害性強化を図ることとしている。
「推進施策62 上下水道施設の耐災害性強化」において、次の項目を含め11の目標および指標を掲げている。
- 給水区域内かつ下水道処理区域内における重要施設(約35,000か所)のうち、接続する水道・下水道の管路等の両方が耐震化されている重要施設の割合
9%【R5】→ 30%【R12】→ 100%【R36】
(例3)「地域における防災力の一層の強化」
官民連携による地域防災力の向上として「地域の守り手」となる建設業の担い手確保対策や、新たに創設される「被災者援護協力団体」の登録制度等の運用を通じたNPOやボランティア団体の協力体制の強化のための取組を推進し、官民連携で地域防災力の向上を図ることとしている。
「推進施策110 防災・減災、国土強靱化を担う建設業の担い手確保等に関する対策」においては、次の2つの目標および指標を掲げている。
- 国・都道府県・市町村・特殊法人等(全国1,928団体)における建設キャリアアップシステム活用工事の導入完了率
6.8%【R5】→ 100%【R12】 - 国・都道府県・市町村・特殊法人等(全国1,928団体)における公共工事の週休2日工事又は交替制工事の制度の導入完了率
25.1%【R5】→ 100%【R12】
他にも、「デジタル等新技術の活用による国土強靱化施策の高度化」では衛星等のデジタル等新技術の活用、「災害時における事業継続性確保を始めとした官民連携強化」では住宅等の耐震化が「推進が特に必要となる施策」に位置付けられている。
「推進が特に必要となる施策」の事業規模は、「今後5年間でおおむね20兆円強程度を目途とし、今後の資材価格・人件費高騰等の影響については予算編成過程で適切に反映する。
また、対策の初年度については、経済情勢等を踏まえ、速やかに必要な措置を講ずる」とされ、「次年度以降の各年度における取扱いについても、予算編成過程で検討することとし、今後の災害の発生状況や事業の進捗状況、経済情勢・財政事情等を踏まえ、機動的・弾力的に対応する」こととされた。
令和7年12月16日に成立した令和7年度補正予算においては、「推進が特に必要となる施策」関連の経費として、国費1兆9,159億円が計上されている(令和6年度補正予算額1兆4,492億円に対して、1.32倍)。
国土強靱化関連予算としては、令和7年度補正予算として約2.5兆円が措置され、同年12月26日に閣議決定された令和8年度予算案においては約5.4兆円が計上された。
両者を合わせた総額は約7.9兆円であり、前年の約7.3兆円から大幅な増額であり、「第1次国土強靱化実施中期計画」のスタートとして、国土強靱化を着実に推進するために必要な予算が計上された。
おわりに
今後も、切迫する巨大地震や、激甚化・頻発化する大規模自然災害による被害を軽減・回避するためには、インフラ老朽化対策を含め、国土強靱化の取組のペースを緩めることなく、着実に推進していかなければならない。
高市内閣において令和7年11月21日に閣議決定された「強い経済」を実現する総合経済対策では、「危機管理投資・成長投資による強い経済の実現」の戦略分野の大きな柱の1つに、「防災・減災・国土強靱化の推進」が掲げられ、令和8年夏の取りまとめに向けて議論されているところである。
「第1次国土強靱化実施中期計画」に基づき、行政はもとより、インフラの整備・維持管理の担い手として、災害時には最前線で地域社会の安全・安心の確保を担う「地域の守り手」として重要な役割を果たしている建設業に従事する方々をはじめ、多くの関係者としっかり連携しながら、オールジャパンで国土強靱化を推進してまいりたい。
参考
第1次国土強靱化実施中期計画(内閣官房Webページ)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokudo_kyoujinka/dai1_chuukikeikaku/index.html
【出典】
積算資料公表価格版2026年3月号

最終更新日:2026-02-20
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