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はじめに

緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE=Technical Emergency Control FORCE)は、平成20年4月の創設以来、河川・砂防、道路、港湾などの各分野に精通した国土交通省の職員や資機材により、被災状況の把握、被災者の救助や物資輸送のために必要となる道路啓開や排水作業といった活動を現地で行ってきた。
 
隊員は、国土交通本省、各地方整備局、地方運輸局、国土技術政策総合研究所、国土地理院、気象庁の専門的な知識を有する国土交通省職員で構成されており、インフラの整備・管理といった業務で培った技術力や、水害・土砂災害、地震などのさまざまな災害対応の経験を活かして、それぞれの専門分野で被災地方公共団体などが行う被害状況調査、被害拡大防止、早期復旧その他の災害応急対策を支援している。
 
本稿では、令和7年6月6日に公表した「TEC-FORCEの増強と多様な主体との連携による新たな応援体制の構築」の概要と同年におけるTEC-FORCEの主な活動内容を紹介する。
 
 

1. 「TEC-FORCEの増強と多様な主体との連携による新たな応援体制の構築」の概要

令和6年元日、能登半島地震が発生し、奥能登地方を中心に激甚な被害をもたらした。
国土交通省は1月1日からTEC-FORCEを厳冬期の能登に派遣し、1月2日には道路啓開を開始、1月2日から5月31日まで給水活動を実施するなど、延べ派遣数25,967人・日、日最大派遣数555人の隊員が被災地方公共団体支援にあたった。
 
一方で、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、首都直下地震や南海トラフ地震は、甚大な被害をもたらした能登半島地震と比較しても、桁違いの被害が出ることが想定されている。
このような災害に備えるためには、国土交通省職員による支援体制を着実に強化していくことに加え、国土交通省の外の力も結集して現在の災害対応力を格段に引き上げる取組が必要であり、令和7年6月6日に「TEC-FORCEの増強と多様な主体との連携による新たな応援体制の構築」を発表し、施策を進めていくこととなった(図- 1)。

図-1 TEC-FORCEの増強と多様な主体との連携強化
図-1 TEC-FORCEの増強と多様な主体との連携強化

 
次に、それぞれの施策について紹介する。
 

(1) TEC-FORCE予備隊員(図- 2)

「TEC- FORCE予備隊員」制度は、災害対応に係る専門的な知識を有する民間人材を「TEC-FORCE予備隊員」(以下、「予備隊員」という)として募集・登録の上、災害発生時に必要に応じて非常勤の国家公務員として採用し、被災地などでTEC- FORCEの一員としての活動などに従事いただくものである。
 
国土交通省職員からなるTEC-FORCEの隊員は全国で約18,000人(令和7年4月現在)いるが、隊員の多くが全国各地の現場において河川や道路の整備・維持管理などの役割を担っているため、被災地へ一度に派遣できる人数は限られる。
 
南海トラフ地震などの大規模広域災害に備えるため、令和7年7月23日から予備隊員を全国の地方整備局などで募集し、10月1日に320人の予備隊員を登録することができた。
登録後、派遣にあたって必要となる研修を11月上旬までに全ての地方整備局で行い、災害時に派遣する体制を確保した。
 
引き続き、TEC-FORCE予備隊員制度を活用し、TEC-FORCEの増強を図る。

図-2 TEC-FORCE予備隊員
図-2 TEC-FORCE予備隊員

 

(2) TEC-FORCEパートナー(図- 3)

「TEC-FORCEパートナー」は、災害協定などを締結している民間企業などをTEC-FORCEパートナーと位置付け、災害協定の拡充などにより広域的な地方公共団体支援(例えば、民間企業などが協定を締結している地方整備局管外の地方公共団体支援)においてもTEC-FORCEと一体的に活動する体制を確保する取組である。
 
南海トラフ地震などの大規模広域災害では、その被災規模の大きさから、地域の建設業や建設関連業などのみで応急対応を実施することが困難な状況が想定される。
災害発生直後に高まる需要に対応するための人手や資機材が足りないときには、派遣側・受け入れ側双方の理解に基づき、全国から被災地を円滑に支援したいと考えている。
また、建設業や建設関連業の担い手を確保するための取組も重要になる。
災害時には、地域の守り手である建設業や建設関連業が懸命な支援活動を展開しているが、その活動が十分に認知されていないことも課題となっている。
発災直後の救難救助のフェーズから復旧復興のフェーズに至るまで、建設業や建設関連業が果たしている社会貢献の認知度を向上させていく取組も併せて進めていく。

図-3 TEC-FORCEパートナー
図-3 TEC-FORCEパートナー

 

(3) TEC-FORCEアドバイザー(図- 4)

「TEC-FORCEアドバイザー」は、災害応急対策などに助言をいただける学識経験者をTEC-FORCEアドバイザーとして事前に委嘱し、技術的判断が難しい事案にも即応できる体制を確保する取組である。
 
これまでも災害の現場において、学識経験者の方々に意見をいただく場面は多々あったが、それぞれの現場の必要に応じて実施しているものであった。
 
南海トラフ地震などの大規模広域災害の発生を考えると、技術的に判断が難しい被災事例も多く発生することが想定され、このような事案に対して速やかに対応するために、地方整備局などの管外においても学識経験者の方々に協力いただける体制を構築する必要がある。

図-4 TEC-FORCEアドバイザー
図-4 TEC-FORCEアドバイザー

 

(4) 都道府県等との連携(図- 5)

「都道府県等との連携」は、公共土木施設などに係る災害対応においてTEC-FORCEと都道府県などが一体的に活動できるよう、都道府県などの危機管理部局や土木部局などとの連携を強化する取組である。
 
能登半島地震では、福井県、兵庫県、神戸市が珠洲市において、TEC-FORCEと協力して幹線市道の通行可能状況調査を実施した。
また、徳島県では「TEC-徳島」(徳島県緊急災害対策派遣チーム)が整備されており、過去には、平成28年熊本地震、平成29年7月九州北部豪雨などさまざまな災害で活躍している。
 
これまでの都道府県などからの公共土木施設に関する技術職員派遣は復旧のフェーズが中心であり、応急フェーズにおける被災状況調査などの災害応急対策に対する派遣は限定的な状況であった。
都道府県も市町村などの基礎自治体と同様に技術職員が少なく、被災地からの派遣要請に応じることが難しい状況にあるが、大規模広域災害を見据えて国全体でより強力な体制を構築するために、他の都道府県が求めに応じて応援に駆けつける互助的な体制を、公共土木分野についてもあらかじめ整えておくことが必要である。

図-5 都道府県等との連携
図-5 都道府県等との連携

 

2. 令和7年のTEC-FORCE活動状況

次に、令和7年に発生した災害とTEC-FORCEの活動について紹介する。
 

(1) 霧島山(新燃岳)噴火への対応
I 被害の概要

新燃岳では、6月22日に平成30年以来となる噴火が発生し、その後も噴火活動が継続、7月3日には噴煙高度が今回の噴火活動で最大となる5,000mに達する噴火が発生した。
新燃岳火口周辺には相当量の火山灰が積もり、7月9日、10日の降雨では新燃岳山麓を流れる霧島川支川で土砂流出が確認された。
 

II TEC-FORCEの活動概要(写真- 1、2)

火口付近の状況を把握するため、7月15日、16日に九州地方整備局のTEC-FORCEが、TEC- FORCEアドバイザーである鹿児島大学の地頭薗隆名誉教授、宮崎大学の清水収教授と合同で防災ヘリコプターによる上空調査および現地調査を実施した。
これが全国で最初のTEC-FORCEアドバイザーの活動となった。
TEC-FORCEアドバイザーからは、霧島川への土砂流出のメカニズム、今後の備えなどの所見をいただき、調査結果を鹿児島県に伝えた。
この結果をもとに、今後の雨で土石流の発生による被害を防止するため、7月18日に鹿児島県による災害関連緊急砂防事業による砂防堰堤の緊急除石が認められ、現在、実施されている。

写真- 1  新燃岳火口から立ち上る噴煙(7 月6 日)
写真- 1  新燃岳火口から立ち上る噴煙(7 月6 日)
写真- 2  TEC-FORCE アドバイザーとの合同調査(防災ヘリコプターによる上空調査)
写真- 2  TEC-FORCE アドバイザーとの合同調査
(防災ヘリコプターによる上空調査)

 

(2) トカラ列島で頻発した地震への対応
I 被害の概要

トカラ列島近海を震源とする最大震度6弱の地震が7月3日に発生し、7月5日、6日にも震度5強の地震が発生した。
十島村(鹿児島県)では集落内の道路や港などの施設への被害は確認されなかったが、震度1以上を観測した地震が2,000回を超えるなど活発な地震活動が継続したため、希望する方が島外へ避難した。
 

II TEC-FORCEの活動概要(写真- 3、4 )

最大震度6弱の地震発生後、直ちに防災ヘリコプターによる被災状況の調査を行うとともに、鹿児島県庁と十島村役場へのリエゾンおよびJETT(気象庁防災対応支援チーム)を派遣した。
また、国土地理院が十島村の悪石島と小宝島に地殻変動観測装置を設置するとともに、村からの要請を受け、九州地方整備局のTEC-FORCEとTEC-FORCEパートナーが協働して、7月31日に悪石島に道路などの状況を監視するカメラを設置した。
この対応が全国で最初のTEC-FORCEパートナーの活動となった。

写真- 3  悪石島に設置した地殻変動観測装置
写真- 3  悪石島に設置した地殻変動観測装置
写真- 4  TEC-FORCEパートナーと協働したカメラ設置
写真- 4  TEC-FORCEパートナーと協働したカメラ設置

 

(3)8月6日からの大雨への対応
I 被害の概要

8月6日からの大雨により、死者8名、重傷者5名、住家11,373棟の被害が主に石川県、福岡県、熊本県、鹿児島県で発生し、県管理の58水系78河川で浸水被害が確認された他、248件の土砂災害、最大約42,343戸の断水が発生した。
 

II TEC-FORCEの活動概要(写真- 5、6 )

国土交通省では、8月6日から9月10日までに、延べ1,036人・日のTEC-FORCE隊員を派遣し、保有する排水ポンプ車、散水車(給水装置付き)、衛星インターネット装置などの貸与による支援を実施するとともに、防災ヘリコプターによる広域被災調査や、ドローンによる土砂崩落などの被災状況調査によって把握した情報を熊本県や甲佐町
(熊本県)などに提供し、集落の孤立解消に必要となる道路啓開などに活用いただいた。

写真- 5  散水車(給水装置付き)による給水支援(鹿児島県姶良市)
写真- 5  散水車(給水装置付き)による給水支援
(鹿児島県姶良市)
写真- 6  ドローンによる被災状況調査(熊本県甲佐町)
写真- 6  ドローンによる被災状況調査(熊本県甲佐町)

 

(4)八丈島における大雨、暴風への対応
I 被害の概要

非常に強い台風第22号が伊豆諸島に最接近したことに伴い、気象庁は、10月9日に八丈町などに暴風・波浪の特別警報、八丈町に大雨特別警報を発表した。
台風第22号に続き台風第23号が強い勢力で伊豆諸島付近を通過したことに伴い、気象庁は、10月13日に八丈町などに大雨・暴風・波浪の警報を発表した。
八丈島では建物被害の他、土砂災害や倒木などが発生し、都道や町道で被災による通行止め、断水が発生した。
 

II TEC-FORCEの活動概要(写真- 7、8 )

関東地方整備局は、10月11日から11月12日までリエゾンを八丈町役場に派遣し、八丈町災害対策本部会議に参加して被害や対応について情報収集するとともに、支援ニーズの把握を行った。
 
被災町道への対応として、TEC-FORCEが被災状況調査を実施し、被災規模、被災要因、復旧方法の技術的所見などをまとめた。
 
また、断水への対応として、防災ヘリコプターやドローンにより、土砂崩れなどで被災した水道水源の被災状況調査も実施した。
 
土砂災害が発生した地域では二次災害が懸念されるため、国土技術政策総合研究所の2名が土砂災害専門家として土砂崩落箇所などの調査を実施し、土砂災害の状況や警戒にあたっての留意点などの技術的助言を実施した他、JETTが日々の八丈町災害対策本部会議で気象などのきめ細やかな解説を行い、二次災害防止のための助言を行った。

写真- 7  リエゾンによる支援ニーズの把握
写真- 7  リエゾンによる支援ニーズの把握
写真- 8  土砂災害専門家による助言
写真- 8  土砂災害専門家による助言

 
 

おわりに

TEC-FORCEは発足から17年以上が経過し、これまで平成23年東日本大震災や平成30年西日本豪雨、令和元年東日本台風、令和6年能登半島地震といったさまざまな災害において、全国の地方整備局などのTEC- FORCE隊員が活動し、被災地方公共団体を支援してきました。
 
能登半島地震における活躍を北陸地方整備局Webページ(https://www.hrr.mlit.go.jp/bosai/R6noto.html)において紹介させていただいているように、これらの災害における活動は、民間企業の方々と連携して実施してきたものです。
 
このような連携を、本稿で紹介した「TEC-FORCEの増強と多様な主体との連携による新たな応援体制の構築」の取組によってさらに強化し、被災地で共に活動するパートナーである民間企業の方々と、被災地方公共団体を応援する体制の確保を進めていきたいと考えています。
 
気候変動によって激甚化・頻発化する水災害、切迫する地震災害への備えとして、災害対応力の強化は急務です。
国民の安全・安心を確保する使命を果たすため、国土交通省では引き続きTEC-FORCEによる災害支援体制・機能の拡充・強化に取り組んでまいります。
 
 
 

国土交通省 水管理・国土保全局 防災課
林 昌宏

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2026年3月号


積算資料公表価格版2026年3月号

最終更新日:2026-02-20

 

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