ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 基礎地盤 > 国土強靱化・復旧復興に向けた重仮設工の課題と解決

はじめに

2026年度から「第1次国土強靱化実施中期計画」が始動し、2030年度までの5年間で総事業規模は20兆円強に及ぶ。
災害の激甚化・頻発化やインフラ老朽化への対応を重点に、防災・減災、インフラ更新、地域強靱化が全国で推進される。
 
その強靱化計画の推進施策には、道路ネットワークのリダンダンシー確保、ダムの堆砂対策等、達成に10〜20年、長いものでは50年超を要する長期課題である。
よって、十分なレジリエンスの獲得は道半ばであり、私たちの生活はなお脆弱性を残したまま、恒久的に自然災害リスクに晒されている。
 
実際に、情報化社会を生きる私達にとって、例えば震災のニュースはもはや日常であり、阪神淡路大震災後の調査で判明した約2,000ヶ所の活断層も氷山の一角に過ぎないであろう。
東日本大震災以降は「南海トラフ巨大地震」が喧伝されるが、定説とされるプレートテクトニクスによれば日本列島は4つのプレートが衝突・潜り込みを繰り返す交差点にあり、場所・時間・規模が予測不能な震災リスクを常時抱えているといってよい。
さらに隆起した山々を豊富な雨が急流河川となって削り続け、我が国は世界有数の水害国でもある。
 
この豊饒で荒ぶる国土において、防災・復旧・復興の観点からは基礎工事前に重機作業スペースを確保する重仮設工が工期短縮に不可欠である。
本稿では、その課題と解決策として仮橋工のLIBRA工法、仮締切工のマイクロジョイントパイル(MJP)工法を紹介する(写真- 1)。

写真-1 山間部のLIBRA工法(左)とMJP工法(右)
写真-1 山間部のLIBRA工法(左)とMJP工法(右)

 
 

1. 重仮設工の類型と課題

まず、重仮設工は地盤の性質に応じて軟質地盤用と硬質地盤用の2種類に大別される。
全国土の10%強に過ぎない沖積平野に人口の51%、総資産の75%が集中する我が国では、比較的軟質な沖積層に対応する軟質地盤用工法がまず標準化され、先行して普及した。
その後、高度経済成長期以降のインフラ需要に応じ、標準化が困難な軟弱地盤や山岳部の傾斜地等、多様な地形・地質条件に対応するため、現場の工夫による局地的な基礎工法の開発・改良が進められた一方、硬質地盤用技術の普及はなお、途上である。
この結果、各地で「標準」を名目に、軟質地盤に適さない工法が選定され、施工遅延が頻発している。
 
 

2. 崩壊性互層の陥穽と標準化困難性

我が国は標高2,000〜3,000m級の山脈が縦走し、国土の約70%を山地が占め、急崖や断崖が発達している。
これらの斜面では風化や浸食により岩石が崩壊し、崖下に岩屑が堆積して崖錐層を形成する。
台風や集中豪雨で水が浸透すれば土砂流出や崩壊が生じ、地震による密度や空隙の変化で同様の作用が繰り返され、基岩上に更新され続ける崖錐層は多様な「崩壊性の互層」を生み出す。
 
また、九州南部のシラス台地に代表されるように、火砕流や火山灰の堆積による火山噴火起源の「崩壊性の硬質な互層」が活火山周辺に広く分布する。
さらに、世界有数の火山国である日本では約3.5万本の河川が急峻な山地を流下し、河床には玉石や転石を含む堆積層が形成される。
これらは一見マトリクスのN値が低く標準工法で施工可能に見えても、実際には硬質岩塊や転石が打設障害となる事例が多い。
逆に岩盤専用工法ではマトリクスが自立せず、地下水の動態も加わり孔壁崩壊等で施工不能となる場合がある(写真- 2)。

写真- 2  転石の堆積した河床上のLIBRA橋作業構台の下部
写真- 2  転石の堆積した河床上のLIBRA橋作業構台の下部

 
このように、崖錐層・火山灰堆積層・河床堆積層といった多様な成因を持つ「崩壊性の互層」は、軟質地盤と硬質地盤の間に無数のグラデーションを生じさせ、施工方法や設計法の標準化を困難にしている。
しかも重機足場確保のため重仮設工が必要となるのは、沖積平野以外の河川、ダム湖、海底、山の斜面、峡谷等、複雑な互層が局在する場所である。
従って、起伏に富む我が国の地形と多様な崩壊性地盤を対象とする国土強靱化の推進には、各工種において最適な施工方法の確立が不可欠である。
 
 

3. 基礎の設計法の変遷と重仮設の堅牢化

構造物の設計法は、機械化施工の発達と共に、我が国固有の地形・地質条件への適応が進み、また度重なる震災の教訓から耐震設計が浸透し、構造物に対する要求性能が高まった結果、旧来の「浅い基礎」(直接基礎または浅いケーソン基礎)から、より安定した「深い基礎」(杭基礎、鋼管矢板井筒基礎、オープン・ニューマチックケーソン、深礎杭等)へ転換され、さらに杭径、根入れ長等がサイズアップする結果、難工事化する傾向にある。
 
現在の重仮設工は、杭基礎を主とした「深い基礎」で設計がなされ、上述の崩壊性の互層を含む硬質地盤でも杭基礎の構造の仮橋、鋼管矢板の仮締切りが求められる。
 
そのため、例えば、戦前に建設された橋梁の補強工事や災害復旧工事等では、崩壊性の互層の硬質地盤となる玉石・転石を含む河床堆積層に対して「浅い基礎」で構築された橋梁等、目的物の工事に対し、杭基礎の仮橋と鋼管矢板の仮締切りを組み合わせた、いわば「深い基礎の重仮設工」により、非出水期施工における重仮設工程の工期短縮を図ることが求められ、結果として不可避的にその施工は難工事化する。
 
一方で「深い基礎」の堅牢性を有する鋼管矢板壁は、一度施工が完了すれば、基礎部拡幅の際の恒久存置のコンクリート型枠として、また洗堀対策構造として等、重仮設工が恒久構造物の一部として発展的に活用される事例もある(写真- 3)。
その施工方法として起用されたのが、次に紹介する拡径式ダウンザホールハンマであり、本稿では桟橋工、鋼管矢板工に最適化した形態を紹介する。

写真- 3  戦前の橋の浅い基礎外周を鋼管矢板で締切りその後恒久存置
写真- 3  戦前の橋の浅い基礎外周を鋼管矢板で締切りその後恒久存置

 
 

4. 拡径式ダウンザホールハンマの鋼管杭打設

前述した現在の重仮設工の重大な課題に対応しつつ、さらに今日の「労働時間短縮」と「早期竣工」という、高度な緊張関係を孕んで相反する要請を満たすためには、急速施工による工期短縮が求められる基礎工とその前段の重仮設においては、特に硬質地盤対応の適材適所の工法登用等の技術革新が必須と考える。
 
そこで本稿は、重仮設工の陥穽となる厄介な「崩壊性の互層の硬質地盤」に対し地山を崩壊させず杭を打ち込む高機動性重仮設工法である2工法を取り上げた。
 
この、LIBRA工法を支持する鋼管杭と、MJP工法の鋼管矢板では、上記の崩壊性の互層の硬質地盤に対応し、鋼管(本管)内にダウンザホールハンマを挿入し、拡径式ビットで鋼管径よりも僅かに大きい径で削孔しつつ、本管を孔内へ同時に打設する方法を用いる。
予定深度到達後は、ビットを逆回転して縮径した状態でハンマを管内から引き上げ、管内に中詰材を充填し完了となる(図- 1)。
その確実な互層の硬質地盤への打設能力に加え、施工装置をクレーン吊り下げ式に構成することで、従来の杭打ち機施工では困難な重機〜杭心間距離を自由に選ぶことができ、加えて掘削置換〜杭打ち込み、掘削〜杭建て込みという従来2工程の硬質地盤の杭打ち工程を1工程化し、仮橋や仮締切りの徹底した急速施工を実現した。

図-1 拡径式ダウンザホールハンマ
図-1 拡径式ダウンザホールハンマ

 
仮橋工のLIBRA工法では、これを利用し杭打設前に斜張設備で片持ち架設した上部工をガイドとして鋼管杭を打設することで、原地盤の斜面や河川の流水の介在に影響を受けず転石を含む河床堆積層と岩盤層のような崩壊性の互層となる硬質地盤にも、停滞なく杭が打てる仮橋工の急速施工を実現した(写真- 4)。

写真- 4  LIBRA工法による上部工先行架設後の杭打設作業状況
写真- 4  LIBRA工法による上部工先行架設後の杭打設作業状況

 
また、1工程化の実現は、MJP工法では掘削の進行に追随し十分な剛性の鋼管矢板を設計位置に打ち込むため、置換掘削に伴う周辺の地山への影響も軽減し、新設や維持補修の各種現場で基礎地盤の健全性確保にも寄与する。
とはいえ、JIS規格鋼管矢板のP- P継手は嵌合幅(本管外側への継手嵌合部の突出長)が大きく、抵抗となり硬質な互層地盤では、継手孔の先行掘削が必要となる。
結果、先行掘削と鋼管矢板打込みの2工程作業となり、河川、ダム、港湾の仮締切り工の際、先行削孔部の地盤改良やさらに打込み後に継手部への止水材注入が発生し、地盤の改変や施工が長期化する。
そこでMJP工法は、まずP-P継手の約30%にまで嵌合幅を縮小し小型化し、継手部の貫入抵抗を低減した(図- 2)。
 
この特殊形状継手(呼称:マイクロジョイント)と拡径式ダウンザホールハンマを組み合わせることにより、河床堆積層や岩盤層への直接打ち込みを可能にし、一般的な鋼管矢板の二工程施工の実現により工期短縮(工程数低減および日施工量増加)を実現した(図- 3)。
 
また、上記鋼管矢板継手部の止水については、製造工場においてマイクロジョイントの雌部に膨潤止水材を注入することで施工現場における止水注入作業を省略することができる。
 
MJP工法では、鋼管矢板φ 1,200mm以下、岩級区分B以下を対象に仮設の土留壁工や仮締切り工に適用できる。

図- 2  一般的な鋼管矢板の継手とマイクロジョイントの違い
図- 2  一般的な鋼管矢板の継手とマイクロジョイントの違い
図- 3  本技術による二工程の一工程化
図- 3  本技術による二工程の一工程化

 
 

5. 難工事区間の道路工事

我が国は一世紀超をかけて鉄道網、道路網が整備され、約14万本の鉄道橋と約6.9万本の道路橋で繋がれた今も、山々の険しさと成因の多様性ゆえ、緊急輸送道路としてリダンダンシーを確保するためのミッシングリンク解消や高規格道路、高速道路の4車線化等、難工事区の間施工が今後も続く。
 
特に深い峡谷を横断する高速道路の現場では、地形・地質条件が極めて複雑で工学的な標準化が困難であり、その特性は重仮設工のみならず橋梁工事やトンネル工事等、工事目的物となる本体工にも大きな影響を及ぼす。
とりわけ、長大区間を貫通するトンネル工事では、軟弱地盤や巨大岩塊、大量の湧水、地山の膨張・崩落等、事前調査では予測困難な地質条件のばらつきや悪化が工期に深刻な影響を与える。
 
このため高速道路工事では、トンネルと峡谷に架け渡される橋梁が同時並行的に進行する施工要請に応じ、工事用道路を構成する仮橋工が複数の橋梁とトンネル坑口を臨機応変に結び、最短工期で施工を完了できるよう計画される。
その結果、極めて複雑なネットワークを急速施工で構築する必要がある。
また、大規模事業計画ではトンネルずり等、大量の発生土が生じ、急峻な地形ゆえ仮置場も斜面に壁体ピットを構築して確保する対策を行っている。
 
このようなビッグサイトにおいては、重仮設工の活用が工程遵守の成否を左右する重要な要素であり、作業スペースや仮設構造物を先行整備することで基礎工事や本体工事の効率を高め、工期短縮と労働時間短縮の両立を支援することができる。
そして、その高度に錯綜する施工計画上の要請は上記の通り河床や崖錐層等、崩壊性の互層地盤上で生じるが、硬質地盤対応のLIBRA工法とMJP工法の高い機動力で達成を可能とした(写真- 1,5)。

写真- 5  LIBRA工法により複雑に構築された工事用道路
写真- 5  LIBRA工法により複雑に構築された工事用道路

 
 

6. 通年存置の長支間仮橋

全国の蛇行する急流河川には、今世紀に入り多発する大型台風や線状降水帯を伴う異常多雨で、かつて経験のない氾濫とそれに伴う多くの橋梁に流失リスクがある。
 
その復興には、通年存置の仮橋が必要となるため、この度、LIBRA工法を20mの長支間にまで拡張したL桟橋を開発した。
 
これにより10橋梁が流失した激甚災害の復興事業において、転石を多く含む河床堆積層上に100mの仮橋を約2か月の急速施工で非出水期中に完了させた(写真- 6,7)。
 
その結果、並行して進む他工区への資機材供給の動線を確保する工事用道路が整備されるとともに、大規模な被災により両岸に分断された生活圏を応急的に繋ぎ直すライフラインが提供され、復旧・復興事業の迅速化に大きく寄与することができたことは、重仮設工が単なる仮設構造物にとどまらず、災害復旧における基盤的役割を果たすことを示している。
 
すなわち、資機材供給の確保、生活圏の再接続、応急ライフラインの提供を同時に実現することで、復旧・復興事業全体の推進力を高める点に国内的な意義があると考えられ、激甚災害が頻発する我が国において、重仮設工の急速施工化と互層地盤への適応力の向上は、今後一層の充実を求められる復旧・復興事業の高度化に不可欠であることを、改めて示していると考える。

写真- 6  桟橋を挟み岩盤上の橋脚と転石が堆積する河床に落下した橋桁
写真- 6  桟橋を挟み岩盤上の橋脚と転石が
堆積する河床に落下した橋桁
写真- 7  豪雨で流失した橋梁の災害復旧工事
写真- 7  豪雨で流失した橋梁の災害復旧工事

 
 

7. ダムのリニューアル、機能追加工事

ダムのリニューアルや機能追加工事は、既設ダムを運用しながら改造が求められる高度な工事であり、新設ダムのように河川を自由に締め切って施工空間の確保ができず、利水・治水機能を維持したまま水位制約下で工事を進めるため、仮締切りや洪水転流計画が複雑化する。
また、洪水調節や下流への供給を継続しながら工程を組む必要があり、運用リスクと施工リスクを同時に扱う点も新設工事と大きく異なる。
既設構造物の不確実性や環境・社会的制約も加わるため、工事ごとに最適解が異なり、施工計画そのものが事業効果に直結するため、総合的な技術力とリスク管理能力が問われ、多くの場合高度技術提案型の入札となる。
 
その際、主要工種に先立って施工空間を確保する締切工や仮桟橋工といった重仮設工を、短期間で確実に構築することが工事全体の成立条件となる。
水位制約下では重仮設の完成が遅れれば主要工事に着手できず、洪水期までに安全な状態へ復帰できなければ堤体や下流域に重大なリスクを生じる。
また、既設堤体の改造には大型機械の進入路や作業構台が不可欠であり、これら重仮設の整備が施工性や安全性を左右する。
従って、ダムのリニューアルや機能追加工事では、ダム湖特有の数10mに及ぶ大水深、ダム下流の硬質岩盤層への根入れが求められる工事用道路や作業構台工、鋼管矢板を必要とする堅固な締切工等の、重仮設工の確実かつ急速な施工が工事の成否を決定付ける不可欠の要件となる。
このため水中施工や、硬質地盤・岩盤への打設を確実に遂行する急速施工方法として、LIBRA工法とMJP工法が、さまざまなダムのリニューアル工事、機能追加工事の際に、その難工事を完遂するために各施工業者独自に考案・開発した技術提案を確実に実現のための重仮設工として起用されている(写真- 8,9)。

写真- 8  ダム上流(ダム湖)内の大水深のLIBRA工法作業構台工
写真- 8  ダム上流(ダム湖)内の大水深の
LIBRA工法作業構台工
写真- 9  ダム下流のLIBRA工法作業構台とMJP工法鋼管矢板壁
写真- 9  ダム下流のLIBRA工法作業構台と
MJP工法鋼管矢板壁

 
 

おわりに

我が国は海と山河に細かく分断された約200の平野と約100の盆地から成り、その複雑な地形を貫く鉄道・道路ネットワークや治山治水、電源開発、港湾整備といった社会基盤が国土を支えている。
国民の防災意識は「行政依存」から「自助・共助」へと転換したものの、災害の激甚化と頻発化により電力・道路等、基盤インフラの早期復旧に対する行政への期待はむしろ高まっている。
復旧の遅れが生活や経済に直結する現代では、国土強靱化の長期的取組みと並行して、迅速な復旧力が強く求められている状況にある。
 
とりわけ、複雑な地形・地質条件下でインフラ復旧や土木事業を加速するには、機械作業空間を確保する重仮設工の急速施工化が極めて重要であり、多様な地盤に適応する施工技術の確立こそが、災害復旧から広域復興、さらには国土強靱化を支える核心となる。
 
今日まで上記2工法の技術的価値にご理解を賜り実に多様な用途にご活用頂いた皆様に感謝を申し上げると共に、さらなる難工事への挑戦とその確実な竣工のため、本稿が「深い基礎」の堅牢性を備えた硬質地盤対応の重仮設工の充実への共通理解の一助となることを祈念しております。
 
 
 

株式会社 横山基礎工事

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2026年3月号


積算資料公表価格版2026年3月号

最終更新日:2026-02-20

 

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