ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 防災減災・国土強靭化 > “次世代仮設トイレ”の社会実装を目指して 日野屋×トヨタ自動車 共同実証実験レポート

はじめに

近年、災害時のトイレ問題は避難生活や健康維持に直結する重要なテーマとして関心が高まっています。
日野屋株式会社は、仮設の「ミライ」を見つめ、誰もが快適に過ごせる環境づくりを目指す取組み「ミライカセツ」を掲げ、平常時だけでなく災害時にも利用者が安心して使える仮設トイレの在り方を追求しています。
 
その一環として、弊社はトヨタ自動車株式会社(以下、「トヨタ自動車」とする。)と協力し、トヨタ自動車が開発した移動型バリアフリートイレトレーラー「モバイルトイレ」の実際のレンタル運用を想定した共同実証実験を行いました(写真- 1)。
本稿では、その取組み内容と得られた知見についてご紹介します。

写真-1 トヨタ自動車製モバイルトイレ
写真-1 トヨタ自動車製モバイルトイレ

 
 

1. モバイルトイレとは

モバイルトイレとは「行きたいところに、私たちが使えるトイレが来てほしい。」という車椅子ユーザーの声から生まれた、普通免許で牽引可能なバリアフリートイレです。
コンパクトながら、室内には車椅子が360度回転できるスペースを確保し、収納式の多目的シートや、傾斜角5度といった緩やかなスロープなど多様な設備を備えており、全ての利用者が快適に使用できます(写真- 2)。
野外イベント等の平常時の利用のほか、災害時におけるトイレ不足やバリアフリー対応といった課題への対応も期待されているトイレです。

写真-2 モバイルトイレ設備
写真-2 モバイルトイレ設備

 
 

2. 共同実証実験の概要

本実証実験は、2025年6月中旬から11月末までの期間に、移動型バリアフリートイレのレンタル事業としての社会実装を見据え、実際の運用における課題や有効性を検証することを目的として、実施したものです。
 
トヨタ自動車が開発したモバイルトイレに、弊社が長年培ってきた仮設トイレのレンタル運用ノウハウを組み合わせることで、設置・運用面の実用性や、利用シーンごとの適合性についての検証を行いました。
なお、本実証実験では建設現場ではなく、実際の使用環境を想定した複数の場所での検証を行なっています。
 
 

3. 実証実験の結果・得られた知見

3-1 輸送および設営について

モバイルトイレは、現地での設営・撤去を前提とした構造になっており、スロープを含む一部設備は組立・分解式となっています。
 
牽引による輸送は、通常の道路環境において支障なく行うことができ、事前に走行ルートや進入経路を把握しておくことで、現地への搬入を円滑に行うことができました。
 
次に設営作業は、スロープ部分のパーツの構造がわかりやすく、2〜3回程度の設営経験を積むことで、マニュアルを確認せずに作業が可能となりました。
部材の収納性や取り出しやすさに配慮されており、現場での作業における扱いやすさが感じられる設計となっています。
また、勾配の有無など設置場所の状況を事前に確認しておくことで、よりスムーズな設営になるため、輸送を含む運用計画の策定を推奨します。
 

3-2 運用面について

運用面では、給排水を含めた管理作業についての検証を行いました(写真- 3)。
給排水は、位置や動線を事前に確認し、運用計画に反映することで、現場環境に応じた柔軟な設置が可能で、安定した運用に繋げやすい点が特徴といえます。

写真-3 ホースと排水場所の接続
写真-3 ホースと排水場所の接続

 
メンテナンス面では、室内に排水用の穴が設けられているため、水を使用した清掃がしやすく、日常的な清掃作業の負担軽減につながる点が評価できます。
 

3-3 利用シーンと導入先の傾向

実証実験期間中、モバイルトイレはスポーツイベントや福祉イベントなど屋外、かつ多様な来場者が集まる会場に設置されました。
これらの現場では、車椅子ユーザーや介助を必要とする方、ベビーカーを利用する家族連れ、高齢者など従来の仮設トイレでは利用が難しい、あるいは利用を躊躇する来場者が一定数存在していました(写真- 4)。
イベント主催者や施設運営者からは、「設置の自由度が高いこと」「必要な期間・場所に応じて導入できること」といった点が評価され、既存の常設トイレや一般的な仮設トイレを補完する手段として有効であるという意見が得られました。
これらの結果から、モバイルトイレは多様な利用者の配慮が求められる屋外イベントや公共の施設のバリアフリー対応としての需要が見込まれると考えます。

写真-4 実際にモバイルトイレを使う利用者の様子
写真-4 実際にモバイルトイレを使う利用者の様子

 

3-4 運用にあたっての総括

本実証実験を通して、モバイルトイレの性能を最大限引き出すためには、現場環境に応じた事前の運用計画の策定が重要であることが明らかになりました。
適切な輸送計画と設置場所の選定をすることによって、現場到着から稼働までの迅速な設営が可能となります。
こうした対応とモバイルトイレの機動性を掛け合わせることで、多様な利用者が集まる現場において、実用性の高い次世代の仮設トイレとして機能する可能性が示されました。
 
 

4. トイレ利用出展先の会場の様子・利用者の反応

実証実験期間での設置場所のうち、2か所を例にご紹介します。
 

SUPER BIKE RACE in KYUSHU 2025 MFJ
全日本ロードレース選手権シリーズ第5戦
会場:オートポリス
主催:一般財団法人日本モーターサイクルスポーツ協会、株式会社オートポリス
設置期間:2025/9/13 12:00 〜9/14 16:00

 
本大会は全国から多くの来場者が集まる大規模なモータスポーツイベントで、1日目終了後のメインゲート前で車中泊をされる来場者を主な対象とし、夜間帯の利便性向上を目的に設置を行いました。
設備トラブルや安全面での問題は発生せず、翌朝まで安定した運用ができました(写真- 5)。
 
また、会場運営スタッフからは「夜間対応としてありがたい取組み」といった好意的な評価をいただき、運営側からの満足度は高いものとなりました。

写真-5 オートポリスへの設置
写真-5 オートポリスへの設置

 

ドリームディアットザズー
会場:和歌山アドベンチャーランド
主催:和歌山ドリディ実行委員会
依 頼 元:株式会社アワーズ
設置期間:2025/11/5 10:00 〜17:00

 
本イベントは、障がいのある子どもたちとそのご家族を動物園・水族館に招待し、気兼ねなく楽しんでもらう国際的なプログラムで、弊社も会場内にモバイルトイレを設置しました。
当日は実際の利用者を対象にアンケートを実施し、利用者からは「広い」「ベッドがあるのが良い」「スロープがあってスムーズに入れる」といった設備面に関する評価が多く、バリアフリー設計に対する満足度の高さがうかがえました。
 
また、「モバイルトイレの普及が進むと良い」「外出先や避難所、イベント会場などさまざまな場所に設置してほしい」といった意見もあり、実生活の中での利用拡大を期待する声が多く寄せられました。
 
 

おわりに

本実証実験を通して、モバイルトイレは屋外イベント等の平常時利用において、多様な利用者へ安心と快適を提供できるトイレであると確認されました。
こうした平常時の運用実績や知見を積み重ねて行くことは、将来的に防災分野での活用を検討する上でも重要な基盤になると考えられます。
 
今後、このモバイルトイレが社会に行き渡るためには、さらなる普及に向けた整備が求められます。
量産体制によるコストダウンや国・自治体による積極的な導入支援が進むことで、多くの現場や避難所での活用が期待されます。
 
弊社はこれまで、仮設という分野で社会の声に耳を傾け続けてまいりました。
今回のトヨタ自動車との取組みも、次世代の仮設の在り方を切り拓くための重要な一歩です。
「より良い環境づくりを通して社会に奉仕する」という社是の下、弊社はこれからも、社会に求められる仮設の価値の創出に取り組んでまいります(写真- 6)。

写真-6  弊社オリジナルキャラクター「ひのまるくん・ひよりちゃん」
写真-6  弊社オリジナルキャラクター「ひのまるくん・ひよりちゃん」

 
 
 

日野屋株式会社

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2026年3月号


積算資料公表価格版2026年3月号

最終更新日:2026-02-20

 

同じカテゴリーの新着記事

最新の記事5件

カテゴリー一覧

新製品・業界ニュース

人気の電子カタログ

新着電子カタログ

TOP