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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 暴風雪頻発地域にみる防雪柵の問題点と課題

 

1. はじめに

防雪柵は,大きく「吹きだめ柵」,「吹き払い柵」,「吹き止め柵」の3種類に分けられる。我が国においては,1880年代に鉄道の吹雪対策として防雪柵が使われるようになり,道路では1961年に初めて防雪柵が試験導入された。初期の防雪柵は吹きだめ柵であったが,用地の制約から1967年に吹き払い柵が開発され,1988年には多車線道路に対応する柵として吹き止め柵の設置が始まった。1)
 
防雪柵には,多くの調査研究や経験により改良されてきた長い歴史があるが,近年,暴風雪の頻発した北海道北東部において現地調査を実施したところ,期待した効果が発揮できていない防雪柵や,防雪能力を超えた防雪柵が多数見つかった。これは,見過ごされていた防雪柵の問題点が,暴風雪が頻発し吹雪量がかなり大きい条件下で顕在化したものと考えられた。本稿では,現地での調査結果を基に,防雪柵が抱える問題点をあらためて整理し,今後の課題について検討する。
 
 

2. 吹き払い柵の設置環境の問題

吹き払い柵は,柵で風を加速させて路上の雪を吹き払う施設であることから,雪を吹き払う風速が確保できなければ,機能しない。
 
例えば,道路風上側の積雪深が大きくなり,柵の下部空間が塞がれると,柵風下の路上の風速は弱くなり,吹き払い能力は低下する(図− 1)。
 



 
柵の風上側が盛土になっている場合も,積雪深の増加と同様に,吹き払い能力は下がる。樹木や建物等,風上側の風の障害物は風の流れを乱し,柵にぶつかる風速を弱めるので,吹き払い機能を低下させる。
 
また,道路の風下側に除雪により大きな雪堤ができたり,樹林等の風の障害物があると,路面を流れてきた飛雪が止められ,路上に雪が舞い上がり視程障害を発生させるほか,路上に吹きだまりを形成する(図− 2)。
 



 
金子ほか(2013)2)の現地観測によると,積雪深が120cm程度で,路上の風速は基準点の風速の8割程度まで低下する。佐藤ほか(2012)3)は,縮尺1/20の模型を用いた風洞実験結果から,風上の積雪深の増加に伴う柵に吹きつける風量の低下により,路面近傍の風速は積雪深の増加とともに急速に低下し,特に積雪深が柵高の1/2以上になると,吹き払い効果が顕著に小さくなることを報告している。
 
吹き払い柵の風上側の障害物の影響事例を,写真− 1,写真− 2に示す。
 



 
写真− 1では,吹き払い区間の特定箇所に巨大な吹きだまりが形成されているが,この区間の風上には,伐採された樹木が放置され,風の障害となっていた。写真− 2は,風上側の防風林に沿って流れてきた吹雪流が吹き払い柵を埋め,その結果,ピンポイントで大きな吹きだまりが形成された事例である。
 
これらの事例以外でも,吹き払い柵の風上側に落葉樹の潅木(かんぼく)がある所などで,柵風下側に吹きだまりの形成されている箇所が複数見られた。写真− 3は,柵風上側の地盤が部分的に高くなっている区間で,柵に当たる風が弱くなり,柵風下側の風速が低下した結果(図− 1),柵が雪に埋まるとともに,路上に吹きだまりが形成されたと推測された箇所の状況である。
 



 
吹雪量があまり大きくない時は見過ごされる箇所でも,規模の大きい暴風雪が発生すると,風上側のわずかな風の抵抗物や高い地盤などが風速の低下をもたらし,吹き払い柵の吹き払い機能を低下させ,大きな障害になる可能性のあることに,あらためて留意する必要がある。
 
吹き払い柵の吹き払い効果は,吹雪時の風向にも大きく左右される。写真− 4に見られるように,吹雪時の主風向と柵がほぼ直交している場合は2車線がほぼ吹き払われているが,主風向との角度が小さくなると吹き払い域は狭くなり,1車線の吹き払いもままならなくなる。
 



 
写真− 5は,吹き払い柵設置区間の風下側に樹林帯が広がっている事例である。樹林が路面上を流れてきた吹雪を止めるため,吹雪は空中に舞い上がり,路上に視程障害を発生させる。
 



 
吹き払い区間での風下側の樹林や雪堤などの風の障害物は,路上の視程障害を発生させるだけでなく,吹きだまりの要因にもなる(図− 2)。道路風下端に形成された吹きだまりは次第に風上側に向けて発達し,暴風雪が長く継続すると,路上に大きな雪丘が形成される。
 
吹き払い柵は設置環境に大きく影響を受ける防雪施設である。北海道北東部の暴風雪頻発年での調査においても,機能していない吹き払い柵が多く見つかった。吹き払い柵の設置環境条件を図−3 に整理した。
 



 
吹き払い柵に必要とされる基本条件は,「吹雪発生の臨界風速を超える風速があること」,「柵の機能を阻害するレベルの吹雪量または降雪量がないこと」の2点である。この2つの条件が満たされないと,吹き払い柵は期待される防雪効果を発揮できない。柵風下側においては,雪を路外に吹き流すことが必要なため,風を弱めたり,吹き払われた雪を止めるような障害物を極力なくす必要がある。
 
吹雪量と降雪量は,その年の冬の気象によって状況は異なる。そのため,冬期間を通して吹き払い機能が持続する場合もあるし,初冬期,あるいは暴風雪が頻発する前まで効果的に働いていた吹き払い機能が,柵周辺の積雪深の増加や柵の下部空間が雪に埋まることによって,冬の途中でその働きを失う場合もある。
 
 

3. 防雪柵の吹きだまり能力の限界

写真− 6は,北海道北東部で暴風雪が頻発した2014年度冬期の吹き払い柵区間の状況である。
 



 
冬が進むにつれて,柵の風上側,風下側に柵高近い高さの積雪(吹きだまり)が形成され,両切土のような状態となった結果,暴風雪に見舞われるたびに,道路上に巨大な吹きだまりが形成されたことが報告されている。
 
写真− 7は,吹き払い柵自体が路上の吹きだまりの原因と考えられた事例である。
 



 
道路風下側(右側)をみると,吹き払い柵のない区間(写真手前)の風下側はガードレールの上部が見えており,顕著な吹きだまりは形成されていない。一方,写真奥の吹き払い柵が設置されている区間では,柵の風上,風下とも大きな吹きだまりが形成されており,暴風雪時には路上も雪で埋まったものと推察される。
 
吹き払い柵は,見方によっては下部空間を大きく開けた吹きだめ柵とも言える4)。通常,柵で吹き払われた雪は,柵から離れた位置になだらかな形状で吹きだまる。しかし,冬期間のある時期から,風上あるいは風下の積雪量や吹きだまり量が多くなると,吹き払い機能が徐々に損なわれ,吹きだめ柵や吹き止め柵のように機能するため,路上に大きな吹きだまりを形成するようになる。
 
写真− 8は,吹き止め柵の機能がほぼ完全に失われた事例である。通常であれば,柵高5mの吹き止め柵の防雪容量を吹きだまりが上回ることは少ないが,2013・2014年度冬期には吹き止め柵の防雪容量を超えたと推測される箇所が複数確認された。
 



 
 

4. 防雪柵の今後の課題

暴風雪が頻発した際の現地調査からから浮かび上がった防雪柵の問題点は,以下の2点に集約される。
 
1) 防雪柵(特に,吹き払い柵)の設置環境による機能低下
2) 極端に吹雪量が大きい気象条件下での防雪柵の機能喪失
 
設置環境による機能低下は,特に吹き払い柵に多く見られた。吹き払い柵は,わずかな風の障害物や小さな地形変化に大きく影響を受ける。柵設置時の環境条件が,その後の環境変化(樹木の生長,土地の改変,構造物等)により,満たされなくなっているケースも相当数あるものと考えられる。柵の設置環境の影響は暴風雪年に顕著に現れるが,必要な条件が満たされていないと,通常の冬であっても柵の効果が低下することに変わりはない。柵の機能を十分発揮させるために,設置環境条件のフォローや再チェックが不可欠と言える。
 
吹き払い柵,吹き止め柵とも,防雪能力を超えると,柵の風上および道路の風下に大きな堆雪(積雪・吹きだまり)が形成されるため,この状態で暴風雪が継続すると,柵自体が風の障害物となり,路上に大規模な吹きだまりを形成させる。暴風雪の頻発により極端な吹雪量に見舞われる地域では,特に,路側の吹き払い柵,吹き止め柵について,柵の設置の可否,柵の種類変更など,防雪柵が本来の効果を発揮し得ているかどうかを改めて検証する必要がある。
 
また,近年,高性能防雪柵として様々な工夫を加えた防雪柵が開発されているが,空力学的な理論面の検討のほか,十分な実物試験や調査を行い,費用対効果の観点も含めて,客観的かつ定量的評価を実施する必要があろう。
 
防雪柵は,種類によってそれぞれ活用する上での制限があるため(図− 4)、それぞれのタイプの防雪柵の特性に配慮した整備が必要である。柵の能力を超える吹雪量に対応させるためには,柵を風上側に複数列設置して,段階に分けて吹雪量をコントロールするのも1つの方法と言える。
 



 
暴風雪が頻発する地域では,例えば,吹きだめ柵で一旦吹雪を止め,吹きだめ柵が埋まった後は路側の吹き止め柵で止めるなど,タイプの異なる柵を併用して,トータルとして吹雪量をコントロールするような防雪対策を,今後,検討すべきと考える。
 
参考文献
1) 道路吹雪対策マニュアル,2011:土木研究所寒地土木研究所.
2) 金子ほか,2013:吹き払い柵の下部間隙閉塞率と防雪機能.
  第29回寒地技術シンポジウム,241-244.
3) 佐藤ほか,2012:風上の積雪(地形)が吹き払い式防雪柵の機能に与える影響について.
  第28回寒地技術シンポジウム,93-96.
4) 竹内政夫,2003:吹雪とその対策(3),防雪柵の技術史,雪氷,65,271-278.
 
 

一般社団法人 北海道開発技術センター 金田 安弘

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2017年07月号



 

 

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