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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 高知自動車道 立川橋の被災状況と早期復旧に向けた取り組みについて

1 はじめに

平成30年6月末,台風第7号や梅雨前線の影響によって,西日本を中心に全国的に広い範囲で記録的な豪雨となった。この影響で,各地で河川の氾濫や,浸水被害,土砂災害等が発生し,甚大な災害となった。
 
高知自動車道 新宮IC〜大豊IC間においても,笹ヶ峰南観測所では,7月3日から7月8日までの総降水量が1,352mm,時間最大雨量88.5mmとなる豪雨に見舞われた。
 
この豪雨の影響により7月7日に高知県長岡郡大豊町上名の山腹斜面の土砂が崩落し,高知自動車道 新宮IC〜大豊IC間にある立川橋(たぢかわはし)(上り線:L=64m)の橋梁上部工が流出する事象が発生した(写真−1)。
 
本報告は,その災害発生から復旧に向けた施工状況について報告するものである。
 

【写真−1 被災状況(平成30年7月7日撮影)】




 

2 被災状況について

冒頭で述べたように,高知自動車道 新宮IC〜大豊IC間の上り線において,区域外からの土砂崩落により立川橋の橋梁上部工が流出する被害を受けた。
 
ただし,高速道路は,降雨基準を超過したため通行止め規制を行っており,幸いにも高速道路を利用されるお客さまの被害は無かった。
 
区域外のり面被害については,のり面上部から下流側までの高さ約320m,幅90mの範囲で崩落し,崩落土砂量は約4万5,000㎥の規模であった。崩落土砂は橋梁上部工とともに,一級河川立川川に流出した(写真−2,3)。
 

【写真−2 立川橋(上り線)流出状況】


 

【写真−3 流出した立川橋




 
 

3 早期の交通確保に向けて

橋梁上部工の流出によって通行止めは長期間を要すると判断し,下り線を利用した対面交通による早期の交通開放を検討した(図−1)。
 
対面交通運用に向け,上下線の擦り付け箇所を設置し,ポストコーンを用いた簡易中分工の実施,中央路面標示について,白色破線の路面標示から黄色直線の路面標示へ変更などの施工を行った。
 
上記対策により,被災から約1週間後の7月13日11時に通行止めを解除することができた(写真−4)。
 

【図−1 対面交通運用検討案】


 

【写真−4 擦り付け箇所,ポストコーン等設置状況】




 

4 現地調査結果について

本復旧の検討に向け,崩落斜面の調査と,橋梁上部工の流出原因の解明,残存した橋梁下部工の健全性調査等の現地調査を行った。
 

(1)崩落斜面状況

崩落斜面については,未崩壊の隣接区域を含む広範囲の詳細踏査,ボーリング調査により,崩落箇所及び,周辺斜面(北沢部,中斜面,南沢部)の状況把握を行った(写真−5)。調査結果は以下のとおりである。
 

【写真−5 山腹斜面状況】



1)北沢部
崩落に至らなかった不安定土塊が残存するが,不安定土塊は撤去予定である。不安定土塊の撤去後の崩積土は,1〜3m程度と薄く,流出しても高速道路への影響は少ないと考えられる。
 
 
2)中斜面
山体の上り線立川トンネルにも変状が無く,下り線コンクリートブロック積みに設置した拡散レーザー変位計での計測においても変位が確認されず,現状のままで安定していると考えられる。
 
 
3)南沢部
最も被災した箇所で斜面に残った崩積土は約2万㎥と推定される。崩積土を撤去しのり面保護工を行うことで南沢部箇所の上方を含め更なる斜面崩落の危険性は低いと考えられる。
 
ただし,今回被災しなかった南沢部の近隣のり面については深さ10m程度の比較的厚い崩積土が堆積しており,土砂崩落による除荷により,今後のり面の不安定化が懸念される。
 

(2)橋梁上部工の流出原因について

同様な被災を防止するために,橋梁上部工が流出した原因を現地状況から推定した。
 

流出した上部工の大部分については,崩落斜面下部の立川川に埋没していた。立川橋のA1-P1の一部は下り線の千本川橋P4橋脚付近で埋もれた状態で発見された(写真−6)。
 
また,隣接するトンネル坑口が土砂で埋まっていたことから,立川橋に堆積した土砂は5m以上の高さと想定される(写真−7)。
 
以上のことから,南沢部の崩落した土砂が立川橋に堆積し,土砂荷重によりA1-P1間の上部工が破壊されるとともに,土砂の水平力によりP1-A2間の上部工が押し流されたと推定される(図−2)。
 

【写真−6 千本川橋P4橋脚付近で発見された立川橋の一部】

【写真−7 トンネル坑口部土砂堆積状況】



【図−2 上部工 破壊〜落下までのイメージ図】



(3)橋梁下部工の損傷状況について

流出した上部工は損壊が激しく,再利用はできなかった。しかし下部工については,支承の破壊,局所的な損傷は確認されたものの,橋台,橋脚の躯体に健全性が疑われるようなずれや傾斜,ひび割れは確認されなかった(写真−8)。
 
また目視困難な基礎部(深礎杭)については,弾性波調査を行った。結果,全ての深礎杭の先端部で反射波が得られており,大きな損傷がないことが確認された。
 
よって,残存した橋台,橋脚,基礎部の健全性は問題がないと考えられ,再利用可能であった。
 

【写真−8 残存下部工状況】




 

5 本復旧工の検討について

本復旧工事の実施にあたり,「高知自動車道 災害復旧に関する技術検討委員会」を設置し,構造物の健全性評価および復旧,土砂崩落箇所の安定性,対策工法の審議を行った。平成30年8月10日の第1回目審議を皮切りに,計3回の審議を行った(写真−9)。
 
現地調査結果を踏まえ,技術検討委員会にて本復旧対策工法に関する審議を重ね,以下のとおり対策方針の決定を行った。
 

【写真−9 技術検討会開催状況】



【対策方針】

崩落斜面について
降雨で流出のおそれのある崩積土の撤去
崩落箇所ののり面保護対策
不安定化が懸念される近接斜面への対策
 
橋梁復旧について
残存する下部工を活用した早期復旧が可能な上部工形式の選定
 
高速道路の更なる安全対策について
今後,近隣の山腹斜面の崩落土砂が崩落した場合でも橋梁上部工に堆積しないような追加対策
 
 

(1)崩落斜面対策について

高速道路区域外の山腹斜面の対策であることから,本来の治山事業者である高知県と協議を行い,のり面保護として,簡易法枠工やコンクリート吹付工等を,近接斜面等の安定化を図るため水抜きボーリング等を行った(写真−10)。
 
なお,不安定な山腹での作業や,直下での本線構造物復旧を同時施工で復旧する必要があり,施工の安全確保や早期の復旧を実現するため,当社が高知県より事業を受託し施工を行った。
 

【写真−10 崩落斜面対策状況(令和元年9月13日撮影)】



(2)橋梁復旧について

上部工形式として,以下の3案について比較検討を行った。
案1.原型復旧案(PRC3主版桁橋):約15カ月
案2.プレキャストプレテンホロー桁橋:約11.5カ月
案3.鋼多主鈑桁橋:約19カ月
 
検討の結果,再設計の期間が必要になるものの,下部工が補修程度で済む施工性の良さと,桁の工場製作による工程短縮による全体工程の短縮が可能なプレキャストプレテンホロー桁橋の案2を採用した。
 
当該現場では,中間支点の支承上にプレキャスト横梁を設置し,それを介して単純桁状態で架設したプレキャスト主桁を連結するSCBR(SmartConnected Bridge)工法を採用した。
 
この工法では,支承は架設時および連結後ともに1点支承での支持が可能である。そのため,立川橋の復旧にあたっては下部工の構造を変えることなくプレキャスト桁を架設することが可能となった(図−3)。
 
またプレキャスト桁にすることで,桁を工場で製作している間に損傷した下部工の復旧作業を行うことができ,現場打ち施工と比較して工期短縮が可能となった。
 
上部工の架設方法についてだが,P2-A1間においては架設桁を使用して架設を行い(写真−11),更なる工期短縮として,クレーンのブーム作業範囲内であるA2-P2間は,クレーン架設にて施工を行った。
 

【図−3 プレキャストプレテンホロー桁橋(SCBR工法)】

【写真−11 架設桁による上部工架設状況】


(3)更なる安全対策について

仮に未崩壊の近接斜面が崩落した場合においても,橋梁上に崩落土砂が堆積して上部工を破壊させないよう,崩落土砂の流向を変えるための流向制御工(写真−12)を検討した。地形等のデータにより流向シミュレーションを行うことで,流向制御工により崩落土砂の流向を制御し,高速道路に影響がないことを確認した。
 

【写真−12 流向制御工設置状況】




 

6 おわりに

4車線化運用に向けて橋梁上部工の架設,更なる安全対策及び舗装・施設工事が完了し,対面通行をしていた下り線のポストコーン,仮設標識・情報板等の撤去,路面標示の白色線の施工等を行い,目標通り夏休み前までに通行止めを解除し,令和元年7月8日に4車化運用をすることができた(写真−13)。
 
今後は治山事業者である高知県との協議を踏まえ,のり面対策を引き続き進めていく計画である。
 

【写真−13 復旧後の立川橋】



 
 

西日本高速道路株式会社 四国支社 建設・改築事業部

 
 
 
【出典】


積算資料2019年11月号



 

 

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