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はじめに

この価格調査は、「積算資料」等で掲載していない緑化樹木、グラウンドカバープランツ(GCP)のうち、需要者ニーズの高いものについて情報提供し、需給の円滑化に資することをねらいとしている。
 
実施主体は、緑化樹木調達難易度判定会議((一財)日本緑化センター・(一社)日本植木協会)で、全国の調査モニターによる市場価格調査結果をもとに、判定会議による確認に基づき行うものである。
 
調査対象は、緑化樹木、GCPおよび庭園樹木とし、樹種の内訳は、表- 1 に示すとおりである(調査結果の詳細は後掲「掲載価格の見方」を参照)。

【表- 1 調査対象樹種の内訳】
【表- 1 調査対象樹種の内訳】
【表- 2  別掲の価格調査結果に示す調達難易度
(本誌の造園樹木と同じ5 段階評価による)】
【表- 2  別掲の価格調査結果に示す調達難易度(本誌の造園樹木と同じ5 段階評価による)】

 
 

緑化樹木をめぐる最近の動き

近年の街路樹の植栽状況について「わが国の街路樹」(国土交通省 国土技術政策総合研究所)を参考にしながら、それらの街路樹に使用されている高木の供給状況を検討する。
 

(1)街路樹に使用される高木植栽の状況

全国の街路樹に使用されている高木植栽の推移をみると、総樹種数は1992年以降、おおむね500種程度で推移している(図- 1)。
樹種数の増減は、樹種区分(2種以上をまとめて類で表記する等)に変化があることによる。

【図- 1 街路樹高木植栽の樹種数と本数の推移】
【図- 1 街路樹高木植栽の樹種数と本数の推移】

 
形態別の植栽本数を直近の2022年調査でみると、落葉広葉樹が全体の66%(413万本)を占め、常緑広葉樹は23%(146万本)、針葉樹は8%(常緑・落葉を合わせ50万本)となっている(図- 2)。
高木樹種数を同じく2022年調査により本数規 模別にみると、植栽実績5,000本未満が461樹種と8割以上(82%)を占め圧倒的に多い。
次いで 1万本以上5万本未満が比較的多く(44樹種)、最上位の50万本以上および第2位の30万本以上50万本未満はどちらも2樹種となる(図- 3)。

【図- 2 街路樹の形態別植栽本数(2022年)】
【図- 2 街路樹の形態別植栽本数(2022年)】
【図- 3 街路樹高木の植栽本数規模別の樹種数(2022年)
【図- 3 街路樹高木の植栽本数規模別の樹種数(2022年)

 
一方、累積の植栽本数は1997年の調査以降、600万本台で推移している(図- 1)。
 
2022年調査の上位50樹種について2017年調査からの増減率を計算してみる(表- 3)。

【表- 3 街路樹高木植栽本数の上位50 樹種 (2022年/2017年)】
【表- 3 街路樹高木植栽本数の上位50 樹種 (2022年/2017 年)】

 
増加している(100%以上)のは9樹種、残り41樹種は減少している(100%未満)。
さらに、対象を上位150樹種まで拡大して検討すると、増加しているのは31樹種、減少しているのは119樹種となっている(図- 4)。

【図- 4 街路樹の高木植栽本数上位150種の増減率 (2022 年/2017年)】
【図- 4 街路樹の高木植栽本数上位150種の増減率 (2022年/2017年)】

 
植栽本数の減少理由は、樹木の枯損、台風による倒木、あるいは、腐朽病害による倒木の危険といった何らかの理由に基づく伐採などが想定される。
 
「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」(国土交通省 国土技術政策総合研究所)を参考にすると、 2017~18年にかけて、全国で9,367本の街路樹の倒木があり、そのうち台風による倒木は8,578本(92%)と大多数を占め、次いで強風によるものが462本(5%)などの報告がなされている。
 
「街路樹の倒木に関する全国調査結果について」(国土交通省道路局)を参考にすると、2018~22年に発生した倒木総本数は、15万9,383本となり、内訳は強風等の被害1万8,370本(11%)、強風以外の要因7,703本(5%)、そして、点検結果に基づく伐採が13万3,310本(84%)と8割を超える。
 
街路樹植栽本数の経年変化は台風などの気象害に加え、近年では倒木回避のための伐採による減少が主たる要因と考えられる。
 

(2)街路樹に使用される高木植栽の供給状況

「緑化樹木の供給可能量調査」から、高木植栽の供給可能本数の推移を見ると、2017年以降は400万本台、2021年から300万本台へ減少傾向を示しており、2021年の形態別内訳を見ると、常緑広葉樹が48%、落葉広葉樹31%、針葉樹21%となる(図- 5)。

【図- 5 高木形態別供給可能本数の推移】
【図- 5 高木形態別供給可能本数の推移】

 
表- 3 に示した街路樹植栽本数の上位50種のうち、供給可能量調査の対象樹種を抽出し、それらの供給状況を検討する。
 
一般的に街路樹に設計される高木の形状寸法は幹周0.15~0.18m 程度となるが、ここでは便宜上、各樹種の総数により比較する。
50樹種のうち誌面の都合で上位25樹種までの2022年と2017年の数量比較では、増加しているのは13樹種、減少しているのは12樹種となっている(表- 4)。

【表-4 高木供給可能本数の推移(2022年/2017年)】
【表-4 高木供給可能本数の推移(2022年/2017年)】

 
街路樹に植栽されている上位樹種は一定の需要が維持されており、それに見合った供給力も伴っている傾向がうかがえる。
 
 

トピックス:トイレットペーパーに置き換わる植物の葉

世界ではトイレットペーパーを製造するために、毎年7億本を超える樹木が伐採されている。
ケニアでは植物の葉を代用する習慣が根付きつつある。
森林破壊を止める植物と共生する生活の豊かさを紹介する。
 
 

Plectranthus barbatus はアフリカ産ティッシュ1)

ケニア東部のMeruという町の住人Mutembeiは、シソ科のPlectranthus barbatusという植物を育てている。
食用ではなく、トイレットペーパーとして使うためだ。
彼は祖父からこの植物について学び、1985年以来ずっと使い続けている。
 
P.barbatusは高さ2m程に成長する葉の多い植物で、葉の大きさは製造されている正方形トイレットペーパーとほぼ同じとなり、ミントやレモンの香りがする。
葉は微細な毛で覆われ、柔らかい質感を持つ。
この植物は温かい熱帯の気温と半日陰で旺盛に育ち、アフリカ全土で広く生育し、時には地所の境界を定めるために植えられる。
 
Mutembeiは、「この植物は長い間アフリカ製のティッシュとして、私の家では皆が植物を使い、全て葉が摘み取られた時にだけ、現代的なトイレットロールを買う」と言う。
まさに、P.barbatusはケニアでトイレットペーパーの購入に代替する費用対効果の高い存在といえる。
 
多くの日用品と同様に、トイレットペーパーの価格はアフリカ全土で値上がりしており、生産に必須の木材パルプなど輸入原料の高騰が原因となる。
ケニア製造業者協会によると、現在、ケニアで原料費用はティッシュ製品原価の70~80%を占めている。

【写真- 1 Plectranthus barbatus の葉】
【写真- 1 Plectranthus barbatusの葉】

 
 

トイレットペーパー製造産業の現状

バージンパルプ(新たに木材から製造されたパルプ)から作られるトイレットペーパーが今や世界の産業界を支配している。
アメリカのノースカロライナ州立大学の研究者らによると、典型的なトイレットペーパーは広葉樹の短繊維70~80%と針葉樹の長繊維20~30%で製造される、と指摘する1)
 
オーストラリアの環境影響コンサルタント Edgeによれば、毎年、7億本を超える健全な樹木がトイレットペーパー製造のために伐採され、1日当たりに換算すると190万本を上回る。
これは消費されるすべてのトイレットペーパーがバージンパルプを使用して製造されていると仮定している。
主な国別にみると、アメリカ人は毎日約17万8,000本、1年に6,500万本の樹木を伐採する必要があり、オーストラリア人は1日当たり8,774本、年間約320万本の伐採を要する。
あるいは、イギリスは1日当たり3万3,330本を伐採し、総延長2億2,500万kmを上回るトイレットペーパーを消費する。
イギリスが使用する年間トイレットペーパーの長さは、実に火星まで十分に到達する距離に匹敵する2)

イギリスのノーザンブリア大学の研究者らによると、紙パルプ産業は原木(virgin wood)の世界最大の消費者であり、過去40年間に世界中の紙消費量は400%上昇し、収穫された樹木の約35%は紙製造に使用され、結果として森林破壊の増加につながっているという3)
 
 

Plectranthus属の魅力

南アフリカ共和国(以下、南アフリカ)のUKZN大学の教授らの論文をもとに、Plectranthus(プレクトランサス属)について紹介する4)
 
Plectranthus は南部アフリカ(アフリカ大陸を5つに分けた最も南に位置する地域)で非常に重要な、多くの実を結ぶ、広く用いられている属である。
園芸的にも伝統的な薬草としても有力な役割を担っている。
庭で愛用されるとともに、ワイルドフラワーとして活用され、また、およそ11種が南部アフリカのさまざまな先住民たちによって病気治療に用いられていることが報告されている。
Plectranthusの多様な分野における経済的可能性は次のようなものとなる。
 
Plectranthusは南アフリカの自然景観の中で一般的な草本植物であり、園芸的に重要な属である。
いくつかの種は灌木として生垣に適しており、一部は優れたグラウンドカバーを形成する。
ロックガーデンや多肉植物ガーデン向きの優れた種があり、いくつかの種は大型のコンテナ、ポット、ハンギングバスケットで旺盛に育つ。
 
世界の観賞植物栽培に向けた南アフリカの注目に値するワイルドフラワーの貢献は数世紀に及び、これまで世界の観賞植物市場に重要な新しい花卉品目を産出している。
例えば、ガーベラ、グラジオラス、ペラルゴニウムといった属などである。
 
さらに、Plectranthusの多くの種は南アフリカで伝統医学に用いられ、プライマリ・ヘルス・ケア(primary health care)の分野における利用へ発展する可能性が大きい。
実際に、Plectranthusは薬効と利用に関する文献に最も一般的に引用されている。
 
園芸の場面で使われている利用タイプを表- 5に示す。
58種が記載されているが、P.barbatusは、庭向きの利用とされている。
 
一方、民族学的利用については、表- 6に示す。
11種が記載され、その中でも、本稿の主題となっているP.barbatusは広範囲の症状に対して利用が図られている。

【表- 5 南アフリカのPlectranthus 属の園芸的利用4)】
【表- 5 南アフリカのPlectranthus 属の園芸的利用4)】
【表- 6 南アフリカのPlectranthus 属の民族学的利用4)】
【表- 6 南アフリカのPlectranthus 属の民族学的利用4)】

 
 

植物と共生する生活の豊かさ1)

ナイロビのケニア国立博物館の伝統的植物を専門とするMartin Odhiamboは、トイレットペーパーのために樹木を伐採する環境影響に対する解決策がケニアではすでに存在していると考える。
 
P.barbatusはアフリカのトイレットペーパーと見なされているものの、今日、多くの若者たちはこの植物を知らない。
しかしながら、この植物は環境にやさしくトイレットペーパーに代替する可能性がある。
ケニアで実際にどれだけ多くの人たちが植物をトイレットペーパーとして使っているか公式データはないが、アフリカのさまざまな場所で広く育ち、多くの地方で容易に手に入り使われている。
 
P.barbatusの挿し木苗の値段は約50ケニアシリング(0.37ドル)であり、1~2カ月で十分な高さに成長する。
葉は市販の正方形トイレットペーパーとほぼ同じ大きさで、現代的な水洗トイレでもコンポストの野外トイレでの利用にも適する。
 
OdhiamboによるP.barbatusの利用に関する講義にはケニア全体から訪問者が参加し、ケニア国立博物館にある植物園で挿し木苗を購入している。
彼のクラスは600人を超える参加者を集め、人々は植物を使う方法を熱心に学び、自分たちの町へ植物を持ち帰り増やすために挿し木や実生の育苗方法について質問する。
 
「私はある人たちが葉をトイレットペーパーとして使うことを後戻りだと見ているのをわかっている。
しかしながら、この植物の恩恵を理解できれば、来るべき緑の代替策となるだろうと確信している。
私は自分の圃場でそれを育て、ケニア中のコミュニティと共有し、人々はその利便性に驚いている」とOdhiamboは語る。
 
 

参考文献

1)Soo Min Kim(2024):The people growing their own toilet paperplants, https://www.bbc.com/future/article/20241203-the-people-growing-their-own-sustainable-toilet-paper-plant
2)Edge(2022):Toilet Paper Environmental Sustainability Report Environmental Impacts of Traditional Toilet Paper Usage https://drive.google.com/file/d/1IOBDcixSgD5Lgz2gT3UmPb0i4EIvI4bs/view9_Landscape_and_local_correlates_of_bee_abundance_and_species_richness_in_urban_community_gardens
3)Wai Ming Cheung & others(2015):Facilitating waste paper recycling and repurposing via cost modelling of machine failure, labour availability and waste quantity, Resources, Conservation and Recycling Volume 101, August 2015, https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0921344915300070
4)L.J. Rice & others(2011):Plectranthus: A plant for the future ?, South African Journal of Botany Volume 77, Issue 4, October 2011, https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0254629911001050
 
 

写真でみる緑化樹木等の一例(1) ~自然樹形~

〔緑化樹木調達難易度判定会議〕写真解説 ①樹種名 ②撮影地 ③提供社園


①オオモミジ ②東京都 ③小岩井農牧

①コハウチワカエデ ②兵庫県 ③若生商店

①シダレカツラ ②岩手県 ③小岩井農牧

①ヒトツバタゴ ②埼玉県 ③ワイズプランツ

 
 

写真でみる緑化樹木等の一例(2) ~ GCP ~

〔緑化樹木調達難易度判定会議〕写真解説 ①樹種名 ②撮影地 ③提供社園


① Juni.con.‘ブルーパシフィック’②三重県
③ NURSERY YAMADA

①カンナ ②埼玉県 ③グリーンファーム・アンドウ

①キキョウ ②埼玉県 ③グリーンファーム・アンドウ

①タイム(ロンギカウリス)②秋田県 ③田村山林緑化農園

①ヒメイワダレソウ ②秋田県 ③田村山林緑化農園

①ユリオプスデージー ②埼玉県
③グリーンファーム・アンドウ

①イタビカズラ ②神奈川県 ③飯田園芸

①ハツユキカズラ ②神奈川県 ③飯田園芸

 
 

写真でみる緑化樹木等の一例(3) 令和6年度 認定「特別庭園樹木 ( 名木 )」

〔緑化樹木調達難易度判定会議〕写真解説 ①樹種名 ②規格 ③推定樹齢


①カツラ 秋田県(北日本菅与)
②樹高8.00 m 幹周6.50 m 枝張7.0 m ③ 300 年

①ヤマモミジ 秋田県(北日本菅与)
②樹高11.50 m 幹周2.95 m 枝張10.0 m ③ 150 年

①ノムラモミジ 秋田県(北日本菅与)
②樹高11.00 m 幹周2.35 m 枝張10.0 m ③ 130 年
緑化樹木調達難易度判定会議
一般財団法人 日本緑化センター、一般社団法人 日本植木協会

 
 
【出典】


 積算資料2025年8月号
積算資料2025年8月号

最終更新日:2025-10-27

 

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